協調融資とは?メリットや注意点、融資を成功させるポイントまで徹底解説

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協調融資なら高額な借入れを実現できる可能性がある!


協調融資は、2つ以上の金融機関から借入れをする方法です。
ひとつの金融機関だと希望金額を借りられなかったとしても、2つ以上の金融機関を利用すれば借りられる可能性が高まります。
高額な借入れが必要な場合に検討されるケースも多い融資です。

今回は、協調融資がどのような制度なのか、利用するメリットと注意点、成功させるポイントを解説します。協調融資を検討されている方はぜひ参考にしてください。

協調融資とはどのような制度?


協調融資とは、複数の金融機関が協力して融資を行う制度です。ひとつの金融機関から希望金額の全額を借入れできない場合に利用されます。

2つ以上の金融機関が融資団を結成し、主な取引銀行が幹事となります。そして、貸出金額や貸出分担割合、利用条件などを協定するという流れです。
貸付けに関しては、それぞれの金融機関が行います。

借り手は希望する金額を借りられ、貸し手は貸倒れになった時のリスクヘッジができます。
つまり、協調融資は貸し手と借り手の双方にとってメリットのある制度です。
日本政策金融公庫は、複数の金融機関と業務提携や協力に関する覚書を締結しているため、全国各地の金融機関と協調融資が行えるようになっています。

協調融資の組み合わせは3パターン


協調融資は、融資を実施する金融機関によっていくつかのパターンが存在します。ここでは、代表的な3つのパターンをご紹介します。

1.政府系金融機関×民間の金融機関

政府系金融機関は、日本政策金融公庫・日本政策投資銀行・国際協力銀行・商工組合中央金庫・沖縄振興開発金融公庫の5つです。
民間の金融機関では手が届かないような分野を担ったり、中小企業の海外展開を支援したりすることで、日本経済の発展を支えています。

中小企業の場合だと、日本政府金融公庫と民間金融機関の協調融資を利用するパターンが多くみられます。
創業や事業再生、農林漁業などの成長戦略分野において実行されるパターンが多いのも特徴です。
2021年度の協調融資は25,259件となっていて、5期連続で2万件を超える実績を有しています。
参照:『協調融資の実績』日本政策金融公庫

2.保険協会付融資×プロパー融資

保険協会付融資とプロパー融資の協調融資は、多額の資金を調達したい時に利用されるケースが多くあります。
貸し手となる金融機関にとって、保証協会付融資は保全が取れているので貸倒れのリスクを回避しやすい点がメリットです。
プロパー融資はメインとなる金融機関を分散でき、実質的に複数の金融機関から融資を受けた場合と同じ状況になります。

保険協会付融資の審査では、融資金額の使途をチェックされるので事業資金以外に使う予定があると判明した場合、審査が通りにくくなってしまうので注意してください。
また、返済能力もチェックされます。プロパー融資は決算書や事業計画書を確認されるため、細かい部分まで抜かりなく書類を作っておくことがポイントです。

3.民間のメインバンク×民間のサブバンク

日本政策金融公庫や信用保証協会などの公的な機関が介入しない協調融資もあります。
民間の金融機関だけで完結する融資で、主要取引きを行っているメインの金融機関と普段は取引きを行っていないサブバンクによって行われるものです。

ほかのパターンと比べると資金調達のハードルは高くなります。
担保がある場合は融資を受けられる可能性が高くなりますが、メインの金融機関へ担保を差し出しているケースも少なくありません。
サブバンクは無担保になって貸倒れの危険性が高まるので、融資を受けられないことも考えられます。

協調融資を利用するメリット


協調融資には、様々なメリットがあります。続いては、協調融資を利用することで事業者が得られるメリットを詳しく解説します。

規模が大きく希望の金額で融資を受けやすい

協調融資は、複数の金融機関が関わるので融資先が返済できない状態になっても貸倒れのリスクを軽減できます。
そのため、単独融資だと金融機関が融資をためらってしまうようなケースでも、審査に通る可能性が高くなります。

希望額の融資を受けやすくなることや、複数の金融機関との取引実績が生まれることで、将来的な資金調達の幅を広げられることも協調融資を選択するメリットです。
事業拡大を考えている場合にも、利用を前向きに検討したい融資だといえます。

成長戦略分野では積極的に融資をするケースもある

一般的な金融機関だと、事業のスタートや再生に対する融資はリスクが高いと考える傾向にあります。
一方、日本政策金融公庫は創業や事業再生、農林漁業などの成長戦略分野に対する積極的な協調融資を実施しています。

日本政策金融公庫と協調融資を行うことにより、貸倒れの危険性を軽減できるため、金融機関にとってもメリットが大きい方法です。
そのため、一般的な単独融資だと実現が難しい創業時の高額融資も、形にしやすくなります。
創業時に高額な融資を受けたいのであれば、日本政策金融公庫×民間の金融機関の協調融資を検討してみてください。

事務手続きの負担が軽い

仮に、中小企業が1億円の融資を受けようとした場合を考えてみます。
単独融資だと各金融機関に相談し、必要書類を作成しなければなりませんが、協調融資ならひとつの金融機関がまとめ役になり、複数の必要書類を準備する手間が省けます。

融資を受けるための書類作成は煩雑で手間もかかるので、簡素化できるならそれに越したことはありません。企業の担当者の負担軽減にも協調融資は役立ちます。
個人事業主の場合であれば、ひとりですべて行わなければいけないので、書類作成や手続きの負担を軽減できるのは魅力的です。

