退職届の役割と正しい書き方・提出方法

創業手帳

退職届とは?退職願・辞表との違いと守るべきルール


退職届は労働契約を解約し、会社を辞めるために出す書類です。転職の際にも使いますが、独立起業の際にも必要となります。
退職届と退職願、辞表など、似た書類もありますが、使い方が違うため注意が必要です。

退職届には書き方や提出のタイミング、流れなど、マナーやルールがあるため、正しい書式を整えて、正しい手順で出しましょう。
円満に退職して、立つ鳥が跡を濁さないために大切なことです。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

退職届とは


退職届とは、会社を辞める時に辞める従業員が会社に対して提出する書類です。
退職届を提出することで、その従業員が退職したいという意志を会社側に伝え、会社が受理したら退職が決定となります。
退職届と似たような書類に退職願や辞表がありますが、それぞれには大きな違いがあるため、使い方を間違えないようにしてください。

退職願との違い

退職願と退職届は、文字通り「お願い」か「届出」かの違いがあります。退職願は、退職したいと願い出て、会社側に退職を打診する書類です。
一方、退職届は、会社に対して一方的に退職の意思を届け出るものとなります。

退職願は基本的に、労働契約を合意解約する際に用いる書類です。
退職願を受け取ったら、会社は労働契約の解除について検討し、従業員本人にその結果を伝えます。退職が認められた場合には、退職が確定します。

退職届は退職願とは違い、任意退職(自己退職)の意思表示です。労働契約の解約方法は、合意退職と任意退職、解雇があります。
解雇は会社が一方的に解約する方法ですが、任意退職は労働者側が一方的に解約することです。労働契約の解約(退職)の方法にはこの3つが認められています。
退職届を出すと、会社に退職を通告したことになり、受け取られると会社の承認を待たずに退職が決まります。

辞表との違い

辞表と退職届との違いは、提出する人の違いです。
退職届や退職願は、会社の従業員(労働者)が使用する書類ですが、辞表は会社の社長や取締役など、雇用関係のない立場の人が辞める時に使います。

また、辞表は退職届とは違い、務めている役職を辞めることを届け出るものです。つまり、事業を提出した後に、役職を外れて一般社員として働き続けることもできます。

役職者ではありませんが、公務員が辞める時にも辞表を使います。この時の辞表の扱いは、労働者の退職届と同じです。

退職届の提出方法


退職届を提出する際には、マナーと手順を守ることが大切です。
辞めると決めた会社ですが、お世話になった勤務期間を忘れるような不遜な振る舞いは避け、円満に退職できるようにします。

提出先

退職届の提出先として一般的なのは、直属の上司か人事関係の担当部署です。退職を決めた場合には、まずは直属の上司に伝えて、指示を仰ぐことになります。
退職届も上司を通して人事などに渡すのが普通の流れです。または、上司から人事部に退職届を提出するように言われることもあります。

いずれにせよ、上司に何も言わずに直接人事部や社長などに退職届を出すことだけは避けてください。
提出する相手を間違えると、退職前に部署内の人間関係を悪くする可能性もあります。

提出の流れ

退職届を提出するにあたっては事前準備も必要で、提出後は退職日に向かっての準備が必要です。退職の意思が決まったら、適切な流れに沿って行動します。

退職届は、上司に退職の意思を伝えた後で提出するものです。時期としては、退職の1カ月前に提出することが多いようです。
ただし、退職届の提出は会社の決まりや雇用契約の内容によって多少異なります。

上司に退職の意思を伝えた後で、退職日をいつにするか、退職届の出し方などの指示を仰ぎます。
退職日は法律や会社の規則で決められていますが、繁忙期やプロジェクトの進行状況などを配慮して、会社に迷惑がかかりにくい時期にするのがマナーです。

提出日が来たら退職届を提出し、本格的引き継ぎなどの退職準備を進めます。

退職届・封筒の書き方


退職届は基本的に、定められた形式に沿って作るだけなので簡単に作成できます。
職務経歴書のように何かをアピールしたり注目されたりする必要もないため、マナーとルールに従って速やかに仕上げましょう。

基本は手書き・会社の方針に従う

退職届は基本的に、手書きで作成するか、会社で定められたフォーマットを使うかして作成します。
会社規定の退職届をそのまま使用する際には、以下の書き方や後述する注意点に従って間違ったことが書かれていないか、注意することも必要です。

