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2022年3月23日株式会社Cooking&Glow 金原恵美|地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売の事業展開が注目の企業
地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売の事業展開で注目なのが、金原恵美さんが2016年に創業した株式会社Cooking&Glowです。
SDGsの目標のひとつとして、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」ことが掲げられています。
現在、収穫後損失となる食品ロスの問題に対しては、市場を通さない直売や、加工品として新たな付加価値をつけたり、フードバンクへ寄付するなどの食品を無駄にしないためのさまざまな取り組みに注目が集まっています。
株式会社Cooking&Glowの地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売事業の特徴は、美味しさは変わらないのに、収穫後、サイズの大小や色やキズによって「規格外野菜」として廃棄されてしまう野菜を、長期に保存でき、健康的で美味しさも兼ね備えたピクルスという形に変えることで、食品ロスの減量に貢献しながら、障害を持つ方を働き手として雇用し、就労支援をしている点です。
株式会社Cooking&Glowの金原恵美さんに、事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。
・このプロダクトを開発するに至った経緯について教えてください。
コロナ禍が大きく影響しています。私たちは、コロナ禍になる前は、お料理教室、お惣菜販売、お弁当販売を事業の3本柱にしていました。お弁当は企業が訪問先へお持ちする高価格帯のもので、毎月安定した収入源でしたが、訪問自体が無くなることで注文が打ち切りとなってしまいました。料理教室も当時閉鎖するしかなく、事業を立て直す柱として選んだのが「ピクルス」でした。
私たちの会社がある栃木県宇都宮市は、澄んだ空気と清らかな水に恵まれて美味しい野菜がたくさん採れます。周囲には知り合いの農家さんがいて、以前譲り受けた農産品の加工所もあったので、食べ物を無駄にしない、長期保存ができるものづくりという視点で県内産の「規格外野菜」に着目し、瓶詰のピクルス『宮ぴくるす』を作ることにしました。
・このプロダクトの特徴は何ですか?
宇都宮市内に240年続く北関東唯一の「中野喜兵衛商店」という酢蔵がありまして、そこで作られているもろみ酢を贅沢に100%使用し、県内産の新鮮な野菜を使って、手作業で丁寧に仕上げているのが特徴です。
県内名産品のかんぴょうを使った「かんぴょうと根菜のぴくるす」が人気商品で、少し変わった素材としてはうずらの卵、いちごや梨などのフルーツのピクルスも作っています。無添加・化学調味料・保存料不使用ですが、1年以上保存がききますし、塩ベース、醤油ベースなど、素材ごとに調整したピクルス液でさまざまな味わいを引き出していますので、ぜひお召し上がりい ただければと思います。
・このサービスの解決する社会課題はなんですか?
まず、「食料廃棄の課題」です。形が不揃いなどの理由から規格外とされてしまう野菜を有効活用して、廃棄される食材を減らそうとしています。
2つ目は「障害者雇用の課題」です。私には身体の不自由な姉がいるのですが、そのような原体験から、就労継続支援A型事業を立ち上げて、障害を持つ方にもスタッフとなっていただき、一緒にピクルスを作り上げています。ピクルスの事業を大きくしていくことができれば、雇用の拡大につなげていけると思います。
・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?
ピクルスの事業を立ち上げた時は、3本柱の売上がなくなった状況で、本当にピクルス一本で売上を上げていけるのか、非常に不安でした。会社を閉じることも考えましたが、スタッフとともにやっていける、私たちにしかできない事業は何だろう?と思考の棚卸をしました。
お弁当作りで使ってきた調理器具は思い入れがありなかなか手放せませんでしたが、この時代に会社を存続させるには、他の会社には真似のできない新しいものを築く必要があると覚悟を決め、不要なものは手放して新事業へと突き進みました。
乗り越えられたのは、支えとなってくださった方々がいたからです。「よくぞ、この商品を作ってくれましたね」と言って応援してくださった方、商品を受け取って喜んでくださった方、そして事業を閉じようとした時「支えるから続けて」と泣きながら言ってくれたスタッフ、たくさんの方々のおかげで、苦しい時期を乗り越えていけました。資金面では、国や自治体の補助金の申請をして、助けていただきました。
・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?
農産物の加工には可能性があると感じていますし、障害を持ちながら働いてくれているスタッフが素晴らしい心の成長を遂げているのが傍にいて手に取るように分かりますので、障害者雇用を推進していきたいと思っています。
『宮ぴくるす』作りによって、農家さんも、雇用しているスタッフも、商品を買ってくださるお客様も笑顔になれます。今はピクルス作りで手一杯ですが、ピクルス以外の商品も展開できれば、、また新たに解決できる課題が見つかるかもしれません。一つのモデルとして『宮ぴくるす』を軸としながら、商品のラインナップを増やしていくことも視野に入れています。
・今の課題はなんですか?
お中元・お歳暮時期は製造が追いつかないほどですが、閑散期が出てしまうことです。今は地元でのビジネスをしっかりと固めているところですが、全国展開して安定した売上が立てば、障害者雇用も拡大していけると思います。
また、Instagramの運用や見せ方、商品のアピールなど、SNS対応がまだ十分ではないので、私たちが大切に作った『宮ぴくるす』の良さが全国の皆様にお届けできるようにチャレンジしていきたいと思います。
・読者にメッセージをお願いします。
人生は思いがけないことが多いと思います。私の場合、安定した収入の柱をコロナ禍で突然失ってしまいました。
ですが、『宮ぴくるす』という新事業を立ち上げ、険しい山を越えた後に見えた景色が、今まで見ていた景色とはまた違って、それもまた素晴らしいと感じています。
山が高ければ高いほど見える景色は素晴らしいと思います。つらい中でも楽しみを見出して仕事と向き合うことで、その景色を見ることができました。
私は料理講師を始めるまでは、もともと普通の主婦でした。限りない可能性は誰しも持っているので、それを信じて進むことが大切なことだと思います。
会社名 | 株式会社Cooking&Glow |
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代表者名 | 金原恵美 |
創業年 | 2016年 |
資本金 | 400万円 |
事業内容 | 地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造販売 |
サービス名 | 食品製造業 |
所在地 | 栃木県宇都宮市中島町613 |
代表者プロフィール | こどもや子育て中の母に向けた料理教室の他、企業・行政向けの食育セミナーの講師など、15年間『キッズ料理研究家』として活動。 2016年 料理を通して輝く未来を創造する企業として『株式会社Cooking&Glow』設立。 2019年 25年続いた、農産加工所を継承し農産加工のノウハウを学ぶ。 2020年 栃木県産の野菜を中心に宇都宮のお酢で仕上げた地産ピクルスブランド『宮ぴくるす』製造・販売に特化。 2021年 就労支援事業に参画。 |
カテゴリ | 有望企業 |
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関連タグ | Cooking&Glow SDGs 地産地消 宮ぴくるす 金原恵美 |
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