小規模企業共済は個人事業主におすすめ?加入条件・節税メリット・注意点を解説

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小規模企業共済を賢く活用してメリットを得よう


個人事業主が加入できる制度の中の1つに小規模企業共済があります。「経営者にとっての退職金」とも言われている制度で、老後に備えることが可能です。
しかし、小規模企業共済がどういった制度なのか理解していない人もいるでしょう。

そこで今回は、個人事業主が加入できる小規模企業共済の概要について解説すると共に、その特徴や受け取ることが可能な共済金など、様々な内容を紹介していきます。
廃業した際の共済金の受け取り方や法人成りする場合の取り扱いなど、疑問を解決できる内容となっているので、共済について理解したい個人事業主や老後のための備えを万全にしたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。

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小規模企業共済の加入資格|制度の概要と個人事業主の条件


個人事業主は会社員とは異なり退職金がありません。そのため、将来の資金計画について考えるのは重要な課題の1つです。
小規模企業共済は、そんな個人事業主のための退職金制度で、政府の機関である中小企業基盤整備機構が運営しています。

しかし、加入するためには条件に当てはまっている必要があり、中には加入できない個人事業主も存在します。
ここでは、加入できる条件や加入できない個人事業主について解説していきましょう。自分が該当しているか確認するためにも参考にしてください。

加入できる個人事業主の条件

加入できる個人事業主は法人を設立せず、自らで事業を行っている個人となります。
加入の判断基準は以下の通りです。

  • 常時使用する従業員の数が一定以下の個人事業主
  • 税務署に開業届を出し、事業所得を得ていることで確定申告をしている個人事業主
  • 会社と雇用関係が生じていない個人事業主
  • 固定給に近い報酬を得ず、完全歩合制の個人事業主
  • 社会通念上、事業者と認められる個人事業主(事務所を保有している、常時事業に従事しているなど)

「常時使用する従業員の数」は、以下のような定めがあります。

事業種別 常時使用する従業員の数
建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)など 20人以下
商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) 5人以下

加入できない個人事業主

反対に、小規模企業共済に加入できない人は以下のようなパターンです。

  • 従業員数が規模要件を超える事業を営んでいる場合(共同経営者の要件を満たしていれば加入できる)
  • 事業を兼業している給与所得者(例:アパート経営をしているサラリーマン)
  • 会社の役員とみなされる場合(商業登記簿謄本に役員登記されていない実質的な経営者)
  • 配偶者の専業従事者や従業員(共同経営者の要件を満たしていれば加入できる)
  • 小規模企業者にあたらない事業の兼業や役員をしている場合
  • 学業を本業とする全日制高校生

小規模企業共済の特徴


小規模企業共済には様々な特徴があります。どういった特徴があるのか解説していきます。

掛け金を自由に設定できる

小規模企業共済は、掛け金を自由に設定できる特徴があります。掛け金の月額は1,000円から可能となっており、1,000円~70,000円の範囲内で、500円単位で設定可能です。
幅広い選択肢があるため、無理のない範囲で資金を積み立てられるメリットがあります。掛け金の月額別の構成比は以下のようになっています。

【在籍者の掛金月額別の構成(令和5年3月末時点)】

掛け金 割合
5,000円以下 10.3%
5,000円~10,000円 12.9%
10,500円~20,000円 9.0%
20,500円~30,000円 9.9%
30,500円~60,000円 11.8%
60,500円~70,000円 44.1%

(参照:経済産業省「小規模企業共済制度の現状について」)

上記のデータをみると、60,500円~70,000円の層が最も多いことがわかります。また、月払いだけではなく半年払いや年払いにも対応しています。
掛け金の額は、加入後に増額や減額することもできるため、業績や将来の目標に合わせて、自由に設定できる点も特徴です。

節税対策になる

税制上のメリットがある点も小規模企業共済の特徴の1つです。小規模企業共済は、掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除として課税対象所得から控除されます。
そのため、掛け金を支払うことで、所得税や住民税の負担を軽減できることがメリットです。
加入後の節税効果については、中小機構のサイトにあるシミュレーションで確認できるため、気になる人はチェックしてみてください。

赤字で所得がゼロだった場合の年は、所得控除の対象となる課税対象所得がないため直接的な制津税効果はありません。
赤字であっても掛け金の引き落としは続くので資金繰りに余裕がないとデメリットに感じますが、将来の退職金準備として加入するメリットは十分にあります。

