【2026年度税制改正】賃上げ促進税制の変更点や制度活用の注意点

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賃上げ促進税制が大きく変わる!


2026年度(令和8年度)の税制改正大綱で賃上げ促進税制が大きく変更することが示されました。
そもそも賃上げ促進税制は人材確保、従業員の待遇改善の手段でしたが、企業の負担が大きくなった状態です。
企業の負担を少なくした状態で賃上げを加速するために導入された促進税制でしたが、この変更によってさらに賃上げ促進につながるのでしょうか。

この記事では2026年度税制改正における賃上げ促進税制の変更点の詳細や内容に加えて、賃上げ促進税制を活用するメリットや注意点、申請方法などを解説します。
どのような点が変更されるのか確認してみてください。

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2026年度税制改正における賃上げ促進税制の変更点


2026年度税制改正における賃上げ促進税制では、どのような点が変更されるのでしょうか。
2026年2月現在は通常国会が始まっており、改正法案についての審議が行われている状態ですが、今後どのような内容に変更されるのかについて解説します。

【全企業対象】教育訓練費の上乗せ廃止

今回行われる2026年度税制改正大綱では、賃上げ促進税制の創設以来、大きな転換点であるとされています。
特に企業の規模に関係なく、実務上での大きな変更点として「教育訓練費の増加にともなう税額控除率の上乗せ要件の廃止」が予定されているのです。

これまでの流れでは、教育訓練費については前年度比で一定以上増加となった場合、賃上げ額に対しての税額控除率を上乗せする措置が取られていましたが、計算構造が不適切だと会計検査院から指摘がありました。
教育訓練費は、増加した金額が少しであっても要件をクリアしていれば賃上げ額全体に乗じる控除率が加算される仕組みです。
企業負担の教育訓練費の増額以上に、得られる減税額のほうが多くなるという逆転現象が起こったことで制度が不適切と判断された結果、今回で廃止という結果に至りました。

【大企業】賃上げ促進税制は2026年3月31日開始事業年度までで廃止

今回、改正される賃上げ促進税制において、大企業では2026年3月31日までに開始する事業年度については適用されるものの、その後廃止が決まっています。
大企業に分類されるのは、資本金1億円超かつ従業員数2,000人以上であり、前倒しで廃止となるため2026年3月末の終了です。

大企業が前倒しで廃止されるのは、コーポレートガバナンス改革の進展があったことが関係しています。
コーポレートガバナンスとは企業の透明性、公平性を保ちながら適切な意思決定を行う仕組みで、企業価値の向上や不祥事防止などの観点から重要性も高くなっています。
賃上げは株主からも求められる責務であるとの認識が示され、税制優遇によって雇用の固定化、成長分野への労働移動の阻害などの指摘もあり、今回の早期廃止となりました。

【中堅企業】適用期限到来により段階的に廃止

中堅企業に関しては、改正後の給与等増加割合が変わるだけでなく、上乗せ措置に関しては廃止が決まっています。
中堅企業の場合は、2027年3月31日までに開始する事業年度については適用されるものの、その後廃止の流れです。

改正前は、教育訓練費が前年度比20%以上の増加、くるみん認定・えるぼし認定などの取得が上乗せ措置の対象でした。
今後、教育訓練費の上乗せ措置は廃止され、くるみん認定・えるぼし認定などの上乗せ措置は継続の見込みがあるということです。

【中小企業】制度は継続するが一部見直しあり

中小企業に関してですが制度は継続されるものの、内容に関しては一部見直しが行われます。
教育訓練費に係る上乗せ措置については廃止され、くるみん認定・えるぼし認定などの取得の上乗せ措置は継続される見込みです。
実質的な最大税控除率は低下となり、45%から35%に変更となります。教育訓練費の増加を前提に税額控除を検討していた場合は、計画そのものの修正が必要です。

賃上げ促進税制とは


そもそも、賃上げ促進税制度とはどのような制度でしょうか。
賃上げ促進税制は、賃上げ促進のための制度であり、実際に実現した法人や個人事業主に課せられる法人税と所得税を優遇する内容です。
賃上げによってデフレ脱却のための物価や購買力上昇による好循環を目的とした経済政策のひとつとして創設されました。

2013年には「所得拡大促進税制」という制度で始まったもので、それまで長く続いたデフレによる影響が誕生のきっかけとなりました。
近年は、働き手の減少や物価高などの関係で人材確保の目的で賃上げを実施する企業が増えてきましたが、日本企業は企業利益にともなっておらず底上げに消極的な企業もある傾向です。
そこで、企業の賃上げを実施しやすいように導入されたのが今回の賃上げ促進税です。

