RPA導入はHRテクノロジーの効果を高める!【榊氏連載その5】

創業手帳

社会保険労務士の榊氏が徹底解説!スタートアップ/リモートワークのための人事労務×テクノロジー超活用術


HRテクノロジーの発展とともに話題になりつつあるのは、RPA(Robotic Process Automation=ロボットによる業務の自動化)の技術ではないでしょうか。業務の自動化というと、これまでは工場で作業するロボットがイメージされてきましたが、デスクワークの仕事においても自動化が進んでいるのです。

パソコン内に実装されたプログラムが作業するので、実際にロボットがいるわけではありませんが、RPAの導入により業務の効率化はさらに高まることが期待されています。

RPAは、HRテクノロジーとも非常に相性がよく、人事労務管理の場面で活用できれば大幅な効率アップが見込めます。一方で、RPAの導入においては一定のコストがかかり、運用が定着するまで時間がかかります。

今回も、”HRテクノロジー(クラウドのシステム)”に詳しい社会保険労務士の榊裕葵氏がRPA導入時の注意点と活用事例についてご紹介します。実際に、給与計算でRPAとHRテクノロジーがどのように連携し、効果を出しているかお話を聞いてきました。

榊 裕葵(さかき ゆうき)ポライト社会保険労務士法人 代表
東京都立大学法学部卒業。2011年、社会保険労務士登録。上場企業経営企画室出身の社会保険労務士として、労働トラブルの発生を予防できる労務管理体制の構築や、従業員のモチベーションアップの支援に力を入れている。また、ベンチャー企業に対しては、忙しい経営者様が安心して本業に集中できるよう、提案型の顧問社労士としてバックオフィスの包括的なサポートを行っている。創業手帳ほか大手ウェブメディアに人気コラムの寄稿多数。「日本一わかりやすい HRテクノロジー活用の教科書」(日本法令)を2019年上梓。

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RPAの導入は高いか安いか。コストパフォーマンスを意識しましょう


一般的にロボットが人間の代わり作業をするとなると、「高額」というイメージを抱く人も多いのではないでしょうか。確かに、工場などでみられるようなアームの長いロボットは高いかも知れませんが、人事労務の対応をするのであれば話は変わってきます。

例えば、通勤手当を給与計算に反映する作業の場合、人が手動で会計システムに入力するのであれば、まず1か月分の定期代を調べて、金額を人事担当者が使用している労務管理のシステムに入力する。100人社員がいたら、100人分の作業が発生します。

しかし、RPAであれば、インターネットで定期代の料金を調べて、入力内容と比べて、そのあとシステム上の画面をクリック、ファイルを開く、コピーしてシステムのフォームで登録する、という一連の流れを一度覚えさせれば、残りは全て自動で処理されます。100回の作業が1回で済むことになります。

手動で行うためには、フルタイムの社員が時間を割いて行うことになります。それでも足りない場合は、その作業のために人員を雇う必要もあるので、そうした一連の事務作業を考慮すれば、RPAの効率性は言うまでもないでしょう。残業や負担の軽減が期待できます。

RPAの導入費用

実際のRPAの導入に関する金額を見てみましょう。ソフトバンク社が提供するサービス(RPA開発者を育成などを含むサービス:2018年時点)では、年間90万円の費用がかかります。月に換算すると7.5万円。つまりは、上記のような作業を7.5万/月で行えるとも言えます。上記の例はわかりやすく単純化しているのですが、RPAであれば当然複数のタスクを覚えさせることができます。通勤手当だけでなくその他の処理も同時にこなすことができるのです。

これが安いのか高いのかの判断はおまかせしますが、少なくとも人を雇うより費用が抑えられるのは確かでしょう。ロボットなので、昼夜を問わず業務を続けることができますので、時給に換算したらもっと少額になるでしょう。

確かに、導入直後は機械に作業を覚えさせるという「教育」が必要になりますが、これは、新しい担当になったとしても必要なものです。また、機械に代替してもらうことを想定して作業を平準化することも必要になります。しかし、負担や時間がかかる業務ほど、機械のほうが間違いなく、漏れなく対応するのに適しています。単純に短期的な金額で判断するのではなく、なるべくコストパフォーマンスやそれにより得られる効果を勘案して導入すると良いでしょう。