解約する場合、掛け金の納付月数に応じて掛け金の80%~120%に相当する額が手当金として受け取れます。しかし、途中で解約する場合は損をする可能性が高いです。
例えば、掛金10,000円で加入した場合、以下のような解約手当金を受け取れます。

掛金納付年数(掛金合計額) 解約手当金
5年(掛金合計600,000円) 480,000円
10年(掛金合計1,200,000円) 1,020,000円
15年(掛金合計1,800,000円) 1,665,000円
20年(掛金合計2,400,000円) 2,400,000円

上記の表からわかるように、納付した掛け金に対して100%以上の解約手当金を受け取れるのは納付月数が240カ月(20年)以降からとなります。
20年よりも早い段階で解約すれば損をしてしまうため、掛け金の額を変更し、余裕が出た際に掛け金を元に戻すといった対処を検討するのも得策です。

貸付制度を利用できる

事業を営む中で急な資金不足が生じるケースもあります。その際、加入者であれば掛け金の範囲内で低金利の貸付制度を利用することが可能です。
低金利となっているため利用しやすい制度となっています。共済内で利用できる貸付制度と金利は以下の通りです。

貸付の種類 利率(年利)
一般貸付 1.5%
傷病災害時貸付 0.9%
創業転業時・新規事業展開等貸付 0.9%
福祉対応貸付 0.9%
緊急経営安定貸付 0.9%
事業承継貸付 0.9%
廃業準備貸付 0.9%

貸付制度に関しては、無担保で保証人不要となっており、即日対応も可能となっています。
迅速で有利な条件で資金を確保できるので、経営継続のリスク軽減につながるでしょう。

個人事業主が小規模企業共済で受け取れる共済金


小規模企業共済では、4種類の共済金があります。それぞれについて解説していきましょう。

共済金A

個人事業主が事業を廃業した時や契約者本人が死亡した時に支給されるのが共済金Aです。
掛け金元本に1%の利率と運用益が加算されるため共済金の中で最も優遇された種類となります。
20年以上積立を続ければ、基本共済金だけで元本の116%以上を受け取れる場合もあります。

共済金B

個人事業主が65歳以上となり、15年以上掛け金を納めた場合に退職金として受け取れるのが共済金Bです。家族への事業譲渡の場合も対象です。
仕事を続けていたとしても共済金を請求できます。6カ月以上掛け金を納付していれば、請求資格があると判断されます。

準共済金

個人事業主が法人成りをして小規模企業共済の加入資格を喪失した際に受け取れるのが準共済金です。
受け取れる額は、掛け金とわずかな運用益のみとなり、20年積み立てていても共済金Aや共済金Bよりも少額な点が特徴です。
12カ月以上の納付によって請求資格を有することができ、受取り方法は一括のみとなります。

解約手当金

個人事業主が何らかの理由によって中途解約した時や長期にわたって掛け金を納めなかったことを理由に強制解約となった場合に支給されるのが解約手当金です。
受け取れる額は最も低く、前述したように20年未満で解約をすると元本割れのリスクが高くなります。12カ月未満では受け取ることができません。

個人事業主が廃業した場合の共済金受け取り方法


ここからは、個人事業者が廃業した際の共済金の受け取り方法を解説していきます。
スムーズに受け取りを完了させるためにも、どういった方法で受け取れるのか事前に確認しておきましょう。

受け取り方法は3種類

共済金を受け取る方法は、「一括受け取り」「分割受け取り」「一括と分割の併用」の全部で3種類です。
分割受け取りは、年金と同じような方式となっており、共済金を10年もしくは15年にわたって年に数回ずつ受け取れます。
受け取れる月は奇数月ごととなっており、年6回共済金を受け取れる仕組みです。
分割受け取りと一括と分割の併用を選択する場合は条件があるため注意してください。

  • 共済金AまたはBである
  • 請求事由が共済金契約者の死亡ではない
  • 請求事由が発生した日に60歳以上になっている
  • 共済金の額は以下の通りである
  •  1.分割受け取りの場合:300万円以上
     2.一括と分割の併用の場合:330万円以上(一括:30万円以上 分割:300万円以上)

受け取る場合の流れ

共済金の受け取り手続きを進める場合の流れは以下の通りです。

①必要書類を準備する
共済金等請求書に必要事項を記入し、廃業届の控えや本人確認書類などを揃えます。
共済契約者本人の実印を押した請求書や実印の印鑑証明書なども忘れずに用意してください。
老齢給付の請求で65歳以上であれば、年齢確認書類が必要になるケースもあります。