2024年に規制が緩和されたことで多くの企業が恩恵を受けやすくなったものの、今回変更となる部分があります。
ここでは、賃上げ促進税の対象企業、税額控除率、上乗せ措要件などについて詳しく解説します。

対象企業

賃上げ促進税の対象企業は、青色申告書を提出する企業と個人事業主です。従業員数や資本金などで区分されています。
大企業に区分されるのは、青色申告書を提出するすべての企業と個人事業主、中堅企業に区分されるのは、従業員数2,000人以下で青色申告書を提出する企業と個人事業主です。
中小企業は、資本金1億円以下で青色申告書を提出している法人、従業員数1,000人以下の個人事業主、農業協同組合などです。

税額控除率は最大で30%

賃上げ促進税制では税額控除率が最大で30%になりますが、適用要件と控除率は企業の規模によって異なります。

企業の規模 給与等支給の増加割合 増加額からの税額控除率
すべての企業 3%以上 10%
すべての企業 4%以上 15%
すべての企業 5%以上 20%
すべての企業 7%以上 25%
中堅企業 3%以上 10%
中堅企業 4%以上 25%
中小企業 1.5%以上 15%
中小企業 2.5%以上 30%

上乗せ要件について

続いて、上乗せ要件についてです。賃上げ促進税の上乗せ要件は、対象企業の区分に加えて控除率も複雑な部分があります。
以下の表を参考に該当する項目を確認してください。

【すべての企業】

必要な要件 上乗せ率
賃上げ率
(継続雇用者)
税額控除率 教育訓練費10%増加 プラチナくるみん・プラチナえるぼしの認定
3%以上 10% 税額控除率+5% 税額控除率+5%
4%以上 15% 税額控除率+5% 税額控除率+5%
5%以上 20% 税額控除率+5% 税額控除率+5%
7%以上 25% 税額控除率+5% 税額控除率+5%

【中堅企業】

必要な要件 上乗せ率
賃上げ率
(継続雇用者)
税額控除率 教育訓練費10%増加 プラチナくるみん・えるぼし3段階目以上
3%以上 10% 税額控除率+5% 税額控除率+5%
4%以上 25% 税額控除率+5% 税額控除率+5%

【中小企業】

必要な要件 上乗せ率
すべての雇用者の賃上げ率 税額控除率 教育訓練費5%増加 プラチナくるみん・えるぼし2段階目以上
1.5%以上 15% 税額控除率+10% 税額控除率+5%
2.5%以上 30% 税額控除率+10% 税額控除率+5%

教育訓練費

教育訓練費とは、雇用者に対して外部講師を招いて講義や指導などの教育訓練を行う費用です。
外部講師に対しての報酬、料金、謝金などの費用や施設などの賃借料、教育訓練を行った際の費用などが含まれます。

従業員のスキルアップなどに利用した金額から控除が受けられるもので「教育訓練費の額は前事業年度から10%以上増えた場合」「適用事業年度の教育訓練費が適用事業年度の雇用者給与等支給額から0.05%以上の場合」という条件をクリアした際に税額控除率が5%上乗せされます。
ただし、教育訓練で必要となった交通費、宿泊費などは対象外です。

子育てとの両立・女性活躍支援

子育てとの両立・女性活躍支援は、仕事と子育ての両立、女性の活躍支援について積極的に取り組んだ企業が控除を受けられるものです。
この内容は、介護や子育てをしながら働けるように仕事と家庭が両立しやすい環境や職場作りの推進を目的としていて、仕事と生活の調和がとれる社会実現のための支援となります。
適用事業年度終了時または適用年12月31日に、規定のくるみん認定・えるぼし認定の取得で税額控除率5%の上乗せがされます。
区分によって要件が異なるので以下の内容を確認してください。

企業の規模 くるみん認定・えるぼし認定におけるレベル
全企業 ・プラチナくるみん認定(プラチナくるみんプラス認定含む)
・プラチナえるぼし認定
中堅企業 ・プラチナくるみん認定(プラチナくるみんプラス認定含む)
・プラチナえるぼし認定
・適用年度中にえるぼし認定3段階目取得
中小企業 ・プラチナくるみん認定(プラチナくるみんプラス認定含む)
・プラチナえるぼし認定
・適用年度中にくるみん認定(くるみんプラス認定含む)
・適用年度中にえるぼし認定2段階目以上の取得

