創業者が商品・サービスを買ってもらうための「セールスストーリー」のつくり方
(後編)セールスストーリーづくりのための「3つのステップ」
(2018/12/17更新)
前編では、営業活動で有効なツールとなる「セールスストーリー」の作るための下準備としてやっておきたいことを解説していただいた、マーケティング、営業、PR活動の専門家であるコンサルタントの武部かずみさん。
後編では、いよいよセールスストーリーづくりの具体的な手順について、解説していただきました。
どのように営業活動していけばいいのか悩んでいる創業者にみなさんは、ぜひチェックしてみてくださいね!
この記事の目次
セールスストーリーの3つのステップ
ターゲット客層とコンセプトが固まったら、いよいよセールスストーリーづくりに取りかかります。前編でお伝えした通り、セールスストーリーは商品・サービスを知らないお客様に「買おう」と決断してもらうところまで導くものです。
セールスストーリーは、次の3つのステップで構成されています。
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- ステップ1 「興味」を持ってもらう
- ステップ2 「欲しい」と思ってもらう
- ステップ3 購入を「決断」してもらう(クロージング)
ステップ1:「興味」をもってもらう
商品・サービスを売る際に、最初からその特徴や機能を説明しようとして嫌な顔をされたり、途中で話を遮られたりして失敗した経験はありませんか? そうならないために、見込み客に商品・サービスについて説明する前に、「話を聞いてみたい」「より詳しい情報を知りたい」と思ってもらう土壌を作る必要があります。そのために重要なのが、
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- 1.お客様の悩み、欲求を提示し、「この話は、自分(自社)に関係ありそうだ」と思ってもらうこと
- 2.お客様に理想の姿と現状のギャップを認識してもらい、それを埋めたいという気持ちになっていただくこと
です。
まずは、前項で確認した「ターゲット客層」の抱える悩みや欲求を提示することで、「これは自分(自社)と関係ありそうだ」と思ってもらうところから始めましょう。その際に、ターゲット客層をきちんと絞り込めているかがカギとなります。
例えば、ダイエット食品を販売する場合でも、ターゲット客層を「20代前半で仕事よりもプライベートを優先する独身女性」にしたか、「50代高収入層で家族を大切にするサラリーマン」にしたかによって悩みや欲求は異なります。
前者であれば「かわいい服を着たい」「同性の友達からの評価が気になる」、後者であれば「最近娘から煙たがられる」「家族を支えていくための健康が心配」かもしれません。ターゲットのお客様の悩みや欲求に「〇〇で困っていませんか」「XXになりたくありませんか」とアクセスすることで、「これは自分(自社)のことだ」と興味をもってもらい、商品・サービスについて「聞きたい」という気持ちが出てきます。
次に、商品・サービスが叶えるお客様の理想の姿と現状のギャップを強く認識してもらいます。人間はギャップを感じるとそれを埋めるために行動したくなるためです。
ここで言う「理想の姿」とは商品・サービスから直接得られる結果ではなく、その結果の先にお客様がどんな未来を叶えているかを提示することが重要です。お客様は商品・サービスそのものではなく、そこから最終的に得られるベネフィット(利益)を買うのです。前編で触れたコンセプトを参考にしてください。
先ほどのダイエット食品の例であれば、「3ヵ月で5kg減!」ではなく、「素敵な男性達にモテる自分になる」「キレイな女性達の仲良しグループに入れる私になる」、「娘に自慢されるパパになる」「身体が軽くなって週末に趣味を楽しめる自分になる」というようなことです。つまり、この段階では方法論ではなく、お客様の真の悩みや欲求にアプローチし、それを解決したい、叶えたいと思ってもらうことがポイントになります。これで、お客様が「詳細について聞いてみたい」と思ってもらえたら、次のステップに進みましょう。
なお、ベネフィットについて最も印象に残る、心に刺さる言葉を選ぶには、関連する分野の雑誌や書籍のタイトル、電車の広告などをチェックするのが参考になります。
ステップ2:「欲しい」と思ってもらう
ステップ1でお客様が「悩みを解決したい」「欲求を叶えたい」という気持ちになったところで、ステップ2では「そのために、(他社のものではなく)この商品・サービスが欲しい」と思ってもらう必要があります。商品・サービスについて知ってもらい、「なるほど!」→「欲しい!」と思ってもらう段階です。
そのために、次の3つについて情報を提供していきます。
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- 1.この商品・サービスから得られる具体的な結果
- 2.その結果が得られる理由と他社との違い
- 3.貴社およびその商品・サービスへの信頼性、安心感