協調融資を利用する際の注意点


協調融資を利用する場合、把握しておきたい注意点もあります。具体的にどのようなことに注意すべきなのかを以下に解説します。

協調融資のパターンによって難易度が異なる

協調融資のパターンによっては難易度が異なります。
例えば、政府系金融機関×民間の金融機関だと、政府系金融機関に担保を差し出さなければいけない場合に、メインとなる金融機関の貸倒れリスクが高くなります。
そのため、融資を受けられなくなってしまうかもしれません。

保険協会付融資×プロパー融資の場合は、信用保証協会の保証枠(無担保だと8,000万円、担保ありだと2億8,000万円)を使い切っていると基本的に協調融資は受けられません。
民間のメインバンク×民間のサブバンクだと、通常の融資と同じように貸倒れの危険性が高くなってしまいます。
担保をメインとなる金融機関に差し出している場合は特に融資を受けにくくなることを念頭においておく必要があります。

単独融資よりも審査に時間がかかりやすい

協調融資はメインとなる金融機関が幹事となり、ほかの金融機関と連携や調整を行いながら進めていきます。
足並みを揃えなければいけないので、ひとつの金融機関が融資を内定しても、ほかが決定するまで保留となってしまうケースもあります。

したがって、単独融資と比べると審査に時間がかかり、思ったようなタイミングで資金調達ができないことも視野に入れておかなければいけません。
運転資金をすぐに手に入れたい場合や、金額よりも融資を受けるまでのスピードを重視している場合などには、適していないといえます。
早急に資金調達をしなければいけない時は、単独融資を選ぶのが無難です。

片方の金融機関がNGなら協調融資自体がNGになる

複数の金融機関が審査を行うため、ひとつの金融機関で審査に通ったとしても、ほかがNGであれば協調融資は成り立ちません。

協調融資を申し込んだからといって、必ず受けられるわけではないことを理解しておき、想定した上で利用を考える必要があります。
融資を受けられなかった場合の対策もあわせて考えておくと安心です。

協調融資を成功させるポイント


協調融資を成功させるには、いくつか押さえておきたいポイントもあります。
最後に、どのようなポイントを押さえておくと協調融資を成功させやすくなるのかをまとめました。

積極的に支援してくれる金融機関と関係を築く

協調融資を成功させるためには、積極的に支援してくれる金融機関と関係を築くことがポイントです。
融資を受ける金融機関の足並みが揃わなければ成功しないので、積極的な支援を行っているかどうかは重要です。
協調融資を積極的に行っている金融機関か否かを、あらかじめ調べておくと成功率が高まります。

また、融資を受ける金融機関と良好な関係を築いておくことも重要です。
融資が必要な時だけ頼るのではなく、普段から担当者と密にコミュニケーションを取り、相談から審査までスムーズにお願いできる関係性を築いておくことをおすすめします。
良好な関係を築いて維持する秘訣は、普段から資料の提出や報告などを抜かりなく行い、信頼を積み重ねていくことです。

現実的で根拠のある事業計画書・返済計画書を作成する

現実的で根拠のある事業計画書・返済計画書を作成することも、協調融資を成功させるために押さえておきたいポイントです。

事業計画書は、事業の継続だけではなく成長するための方針を記載する書類であり、金融機関に対し、将来性を伝えるために必要になります。
また、融資額の根拠にもなる重要な書類です。

さらに事業計画書は、今後の成長に必要は設備や機材をどのように購入するか、どのように資金を運用するか、といったことを示す書類でもあります。
市場調査や競合他社・ターゲット層の調査、収支計画を組み込み、根拠のある事業計画書を作ることが重要です。

返済計画書は、返済を本当にできるのかという金融機関の疑問を解消するために必要な書類です。
毎月いくらずつ返済するかだけではなく、リスクを加味した現実的でわかりやすい書類を作成しなければいけません。

良質な決算書を作成する

協調融資を成功させたいのであれば、良質な決算書を作成することも重要です。金融機関は融資審査を行う時には、必ず決算書を確認します。
賃借対照表で負債が資産を上回っている債務超過になっていないか、純資産がプラスになっているかなどに注意してください。

損益計算書では、売上総利益(売上高から売上原価を差し引いた金額)や営業利益(本業で得た利益)、経常利益(企業活動で得た利益)を確認する必要があります。
当期純利益(登記の総収益から総費用を差し引いて算出した税引き前当期純利益から法人税を控除した金額)もチェックしておいてください。

当期純利益は、一時的な赤字なら問題視されません。また、この中で特に重視されるのは、利息を支払っても利益が出ていることを示す経常利益です。

信用情報に傷を付けない

税金や公共料金、借入れの滞納などで信用情報に傷を付けないことも協調融資を成功させるための大切なポイントです。
きちんと期日内に支払いができていれば、返済能力や資金力があるという証になります。
税金や公共料金などは最低限の支払いとみなされるため、それすら支払いが遅れてしまうのは大きなマイナス要素です。

金融機関に提出する書類(公共料金・固定資産税の領収書、借入金の支払明細書、クレジットカードの支払明細書、預金通帳)でも滞納の有無をチェックされます。
履歴が残っていなかったとしても、これらの書類から滞納が発覚し、審査に影響を及ぼすケースもあります。
滞納しないことが大切ですが、万が一心当たりがある場合は、担当者から支払いの状況を聞かれた時に正直に伝えてください。

まとめ

協調融資は、単独融資よりも多額の借入れができる方法です。そのため、検討するケースも少なくありません。
いくつかのパターンがあるので、適した融資先を選ぶことも成功するか否かを決める要素です。
協調融資には多くのメリットがありますが、注意点もあります。
メリットと注意点の両方を理解し、成功するためのポイントを実行に移すことが融資の可否を左右します。

「創業手帳(冊子版)」では、協調融資を含む創業時に役立つ融資情報も提供しています。協調融資に関して不安を抱えている方や創業時に融資を活用したい方は、ぜひご利用ください。
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(編集:創業手帳編集部)

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