1on1ミーティング導入のすすめ 働き方が変わっても従業員のパフォーマンスを維持するコツとは
1on1ミーティングの概要と導入のポイント、導入事例を紹介します
(2020/06/12更新)
新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の影響で、テレワークなど多様な働き方を導入する企業が増えました。同じ企業の中でも、在宅勤務・時間差出勤など働き方が異なる従業員が増えたことで、個人が抱える業務上の負担や問題を把握しにくくなった、と感じている経営者も少なくないのではないでしょうか。
働く環境・体制が変わっても、従業員のモチベーションやパフォーマンスを維持するために役立つのが、「1on1ミーティング」です。マネージャーと部下が1対1で定期的に行うミーティングのことで、双方向のコミュニケーションによる信頼関係の構築や、不調の把握、パフォーマンスの向上といった効果を期待できます。
この記事では1on1ミーティングの概要・実施する際のポイント・実際に導入している企業の事例を紹介します。
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この記事の目次
1on1ミーティングと面談の違い
1on1ミーティングを行う際によく出てくるのが、「面談とはどう違うのか?」という疑問です。1on1ミーティングには、以下のような特徴があります。
1on1ミーティング | 面談 | |
---|---|---|
1回の時間 | 15分~長くても1時間程度 | 会社による |
頻度 | 週1回~月1回など定期的に行う | 半年に1回、1年に1回など、インターバルが長い |
主体 | 基本的に部下が主体となって話をする場 | 基本的にマネージャーが主体となって話をする場 |
スタンス | 仕事の進捗管理や、評価のための場ではない | 仕事の進捗管理・評価・給与の決定などを含む |
面談は、マネージャーが主体となって行い、業務の進捗管理や評価に直結する話がメインとなることが多いものです。これに対して、1on1ミーティングは、コミュニケーションによる信頼関係の構築がベースです。マネージャーと従業員が双方向にコミュニケーションを取り、互いを知ることで信頼関係を深めたり、業務に関する不安・ストレスの軽減につなげたりすることができます。
短いインターバルで定期的に行うという点も、半年や四半期ごとなど、長いスパンで実施されることが多い面談とは性質が異なりますね。
1on1ミーティングで気をつけるべきポイント
コミュニケーションや信頼関係づくりに活用できる1on1ミーティングですが、話す内容の自由度が高い分、適切に行わないと期待した効果を得られないこともあります。
1on1ミーティングを導入する際のポイントを抑えておきましょう。
導入前に「なぜやるのか」を明確にする
1on1ミーティングの目的や重要度は、事業によって異なります。目的や位置づけが不明確なまま取り組むと、導入しても形骸化してしまった、というパターンになりがちです。
まずは何のために1on1ミーティングを実施するのか、自社にとってどれくらい重要なのか、導入によってどのような効果を期待しているのかを、しっかり検討しましょう。
1on1ミーティングは部下が主体
1on1ミーティングは、部下が主体的に話をすることに意味があります。1on1ミーティングの性質を理解していないと、ついマネージャー側が主導で話をすすめてしまいがちになるので注意しましょう。
経営者・マネージャーの間でこの意識をしっかり共有した上で、ミーティングの内容ややり方を考えるとよいでしょう。
部下に目的・目標をしっかりと伝える
1on1ミーティングを実施する準備が整ったら、ミーティングを受ける部下に趣旨を共有します。その際、マネージャー側から部下に対して「1on1ミーティングは面談とは違う」ことを説明する必要があります。
経営陣で話し合った1on1ミーティングの目的・目標が、部下にも正しく理解できるように、丁寧な共有を心がけましょう。
話す内容を事前に用意しておく
1on1ミーティングで話す内容は自由度が高いため、いきなり開催するとマネージャーと部下双方でどう進めたら良いのか分からず戸惑うことになる可能性が高いです。事前に、何を話すか準備して臨むとよいでしょう。
例えば、記入式のミーティングシートを作成し、あらかじめ項目を埋めてもらい、その内容をもとに話を進めていく形も有効です。
記録・フィードバックを行う
1on1ミーティングは、短いスパンで定期的に継続していくことを前提としています。
ミーティング中に話した内容を記録し、終わりにフィードバックの時間を設けるなど、内容を振り返って、次回につなげる仕組みをつくることが大事です
導入事例 メンタルヘルステクノロジーズの1on1ミーティング
実際に、1on1ミーティングを実施している、株式会社メンタルヘルステクノロジーズの事例を紹介します。
同社は、「社員のメンタルヘルスを維持するため」のコミュニケーション手段として、4年前から1on1ミーティングを導入しています。刀禰真之介代表に、実施する際のポイントを聞きました。
刀禰:弊社では「社員のメンタルを維持する」という目的で実施しています。目標シートを作って、ミーティングを受ける人に記入してもらい、その内容をもとに1on1ミーティングを進める形で取り組んでいます。目標シートの項目に「メンタル・スキル・健康・生活」の領域を入れている点が、特徴です。
初回は1時間、2回目は30分、それ以降は1回5分という具合に、ミーティングの時間を縮めていきます。初回で現状を丁寧に把握し、その後はマイナーチェンジしていく形で簡略化しています。半年ごとに目標シートの内容をアップデートしています。
1on1ミーティングを行うマネージャーは、1人あたり最大で10人程度を担当しています。それ以上多くなると、運用が難しくなります。
刀禰:従業員の不調に気づきやすくなりますね。弊社では1on1ミーティングを受ける側が、予想される問題点や失敗のきざしなどを自分で考えてシートに記載します。これにより、マネージャーもパフォーマンスが下がったり、不調が起きたりした際に原因を探りやすくなります。
定期的に実施することで、大きな問題が起きるリスクが下がった実感もあります。
刀禰:「1on1ミーティングが必ずしも従業員の評価に結びつくわけではない」という意識で実施すると良いと思います。あくまで、社員教育の一環としての位置づけですね。
一方でマネージャーに対しては、必ず1on1ミーティングを実施してもらう仕組みを作る必要があります。弊社では、マネージャーが自己判断で1on1ミーティングをやらなくなってしまい、形骸化しかけたことがありました。これを解決するため、今ではマネージャーに対して、1on1ミーティングの実施と効果を評価の軸として設定しています。
事業にとって1on1ミーティングがどれだけ重要かどうかは、経営陣がしっかり考えて決めましょう。
まとめ
1on1ミーティングのポイントと、導入事例を紹介しました。もともとは対面を想定したミーティングですが、従業員個人のパフォーマンスや事情を把握しにくくなってきた、という時にこそ効果を発揮しそうですね。
導入を考えている経営者は、この記事を参考にポイントを抑え、事業にとって最もメリットのある1on1ミーティングづくりを行ってみてください。
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(編集:創業手帳編集部)