注目のスタートアップ

ハッピーコンピューター株式会社 平田 雄紀|音によるブランディング「ソニックブランディング」の事業展開が注目の企業


ソニックブランディング(音によるブランディング)を店舗空間で実現するための音源集中管理・一斉配信システム事業で注目されているのが、平田雄紀さんが2015年6月に創業したハッピーコンピューター株式会社です。

普段から、様々な場所で様々な音楽を聞く機会があります。
駅のホームで、スーパーやデパートで、カフェやレストランで、ヒーリングサロンで、無意識のうちにそこに流れている音楽を耳にし、行動に影響を受けています。

例えば、スーパーの特売売り場に流れる大きな音量の威勢の良い音楽を聴いてつい購入したり、閉店間際の‶蛍の光”を聞いてそろそろ店外に出なくては、と思ったり、遅い時間にダウンライトが灯るカウンターバーで流れるスローなジャズに促されて本音トークをしてみたり、そんなご経験があるという方も少なくはないと思います。

また、チェーン展開をしているお店などであれば、どのお店に入っても同じ音楽が流れていて、その音楽を聴くとそのお店を思い起こす、といったすり込み、あるいはお店のコンセプトに即した内装・スタッフの出で立ち・音楽のセットによって、普段とは違う空間にいるという実感を楽しんだり、ということもあるでしょう。

このように、音楽・音のもたらす影響は非常に大きいものです。

今改めて、この「音」に注目し、店舗ブランディングや顧客満足、マーケティングに活かそうという動きに注目が集まっています。

ハッピーコンピューター株式会社の音源集中管理・一斉配信システムの特徴は、各店舗で配信コンテンツを自由に編集・セッティングでき、かつ、独自の特許技術により、その場にいる人にとって一番心地よい音量調整を機械が自動で行ってくれるという点です。
また、同社は「音楽の多様性」を実現させるという志を掲げています。一つとして同じものは存在しない ‶音楽” の奏でる独自性、個性をそれぞれの場所に紐づけることによって、その場所でしか味わうことのできない豊かな瞬間を世界中に展開し、音楽制作を手掛けるアーティストの活躍の場を拡げたり地位向上に繋げていこうと挑戦を続けている点にも注目です。

ハッピーコンピューター株式会社の平田雄紀さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

moodmaker(ムードメーカー)は、各店舗に配信する音声コンテンツを自分で自由自在に編成可能なBGMサービス、あるいはより正確には音源集中管理・一斉配信システムであり、『次に来る』と言われながらも長らく普及してこなかったソニックブランディング(音によるブランディング)を店舗空間で実現するための数少ない選択肢です。
一般的な有線放送とは全く異なる文脈から生まれたものです。

複雑な設定や操作は必要ありません。ウェブ上にある管理画面の簡単な操作で完結します。音源をアップロードし、BGMやジングル、アナウンスなどをカレンダーでスケジューリングして配信ボタンを押すと、店舗に配置された専用機器で配信スケジュールが自動的に一斉更新され、スケジュールに従って音源が再生されるようになります。

特筆すべき点として、音楽の再生品質と声の通りやすさを両立させる弊社特許技術「SmoothTalk」、音源ごとに放送局基準のLUFSレベルで統一する「ラウドネスマスタリング」など、プロのサウンドエンジニアが施すような音響処理を機能化していることが挙げられます。

これらの機能により、「店内での会話を邪魔しない」「曲ごとの音量・音圧が整っている」という、店内でBGMを聴く人にとって心地の良い音響空間を実現できます。

具体的な実例を一つご紹介します。

あるハワイアンパンケーキ店を営むお客様ですが、開店に伴い、当社ではPOSレジやオーダーエントリーシステムなどと共に、店内のBGMによくある有線放送を導入しました。すると、全然ダメだ、解約したいと仰るのです。
この店は本格ハワイアンを謳う為、内装などはハワイから本物の流木を取り寄せるなど、「本物」の空間演出に心を砕いている。しかし、この有線放送のハワイアンチャンネルは何だ。J-POPをハワイアン風に演奏してたりするじゃないか、と。

このお客様は現地ハワイの音楽を多数用意されていました。しかし、これを店舗で再生しようとすると、次のような課題を解消するものが世の中にありませんでした。
・(聴感上の)音量がバラバラ
・大量の音楽を、複数の店舗に追加することが難しい
・タブレットやPCでは再生安定性に難がある
・曜日や祝日、時間帯によってプレイリストを変えることが困難
・適切なJASRAC(日本音楽著作権協会)との契約を個別に行うことが煩雑

これらの要求はまさに放送局のようですが、moodmakerでは全て解決可能です。
私たちのお客様には放送局もあり、それらで培われた技術を、Googleのように使いやすく、「よくある有線放送」より安価で高音質にパッケージした結晶がこのmoodmakerというサービスです。

・どのような方にこのサービスを使って欲しいですか?

