「リモートは印象が9割!」プロの講師が教えるリモートワークで使える会議のコツ
リモートワークやオンライン商談で気をつけること、上手くいくコツを趙友貴さんが解説
近年、リモートワークは既に当たり前のものとなりつつあります。
しかしリモートであるがゆえに微妙な感情が伝わらなかったり、悪い印象を相手に与えてしまうことも……。
リモートだからこそできる印象のつくり方や会議の仕方を、リモートを使った研修を多く行っているプロの講師・趙友貴さんに聞きました。
大学卒業後、日本エアシステム(現日本航空)の客室乗務員として国内線に乗務。その後、キャセイパシフィック航空の客室乗務員として、12か国からのクルーと26か国に乗務。2005年より企業研修講師として、大手企業、官公庁等でコーチング、コミュニケーション、女性活躍推進等の研修を開催。2020年に「リモートトラスト研修」を開発し、2020年・2021年共にオンライン研修年間登壇数・企業のリーダー向け1on1セッション数は100回を超える。明治大学スマートキャリアプログラム講師、女子栄養大学非常勤講師、国際コーチ連盟(ICF)認定コーチ(ACC)、銀座コーチングスクール新宿校講師、JADIO認定ダイバーシティコンサルタント
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この記事の目次
リモートに大切な「感情の言語化」と「前のめりで聴く姿勢」
社内ミーティングから商談まで、オンラインをフル活用
趙:社内外のコミュニケーションで活用しています。丁度2年程前のコロナ感染が急激に広がり始めた頃、半年先まで予定していた集合研修が全てキャンセルになりました。
当初は仕事がどんどんキャンセルになり、お先真っ暗という状況に陥りました。
企業の管理職・リーダー向け1 on 1セッションに関しては、その前からオンラインで実施していたので、そのノウハウを活かし、すぐにオンライン研修の開発に向けて動き出しました。
様々な企業へオンライン研修をご提案した結果、多くの企業で取り入れてくださることになり、今では研修を対面で行っていた頃より、多くの研修を受注いただくようになりました。
今では、社外に向けては、年間100回以上のオンライン研修をはじめとする、クライアント企業様の管理職・リーダー向け1on1セッション、商談といった様々な場面でオンラインをフル活用しています。社内では定例ミーティングから、担当者同士のちょっとしたアイディア交換、更に企画内容や提案書の擦り合わせまで、業務内容に拘らずこちらもフルに活用しています。
趙:オンラインによるコミュニケーションは実際に同じ空間を共有してやり取りをするのではないので、対面とのギャップは当然のことながら存在します。
オンラインではその場の雰囲気やお互いの感情、細かなニュアンスといった感覚的なものが伝わりにくいと言われています。匂いや温度感、物の質感もそのままでは伝わりません。
実際に距離があり、システムというフィルターを一枚通しているので、対面と比べて表情や声がクリアに届かないのは事実です。しかしながら、それ以上に感情や表情が上手く伝えられない原因としては、円滑なコミュニケーションを上手く図れていないことが挙げられると思います。
誰しも、映画やテレビの映像から相手の感情が伝わってくる経験をされていると思います。実際その場にいなくても、画面越しでも感情が伝わり、共感して笑ったり泣いたりするんです。
弊社では、「リモートトラスト研修」という、リモートでも心を通わせ、信頼関係を構築できるスキルを習得する研修をご提供していますが、先ず話し手としては、相手と意思疎通を図るために、自分の思いや感情までも言語化し、相手に「伝わる」ように話すこと。
そして、聴き手としては、相手の感情を汲み取ろうと、画面上の相手の表情をよく観察し、耳を傾けて深く聴く姿勢が大切です。
お互いに相手を理解しようと前のめりに会話することで、双方の感情や表情はより伝わりやすくなります。
相手に安心して話してもらうために心を開く
趙:例えば暗い部屋や逆光で表情が見えなかったり、またカメラの位置を合わせず顔全体が見えなかったり、目線がこちらを向いていないと、相手に不安感や不信感を与えてしまいます。
そのため、話し手は安心して話すことができないのです。
お客様との商談や交渉時も同様です。こちらからオープンな姿勢で話していくと、お客様も安心して話すことができるのですが、そうでなければ、お客様も本音で話せず、相手の本質的なニーズを掴み損ねるという点が考えられます。
人間関係上でのデメリットは、お互いが本当に伝えたいこと、意思疎通が図られず、お互いの人となりを理解するまでにも時間を要します。その結果、お互いに信頼関係を構築することは難しくなるのです。これは、社内・社外の方も同様です。
今すぐできるリモートの「印象管理」
リモートは感情を伝える気配りが大切
趙:実は、オンラインは画面で自分の表情や振る舞いを随時自己チェックできるので、自分の印象管理に適したツールです。
商談の場合ならば、事前に名刺代わりとなる「名前の表示」で、自分は「どこの誰なのか」を示すこと。
