障害者の雇用を支える支援制度

創業手帳

「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用助成金」「障害者雇用安定助成金」の概要を解説します

(2020/08/17更新)

障害者の雇用に取り組む事業者に対して、かかるコストの一部を助成する支援制度があります。中でも、雇い入れのために活用できる制度の代表としてあげられるのが、「特定求職者雇用開発助成金」「トライアル雇用助成金」「障害者雇用安定助成金」です。

それぞれの制度で、どのような支援を受けることができるのか、概要を解説します。

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特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、ハローワークなどから紹介を受けた人材を、雇用保険の一般被保険者として継続的に雇用する事業主のための助成金です。

特定就職困難者コース」「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」「障害者初回雇用コース」の3種類が設けられています。

特定就職困難者コース

特定就職困難者コースは、短時間労働者と短時間労働者以外の2種類あります。それぞれの概要を表でまとめました。

※()内の数値は、中小企業事業主以外の場合の値です。

【短時間労働者以外】 重度障害者等を除く身体・知的障害者 重度障害者等
支給額 135万円(50万円) 240万円(100万円)
支給対象期ごと支給額 45万×3期(25万×2期) 60万×4期(33万×3期※)
助成対象期間 1年6か月(1年) 2年(1年6か月)

※第3期の支給額は34万円

【短時間労働者】 重度障害者等を含む身体・知的・精神障害者
支給額 90万円(30万円)
支給対象期ごとの支給額 30万×3期(15万×2期)
助成対象期間 1年6か月(1年)

重度障害者等は、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者及び精神障害者をいいます。短時間労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人です。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

発達障害者・難治性疾患患者を雇い入れる雇用主のための助成金です。事業主は、雇い入れた従業員に対する配慮事項など雇用管理の情報について報告義務があります。また、雇入れから約6か月後にハローワーク職員などが職場訪問を行います

こちらも短時間労働者、それ以外で助成の内容が異なります。

短時間労働者以外 短時間労働者
支給額 120万円(50万円) 80万円(30万円)
支給対象期ごとの支給額 30万円×4期(25万円×2期) 20万円×4期(15万円×2期)
助成対象期間 2年間(1年間) 2年間(1年間)

障害者初回雇用コース

障害者初回雇用コースは、障害者雇用の経験のない中小企業(労働者数45.5人~300人の規模)が、障害者をはじめて雇用し、これによって法定雇用率※を達成する場合に、120万円を助成します。

※法定雇用率:一定数以上の従業員を雇用する企業や地方公共団体について、常用労働者の数に対して障害者をどれくらい雇う必要があるかを定めた基準のこと。

受給要件は以下の通りです。

  • 支給申請時点で、雇用する常用労働者数が45.5人~300人である
  • 1人目の支給対象者の雇入れの日の前日までの過去3年間で、対象労働者について雇用実績がない
  • 初めて身体障害者、知的障害者及び精神障害者を雇い入れ、1人目の対象労働者を雇い入れた日の翌日から起算して3か月後の日までの間に、雇い入れた対象労働者の数※が法定雇用障害者数以上となり、法定雇用率を達成する

※短時間労働者として雇い入れる場合は2人で1人分としてカウントされます。ただし、重度身体障害者または重度知的障害者を短時間労働者として雇い入れる場合はその限りでありません。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、職業経験、技能、知識などの理由で安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークや職業紹介事業などの紹介を受けて一定期間試行雇用した場合に助成するものです。基本的な考え方は特定求職者雇用開発助成金と同じです。

障害者トライアルコース」、「障害者短時間トライアルコース」の2種類あります。

障害者トライアルコース

対象労働者

対象は、以下の2つの条件をいずれも満たす労働者です。

  • 継続雇用の希望者で、障害者トライアル雇用制度を理解した上で、障害者トライアル雇用による雇入れについて希望している者
  • 障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、次のア~エのいずれかに該当する者
    ア、重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者である
  • イ、紹介日の時点で、就労の経験のない職業に就くことを希望している
    ウ、紹介日前2年以内に、離職または転職を2回以上経験している
    エ、紹介日前で、離職期間が6か月を超えている

雇入れの条件

雇い入れの条件は2つあります。

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること
  • 障害者トライアル雇用などの期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと

支給額

支給対象者1人あたりの支給額は以下の通りです。

精神障害者の場合 精神障害者以外の場合
支給額 月額最大8万円×3か月、その後月額最大4万円×3か月(最長6か月間) 月額最大4万円×最長3か月間

障害者短時間トライアルコース

対象者

短時間トライアルコースの対象者は、継続雇用を希望しており、障害者短時間トライアル雇用制度を理解した上で、障害者短時間トライアル雇用による雇入れを希望している精神障害者または発達障害者です。

雇入れの条件

雇入れのためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  • 3か月から12か月間の短時間トライアル雇用をすること

支給額

支給額は、支給対象者1人につき月額最大4万円(最長12か月間)となっています。

障害者雇用安定助成金

障害者雇用安定助成金は、職場適応・定着に課題を抱える障害者に対して、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を実施する事業主向けの助成金です。

対象労働者が職場に適応するために 、高齢・障害・求職者雇用支援機構地域障害者職業センターが作成もしくは承認している支援計画の中で、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を受け入れた時のコストを助成します。

ジョブコーチとは、障害者の職場適応に課題を持つ企業に対して、専門的な支援を行うプロフェッショナルのことです。事業主、従業員、障害者、障害者の家族など、雇用に関わる全ての人に対して支援を行ってくれます。障害者雇用安定助成金では、「訪問型」「企業在籍型」という2種類のジョブコーチによって、コースが分かれています。

支給額の区分は、以下の図のとおりです。

訪問型職場適応援助者による支援

訪問型職場適応援助者による支援は、支援計画(最長1年8か月※)に記載された以下の領域について助成の対象となります。

※対象労働者が精神障害者の場合は最長2年8か月

  • 支援計画書の策定
  • 支援総合記録票の策定
  • 支援対象労働者に対する支援
  • 支援対象事業主に対する支援
  • 家族に対する支援
  • 精神障害者の状況確認
  • 地域センターが開催するケース会議への出席
  • その他の支援(地域センターが、職業リハビリテーション計画に基づき必要と認めた支援)

訪問型職場適応援助者による支援

訪問型職場適応援助者による支援は、最長6か月の支援計画にもとづいて、以下の領域が対象になります。

  • 対象労働者および家族に対する支援
  • 事業所内の職場適応体制の確立に向けた調整
  • 関係機関との調整
  • その他の支援(地域センターが特に必要と認めて支援計画に含めた支援)

まとめ

障害者を雇用する際に活用できる支援を紹介しました。今回紹介した支援のほかにも、施設等の整備や適切な雇用管理を行った事業主や、障害者の職業能力開発に貢献する事業者に対しての支援などがあります。障害者を雇用することになった際は、事業者・労働者の双方にとって有益な就労環境を整えるために、こうした支援制度を積極的に活用すると良いでしょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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