②口座確認印をもらう
共済金の振込みを依頼する金融機関に出向いて口座確認印をもらってください。請求書を窓口に持参し、受取口座の欄に証明印を押してもらいます。

③中小機構に書類を渡す
必要な書類を用意したら中小機構宛に書類を送付してください。送付する場所は、請求書に記載されている提出先の住所です。
マイナンバーといった重要な情報を含めた書類も送るので、簡易書留といった追跡可能な郵送方法で送ると安心です。

④審査
中小機構に書類が到着したら審査が実施されます。不備や確認事項がなければ、提出後3週間~1カ月ほどで指定口座に共済金の振込みがあります。
不備がある際や繁忙期であれば審査に時間を要するため、早めに手続きをするようにしましょう。
振込みが完了すると、振込み通知書や共済金支払い報告書といった書類が中小機構から届くので確認してください。

小規模企業共済への加入に向いている個人事業主


メリットが多いからといって、全ての個人事業主に小規模企業共済の加入が向いているわけではありません。ここでは、加入に向いている個人事業主を紹介していきます。

安定的な所得のある個人事業主

年間を通じて一定以上の利益があり、毎月の掛け金を無理なく用意できる事業主であれば、共済のメリットを最大限活かせるでしょう。
特に課税所得が高い人ほど所得控除の節税効果が大きくなるので、加入を検討してみてください。

反対に所得が不安定で無理な金額を設定してしまうと、事業資金の確保だけではなく生活にも悪影響を及ぼす可能性があります。
安定した収入基盤がある事業主に向いている制度です。

長期的な事業展開を計画している個人事業主

前述したように、小規模企業共済は20年未満に中途解約すると元本割れをするリスクがあります。
共済制度の恩恵を最大限受け取れないため、長期的に事業を継続する個人事業主に向いている制度です。
「短期間で資金を引き出したい」と考える人には向いていない制度だと理解しておきましょう。

他の制度とのバランスを考えられる個人事業主

NISAやiDeCoといった他の制度とのバランスを考えることも重要です。小規模企業共済は、退職金制度として位置づけられており、低リスクで安定的に積み立てられる特徴があります。
しかし、運用益を狙う場合には向いていない制度です。その場合は他の制度の活用を検討してみましょう。

また、iDeCoとの併用は所得控除の恩恵を増やせるメリットがあります。他の制度についても理解し、自分にとって最適な方法を選択してみてください。

個人事業主が法人成りする場合の小規模企業共済の取り扱い


個人事業主が小規模企業共済に加入していた場合、法人成りをすれば解約が必要だと考える人もいます。
しかし、一定の条件を満たして必要な手続きを行えば、継続して加入することが可能です。

同一人通算制度の活用で継続できる

個人事業主が法人成りする場合、同一人通算の手続きを行えば、共済金に加入し続けることが可能です。
その際には、個人事業主の時に支払った掛け金や月数も通算できるので安心です。
ただし、以下の加入資格を満たしている必要があります。

  • 個人事業を完全に法人成りする
  • 個人事業主だった人が法人の役員として登記している
  • 従業員数が所定の上限以下

当てはまらなければ同一通算制度は活用できないため注意してください。

手続き方法

法人成り後も継続して小規模企業共済に加入するためには、所定の手続きが必要です。
まずは、中小機構と業務委託契約を結んでいる団体や金融機関の窓口へ出向き、必要書類を提出します。

  • 個人事業の廃業届
  • 法人登記簿謄本または履歴事項全部証明書(会社の役員就任がわかる書類)
  • 納付月数通算申込書兼契約申込書

委託機関で書類を確認後、中小企業基盤整理機構に委託機関を通じて書類が提出されます。
その後、手続きが完了すれば「納付月数通算手続き完了のお知らせ」と「契約内容確認書」が送られてくるので確認してください。
要件を満たしていない、不備がある場合は書類が返却されるケースもあります。その場合は、必要な書類を再度用意した上で手続きを行いましょう。

まとめ・制度を理解してから加入するのがポイント

個人事業主が廃業する際に受け取れる退職金制度として小規模企業共済は活用されています。節税効果や貸付制度を利用できるといった利点があります。
受け取る理由やタイミングによって共済金額が大きく変わり、税負担も異なります。そのため、制度の内容をよく理解していないと恩恵を受けらないかもしれません。

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(編集:創業手帳編集部)

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