読み難い漢字ならフリガナまでふっておくと良いでしょう。お互い名前を呼び合うことにより親近感が生まれ、「また会いたい」と思わせる効果があります。
商談やミーティングに入る前には、自分自身の見え方、背景まで確認をすることです。自分自身の見せ方としては、画面の中央に自分の姿が明るく映るよう照明や画角を確認、その場に相応しい背景となっているか、画面に映る上半身の身だしなみにきちんと気を配る必要があります。
聴き手は常に優しい笑顔とアイコンタクトを心掛け、対面より1.5倍頷いて積極的に反応を返す等、聴き手側が、意図的に相手が話しやすい雰囲気を作り、「私はあなたの話をちゃんと聴いています、興味があります、理解しています」というメッセージを伝えるだけで、画面越しでも良い印象を与えることができます。
話し手は口を大きめに開けて1m先まで届く発声を意識し、普段よりゆっくり目に話し、抑揚や緩急をつけると、より伝わり易くなります。
感情が伝わりにくいオンラインだからこそ、このような点に気を配ることで、熱意や誠実さ、温かさ等、自分自身が与えたい印象を伝えることができるのです。
リモートワークとオンラインビジネスで今すぐ使えるヒント
社内コミュニケーションも重要
趙:研修中、「リモートワークで困っていること」として、部下側からは「ちょっとした質問や相談、雑談ができない」、上司側からは「部下の状況や仕事の進捗がわからず、心配だ」といった意見が多く挙がります。
隣で仕事をしているわけではないので、お互いの状況を理解し、円滑に仕事を進めて行くのに難しさを感じているようです。
リモートワーク中のコミュニケーションは、単に「情報を共有する」だけでなく、「意思疎通をしっかりと図る」ことが大切です。リモートでは、言葉不足で誤解を招いてしまうことも多々あります。
先ず、「これくらいは言わなくてもわかるだろう、理解しているだろう」ではなく、上司が仕事の目指すべきゴールや目的、行動する理由までをもきちんと伝えることです。
また、部下の状態を業務面、感情面の2つの側面から把握することです。例えば、業務面では、部下の仕事の進捗が遅れている、指示した内容と全く違ったものが返って来たときには、業務配分の見直しやサポートの有無を検討します。
感情面では、部下の表情や声のトーン、反応の仕方、体調といった点に気を配ります。部下の多くは、リモートワーク中にわざわざオンラインで繋ぎ、ちょっとした質問や相談をするのにも躊躇するので、「いつでも相談してね」といったメッセージを送り続けること、また、定期的に1on1ミーティングを定期的に行い、部下が本音で話せる場を設けることをお勧めします。
一方、部下は忙しい上司に対して、チャットによる短いメッセージでも良いので、ホウ・レン・ソウを頻繁に行うことにより、仕事の進捗状況を「見える化」することが重要です。
ツールに関しては、複数名に一斉に書類を送付するにはメール、急ぎのやり取りはチャット、複数名でのミーティングにはオンライン会議ツール、個人的な話や敢えて履歴を残さない会話は電話、といった具合にそれぞれのツールの利点を活かし、内容に応じた複数のオプションを設けることで、より円滑なコミュニケーションを図ることができるのです。
趙:オンライン会議では、「メンバーがきちんと話を聞いているのか分からない」、「メンバーからの意見や反応が乏しく、一方的な会議となる」という意見がよく聞かれます。
オンラインは対面と比較して集中力を維持するのが難しいため、限られた時間内で効率よく進めて行くことが重要です。
まず一つ目は、事前にアジェンダや資料を共有し、その議題に対して意見交換をする場にするというスタンスで会議に臨むことをお勧めします。また、皆が時間意識を持って参加するよう、時間配分も最初から共有しておきましょう。
二つ目は、それぞれの企業の事情にも寄りますが、可能であれば、参加者全員が画面をオンにして会議に参加することをお勧めします。人はコミュニケーションを図る時、言語・聴覚・視覚の3つの情報から相手を判断するので、画面オンにすることで、コミュニケーションが各段に図りやすくなります。
最後に、オンライン会議ではファシリテーターによって、会議の善し悪しが決定されるといっても過言ではありません。皆が意見を出しやすい安心安全な場づくりをし、会議の目的やアジェンダを簡潔に伝える力、メンバーの意見を引き出すための聴く力・質問力、そして話をまとめる力が必要です。
実は、オンライン会議には対面の会議にはないメリットもあります。オンライン会議には上座も下座も無く、上司も新入社員も同じ画面にフラットに並ぶので、威圧感が軽減され、意見が出やすい環境で話しをすることができます。そのため、最近では、「オンラインでは新入社員や若手社員からの意見が多く出るようになりました」という意見もよく聞かれるようになりました。
趙:オンラインの活用に於いては、時間やコストが対面と違って大きく軽減される点が挙げられますが、商談においても同様です。
最近では、初回の商談からオンラインを活用するといったことも珍しいことではなくなっています。しかしながら、商談はあくまでも人と人との間で行われるものです。
