起業後初めての製品作り 企画から在庫管理までの流れを解説

「製品(プロダクト)作り」で起業を考えている人向けに、一連の流れを解説します

(2020/01/10更新)

近年はネットのサービスやアプリで起業するのが流行している感もありますが、まわりを見渡してみると、私たちの暮らしや社会は多くの製品に囲まれて支えられているもの。今回はそうした「製品(プロダクト)」作りで起業を考える方に向けて、製品作りの基本的な流れをご紹介します。

アイデアから製品ができるまで

「こんな製品を作りたい」というアイデアからスタートして実際に生産、販売に至るまでの流れをおおまかにまとめると下記のようになります。

(1)企画

(2)デザイン・設計

(3)試作

(4)生産(量産)

(5)販売・在庫管理

流れとしては(1)~(5)の順番ですが、特に(1)企画~(3)試作では、後の段階からのフィードバックを受けて仕切り直しすることがよくあります。例えば、「(3)試作してみたら想定よりも原価が高く、予定の販売価格では利益が出ないことがわかった」場合は、(1)企画や(2)設計のやり直し(例えば販売予定価格の変更や原価を下げる仕様変更など)を迫られます。

逆に、(4)生産(量産)のステップに進むとやり直しができません。生産したものは売り切る(または廃棄する)まで在庫であり続けます。

したがって、「初めての製品作り」の場合は特に(1)企画から(3)試作までに検討や調整、場合によっては販売予定先からの意見聴取などを含めて、十分な準備を重ねてから(4)生産(量産)に入ることが大切です。

1.企画

はじめに、どんな製品を作るのか整理します。作る製品の種類によりますが、製品の概要、使い方、必要な機能や性能、大きさ、材質など、製品自体の仕様のほか、どのような客層を販売先として想定するか、想定する販売価格、販売チャネル(ネット通販か、実店舗か、自社直販か卸売か、など)も含めて検討します。

あらかじめ調べておく必要があることとは

この段階で競合する製品についても調べておきます。せっかく苦心して製品を作ったのに、同じような商品が既に売られていたら元も子もありません。日本国内はもとより、海外のサイトなどもしっかりチェックしておきましょう。たとえ競合品があっても、違いを明確にして(差別化ともいいますね)あえて発売する、という判断もありえますが、その場合は厳しい競争を覚悟する必要があります。

他社の登録商標や特許、実用新案、意匠を侵害していないかどうかも確認が必要です。特許庁が提供しているサービス「特許情報プラットフォーム」では簡易的なチェックができます。

また、JISやISOなどの規格や公正競争規約に合わせるのであれば、その整合性についても意識しておく必要があります。

そのほかにも、製品によっては法令の規制に適合させる必要がありますので、関係する法令等をあらかじめ調べます。パッケージには「容器包装リサイクル法」、表示や広告などには「景品表示法」といった具合に、さまざまな法令が関わってきます。一例を紹介します。

―製品づくりに関わる法令の例―
・ACアダプターやリチウムイオン蓄電池を使う製品など:電気用品安全法(PSE)など
・無線通信を使う製品など:電波法に基づく技術基準適合証明(技適)など
・繊維、プラスチック、紙製などの家庭用品:家庭用品品質表示法など
・飲食料品、食器、食品と触れる包材など:食品衛生法、食品表示法など
・化粧品:医薬品医療機器等法(旧:薬事法)など

製品が法規制を満たしているかどうかわからない場合には、弁護士を始めとした法律の専門家に相談することをお勧めします。
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購入後の事も検討を忘れずに

製品の種類によってはアフターサービスをいかに整えるかも検討すべき課題となります。購入者への保証期間の設定や、修理用部品、メンテナンスの体制などです。万一に備えて生産物賠償責任保険(PL保険)を付保するものよいでしょう。

