「複業」と「副業」、何が違う?複業の考え方・始めるメリットを解説
「複業」と「副業」の違いを理解し、新たな働き方から自分に合ったものを選択しよう
副業を始める人が増えていますが、一方で新たに「複業」と呼ばれる働き方も登場しており、注目を集めています。
この複業は、副業とはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、副業との違いを解説しながら、複業の考え方やメリットを解説します。自分に合った新しい働き方を模索している方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
「複業」とは?「副業」との違いも解説
どちらも「ふくぎょう」と読む働き方です。読み方は同じでも、その中身は少し異なります。まずは複業の特徴や副業との違いを解説します。
複業の特徴
複業は、複数の仕事を並行して取り組む働き方を意味します。「パラレルキャリア」とも呼ばれています。
働き方改革が浸透し始めた2018年以降、注目を浴びるようになりました。
複業は複数行っている仕事のうちのどれかを指しているわけではありません。正しくは、複数の職業を手掛けている状態のことを指します。
副業との違い
副業は、メインの本業があることを前提に、別の仕事をして収入を得る働き方です。雇用形態によっては、アルバイト・パート・在宅ビジネス・内職などに分けられます。
複業も複数の仕事を掛け持ちしている点は同じです。しかし、副業のようにメインやサブという位置づけはなく、どの仕事も本業という考え方になります。
副業は本業の空き時間に行うケースが多く、重大な責任を負わないものが多いケースもありますが、一方、複業はほぼ本業と同じスタンスです。
そのため、高度な専門性やプロ意識を持って取り組むことが求められます。
複業と意味が似ている働き方
働き方には、いろいろな種類があります。その中には、複業と意味が似ているものもあるので、その特徴を紹介します。
兼業
兼業は、従事する職務以外にほかのビジネスを掛け持ちし、複数の収入を得る働き方です。
メインの仕事、サブの仕事と順序を付けない点は、副業や後述するパラレルワークと近い要素があります。
ひとつの仕事に従事する意味で「専業」を使うのであれば、それとは別に複数の仕事をするという対義語として「兼業」が用いられます。
例えば、システムエンジニアをやりながら、プログラマーもやっているというのが兼業です。
収入面や事業拡大など功利的な意味合いが強い活動を兼業とすることが多くあります。
伏業
伏業は、会社に申告せずにほかの仕事をすることを指します。副業を禁止している企業で、このような働き方をする人が多くみられます。
企業向けの副業事前申請ソフトを提供している「株式会社フクスケ」の調査によれば、2019年の時点で伏業経験者の割合は26%でした。
この結果から、隠れて副業をしている人は少なくないことがわかります。
パラレルワーク
パラレルワークは、2つ以上の仕事を同時に行う働き方を指します。使われ方としては、副業とほぼ同じです。
また、兼業とも少し似ています。ただし、パラレルワークにおけるワークとは必ずしも営利目的の仕事を指すわけではありません。
実際には、研究・作業・勉強なども含まれます。
兼業はビジネス度の高い仕事を複数取り組むことに対して、パラレルワークは本業とは別に、ボランティア活動やアーティスト活動など、複数の社外活動を平行に行っていることも含まれます。
複業の実態と注目されている背景
日本ではどれだけの人が複業を行っているのでしょうか。また、ワーカーの間で注目されているのは、どのような理由があるのでしょうか。
ここで、複業の実態と注目される背景を紹介します。
複業を始める人が増えている
インターネット接続サービスを展開する「So-net」が実施した「パラレルワーク(複業)に関する実態調査」では、5人にひとりが複業をしている実態が明らかになっています。
さらに、クラウドソーシングサービスを展開する「ランサーズ」が実施した「フリーランス実態調査2021」によると、複業をしているワーカーの人口は281万人でした。
2015年の調査では92万人で、そこからワーカー人口は約3倍に増えています。
また、調査では複業系や副業系の複数企業と契約する個人は、800万人を超えると見込まれています。
これらのデータから、複業に対する注目度は高いことがわかるでしょう。
なぜ複業が注目されているのか?