近年、会社の風土によっては手書きでもパソコンでも問題はないことも増えています。
特に、Web関連など、パソコンを扱うことに慣れた業界ではパソコンで作成した退職届も認められていることが多い傾向です。
自分で判断できない場合には、退職届を作成する前に上司などに退職の意を伝えるため、指示を仰ぎます。

退職届の書き方

基本的な退職届の書き方は、形式が決まっており、自分で考えて書く部分はほとんどありません。
文面は以下のようなものが一般的です。

「私儀
この度、一身上の都合により、
〇〇年〇月〇日をもちまして退職いたします。」

書きだしの「私儀」は、縦書きであれば下から、横書きであれば右端から書き始めるのが通例となっています。
文末(行の終わり)から書き始めることで、へりくだる気持ちを示す書き方です。

白の用紙に黒インクが基本

退職届を書く用紙は市販されていないので、会社で用意されてない場合には自分で適切な用紙を選ぶ必要があります。
特に厳密なルールはありませんが、基本的にはシンプルな白い無地の便箋が良いです。
昔からの慣習で、縦書きを用いる人が多いですが、横書きでも問題はありません。

インクは黒で、熱などで消える類のボールペンはNGです。
また、間違えたところを修正ペンなどで消すのもNGで、書き損じた場合には再び書き直すことになります。

退職届には退職日を明記

退職届には、退職日を書くことを忘れてはいけません。
「いつ退職するか」を書き記しておくことで、会社側も退職日を目安に手続きを進められます。

退職届は一方的に退職する旨を通告する方法ですが、退職日については法的に定められた条件や会社の就業規則に沿って決めることが必要です。
上司に相談して双方が納得できるタイミングにするのも、社会人として必要なマナーとなります。

退職理由は状況に応じて適したものを選ぶ

退職届には、状況に応じた退職理由も添える必要があります。理由を書くことで、自分がどうして退職するかを残すことができるためです。
退職理由は、本音をすべて書く必要はなく、ある程度は体裁の整った形にするのが通例です。

自己都合の退職理由は「一身上の都合」で良い

自己都合で退職する際の退職理由は、基本的には「一身上の都合により」とだけ書く習わしです。
従業員が会社を辞める理由には、「上司とのそりが合わない」・「ほかにやりたい仕事ができた」・「もっと給料が欲しい」などあります。
しかし、こうした本音は書かずに「一身上の都合」とするのが一般的です。

ただし、上司に退職を相談、もしくは退職意思を伝える際には、最低限理由をきちんと話したほうが良いです。
長々と愚痴をこぼすのではなく、「この点に不満があった」・「ここが合わなかった」など、端的に理由を伝えることで話が早く進み、会社としても今後の参考にできます。
また、自身でも改善や克服の努力をした旨も添えると、上司の印象も良く、納得してもらいやすくなるかもしれません。

会社都合の退職理由は具体的に明記が必要

退職理由が会社都合の場合には少し注意が必要です。会社都合の場合には「一身上の都合」とはせず、会社都合であることがわかるような理由を記載します。

「早期退職のため」や「事業縮小のため」など、会社と合意した理由を具体的に書くことが必要です。
会社都合で辞めることを決めたのに「一身上の都合」としてしまうと、自己都合扱いになってしまう場合があります。
会社都合を自己都合にされると不利益を被る可能性があるため、注意してください。

封筒の書き方

退職届は、手渡しであっても封筒に入れて提出するのがマナーです。封筒についても書式や扱い方が決まっています。

退職届を入れる封筒の表書きは、シンプルに「退職届」です。裏側の左下には自分の部署と名前を書きます。
退職届の用紙は3つ折りにして、用紙右上(退職届の書きだし部分)が上になるように入れます。
3つ折りも、下の3分の1を先に折り、かぶせるように上3分の1を折るのがマナーです。

手渡しの場合には封はしなくても良いですが、封をした場合には〆を書きます。郵送する場合には、退職届の封筒をさらに封筒に入れて送ります。

白無地・二重封筒が基本

退職届の封筒に使うのは、便箋と同じくシンプルな白の封筒です。郵便番号の記載のない二重封筒を選ぶのがベストでしょう。

二重封筒は内側に色のついた内紙が貼ってある封筒で、目上の人へ送る文書や正式な文書を送る際に使うものです。
また、二重になっていることから、透けて見えると困る個人情報などが書かれた書類を入れるのにも使われます。退職届も重要な文書のため、二重封筒を選ぶのがマナーです。