中小企業が賃上げ促進税制を活用するメリット


賃上げ促進税制は企業にとってメリットが得られますが、中小企業の場合は特にメリットが多い傾向です。
ここでは、中小企業が賃上げ促進税制を活用するメリットについて解説します。

節税効果が期待できる

中小企業が、賃上げ促進税制を積極的に活用することで高い節税効果が期待できます。
企業が負担している法人税に加えて、個人事業主が負担する所得税から直接控除できるのが大きなメリットです。
控除の上限額は法人税額もしくは所得税額から20%が上限ですが、中小企業については次年度以降に繰り越しできるので赤字になった場合でも翌年度以降も利用できる仕組みです。

単に給与を引き上げるだけでなく、その増加分の一部が税金として戻ってくる仕組みのため、実質的な人件費負担を抑えながら賃上げを実施できます。
特に中小企業は控除率が優遇されているため、要件を満たせば高い節税効果が期待できます。利益が出ている企業にとっては、将来への投資と節税を同時に実現できる制度です。

人材の確保や定着を促せる

賃上げ促進税制では、上乗せ要件に教育訓練費の増加を含んでいます。
このような内容から、企業は人材の育成に積極的な投資がしやすくなるため、従業員もスキルアップしやすい環境で働きやすいです。

また、給与等支給額の増加も要件に含んでいることから、企業は従業員の給与やボーナスの支給額アップ、雇用人数増加などを検討します。
従業員にすれば給料やボーナスの増加に加えてスキルアップができるので、今後のキャリアアップがしやすい環境で働けるので、知識を習得する機会が自然と得られます。

賃上げは、従業員の満足度やモチベーションを高める直接的な施策です。
近年は人手不足が深刻化しており、給与水準や待遇は求職者が企業を選ぶ際の重要な判断材料になります。
継続的な賃上げを行うことで「従業員を大切にする企業」という評価が高まり、離職防止だけでなく採用面でもプラスに働く点は、中小企業にとって大きなメリットといえます。

賃上げ促進税制を受ける際の注意点


賃上げ促進税制はメリットもありますが、いくつかの注意点もあります。活用時には、以下の注意点についても確認しておくことをおすすめします。

資金繰りの悪化に注意する

賃上げ促進税制のメリットを感じて積極的に活用するのは良いことですが、無理矢理適用してしまうと資金繰りが苦しくなる可能性があります。
賃上げ促進税制の適用対象となるには、給与や賞与などの支給額を増やすことが条件ですが、無理に要件を満たそうとした場合は資金繰りが困難になるので本末転倒です。
一度賃上げすれば、元の状態には戻すのが難しいので長期的な人件費の負担について検討してからが望ましいです。

国内雇用者は一時的に海外に赴任している従業員も含まれる

賃上げ促進税制の適用となるのは、国内雇用者に対しての給与や教育訓練費です。国内に事業所があって、作成された賃金台帳に記されている従業員を対象としています。
海外出張中の従業員であっても、国内の事業所で作成された賃金台帳に記載されていて給与支払いがされているなら対象となります。

賃上げ促進税制の申請方法


賃上げ促進税制の申請方法についてです。申請は、確定申告の際に手続きを行う必要があります。
ここでは、申請方法について解説します。

認定や届け出の必要はない

賃上げ促進税制を利用する際には、特別な認定や届け出などの必要はありません。法人なら法人税、個人事業主なら所得税申告の際に書類の添付を行います。
用意する書類は、適用額明細書(法人のみ)、控除額計算明細書、繰越控除額もしくは繰越限度超過額明細書(繰越控除を受ける時のみ)です。

適用額明細書と控除額計算明細書について

適用額明細書は、法人が租税特別措置法に基づいて優遇措置を受ける際に、区分番号、適用条項などを記載して法人税申告書に添付します。
控除額計算明細書は、賃上げ促進税制を受けるために法人税額から控除金額の計算を行うために必要な書類であり、国内雇用者の給与額支給額、教育訓練費などの金額を記載するものです。

まとめ・活用するなら改正点や注意点の理解が必要

賃上げ促進税制は、人材の確保や従業員の待遇改善を目的とした制度でしたが、今後内容が一部変更されることになりました。
企業は区分に応じて変わる部分が異なるので、事前に確認しておくと安心です。
さらに、活用方法を見直すことでよりメリットを得られる可能性があるので詳細をチェックしておくことをおすすめします。

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(編集:創業手帳編集部)

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