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資金調達・会計

資本金の減資のメリットは?

企業における事業の元手であり、企業の規模を示す資本金を減らすことを減資と呼びますが、そのメリットとしては事業の赤字補てん、株主への配当、節税などが挙げられます。

減資の方法とメリット、デメリットについて詳しく説明します。
はじめに、資本金は企業が株主や投資家、金融機関から調達した資金であり、事業の運転資金となります。企業の規模を示す指標ともなりますので、資本金が大きいほど財務基盤が安定しているとも言えます。
そのため、企業は資本金を増やす「増資」を行うことで、さらに事業を拡大したり、融資を得たりすることが可能となります。

一方で、資本金によって企業が支払う税金が変わり、資本金が小さいほど税制上の優遇がされます。
例えば、大企業のグループ企業を除いた資本金1億円以下の法人である中方法人については、法人税の税率は所得金額に対して23.2%であるところ、年800万円以下の部分の所得金額に対する軽減税率で15%などどなります。その他にも、消費税や法人住民税、特別償却や特別控除など様々な税制についての優遇が得られます。

そのため、場合によっては資本金を減らす「減資」を行うことがあります。減資の具体的な方法として、企業の資産が実質的に減るか減らないかで、次の2つが挙げられます。
ひとつめは「有償減資」です。企業の資本金が実質的に減る減資であり、資本金を出資者である株主へ払い戻すこととなります。
ふたつめは「無償減資」です。こちらは、企業の資本金が実質的に減らない減資で、貸借対照表上では資本金の金額は減少しますが、実際に企業から資金が払われることはありません。

それでは、これらの減資の主な3つのメリットについて順に説明します。先ほど説明しました、減資の有償か無償かによって内容が異なります。

第一に、「事業の赤字補てん」が挙げられます。こちらは無償減資での扱いとなります。
事業の赤字は貸借対照表上では「繰越利益剰余金のマイナス」として計上され、累積赤字があることを意味します。累積赤字がある企業は取引の信用に関わることもあり、銀行からの融資条件が不利になることもあります。
そのため、企業の資本金が実質的に減ることはありませんが、貸借対照表上で資本金を減らすことで、繰越利益剰余金のマイナスを解消することで、決算書上の信用力を高めることができます。

第二は、「株主への配当」があります。こちらは有償減資での扱いとなります。
事業が赤字となった場合などでは、株主に対して利益からの配当ができず、事業の継続が難しくなることもあります。
通常、株主への配当は利益剰余金から支払うのが原則ですので、資本金から支払うことはできません。しかし、株主総会での特別決議や債権者保護手続きを経ることで、資本金を実質的に減らすことによって発生した、その他資本剰余金を原資として株主に配当することが可能となります。

第三として、「節税」が挙げられます。こちらも無償減資での扱いとなります。
冒頭で説明したように、資本金の金額によって企業が支払う税金が変わり、資本金が大きいほど税金が高くなりますので、貸借対照表上で資本金を減らすことによって、税金を抑えて税制優遇を得られます。

このように、減資には大きなメリットがあると言えますが、逆にデメリットとなる点もあります。
まず、「企業の信用力低下」が挙げられます。無償減資では企業の実質的な資本金の金額は変わりませんが、企業の信用力を資本金で判断されることも少なくありません。減資をすることによって、取引や融資などでマイナスの評価をされる可能性があります。社会的にも企業の問題や赤字のイメージが持たれるリスクも考えられます。

また、「株主への配当がみなし配当となった場合に課税対象」となることもあります。減資によって発生した資本剰余金が株主の配当金になることは、企業の財産が実質的に減少することになります。このような有償減資では、企業の合併や分割などに伴って交付した金銭等の一部は、税制上の都合により受け取ったものとみなして課税されるみなし配当となります。このみなし配当に該当した場合には、株主に対しては配当ではなく資本金の払い戻しとして扱われ、課税されることとなります。

さらに、「時間とコストがかかる」こともデメリットとして挙げられます。減資を行うための手続きには、株主総会の特別決議(株主の過半数が出席の上、2/3以上の賛成)、または債権者に対して減資の旨等の広告、異議申立期間(1カ月以上が必要)などの債権者保護手続き、そして減資確定後の法務局への登記など、多大な時間とコスト、関係者への負担が掛かることとなります。

このように、減資のメリットとしては事業の赤字補てん、株主への配当、節税などがある一方で、各方面への影響やデメリットがあることにも留意しなければなりません。

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