2.デザイン・設計

企画に基づいてデザインや図面、仕様書などを作成します。

職人による工芸品のように、「一点もの」で作る場合とはことなり、製品を量産するためにはある程度効率的に作れるように設計することも大切です。無理な設計は不良品の発生や販売後のトラブルにもつながります。また、特殊な部品や素材がコスト高の原因になったり、その部品ひとつが欠品するだけで生産自体ができなくなることもあります。こだわるべきポイントと汎用品・規格品で済ませる部分とのバランス・兼ね合いを見極めましょう。

製品の設計について

図面は紙に手書きのほか、コンピューター上で設計する2次元・3次元のCAD(Computer-aided Design)も普及していますので、どのようなフォーマットの図面が必要かについては工場と打ち合わせが必要です。ざっくりしたスケッチから図面作成自体もサポートしてくれる工場もありますが、最初から「図面はCADでください」と言われることもあります。
また、製品の欠陥により事故などが起きた場合には、製造物責任の問題も生じますので、安全性に問題がないかなどきちんと確認する必要があります。

製品以外で考えなければいけないこと

製品自体だけでなく、パッケージのデザインも必要になる場合が多いでしょう。印刷会社などにはパッケージデザインから製造まで請け負うとしている企業もありますので、相談するのも一案です。また、特に実店舗で販売する場合は、どのような陳列をメインに想定するか、例えば、吊り下げるか、棚に置くのか、によってもパッケージの形は変わってきます。
また安全面についていえば、パッケージに取り扱いについてや警告事項を記載しておくことも必要となります。

小型の商品の場合はケース入数(輸送用ダンボール箱1ケースに商品を何個入れるのか)も検討すべき課題です。運賃を考えると1ケースにたくさん詰めたほう効率的ですが、小売店は少量ずつ仕入れたいと思っている場合がありますので、ほどほどの、手頃なケース入数を設定するなど調整が求められるでしょう。

3.試作

少量での試作

ここまで製品に必要な要素・ポイントを固めたら、デザイン・設計に基づいて、試作する段階に進みます。
最近は3Dプリンターやレーザーカッターなど、比較的低コストで正確な製品を1個単位で作れる機材が普及しています。機材を時間単位などで貸している施設や、インターネットで図面を送ると1点ものの金属部品を作れるサービスなど、試作品づくりに役立つサービスはたくさんありますので、比較検討しましょう。

食品や化粧品などの場合、1個分(1食分)作るのと、大量に作るのとでは混合や加熱の具合が変わってくる場合がありますので、若干まとまった量で試作してレシピを確認する必要もあります。

この段階で企画やデザイン・設計、仕様などに無理がないか、安全面に問題がないかを十分に検証します。

4.生産(量産)

量産のための工場探しのポイント

試作が完成したら、次は本格的な生産体制に入るための工場探しに着手します。製品にもよりますが、生産を日本国内にするか海外工場にするかは重要なポイントです。近年は中国や東南アジアなどでも人件費などのコストが上がってきているようですが、それでも海外工場にアドバンテージがある場合は少なくありません。

日本国内で生産する場合は、例えば手袋の東かがわ市(香川県)、ニット製品の五泉市(新潟県)やメガネの鯖江市(福井県)、刃物の関市(岐阜県)など、特定分野の関連工場が集積している「産地」や東京都大田区や大阪府東大阪市など町工場で有名な地域を当たるのもひとつの方法です。あるいは、電話帳(タウンページ)などをチェックしてみると思いがけない近所に手頃な工場が見つかることもあります。近所の工場にはコミュニケーションや輸送の面などさまざまなメリットがあります。

十分な技術と品質を確保できる工場が必要なことは言うまでもありませんが、加えて大切なのは「身の丈にあった」工場であることです。量産する場合は一定の「ロット」で生産するのが一般的です。「ロット」は生産するのに効率的(経済的)な数量のまとまりのことで、「1ロット=1,000個」などと表現されます。(この場合は1回に1,000個生産する、という意味です。)販売力に見合わない大ロットで生産すると大量の在庫を長期間抱えることになる恐れがあります。逆に、少ないロットでの生産にこだわりすぎるとコスト高になる場合があります。ちょうどいいロットで生産できる工場を見つけられれば製品作りは成功に近づきます。