オンライン商談を、より効果的で実りのあるものとするためには、対面の商談と合わせたハイブリッド型の商談でその優位点をフルに引き出すことがポイントとなります。商談を成功に導くための基盤となるのはお互いの信頼を築くことから始まります。
可能であれば、対面の商談で相手の人となりを理解し、同時に自分のことを分かって貰うこと、その上でオンラインの持つ優位性を活かすと良いでしょう。
オンライン商談は、時間やコストが軽減される分、お客様と接する頻度を上げることが可能です。お客様からの要望やお困りごとに迅速に、且つ丁寧に対応をすることにより、信頼関係を構築することが可能となります。
便利なツールを使って参加者とコミュニケーションを
趙:研修のゴールは、“充分に腹落ちしてもらうこと“、“研修学習したこと、身に付けたスキルを受講者が現場で活かすこと“にあります。そのためには短い研修時間の中でいかに受講者が“自分ごと”として捉え、“能動的に学習する”かがポイントとなります。
対面研修では、受講者同士の関係性構築や理解を深める疑似体験のために、ツールを活用した動きのあるアクティビティが活用できます。そのため、オンライン研修よりも対面の研修を実施したいとおっしゃる研修担当者様も多くいらっしゃいますが、私はオンラインだからこそできることも多くあると思っています。
例えば、全ての受講者の顔と名前を皆が同等の環境で一斉に見られる、グループのメンバーを簡単にシャッフルできるので、受講者同士、多くの方とコミュニケーションを図ることができます。受講者が研修の場で作成した資料を画面共有しながら発表することも可能ですし、チャット機能を使ってその場でファイルを全員へ送ることも可能です。
更に、投票や反応ボタンといった、能動的に参加するための便利なツールがどんどん進化してきています。また、「超参加型」のアクティビティも次々に開発されています。しかしながら、そのツールを活かすには、講師側のコミュニケーション・インストラクション・ファシリテーションスキルは必須です。
受講生をリードし、より多くのアウトプット機会を設けることで、自分ごととして捉えられるようにすることです。
オンラインの楽しさや可能性をも体験できるような研修に実施することで、より学習効果が高まるのです。
実際に私が開催する研修では、受講者の方々から「オンラインでこれ程、皆とコミュニケーションを図ることができるは思わなかった」「画面越しでも本音で話せることを知った」「オンラインで、これだけの手応えを得られるとは思わなかった」といった、感想を多くいただいています。
趙:具体的なメリットとしては地理的、時間的な制約が取り払われることで、研修プログラムの展開領域が大きく広がるという点が挙げられます。
また、労力の軽減、コストも大幅に削減が図れます。そしてこのことはそのまま、研修の頻度を上げることにつながります。
しかしながら、最も大きなメリットはオンラインを通じて、新しい学習方法を創り出していくことになると考えています。
今まで、出来なかった個々のレベルアップに踏み込んだ1on1ミーティングの導入や、現場とのダイレクトな情報のやりとりによる新たな学習プログラム開発といった、次のステップに向けた取り組みにつなげることができるという点が大きいと感じています。
オンラインの新たな仕組みは「人」から生まれる
趙:既に、オンラインによる活動はビジネスではスタンダードになってきていますが、技術的な進化を人的な側面からいかに活用していくかがポイントとなると思います。
メタバースのようなテクノロジーが日常的に使われるようになると、それに伴い新しいコミュニケーションの在り方や働き方、ツールやその活用方法が開発されると思いますが、あくまでもそれを使う“人間”の視点で、その利便性に沿ったものを生み出していくことが必要です。
そういう意味では、リモートワーク、オンライン商談においては、より「人」の視点が重要視されるようになってくると考えます。
今はまだオンラインの活用は黎明期を脱していないように思います。対面を前提とした労務管理や商談方法は、新型コロナの感染拡大で長く続いてきた旧来型の仕組みは大きく揺さぶられましたが、オンラインの活用は手探りで形づくりが進んでいるといった印象が否めません。
システムの進化の一方で、いままで以上に、気持ちを伝える、感情を届けるといった「人」の視点から新しい仕組みが生まれてくると思います。
リモートの印象で仕事のアドバンテージは高められる
趙:オンラインは画面から見聞きする印象が9割といっても過言ではないと思っています。そのため、対面とは異なる視点でコミュニケーションを図らなければなりませんが、まだまだオンラインでの印象度を高めるスキルをお持ちでない方が多くいらっしゃるように感じます。
オンラインでは印象度を少し改善することで、仕事に於けるアドバンテージを高めることができます。
「コロナの時代だから仕方なくオンライン」ではなく、「オンラインのメリットやアドバンテージを活かす」というスタンスで臨まれると、新たなサービスや価値を生み出すことにもつながり、更なる可能性を広げていくことができると考えます。
急速に変化が進む時代をポジティブに捉え、その変化を活用していってくださればと思います。ありがとうございました。
(編集:創業手帳編集部)