「音」を使って店舗の空間演出・ブランディングを行いたいという方に使っていただければ、開発者冥利に尽きます。

音楽だけでなく、アナウンス、ジングル、CMなどを空間演出に盛り込みたいとお考えの方には、ぜひお問合せいただければ必ずお力になれると思います。

音を使ってブランディングとまではいかなくても、BGMサービスを契約してお店でなんとなくBGMを流すということに不満や物足りなさを感じている方であれば、moodmakerは有力な選択肢の一つになると思いますので、ぜひmoodmakerを試してみて、自由に店舗の音楽を選べることの可能性を感じていただければうれしく思います。

・このサービスが解決する社会課題はなんですか?

moodmakerはマーケティングやブランディングなど非常に商業性の高いサービスとして見えると思いますが、私たちはmoodmakerのテーマの一つとして「音楽の多様性」を重視しています。

店舗向けBGMサービスの業界は長らくの間、そして現在まで実質的に一強状態にあります。
その結果、店舗側はお店で流す音楽を限られた選択肢の中から選ぶことになり、人々が街で耳にする音楽は似たようなものになっています。
あらゆる種類の文化に言えることだと思いますが、音楽の多様性も例に漏れず、人々の暮らしを豊かにしてくれます。

リモートでできることが増えていくこの時代、お店に足を運べばそこでしか聴けないプレイリストが流れている…そのような音楽の豊かさが広がればいいなと思っています。
moodmakerはサービスによる音源の偏りがありません。音楽の裾野を広げるという素地を持つと考えています。moodmakerが広がることで、より多様なアーティストが活躍するきっかけになれば、という思いもあります。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

恐らく創業者に共通することかと思いますが、大変だったことといえばやはり「お金」の話になります。
以下では私たちのケースについてお話しします。

私たちはmoodmaker事業を推進するため、銀行や中小公庫、VC、CVC各社を廻りました。
しかし私たちの訪れた先はどこも「売り上げが上がっている状態」からの投資・融資判断となるようでした。「卵が先か、ニワトリが先か」と言われたこともありました。
私たちは製品をほぼ内製で作る計画でしたので、先にモノを作るしかありません。
ソフトやハードを開発して動く物を作り、商標や特許を取得し、実現性を担保しましたが、やはり「売り上げが上がっている状態」でなければ、箸にも棒にもかからない状態でした。

幸い、ITコンサルティング事業(以下、既存事業)を並行して行っており、当面の固定費やシード期の資金は確保できていたことから、全て自己資金で賄う形でのスタートを切りましたが、これが予想以上にハードな状態になりました。

まず、新規事業の方が既存事業に比べ、資金や人的リソースを圧倒的に多く要求します。しかし、キャッシュを生むのは既存事業ですから、短期的にはこちらの優先度が高まり、そもそもの建て付けが悪い。
結果、既存事業のパフォーマンスが落ちる一方、新規事業もリソース不足で「売り上がらない」状態に。メンバー間の温度差も生まれる、いわゆる「死の谷」を経験することになりました。

新規事業の技術面については、全員エンジニア出身であったので、高い「品質目標」を持つ傍ら、「作ったら購入を確約してもらえる未来の顧客を先に探す」というような営業面での強かさなどに欠け、恥ずかしながら早々に資金面で手当てが必要になりました。

当時、ギリギリ黒字のうちに信用金庫から借入を行うことができたものの、採用計画などいくつかの重要な点でブレーキを踏まざるを得ない時期がありました。

皆さん通られる道だと思いますが、資金(調達資本含む)の事業間での融通は最終手段として、新規事業は開始直後からキャッシュを生む状態に持って行くことが肝心だと痛感しました。

・今後どういう会社、サービスにしていきたいですか?

会社としては、売り手よし買い手よし世間よしの「三方よし」、すなわち、お客様と私たちがともに満足できるだけでなく、製品が売れることで社会が少しでも良い方向に向かうことを目指しており、これは会社としてその新規事業を始めるかどうかの基準にもなっています。

moodmakerも、音楽を取り巻く業界の発展に寄与するということを一つの指標として事業を進めており、店舗向け(あるいは職場向け) BGMの業界に新しい風を吹かせるという共通の理念のもと、大手レコード会社様とも協業を進めており、今後も様々な企業様と連携して業界を盛り上げていきたいと考えております。

・今の課題はなんですか?

moodmakerを含む新規事業の拡大と新たな人材との繋がりです。
事業を進める中で様々な分野のエキスパートが必要になってきます。サービス向上に伴うハードウェアのアップデート、音声コンテンツの提供などに対応するには、事業に積極的に参画して頂ける人材とのチームアップが肝要だと考えます。
様々なコミュニティーと交流することで輪が広がり、みんなが幸せになる事業を進めていきたいです。

・読者へのメッセージをお願いします。

moodmakerを使えば、余所とは異なる音響空間を作れる、すなわち、非日常の空間を作り出すことができます。
「リモートでできることはリモートで」という考え方が世の中に受け入れられつつある今、来店されるお客様にスペシャルな体験を提供したいと考えるならば、店舗の音響空間をデザインしない手はありません。

ソニックブランディングはまだ日本でほとんど知られていない概念だと思いますので、どうやって音を使って店舗の空間演出やブランディングをしたらいいのか分からないという方がほとんどだと思いますが、弊社には音楽業界の経験者や放送番組を手がける経験者もいますので、何でも聞きたいことがありましたらお気軽に弊社までお問い合わせください。

会社名 ハッピーコンピューター株式会社
代表者名 平田 雄紀
創業年 2015年6月19日
社員数 7名
事業内容 ITコンサル事業
サービス名 ・moodmaker・クラウドサイネージ・風呂空いてる君
所在地 532-0023 大阪府大阪市淀川区十三東2-6-5
代表者プロフィール 外資系通信キャリアや国内大手SIerでのエンジニア職、技術企画、ITベンチャーの営業、上場企業の管理部門を経てITコンサルタントとして独立。
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ ハッピーコンピューター
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