なお、ロットはパッケージや輸送にも関わります。例えば「製品自体は1ロット500個で作れるけれど、パッケージが1ロット1,000枚単位」というようなズレに直面することもあります。また、海外工場から船便で輸送する場合は長さ20FT(20フィート・約6m)や40FT(約12m)といった国際規格のコンテナが使われており、製品の生産自体よりも「40FTコンテナ1本分」というような輸送ロットが基準になる場合もあります。

そのほか、特に初めての発注では工場から前払いを求められる可能性がありますので、資金繰りも余裕をもって調整しておきましょう。

実際の製造現場での試作

続いて、実際に生産する工場の機材や工程で試作します。この段階で、工場側と十分打ち合わせをして、品質、製造工程、原価などを確認します。特に品質管理では、例えば「不良品の判断基準」など、気になる点はしっかり打ち合わせしておかないと、最悪「工場は良品として出荷したけれど、発注者側の基準で見ると全部不良品」というような大事故になる恐れすらあります。また、異物混入などの恐れがないかどうかもチェックが必要です。

原料の調達についても「こだわるポイント」「融通をきかせる部分」を見極める必要があります。例えば、半導体、バッテリーのようなものは規格品でもメーカーが違うと品質が異なることがありますので、きっちり指定しておかないと不良品や思わぬ事故につながります。

逆に、食品のような原料に変動がある可能性がある製品の場合は、きっちり指定することがかえってネックになることもあります。例えば加工食品の原料は時期によって主産地が変わることがあります。パッケージに「◯◯県産使用」と表示しているのに他産地のものを使うと産地偽装になってしまいますが、時期外れに品薄な産地のものを無理に調達するとコスト高になります。こういったケースが起こりうる製品づくりでは、表示や調達方法をある程度の融通がきく形で準備するほうが良いかもしれません。

特に初めての製品作りの場合は、工場の調達担当者のほうが自分よりも原料や部品の調達事情に詳しいこともありますので、よく相談して仕様を詰めることをおすすめします。

試作で十分な検討を済ませたら、いよいよ工場で本格的な生産に入ります

5.販売と在庫管理

生産が完了して製品が届いたら、あとは一日も早い完売を目指して売るのみです。
多くの場合、工場からまとめて全量が納品されてきますので、あらかじめ在庫の保管場所を確保しておかなくてはなりません。

倉庫会社に預ける場合は保管料も販売価格に織り込んでおく必要があります。倉庫会社との契約方式によりますが出し入れにかかる入出庫料のほか、一定の保管期間(半月単位など)ごとに保管料が積み上がっていきますので、倉庫会社を使う場合はできるだけ早く売って、なるべく保管期間を短くしたいものです。

販売状況にもよりますが、多くの場合2回めの生産は初回生産分の完売前に発注・手配することになります。初回生産分がちょうど完売するタイミングで2回めが入荷すればベストですが、実際にはえてして初回分の在庫が若干残っているうちに2回めが入荷します。(むしろ、そうなるように手配しておかないと、生産や輸送が遅延した場合に欠品で顧客に迷惑をかける恐れがあります。)一時的に初回ロットの入荷時よりも在庫量がふくらむことになりますから、自社の事務所内などで保管する場合は若干スペースの余裕をみておきましょう。

自宅で在庫商品を保管する場合は、キッチンなどの生活臭や油煙、水蒸気などで商品が劣化したり、虫などの異物混入事故の恐れもありますので管理には十分注意が必要です。

まとめ

「人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ」(スティーブ・ジョブズ)という言葉もあるように、製品は生産して、世に送り出さないことには始まりません。
昨今、消費者からのクレームによって消費者庁などから指導や処分が行われるケースも少しずつ増えてきているため、常に使う人の視点に立って製品作りををする姿勢も求められています。
新しいものを作り出すにはリスクもありますが、詳しい知識が必要な時には専門家に相談したり、ツールを駆使しながら慎重な検討と果敢な決断でアイデアを形にしてください。

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(監修: 南森町法律事務所/大内 純弁護士
(編集: 創業手帳編集部)

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