複業が注目される理由のひとつは、終身雇用制度が失われつつあることが挙げられます。日本は、ひとつの会社に入社し、定年まで勤める終身雇用が一般的でした。
しかし、近年は終身雇用を前提としないで人材を雇用する企業も増え始めています。
終身雇用が絶対的ではなくなっていることから、複数の仕事を平行にこなして、安定化を図る考え方が強まっています。
また、働き方改革の推進によって、副業や複業を認める企業も増え始め、仕事の掛け持ちがしやすい環境に変化している状況です。
また、複業として取り組む仕事探しができるマッチングサービスも登場しており、簡単に複業を始められるようになりました。
こういった環境の変化も、複業が注目を浴びる要素となっています。
収入別・複業の種類
複業の収入タイプは、労働時間型・成果報酬型・ビジネスオーナー型の3つに大別されます。各タイプの特徴は以下のとおりです。
労働時間型
労働時間に応じて、報酬が出る働き方です。時給制のアルバイトやパートなどが該当します。
成果に関わらず働いた時間に対して給料が発生するので、安定して稼げるのが特徴です。
働けば働いただけ収入を得られるのもメリットですが、短時間で多額の報酬を得られにくい点がデメリットといえます。
成果報酬型
複業の納品物に応じて報酬が出る働き方です。労働時間型とは異なり、長い時間をかけて働いても成果が出なければ収入は得られません。
そのような特徴があるので、仕事が捗らなかった時は時給に換算すると、最低時給以下になってしまう場合もあります。
その一方で、早く成果を出せば、短時間で大きく稼ぐこともできます。
ビジネスオーナー型
自ら商品やサービスを提供して収入を得る働き方です。自分で作った商品やサービスの販売をはじめ、ブログや動画の広告収入を得るビジネスが該当します。
ビジネスオーナー型は、自分の趣味の延長として始められるのが特徴です。ただし、安定して稼ぐためには、センスや地道な努力が求められます。
形態別・複業の種類
複業は収入だけではなく、働くスタイルも多岐にわたります。ここからは形態別に複業の種類を紹介します。
個人+個人タイプ
すでに個人事業主・フリーランスとして活動しながら、別の仕事を個人で掛け持ちしている形態です。
例えば、フリーランスで行政書士をやりながら、その知識を活かしてフリーライター活動をしている場合は、この形態に当てはまります。
このタイプのメリットは、自分が持てる能力に合わせて労力や時間を調整しやすい点です。
ただし、仕事探しから契約まですべて自分の手で進めなければならず、実際に収入を得られるまでの道のりは長くなる傾向にあります。
個人事業主が仕事を複数掛け持ちする場合、事業所得となることは多いため、確定申告で青色申告特別控除を活用すれば、節税できるメリットもあります。
個人+法人タイプ
もともとフリーランスや個人事業主として働く人が、後から企業に勤めて働く形態です。
個人事業では体験できない経験を積みたい、新たなキャリアを形成したいなどの目的で、このスタイルを選ぶ人は多くいます。
中途採用の場合、採用枠が少ない傾向にあるので就職が難しい場合もあります。しかし、個人事業で培った経験や実績は、自己アピールの武器として活かすことも可能です。
このタイプのデメリットは、会社員として働くことで労働時間に縛りができてしまうことです。
また、仕事に慣れるまで個人事業に充てる時間が減ることも多く、その影響で収入が減ってしまう恐れもあります。
法人+個人タイプ
上記の個人+法人タイプとは反対に、会社員として働く人が個人事業主・フリーランスで他の仕事を掛け持ちする形態です。
最近は副業・複業を認める企業も増えているので、このスタイルで仕事をする人は増加傾向にあります。
すでに会社員としての安定した収入があるので、複業で思うように稼げなくても収入面で不安のない点が大きなメリットです。
自分のペースで取り組める仕事やスキルアップにつながる仕事を選べる特徴もあります。
ただし、このスタイルで複業を始めるのであれば、勤務先の就業規則をしっかり確認する必要があります。また、勤務先にとって不利益になる仕事を避けることも大事です。
法人+法人タイプ
ひとつの会社に勤めている人が、さらに別の会社で働く形態です。この形態では、会社員が自分で会社を設立するタイプと、別の会社に就職するタイプに分かれます。
会社勤めなので、安定した収入源を2つも確保できることがメリットです。
しかし、ほかの複業形態に比べて時間や労力が必要になるため、最も難しい形態といえます。
自己管理やストレスを軽減した働き方ができないと、続けるのは難しいかもしれません。