なお、RPAは人事労務の業務以外にも活用が進みつつあります。代表的な例でいえば、営業情報の管理サーバーの稼働監視在庫管理会計処理全般などがあります。RPAは、広く業務に活用できる自動化ツールとして認識されています。

RPAの事例紹介

ソフトのリプレイスでデータの移行でRPAを活用

コロナの影響もあり、給与計算の仕組みをクラウドソフトなどにリプレイスしたという企業も多いと思います。筆者の知るRPAの活用例として、ある企業において、期中にHRテクノロジーの導入を決定したので、勤怠の集計データを新ソフトに移行する必要があり、単純にデータを取り込めるかと思ったところ、ソフト間の端数処理には違いがあり、データごとに手動による修正が必要となりました。

そこで、RPAにそのままの移行か、四捨五入するなどの作業を覚えさせ、代替しました。同社の責任者によれば、「働く人の日常を肉体的のみならず、精神的にも楽にした」と評価しています。このように、同じ作業を繰り返すことは、RPAにとっては得意な領域なので、活用していければ働き方の大きな改善につながるでしょう。

毎月の給与計算を自動化した事例

RPAの導入は、反復作業だけではありません。先進的な社労士事務所においては、顧問先の給与計算処理のアウトソースを受託する際、通常の給与計算の処理についてもRPAでの効率化を進めているようです。具体的には、月次で発生する手当や昇給などの修正作業の代替です。

一般的には、こうした社員ごとに異なるデータの入力や修正は、手動で行われがちですが、こういう作業でもRPAが活用できます。一覧表に変更点を整理するドキュメントをまとめ、RPAがそれを読み取り、個別にシステムに反映することができるのです。同社では、こうしたプログラムを給与計算処理のRPAに実装させることで社労士事務所の経営も効率化されます。

こうすることで、社労士事務所の給与計算担当者は、変更のあった情報を集約するだけになりますので、以前よりも大幅に負担が軽減されます。これにより、同社は顧客の納期を早めたり、複数の顧問企業への対応を実現したり、自社のサービス向上を実現することができるとしています。時間が短くなるということは、他の作業や事業にリソースを割くことができることでもあります。

API連携の課題を克服

多くの企業では、勤怠管理ソフト、給与計算ソフトなど、特性や実情に応じて別々に管理していると思います。そのため、API連携によってデータの移行を行うのですが、全てのソフト間んでうまくできるとは限りません。相性によっては、手動に頼らざるをえないこともあります。

さらに、複数のマスタを管理し、移行するとなると複雑になります。こうしたときにも、RPAによる移行は効率的ですし、ミスもありません。ソフト間の連携を気にせずにテクノロジーを導入することができますね。

HRテクノロジーとRPAの導入をするならどちらから?

これまで見てきたとおり、RPAの導入は、クラウドソフトの仕組み以外でも活用できます。ソフト間のデータ移行や連携などは、クラウドソフトでなくても発生することですし、反復性のある作業はRPAの得意とするところだからです。クラウドソフトに代表されるHRテクノロジーがなくても、RPAによる作業効率の向上はもちろん期待できます。

しかし、HRテクノロジーとRPAを積極的に活用することで、人事労務に費やす工数が大幅に削減されることも事実です。本シリーズの初回からお伝えしてきているように、人事労務に関する作業は「時間がかかる」、「ミスができない」という大きな負担を人員に課しているものです。一方で、生産性や創造性につながる部分はそれほど期待できません。コロナの影響もあり先行きが不透明さを増す今の社会では、作業に時間を費やすよりも、新しい価値を生み出すべく人材の育成やあらゆる挑戦をしていかなくていけません。

まずは、HRテクノロジーを導入して人事担当者の負担を分担しつつ、平準化が進んだらRPAを導入してさらなる自動化を進めるとよいでしょう。企業の規模や処理件数の多さ少なさではありません。人事労務の作業はもう自動化の時代が当たり前になることを想定し、今から段階を経ながら変化し導入していくとよいでしょう。

(次回に続きます)

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(編集:創業手帳編集部)

(取材協力: ポライト社会保険労務士法人代表 榊 裕葵
(編集: 創業手帳編集部)

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