日本政策金融公庫の創業融資は〇〇種類!自分にあった選び方とは?
日本政策金融公庫担当者に聞く、融資のホンネ【第1回】
(2017/08/02更新)
起業するにあたって、日本政策金融公庫の創業融資を検討している方も多いと思います。でも、たくさんの制度があってよくわからない!ということで、今回は、日本政策金融公庫ビジネスサポートプラザの所長に直撃取材!
起業前でも相談可能な「ビジネスサポートプラザ」について、そして、一見複雑そうな公庫の融資制度について、わかりやすく解説していただきました。
日本政策金融公庫 国民生活事業本部
東京ビジネスサポートプラザ所長
平成4年、国民金融公庫(現日本政策金融公庫)入庫。横浜支店、大宮支店、東大阪支店、船橋支店、沼津支店、堺支店で4,000社を超える創業者を含む融資審査を担当。多摩創業支援センター所長を経て、平成27年4月より現職。
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”小さな融資”で中小企業を支援
大澤:日本政策金融公庫は、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫の3つの旧公庫を前身とする政策金融機関です。国民生活事業の融資企業数は約88万企業、全265ある信用金庫の融資先数と同じくらいあります。
大澤:1社あたりの平均融資残高ですね。我々日本公庫の平均融資残高は、1社あたり約700万円ですが、信用金庫は平均で3,800万円。つまり、「小口融資が主体の金融機関」である、というのが最大の特徴です。また、無担保融資が全体の8割を超えています。
民間金融機関の補完を旨としつつ、小さな起業に対する創業融資なども国としては応援しなくてはいけませんから、その役割を私たちが政策的に担っている、という棲み分けをしています。民間金融機関と一緒になって地域の活性化を図る役割りも重要な取り組みです。
全国の起業者を支援している創業手帳さんと目指す方向は基本同じですね。
起業前の構想段階から相談可能なビジネスサポートプラザ
大澤:ビジネスサポートプラザは、相談対応の専門集団です。主に創業をお考えの方で、これまで日本公庫を利用されたことがない事業者の方を対象に、「公庫ってどんなところ?」「どんな制度があるの?」「自分は対象になる?」などといった様々な相談にのっています。もともとは、平日は会社勤めなどで相談が出来ない方のために「休日相談に対応できるセクション」としてスタートしました。
平成19年の東京を皮切りに、現在では全国6ヶ所(北海道、東北、名古屋、大阪、福岡)に設置しています。開催日や時間については各地域で異なっていますので、詳しくはホームページでご確認ください。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/yakan_soudan_info.html
私の所属する東京ビジネスサポートプラザは、新宿支店の4階で営業しており、毎週土曜日と毎月第1・3日曜日の休日相談(祝日を除く)、また平日の相談も実施していて毎週木曜日は20時までの夜間相談を行っています。
大澤:まずはお客様のやりたいことと、現在の状況(ステージ)をお伺いして、ビジネスプランの策定からお手伝いしたり、資金計画についてのお話、融資を実際に受けるときのポイントについてアドバイスをすることもあります。
起業自体はできても、それを続けていくのは非常に難しいです。実際、3年くらい経つと約半分の方が市場から出ていってしまうというデータもあります。そうならないよう、起業家が成功することを応援するのが我々の役割です。
大澤:東京ビジネスサポートプラザの平成28年度の相談件数は約1,600名。東京都内だけでなく、関東エリアからたくさんの方にお越しいただき、様々なご相談をお伺いすることができました。
大澤:男女比ですと、男性75%、女性25%です。公庫融資の割合で見ると、女性の起業は年々増えているとはいえ、まだ20%を切っているんです。相談件数は先行指標にもなるので、女性の相談が増えているトレンドから考えると、まだまだ女性の起業が増える可能性があるなと感じています。
年齢層は、30代・40代が中心ですね。ある程度の経験を積んでから起業を考える方が多いです。ただ、20代など若いときから起業を志す方もいます。このあいだは高校生が来て将来の起業についての相談がありましたよ。
