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教えて先生!Q&A2015年7月29日
純広告とタイアップ広告の違いとは?
純広告とタイアップ広告は、どちらも広告の種類を表すマーケティング用語です。
純広告の意味
純広告とは、メディアが提供する広告枠を買い取り、その枠内に自社広告を掲載する形の広告です。一般的な「広告」のイメージに最も近い形式だと言えるでしょう。
具体的には、テレビ・ラジオ・動画サイトで流れるCM、雑誌や新聞などの広告欄や広告ページ、Webのバナー広告など幅広い種類の広告が純広告にあたります。
純広告の場合、メディア側はあくまでも広告の“枠”を提供する立場であり、画像・映像・文章など広告コンテンツそのものは広告主や広告代理店が制作します。
タイアップ広告の意味
タイアップ広告とは、メディア内の通常コンテンツとよく似た形式で制作される広告です。雑誌や情報誌などの紙媒体やWebメディアなどでは、記事広告(記事広・キジコウ)とも呼ばれています。
例えば、ファッション誌では、特定のアパレルブランドの商品を使った着回し術を記事形式にした広告などが見られます。また、ニュースサイトではメーカーの新製品を紹介したレビュー記事のようなタイアップ広告もよく掲載されています。もちろん似たような企画でも、宣伝が目的ではなく、メディア側の選択で特定の商品を取り上げた中立的な記事も多数あります。通常コンテンツとタイアップ広告の仕組み上の違いは、掲載対象となる企業が掲載を依頼して料金を支払っているかという点にあります。
また最近では、YouTuberやSNSのインフルエンサーに配信を依頼する、動画や画像などのタイアップ広告が増加しています。それに伴い、広告のターゲットに合わせたインフルエンサーを紹介・仲介するなどインフルエンサーマーケティングを専門に扱うキャスティング会社が登場しています。
どの種類のメディアでも、タイアップ広告は、企画制作段階からメディア側や広告代理店が中心となって進行します。基本的に広告を依頼する企業がコンテンツを作ることはありません。企業や商品などに関する情報提供、取材や打ち合わせへの対応、掲載前の広告内容の確認などが広告主の主な作業になります。
必要なコスト・期間の違い
上記の通り、タイアップ広告はメディア側が制作の中軸を担うフローになっているため、純広告に比べて掲載にかかるコストや期間が増える傾向があります。媒体の種類(紙・Webなど)や認知度によって基本のコストやスケジュールが大幅に異なるので、一括りにすることはできませんが、いくつか参考例を挙げてみます。
例えば、ファッション誌に純広告を掲載する場合、見開き2ページで約300万円の掲載料金、掲載の申し込み期限は雑誌発売日の約2カ月前までとなっているケースがあります。同じ雑誌にタイアップ広告を掲載したい場合は、2ページ分の掲載料金の約300万円に加え、別途制作費の約60万円が必要となり、合計コストは約360万円となります。また、掲載申し込みの期限は純広告よりも早く、雑誌発売日の約2カ月半前と設定されています。
Web媒体は形式の自由度が高く、純広告とタイアップ広告ではスペースの大きさも違えば、掲載期間にも幅があったりするため、単純にコストを比較することは難しいです。例えばニュースサイトなどでは、純広告がバナーやメールマガジン形式なのに対して、タイアップ広告は記事形式になっているケースが多く見られます。強いて比較するなら、記事広告にかかるコスト(掲載費+制作費)は、バナー広告の掲載費の約1.5倍〜5倍となっている場合なども実例としてあります。また、申し込みから掲載までのスケジュールは、記事広告だと約6週間必要なのに対し、バナー広告であれば約1週間〜10日とスピーディーに展開できる例も見られます。
純広告とタイアップ広告、どちらを選ぶか?
このように比較してみると、タイアップ広告はコスト負担が大きく感じられるかもしれません。しかし、純広告は自社制作が不可能な場合、別途外部に制作を依頼しなければならないため、トータルで考えるとタイアップ広告の方が割安になる場合も有り得ます。
また、タイアップ広告の制作にはメディア側のリソースを活用しますので、制作物や編集のクオリティがある程度保証される点、場合によっては広告コンテンツへの誘導なども積極的に行ってもらえる点などで付加価値があると言えます。実務面では、制作のディレクションから掲載までをワンストップで依頼できる点において、多忙な起業家などには特に便利です。
つまり、純広告とタイアップ広告のどちらの費用対効果が高くなるかは、広告の目的次第です。例えば、比較的広いターゲットに自社やサービスの名前を知ってもらうのが目的であれば、CM・バナーなどの純広告が用いられるパターンが多いでしょう。反対にターゲット層がある程度明確で、広告を通じて見込み客に直接的な問い合わせや商品購入を促したいのであれば、より深く商品の魅力を伝えられるタイアップ広告の方が適している可能性があります。
タイアップ広告におけるPR表記
タイアップ広告は、通常の記事や映像などのコンテンツと似た体裁で作られているため、消費者の興味を引きやすく、じっくり内容を見てもらいやすいという大きな魅力があります。その一方で、消費者側からすると、一見して普通のコンテンツなのか広告なのか区別しにくいことが問題点として挙げられます。メディア側が中立な立場で発信している情報と、広告依頼者から費用をもらって発信している情報が混同されやすい状態にあると、情報の受け手は次第にメディアに対する信頼を失っていきます。
特に近年は、ステルスマーケティング(ステマ)という言葉が一般的になりました。言葉がやや独り歩きしている面もありますが、一旦「やらせ」や「サクラ」だと消費者に認識されてしまうと、いわゆる“炎上”騒ぎなどを生み、メディア側だけでなく宣伝主側も大きな批判に晒されます。こうなると宣伝効果どころか、会社にとっては大きなダメージです。
このような事態を避けるためにも、出版社やWebメディア運営企業では、タイアップ広告のタイトルやページ内に【AD】【PR】【広告】【タイアップ】【Sponsored】などと明記する運用を行っています。これらの運用方針は、日本雑誌広告協会や日本インタラクティブ広告協会(JIAA)などの各種業界団体が制定したガイドラインに基づいています。
そして、広告を依頼する企業が特に注意しなければならないのは、SNSや動画配信などを利用したインフルエンサーマーケティングでのPR表記です。SNSマーケティングにおける広告表記ルールは、業界内でもまだ模索中の部分があります。ガイドラインを制定しているYouTuberプロダクションなどもありますが、個人で活動するインフルエンサーなどは、広告明記の必要性を認識していない可能性もあります。したがって、タイアップを依頼する際には、広告主側も各プラットフォームの最新ルールを把握し、ステマと認識されないような方法で広告を展開する必要があります。例えばInstagramでは、タイアップ投稿タグを利用した広告運用が可能になっています。
創業間もないスタートアップやベンチャー企業では、広告費用は決して小さなコストではありません。限られた予算で最大限の効果を発揮するためには、広告の種類や特徴を把握した上で、社会情勢や景品表示法などの法律面にも配慮しながら、最適な施策を考える必要があります。
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