スタートアップが気になるニュースをピックアップ! 19年5月のビジネストレンドまとめ
起業や経営に関わる2019年5月のニュースを振り返ります
(2019/06/07更新)
2019年5月のニュースの中から、起業や経営に関する、気になったネタや話題をピックアップ。世の中で今どんな流れが起きているのか、カテゴリーごとにトレンドを探ってみましょう。
「企業の知財活用」に関する話題が目白押し
5月は、「知財(知的財産)」に関連するニュースが目立ちました。日本は海外に比べ、企業の知財保護や活用への意識が薄いと言われてきましたが、最近その流れが変わり始めているようです。
ブリヂストン、旭化成、貝印などの大企業が、知財情報を積極的に活用した経営戦略・事業戦略を立て、M&Aや新事業などに活かす「IPランドスケープ」に乗り出している、というニュースがありました。知財を積極的に活用して拡大する欧米や中国の動向をにらみ、これまで知財に対して守りの対策がメインだった状況から、転換をはかる形です。
また13日には、東京の町田市と弁理士が、知財の活用で企業・個人事業者を支援する協定を発表しました。同市は独自の技術やアイデアを持つ企業を、知財のプロフェッショナルである弁理士に紹介し、市内の企業に知財活用方法を直接指導する流れを作るようです。地域を巻き込む知財戦略関連の動きも今後進んでいきそうですね。
一方で、知財に関わるネガティブな話として、中小企業の持つ特許やノウハウなど知的財産が、大企業に奪われてしまうという問題もあります。典型的な例として、大企業が中小企業のノウハウ持ち帰って内製化してしまったり、発注先をより安い海外企業などに移してしまうといった話は古くからありますが、最近は製造業だけでなく小売やサービス業など、知財搾取の領域も広がってきているようです。
これに対し、政府は知財関連法の整備で勅許侵害の証拠を収集しやすくする仕組みを導入したり、独禁法の適用を検討するなど、対策を進めています。
今後会社を立ち上げる創業者も、事業が成長する中で出てくる大企業との関係づくりや、利権の侵害などに備え、知財を活用できるよう周辺情報を入念にチェックし対策する必要があるといえるでしょう。
大学発ベンチャーにも知財のニュース
最近徐々に活気づいてきた大学発ベンチャー界隈にも、知財に関わるニュースがありました。
8日に経済産業省が「大学による大学発ベンチャーの株式・新株予約権取得等に関する手引き」を発表しました。中でも注目すべきは、大学発スタートアップが、大学からの知的財産権のライセンスを取得する対価として新株予約権を付与することができるという点です。
これまで、研究成果の事業化に必要なライセンス取得には数百万~数千万規模の支払いを求める大学が多く、大学発ベンチャーにとってネックとなっていました。新株予約権により、大学が知財への対価を事業が拡大することによって回収するサイクルを作ることで、資金が潤沢でない設立初期の大学発スタートアップのキャッシュ・アウトを抑え、成長しやすい環境づくりを進める狙いがあるようです。
大学発スタートアップに関連して、創業手帳でも、東京理科大学の大学発ベンチャー「イノフィス」の古川尚史代表取締役へのインタビュー記事を公開しました。現状日本ではまだまだ産学連携の成功例が少ない中、イノフィスは独自の視点で事業を軌道に乗せ、社会実装を実現しました。今後の日本で大学発ベンチャーがどのような役割を担い、社会にイノベーションを起こしていくのか、最新のトレンドを知ることができる内容になっています。
事業承継の負担を軽減する取り組み
事業承継に関わる話題も複数取り上げられました。
信金中央金庫が、M&A仲介事業を展開するトランビと業務提携し、全国の信金が事業承継に関する情報を共有できるサイトを年内に開設します。信金が後継者難に悩む中小企業の情報を集め、従来の10分の1以下の手数料で中小企業同士のM&Aを実現できるよう環境を整える方針です。
国は、経営者個人が企業の借金返済を背負う「個人保証」の見直しに向けて動き始めました。これは、事業承継にあたって、個人保証への敬遠を理由に承継を断る人が多いという現状を改善する施策です。後継者の不安を払拭し、事業を引き継ぎやすいようにする狙いがあります。具体的な取り組みとしては承継にあたって個人保証をつけずに融資を受けられるよう環境を整える方針です。
また、27日には日経新聞が、若手後継者を支援して事業をブラッシュアップしながら家業を継続させる「ベンチャー型事業承継」について取り上げていました。アトツギ経営者同士のコミュニティづくりや、地方自治体や地方銀行も巻き込んだ取り組みが進んでいるという話です。創業手帳でも、ベンチャー型事業承継という言葉の生みの親であり、取り組みを推進する「一般社団法人ベンチャー型事業承継」代表の山野千枝氏へのインタビュー記事を公開しました。
現状7割近くの企業に後継者がいないと言われている中、官民巻き込んでの本格的な事業承継対策が加速しそうです。
副業容認と起業の関わり
同じく日経新聞が大手企業に対して行ったアンケートで、有効回答120社のうち約5割の企業が副業を認めていることがわかった、というニュースも目を引きました。副業を認めている会社の中の、実に74%が新興企業だったということです。
副業容認が社会的に広がりつつある中、この話題は起業を考えている人にも影響があるトピックスです。創業手帳の創業相談でも、最近起業する前に、会社での就労を続けながら準備を整えたり、副業の延長で事業化を考えている、という人からの相談が増えています。
特徴としては、アプリ開発など、マネタイズに時間がかかる事業を行おうと考えている人や、コンサル系など、実績が整うまで収入が安定しないタイプの起業領域が多いようです。副業として事業を始め、段階を分で拡大・独立するルートは、収益の見通しが立つ前のリスクヘッジや、金融機関からの融資の評価への影響など、想定している事業の領域によって良し悪しを冷静に検討する余地があります。
仕事の兼ね合いと独立のバランス迷ったら、気軽に創業手帳に相談してみてください。
(編集:創業手帳編集部)