大澤:相談時期については、創業前の相談が75%以上を占めていますね。業種については、サービス業、中でも飲食店が多いです。創業前のアイデア段階のお話もあれば、事業計画書を作成したので一度確認してほしいという話もあります。最近は、地方に移住して起業したいといった相談も増えています。
基本は3つ!日本政策金融公庫で利用できる融資制度
大澤:基本的には、創業のときには「新規開業資金」がご利用いただけます。しかし、ある条件に当てはまる方はそのほかの制度も選べるという形です。
創業者が女性、もしくは35歳未満、または55歳以上の男性であれば、金利が低くなる「女性、若者/シニア起業家資金」をご案内します。
また、飲食業や理美容業などの業種の方向けの「生活衛生新企業育成資金」という制度もあります。
大澤:その場合は、双方の制度をご案内させていただいて、創業者ご自身にどちらかを選択していただきます。
大澤:金利設定は少し複雑で、「制度で決まる金利」と「返済期間で決まる金利」があります。担保の有無などの保証条件によっても変わるので、かなり幅があります。
例えば、無担保無保証融資の場合、ベースとなる金利は2.16%(取材日現在)です。「女性、若者/シニア起業家資金」を使っていただくと、実質2%位になりますね。また、返済期間が長くなると、金利は高くなる場合もあります。
無担保・無保証オプション?新創業融資制度とは
大澤:「新創業融資制度」は、創業支援のための各種制度を無担保・無保証人でご利用いただく場合の“ご融資枠”のことをいいます。
ベースの融資制度となる「新規開業資金」「女性、若者/シニア起業家資金」「生活衛生新企業育成資金」などと組み合わせて使います。簡単にいうと“無担保・無保証人のオプション”のようなものですね。
この制度は、上限3,000万円までの無担保・無保証人融資枠です。要件がありますので、ぜひ併せてご相談ください。
専門家の認定で実効性アップ!中小企業経営力強化資金
大澤:認定支援機関の認定を受けた上でお申込いただく融資制度です。ご融資額7,200万円以内ですが、ご融資のうち2,000万円までは無担保無保証人での利用が可能で、事業計画の進捗状況を認定支援機関と一緒に確認するという特徴があります。
大澤:正式には「認定経営革新等支援機関」といい、中小企業等経営強化法に基づき(国のお墨付きをもらって)公示されている機関です。税理士や公認会計士が多くて、他にも民間金融機関、商工会議所、中小企業診断士、行政書士なども認定されています。
認定支援機関の方と相談しながら作成した計画を添付して、融資を申し込んでいただきます。
大澤:一番大きな違いは、事後のフォローアップとして経営報告をしていただくというところで、認定支援機関にも責任を持っていただいているところですね。
計画書に認定を受けるという手間はかかる分、実現性が向上すると思います。
大澤:自分で作る計画には限界がありますから、専門家や仲間に見てもらって、「そのプランいいね」と応援してくれる人を増やすことは、起業して事業を継続させる1つのポイントになると思います。
ビジネスモデルが真似されるのが怖いという気持ちもわかりますし、自分の力でやりたいという思いは素晴らしいですが、「自分の計画だから、誰にも見せない」というのはあまり良くないですね。その人しかできないビジネスであれば真似されることもないと思いますし。積極的にみんなに見てもらって、中でも、専門家の目で計画書を一緒に作り上げるというのは大事なプロセスだと思います。ただ作ってもらっている、という受け身ではダメで、一緒に作るという姿勢があることが大切ですね。
- まとめ
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- 起業前や、融資制度に悩んだら、まずはビジネスサポートプラザに相談を。
HPはこちら - 日本政策金融公庫の融資制度は、性別、年齢、業種などによって条件が選べる。
- 融資制度に併せて使う、無担保・無保証の新創業融資制度が人気。
- 専門家(認定支援機関)の助言がもらえる中小企業経営力強化資金で起業の実現性を高めよう。
- 起業前や、融資制度に悩んだら、まずはビジネスサポートプラザに相談を。
第2回は、公庫融資の据え置き期間のお話、そして、返済に窮する状況になってしまった場合、リスケジュールはできるの?という疑問について、お伺いしていきます。
(取材協力:日本政策金融公庫 東京ビジネスサポートプラザ
ビジネスサポート所長:大澤 雅志)
(編集:創業手帳編集部)