会社に不可欠な「総務」のアウトソーシング 任せる業務の決め方と利用のポイントは?

創業手帳

総務のアウトソーシングは事業を効率化して本業の生産性を上げるために有効な選択肢の一つ

(2019/03/18更新)

何かと忙しい創業期には、本業に集中するために業務の一部を社外に任せるのもひとつの手です。その“社外に任せる”方法のひとつに「外部委託=アウトソーシング」があります。
今回は、アウトソーシングと相性の良い「総務」にスポットを当て、どんな業務を委託すればいいのかという見つけ方から、実際にアウトソーシングを導入する際のポイントまで、まとめて解説します。

まずはアウトソーシングに適した業務を整理する

「総務」とはどんな業務を指すのか

総務の業務は、たとえば、受付、経理、採用、保険の手続き、備品や文書の管理、オフィス環境整備などが挙げられます。大企業では総務部が独立していることもありますが、中小企業では「管理部」などの名称で、さらに創業期などは社長ひとりで、“総務的”なさまざまな業務を担うケースも多いようです。このように、総務に含まれる業務は数限りなく、明確な線引きが難しいものです。逆に言えば、全てが「総務」とも考えることができ、だからこそ、改善の余地も大いにあると言えます。

「社外に任せられる仕事」の基本的な考え方

総務のアウトソーシングを検討するにあたって、まずは社内全体のどんな業務を「社外に任せる」ことができるのか、考えてみましょう。
「総務」は“裏から組織を全体的に支える、会社にとって不可欠な存在”でもあり、その業務を社外に任せるのは難しそうな気もしますが、「総務」の中身を詳しく見ていくと、外部に任せるのに適した業務がいくつもあることが分かります。

「個人スキル」×「会社への理解の必要性」で業務を整理する

下の図を使って、自社全体の業務の中で、「自社で行うべきもの」か「社外に任せることができるもの」かを、ざっと分類してみましょう。ポイントは「個人スキル」×「会社への理解の必要性」という2本の軸で整理することです。

縦軸に置いた「個人スキルへの依存度」は、業務を行う上で、処理をする本人に特殊な技術や専門知識が必要かどうかの度合いを示しており、誰でもできるような業務ほど下の方に位置します。

一方、横軸に置いた「外部スタッフが自社を理解する必要度」は、外部スタッフが自社のことを知らないとスムーズに業務ができないか否かの度合いです。これにより、業務を4つの領域に分けることが出来ます。

①は、原則自社で行うべきものです。もし社外に任せるとしたら、実際に運用できるようになるまでに相当な時間と費用がかかることを覚悟する必要があるでしょう。

②は、業務に必要なスキルの専門性は低いものの、運用する前に外部スタッフが会社について十分に理解する必要があることを考えると、パフォーマンスが安定するまでにそれなりの時間がかかるでしょう

③は、会社への理解の必要性が低いため、必要とするスキルやノウハウを外部スタッフが習得してさえいれば、②ほどの大きな障壁はありません。ただし、必要なスキルが専門的になればなるほど、社外に任せたときの技術料も高くなります

最後の④は、社外に任せるのに最も適した業務といえます。これらを社員にやらせている場合は、社外に任せることでコストカットできる可能性大です。

「総務」にも存在する、社外に任せやすい業務

「総務」の業務は、主に②の領域に位置します。個人のスキルに依存する業務ではありませんが、社内文化や慣習、従業員とのやり取りが少なからず発生するため、業務設計に会社について十分な理解を必要とする業務が多いからです。「総務」は比較的、アウトソーシングには向かない業務だといえるかもしれません。

しかし、「総務」の業務の中にも、例えば「ファイル管理」「社員証管理」「備品管理」「クレーム対応」など、特に専門スキルが必要なく、会社への深い理解を伴わなくても遂行できる④の領域の業務が多数存在することに気づきます。これらこそがまさに、社外に任せるのに適した業務と言えるでしょう。

総務をアウトソーシングするとどんなメリットがあるのか

人材派遣とも違う「アウトソーシング」とは?