退職届の注意点


退職届の扱いにはいくつか注意したいこともあります。
退職届の扱いを間違えると、思わぬ不利益を被ることもあるため、慎重に手続きを進めてください。

原則として撤回できない

退職届は、会社の最終権限者に「到達」した時点で効力が発生します。
つまり、退職届は辞めることを通告する書類であり、一度出したら取り消せないことを意味します。
最終権限者の合意があれば撤回できる場合もありますが、原則的に退職届は受理されたら退職が決定したと考えて良いでしょう。

退職願の場合には、会社の意思表示がある前なら撤回できる可能性もあります。
これは、退職願が「お願い」ベースであり、提出しただけでは退職が決まらないためです。
とはいえ、退職願も退職届も会社に対して退職の意思を伝えるものです。
退職したがっている従業員に対して会社が良いイメージを持つはずがないため、退職に関する書類は十分検討した上で、決意が固まってから提出しなければいけません。

会社都合で「一身上の都合」と書いてはいけない

会社都合の退職であるにもかかわらず、「一身上の都合」と書いた退職届を提出すると、失業保険の金額や期間が不利になる可能性があります。
そのため、会社都合の場合には、誰にすすめられても理由を書き換えることは避けてください。

そもそも、退職届は従業員側が退職を希望した際に提出するものです。会社都合の場合には、退職届を書く必要はありません。
ただし、会社から手続き上求められた場合には提出する場合もあります。
その際には、必ず「事業所閉鎖」や「早期退職のため」といった退職理由を具体的に明記し、自己都合とは違うことを示します。

退職希望は何カ月前に伝えるべきか


退職届を提出したり退職の意を伝えたりする時期は、法的にも定められ、会社のルールとしても決められていることが多いものです。
時期を間違えると、会社に迷惑をかける恐れがあります。退職を申し出る前に、基本的なルールや配慮すべき点を理解しておきましょう。

就業規則のルール

会社の就業規則では、退職の申し出の期限が決められていることが多いです。
法的なルールもありますが、法的な期限よりも就業規則の期限のほうがゆとりをもって定められていることが多いようです。

法的なルールは原則的なものと考えて、基本的には会社のルールに従うようにしてください。会社のルールに従ってゆとりをもって退職したほうが、引き継ぎも楽にできます。

法的なルール

退職希望の申し出は、民法では退職日の14日前に行えば良いと定められています。つまり、法的には2週間後の退職が可能です。

ただし、退職日の14日前は、引き継ぎや有給休暇の消化などを考えると、あまり現実的ではありません。
勤務先が退職願を出しても認めてくれない、ブラック企業で一日も早く退職したいといった場合のみ、実行したほうが良いでしょう。
退職届は郵送でも提出でき、「配達証明」つきの内容証明郵便で送ることによって意思表示の証拠とすることも可能です。

会社や上司への配慮も必要

退職届の期限にはルールはありますが、円満に退職したい場合には、可能な限りゆとりを持って会社に迷惑がかからないことを前提で退職日を決めることが大切です。
勤続年数にもよりますが、引き継ぎには数週間かかる場合もあります。

また、退職の希望を伝えるタイミングとして、会社の繁忙期や上司が仕事で多忙な時を避けるようにします。
仕事が一段落したタイミングなど、話し合いの時間を持てる時を狙いましょう。

まとめ

退職届は会社への退職の意思を示す文書で、退職願や辞表とは違った意味を持っています。
退職届を出す場合には慎重に検討し準備をして、適切なタイミングや書式を守って提出してください。

退職届は書き方も決まっているため、使う紙やペンなどもビジネスマナーに沿って選びます。会社で提出する最後の正式文書として、恥ずかしくないよう整えましょう。

創業手帳の冊子版(無料)は、ビジネスツールなど起業後に必要な情報を掲載しています。起業間もない時期のサポートにぜひお役立てください。
関連記事
起業するために押さえておきたい円満退職のポイント
退職金にも税金がかかる!仕組みや金額を解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す
今すぐ
申し込む
【無料】