豪雨の影響を受けた企業向けの支援まとめ

創業手帳

2020年7月の豪雨で被災した企業向けの支援を解説します

(2020/07/10更新)

2020年7月に九州地方を中心に発生した豪雨により、多くの企業が被害を受けています。被災された方々には心よりお見舞いを申し上げます。

豪雨で事業に影響が出た経営者の方々に向けて、国が実施している経営維持のための支援策をまとめて紹介します。

無料で利用できる創業手帳では、資金繰りの改善や経営課題に取り組む上で役立つノウハウをまとめて解説しています。記事とあわせて参考にしてみてください。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

特別相談窓口を設けている機関

今回の豪雨で被害を受けて、政府は地方の政府機関、中小企業支援機関、政府系金融機関などに特別相談窓口を設置しました。

  • 日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会
  • 商工会議所、商工会連合会、中小企業団体中央会、全国商店街振興組合連合会
  • よろず支援拠点、中小企業基盤整備機構九州本部
  • 九州経済産業局

まずは、上記の機関に事業の継続や再開について相談してみましょう。

資金繰りの改善支援

日本政策金融公庫の災害復旧貸付

日本政策金融公庫が主体となって、「災害復旧貸付」を実施しています。災害復旧貸付は、地震、台風、豪雪や大規模な火災などの災害を受けた中小企業者ための貸付で、公庫が通常提供している融資とは別枠で行われます。直接被害を受けた事業者だけでなく、取引先が被災したといった、間接的な影響を受けた事業者も対象です。

融資枠や金利などは、小規模事業や個人事業主向けの「国民生活事業」と、中小企業者向けの「中小企業事業」とで分けて設定されています。

中小企業事業 国民生活事業
貸付限度額 各融資制度に別枠で1億5,000万円 (※代理貸付:7,500万円) 各貸付制度の限度額に上乗せ3,000万円 (代理貸付:1,500万円)
金利 基準利率 1.11% 基準利率(災害貸付) 1.36%(貸付期間5年の場合。利率は一律)
貸付期間 設備資金15年以内・運転資金10年以内(据置期間2年以内) 適用する各貸付制度の貸付期間によって変わる

※代理貸付:別の金融機関の窓口を通じて公庫から貸付を受ける場合

貸付を受けるにあたって、担保が必要かどうかは、個別に相談して柔軟に対応するとしています。

セーフティネット保証4号

セーフティーネットとは、融資の返済が立ち行かなくなった場合に、保証協会が返済をいったん肩代わりしてくれる制度です。4号は、自然災害が原因で経営に支障をきたしている中小企業者向けの保証で、信用保証協会が通常の補償限度額とは別で100%保証をしてくれます。

保証限度額 無担保8,000万円、最大2億8,000万円
対象資金 経営安定に必要な資金
利率・保証期間 信用保証協会に要問い合わせ
保証人 原則不要

対象者は、以下の両要件に当てはまる事業者です(間接的に影響を受けた事業者も含む)。

  • 指定地域(災害救助法適用又は都道府県から指定の要請があって、国が認めた地域)内で、1年間以上継続して事業を行っている
  • 災害が原因で事業に影響をうけたあと、原則として最近1か月の売上高などが前年同月に比べて20%以上減少、かつ、その後の2か月を含めて合計3ヶ月間、売上高などが前年同期に比して20%以上減少することが見込まれる。(売上高等の減少について、市区町村長の認定が必要)

小規模企業共済制度の災害時貸付

中小企業基盤整備機構の小規模企業共済に契約している、事業者向けの災害時貸付です。被災した災害救助法適用地域の小規模企業共済の契約者に対し、即日かつ低利で融資を行います。

貸付限度額 1,000万円(ただし、共済契約者が納付した掛金の総額の7~9割の範囲内)
貸付利率 0.9%
償還期間 貸付金額が500万円以下→3年
貸付金額が505万円以上→5年
担保、保証人 不要

対象となる事業者の要件は以下の通りです。

  • 50万円以上の借入限度額がある
  • 災害救助法が適用される被災区域に事業所がある
  • 次のイまたはロの要件に該当する
    イ:被災区域内にある事業所や主要な資産について全壊、流失、半壊、床上浸水や、これらに準じる被害を受けている
    ロ:災害の影響をうけたあと、原則1ヶ月間の売上高が前年同月比で減少することが見込まれる

3の条件について、この内容を商工会、商工会議所、中小企業団体中央会その他相当の団体から証明を受ける必要があります。

労働保険料などの納付猶予

厚生労働省は、今回の豪雨をきっかけに損失を受けた事業者向けに、労働保険料などの納付猶予を実施しています。

  • 事業主が震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害により、負債を除く資産のおおむね 20%以上に損失を受けた
  • 納付すべき労働保険料などが、1の損失を受けた日以後1年以内に納付するものであること
  • 申請書が提出されていること

以上の3つの要件を満たせば、猶予期間中の延滞金と、財産の差し押さえや売却が猶予される可能性があります。労働保険料などの支払いが難しくなった場合は、災害がやんだ日※から2か月以内に管轄の都道府県労働局に申請しましょう。

※災害がやんだ日の判断は、被災状況によって異なります。最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署に確認してください。

支援策の情報はこまめにチェックを

今回紹介した支援のほかにも、メガバンク・地銀など金融機関が中心となって、被災企業向けの支援策を打ち出しています。また、7日には、政府が今回の豪雨を「特定非常災害」に指定することを検討しているという発表がありました。認定されれば、飲食店の営業許可が延長されるといった特例措置を受けることが可能になります。ほかにも、中小企業の支援策が拡充される可能性を示しています。豪雨の影響を受けている経営者の方は、最新情報をこまめにチェックすることをおすすめします。

また、無料で利用できる資金調達手帳では、今回紹介した支援以外でも経営者が活用できる資金調達の手段をまとめて解説しています。こちらも参考にしてみてください。

関連記事
災害時に避難所として開放するかどうか。段取りや受け入れ態勢の整え方と今後の宿泊業の在り方をホテル旅館業務の達人が解説
小規模企業共済とは。メリット・デメリットや、解約方法などを徹底解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す