では、「社外に任せる」方法には、どんなものがあるのでしょう。
大企業の場合は子会社や協力会社を作り、そこに業務を委託するというケースなどもありますが、中小企業が主に行う手段として挙げられるのは「アウトソーシング(=業務委託)」と「人材派遣」の2つです。

「人材派遣」は、人員が足りない業務に対し、必要なタイミングで”一時的に”人員を補充するための契約です。すべて”派遣業者”を通しての契約であり、派遣される人材と自社との間に雇用関係は存在しませんが、自社のオフィスで業務に携わってもらうのが基本。就業時間や仕事の内容・プロセスの指示や進捗管理は、自社の社員が行うことができます。ただし、派遣スタッフが携わることができる業務には、一部制限があります。

対して「アウトソーシング」は、スタッフへの業務指示や安全教育も含めて、業務をすべてアウトソーサー(業務を任される業者)へ委託する契約です。そのため、派遣のような仕事内容への制限はありません。しかし、自社の社員が業務プロセスの管理や改善を直接アウトソーサーに指示することはできず(それを行うのはアウトソーサー側)、サービスの良し悪しを評価できるにとどまります。

  • 人材派遣・・・「人材の提供」がサービスで、人が働いた分の費用が発生する
  • アウトソーシング・・・「業務、成果物の提供」がサービスで、業務や成果物の完遂・品質によって費用が発生する

と考えるとわかりやすいでしょう。どちらにどんな性質の業務が向いているかを大まかにまとめると、以下のようになります。

人材派遣が向いている

  • 人の補充がすぐ必要
  • 業務を社外に出せない、かつ必要人員が1名以下
  • 継続的な業務でない(年に数回、期限がある)
  • 管理者が直接指示を出す必要がある
  • イレギュラー業務が多い

アウトソーシングが向いている

  • 定形的な業務が大量にある
  • 業務を社外に出せる
  • 社内にノウハウが蓄積されなくても経営上支障がない
  • 業務が定期的に発生する
  • 自社にノウハウや施設がない

「総務」をアウトソーシングするメリット

「アウトソーシング」しやすい「総務」の業務が見えてきました。では、これらをアウトソーシングすることで、どんなメリットが得られるのかを改めて考えてみましょう。

本来注力すべき業務に集中できる

主に、作業手順がルール化できている「定型業務」を外部に委託することで、より重要な「判断業務」に専念することができます。それが結果として、会社の利益につながるのは言うまでもありません。

また、アウトソーサーは作業だけではなく、業務に携わる人材の勤怠管理や教育、派遣交代時の引継ぎ負荷などを一括して請け負ってくれます。よって、依頼する会社は依頼した仕事に関わる一切の「管理業務」から手が離れるといった側面もあります。

日常業務の品質安定・向上

「定型業務」を切り分けてアウトソーシングすることで、定型業務そのものの質が向上することも期待できます。アウトソーサーは業務を請け負うプロであり、相応の技術や知識、経験を持っているからです。

業務が属人化することなく、組織的な対応ができる

業務を全てひとりでこなしていたり、逆に、業務ごとに担当者が細かく分かれていたりすると、「その人がいないと、その業務が進まない」という状況に陥ります。会社全体に関わることが多い総務ではなおさら、こうした事態が起こりやすいでしょう。

その点、アウトソーシングは、あらかじめ取り決められた成果物をきちんと納品するといった会社と会社の契約のため、業務が滞ることは基本的にはありません
担当者が休んでしまった、会社を辞めてしまった…など、その度に対応に困ったり、引き継ぎをし直したり、といった事態も避けることができます。

コストの削減につながる

「定型業務」を、人件費の高い社員に任せるのと、アウトソーシングするのとでは、どちらのコストパフォーマンスが高いかは明らかでしょう。同じ時間であれば、社員にはより重要な「判断業務」を任せるべきだということは、先にも述べた通りです。

あるいは、業務ごとに担当者が分かれている場合などは横の連携がなくなり、手待ち時間や重複する業務が発生しやすくなります。窓口が複数あることで手続きが複雑化し、業務を依頼したのに総務内で “たらい回し”にされることもあります。

このような、会社全体の業務の流れが阻害される可能性を、アウトソーシングの導入によって取り除くこともできるのです。

導入にあたってのポイントや注意すべき点

アウトソーシング導入のポイント

単発で仕事を依頼する下請けや外注とは違って、アウトソーシングは長期間の運営を前提とした契約になることが多いです。また、「総務」そのものの業務内容が多岐に渡ることから、アウトソーサー側も受けられる業務内容や、得意とする分野がまちまちだったりします。