なお、このタイプの収入は、基本的に給与所得に該当します。
2カ所以上の会社から給与を受け取っている場合、少ないほうの金額が20万円以上となると確定申告が必要になります。
複業のメリット
複業を始めることで様々なメリットがあります。具体的にどのようなメリットを得られるのかを解説します。
副業以上のスキルアップにつながる
複業では、今やっている仕事を辞めずに別の仕事にチャレンジできます。そのため、様々な知識と経験を得られることがメリットです。
新しい価値観に触れたり、視野を広げられたりするので、積極的にキャリアを形成していけます。
自分の能力を広く発揮させたい、スキルアップを目指したいという人に向いている働き方です。
副業以上の収入アップも期待できる
複数の仕事を掛け持ちすることになるので、その分収入を増やせることもメリットです。収入源が増えれば、それだけ自由に使えるお金をより多く確保できます。
また、万が一に取り組んでいる仕事のひとつが停滞しても、ほかの仕事で収入を得られていれば、収入を失ってしまうリスクもありません。
自立心や自己管理能力が身に付く
複数の仕事を掛け持ちすると、その数だけ責任を持たなければなりません。別々の仕事で責任感を持って働けるので、自立心を養うことにつながります。
また、複数の仕事を並行して取り組むためには、計画的にスケジュールを組んで実行しなければなりません。そのため、自己管理能力も身に付けられます。
知識・スキル・人脈が活かせる
本業とは別の会社やコミュニティに属することになるので、新しい知識やスキルの習得につながります。
また、別の会社やコミュニティで構築された人脈を、ほかの仕事にも活かせるかもしれません。
新しい知識やスキルの習得に加え、人脈の活用を繰り返すことで、自分自身をさらに成長させられる可能性があります。
リスクヘッジにもなり得る
複業は、リスクヘッジにもなります。例えば、今では大企業や老舗でも倒産のリスクがあります。
ひとつだけの会社に勤めることは、倒産した場合に影響を大きく受けることになります。
倒産だけでなく、事業の縮小や経営の再建のためにリストラされることもあるかもしれません。
複業を始めていれば、収入源を増やすことが可能です。万が一に倒産やリストラに合っても、当面の生活費をまかなえる安心感を得られます。
また、転職や起業を検討している人にも複業はおすすめできます。例えば、ほかの会社に就職することで働きながら会社や業界のリサーチが可能です。
個人事業やフリーランスで複業を始めれば、自分は経営者としてやっていけるのかという力量も確かめられます。
このように、複業の体験により転職や起業のミスマッチを防げることもメリットといえます。
複業を始める上で気を付けたいこと
実際に複業を始めたいと思った時、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。ここからは、副業を始める上での注意点を解説します。
自己管理を徹底させる
複業をする上で避けたいのは、すべての仕事が中途半端になることです。複数の仕事を掛け持ちするとなると、スケジュールに余裕がなくなることもあります。
しかし、どのような事情でも成果を出し、クライアントの信頼に応えなければなりません。
中途半端な仕事では信頼を失い、仕事の継続も難しくなります。
そのような事態を避けるためにも、スケジュール管理から体調管理など、あらゆる面での自己管理に徹底することが重要です。
確定申告を忘れない
会社員として働いている場合、年末調整があるので確定申告は不要です。
しかし、複業を始め、個人事業主やフリーランスで働いて一定の収入があれば、確定申告をしなければなりません。
2つ以上の会社で働いて給与を得る際も、少ない給与のほうが20万円を超えている場合も確定申告が発生します。
複業となると、自分で経理に対応しなければなりません。
今ではクラウド会計ソフトや「e-tax」など便利なシステム・ツールが充実しているので、それらをうまく活用することで効率良く確定申告ができます。
また、税理士を頼るのもひとつの手です。
まとめ
複業は、複数の仕事を掛け持ちする点は副業と共通しますが、メインとサブの仕事の順序がなく、すべて本業と考えて取り組む点は大きな違いとなっています。
終身雇用が崩壊しつつあり、仕事の掛け持ちがしやすい環境の整備が進んだ今、複業人口は増えつつあります。
複業には、さらなるスキルアップや収入アップなど嬉しいメリットも豊富です。ひとつの会社や仕事にとらわれたくない人は、ぜひ複業に挑戦してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)