1については、商品・サービスから直接得られる結果について説明します。多くのお客様は、機能や特性よりも具体的な効果を先に知りたいのです。先ほどあげた「3ヵ月で5㎏減!」というようなことです。1つである必要はなく、ベネフィットにつながるような結果を3~5つあげると説得力が上がります。
2については、商品・サービスの特徴、1で示した結果が得られる理由やプロセスを説明します。前編で触れたUSPとその他の重要な特徴や強みをここではっきりと打ち出し、「なぜ他ではなくその商品・サービスを選んだ方がよいのか」を示します。
なお、弱みや欠点についてもある程度提示しておく方が信頼度は増します。その欠点を低減するための工夫や方法について併せて説明できればベストです。
3については、これまでの実績や取引数、既に購入されているお客様からの声を載せるのが効果的です。新聞や雑誌等のメディアに掲載されたことがあれば、それも信頼、安心材料になります。まだ創業したばかりで実績が少ない場合は、権威ある方や専門家の推薦をもらう、ターゲット客層の地域や年齢層が違い競合にならない類似商品・サービスでの成功例を示す、2についての説明を厚くする等の工夫をしましょう。
また、会社の理念や「なぜ、その商品・サービスを提供するのか」という想い、商品・サービスができるまでのエピソード等も信頼を上げることにつながります。
この1~3については、できる限り具体的な数字や名前を入れてください。信頼性が一気に上がります。写真や動画、実演等も積極的に取り入れましょう。
ステップ3:購入を「決断」してもらう(クロージング)
ステップ2で「この商品・サービスが欲しい」と思ってもらったら、お金を払って購入する決断をしてもらう段階です。欲しいけれど、購入にはまだ躊躇いがあるお客様の不安や心配を取り除き、買うための動機を高め、今すぐ行動(購入)しやすくなるよう導きます。
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- 1.購入障壁を下げる
- 2.今買おう、今買わないと損だと思ってもらう
- 3.購入しなかった場合の不利益をイメージしてもらう
・自分にも効果がある、自分でも商品・サービスを使いこなせそうと思ってもらう
・手間なく簡単に注文できることを説明する・希少性を伝える(期間、個数、人数、客層限定など)
・特典、保証をつける
「欲しい」と思っても実際の購入につながらない理由(=購入障壁)として、
- 心理的なもの(本当に結果が出るのか不安等)
- 時間的なもの(効果が出るまでに時間がかかる等)
- 労力的なもの(注文、使用に手間がかかる等)
- 金銭的なもの(価格が高すぎる等)
があると言われています。
例えば、ダイエット効果がありそうでも、使い方が複雑だったり時間がかかったりで「自分にはできない」と思ったら買わないですよね。心理的な障壁についてはステップ2でかなりクリアしていると思いますが、最後に「他の人達だけでなく、自分にも効果が出せそう」と思ってもらうことが重要です。誰にでも簡単にすぐできるということを具体的なプロセスを示して説明しましょう。
そして、「今、買おう」と思ってもらうことも重要です。その気になっていても、決断を先延ばしにしてしまうと実際に買う可能性は下がってしまいます。そのためには「今だけ」「自分だけ」という“希少性”を使いましょう。
例えば、「期間限定」「個数限定」「人数限定」などの他、60代以上、女性限定などの「客層限定」もお客様の背中を押すのに効果があります。さらに、特典や保証(返金・返品、サポート、アフターサービス)をつけることも検討してみましょう。
以上の流れで商品・サービスの価値を十分理解してもらい、金銭以外の購入障壁を下げたところで、価格を提示します。そして、最後にもう一度ベネフィットについて確認し、その商品・サービスを手に入れなかった場合にどのような不利益があるのかをイメージしてもらうことで、より購入につながる確率が上がります。
セールスストーリーを作り終わったら、改めて全体をチェックしよう
セールスストーリーをつくり終わったら、全体をチェックしましょう。
全体を通して一貫性、整合性があるか、商品・サービスによって得られる変化や体験が具体的にイメージできるか、ターゲット客層にわかる言葉を使っているか、内容に裏表や嘘はないかを確認しましょう。ぜひ見込み客に近い友人、知人などの意見も聞いてみてください。できれば、10名以上の方にヒアリングすることをお勧めします。
まとめ
いかがでしたか?
セールスストーリーは商品・サービスの特徴や機能を誇張して何が何でも買ってもらうためのものではなく、商品・サービスの価値をしっかり理解してもらい、必要としているお客様に効果的にお届けするためのものです。「売り込む」のではなく、「買いたくなる」流れをつくること、お客様との信頼関係を築いていくためのプロセスを実感していただけたと思います。
対面でのセールスだけでなく、広告、紹介パンフレットやWebサイト等様々な場面に活用して、ぜひ売上向上につなげてください。
(監修:マーケティング&PRコンサルタント 武部かずみ )
(編集:創業手帳編集部)