のちのトラブルを避けるためにも、アウトソーサー選びに関わってくる大切なポイントを押さえ、きちんとした手順を踏んで導入を検討しましょう。

目的を明確にする

業務の効率化なのか、コストの削減なのか、品質の向上なのか。その目的によってアウトソーサーに委託する業務内容や専門性が異なってきます。こちらの要望に対応する力があるかどうかはもちろん、その要望に対する”提案力”があるかどうかも重要です。

お願いしたことをこなすだけでなく、より良い方法を提示・実践してくれるアウトソーサーは、会社にとって頼れる存在となってくれます。

委託する業務範囲を明確にする

アウトソーサーに期待する効果も想定しながら、どの業務まで任せ、どの業務は自社が行うか、どこまで権限委譲するかなどを整理し、その概要をあらかじめ作っておくことも必要です。

例えば、「募集、育成、教育、適正な人員配置と電話応対までをアウトソーサーが行い、商品の発送、在庫管理、入金管理と返品、クレーム対応は委託元の会社側が行う」といった具合で、業務範囲の概要を作ってみると良いでしょう

運用形態を検討する

アウトソーシングといっても、自社内にチームを招き入れて常駐してもらう形態、自社外で業務を行ってもらう形態など様々です。

また、自社のシステムを利用するのか、アウトソーサーが提供するシステムを利用するのかなどの違いもあります。それらを決めることで、こちらの希望に対応可能なアウトソーサーが自ずと絞られてくるでしょう。

アウトソーシングの注意点

アウトソーシングする際の注意点についても触れておきます。

自社に「情報共有」と「ノウハウ蓄積」の仕組みづくりを

業務を外部に任せきりにしてしまうと、委託業務の進行具合が把握しづらく現場との認識のズレが出てしまったり、その部分のノウハウが自社に培われなくなってしまったりします。

アウトソーシングする業務は、そもそも他とは切り離しやすいものであったり、社内のリソースでやるべきではないものであったりするのが前提です。
このデメリットはそれほど大きくはないはずですが、アウトソーサーが急にサービスから撤退してしまうなど可能性もあります。アウトソーサーには業務仕様書を作成してもらい、それを定期的に確認することで情報の共有をしておきましょう。

アウトソーサーを定期的に評価すべき

アウトソーシングをすれば必ずコストの削減ができるかというとそうではありません。
特に、導入前後は体制を整えるのに時間もかかり、軌道に乗るまでは一時的に作業効率が下がることもあります。また、システムの機能の修正、オプションサービスの追加などをして追加料金がかかってしまい、結果、従来よりも費用がかさんでしまうこともあります。

品質とコストの両面からアウトソーサーの評価を定期的に行い、アウトソーシングの導入が自社にとって有益となっているかどうか、委託先は適切か、どこをどう改善すべきかなどを見直していくことが必要です。

イレギュラー対応が極力発生しない努力を

アウトソーシングでは、あらかじめ決められた手順に沿って業務を行うことが基本なので、手順から外れたイレギュラーな業務には対応しきれない部分があります。イレギュラーや依頼範囲外の業務が原因で“手戻り”が発生すれば、結局自分たちで処理をし直すこととなり、導入前より時間がかかってしまったという事態にもなりかねません。

よりスムーズにアウトソーシングが運営できるよう、イレギュラーな事態や、自社への確認が頻繁に必要となる事態が発生しないよう、環境を構築しましょう。

社内情報の管理に細心の注意を

アウトソーサーはその特性上、重要な社内データを受け持つことになります。そのため、しっかりとした設備や管理体制を整えている業者を選ぶことが重要です。料金の安さだけで安易に選ばないよう、検討しているアウトソーサーの施設見学や保有認証資格の確認はしっかりと行うべきです。

まとめ

アウトソーシングの導入は、企業の生産性を上げる、ひいては競争力を強化する方策として有効です。そのためには、信頼できるアウトソーサーを選び、最適な形で業務を委託することが重要です。ただ単に業務の一部を委託する下請けとしてではなく、大切なパートナーとなり得るアウトソーサーを選んでください。

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(編集:創業手帳編集部)

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