個人事業主の手取りはいくらになる?計算方法と手取りを増やすポイントも解説

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個人事業主の手取りがいくらか知るためには起算方法を覚えよう!


個人事業主になると、これまで会社が代わりに納めてくれていた税金や社会保険料を自ら支払うことになります。
そうなると、最終的に手取り額がどれくらいになるのか不安に感じる方もいるかもしれません。
個人事業主が手取り額を知るためには、各項目の計算方法について知っておく必要があります。

今回は、個人事業主の手取りを計算するための方法と、手取り額のシミュレーションをご紹介します。
最後に手取りを増やすためのポイントも解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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個人事業主の手取り早見表


個人事業主の手取り額を知りたい方に向けて、早見表を作成しました。

年収 手取り
300万円 約230万円
400万円 約323万円
500万円 約394万円
600万円 約437万円
700万円 約499万円
800万円 約560万円
900万円 約630万円
1,000万円 約697万円

早見表を見ると、年収の約60~70%が手取り額になることがわかります。どのように計算するか、何を差し引いているかは以下の計算方法を参考にしてみてください。

個人事業主の手取りを計算する方法


個人事業主は売上をそのまま手取りとして受け取ることはできません。
個人事業主の場合、売上から事業にかかった経費を引き、そこからさらに所得税や住民税などの税金や、社会保険料を納めていきます。
残った金額が個人事業主の手取りです。

事業によってかかる経費は異なりますが、税金や社会保険料も状況に合わせて金額が変動します。
具体的に手取りがどれくらいになるか計算したい方は、以下でご紹介する計算方法から税金・社会保険料を算出し、経費と一緒に売上から引いてみてください。

個人事業主が納める税金の計算方法


個人事業主が納める主な税金は、以下で紹介する4つです。それぞれの計算方法について解説していきます。

所得税

所得税は1年間(1月1日~12月31日)に得た所得(売上-経費)に課せられる税金です。
所得税は10種類に分類され、さらに総合課税制度を使って計算する所得と、分離課税制度を使って計算する所得に分かれます。

個人事業主が納める所得税を計算するには、まず売上げから必要経費を差し引き、所得を算出します。
次に、所得から所得控除を差し引きます。所得控除は個人の事情や保険料などを考慮して所得から差し引けるものです。

基礎控除48万円のほかにも、国民年金や健康保険料の支払いに応じて社会保険料控除が適用される場合もあります。
控除分を差し引いた所得金額によって税率が異なっているため、金額に合った税率を掛けてください。

課税所得額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円~330万円 10% 97,500円
330万円~695万円 20% 427,500円
695万円~900万円 23% 636,000円
900万円~1,800万円 33% 1,536,000円
1,800万円~4,000万円 40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円

例えば課税所得額が300万円だった場合、300万円×10%-97,500円=202,500円が所得税です。

なお、2013年から2038年まで「復興特別所得税」がすべての人に対して課税されています。
復興特別所得税額は基準所得税額×2.1%で算出することが可能です。

住民税

住民税は1月1日時点に住所を置いている都道府県や市区町村に収めるための税金です。
個人事業主は確定申告が終わってから市区町村より通知書が送付され、一括または年4回の分納で納めます。

住民税は、全員が平等に課税する「均等割」と所得額によって税額が変動する「所得割」からの構成です。
均等割の金額は自治体によって異なりますが、東京都の場合は以下の項目で均等割が課税されます。

  • 個人都民税:1,000円
  • 個人区市町村民税:3,000円
  • 森林環境税:1,000円

所得割は前年の所得金額から所得控除を引き、標準税率(10%)を掛けてから、さらに税額控除を引いて計算します。
例えば前年の所得金額が400万円で所得控除が40万円(税額控除なし)だった場合、400万円-40万円×10%=36万円が所得割額です。

赤字の場合は所得税・住民税は非課税になる

所得税と住民税は1年間の所得によって算出されますが、もし赤字だった場合は所得税と住民税が非課税になります。
なぜなら、所得額が0円以下の赤字であればいくら税率をかけても0円になってしまうためです。赤字なら確定申告をする必要もありません。

ただし、青色申告だと損失の繰り越し(3年間)ができたり、国民健康保険料の優遇が受けられたりするため、赤字でも確定申告は提出したほうが良いでしょう。

個人事業税

個人事業税は、法律で定められた業種で事業を展開している場合に課される税金です。
個人事業税がかかる業種は都道府県ごとに異なり、各地域や事業に応じて税率も異なります。例えば東京都が定める法定業種と税率は以下のとおりです。

区分 税率 事業
第1種事業(37種) 5% 物品販売業、運送業、製造業、飲食店業、電気通信業など
第2種事業(3業種) 4% 畜産業、水産業、薪炭製造業
第3種事業(30種) 5% 医業、税理士業、デザイン業、理容・美容業など
3% あんま・マッサージまたは指圧・はり・きゅう・柔道整復その他の医業に類する事業、装蹄師業

個人事業税で納める税額は確定申告をもとに決定します。確定申告の終了後、税務署から納税額の通知と納付書が送付されるので、期限までに収めてください。

なお、個人事業税は年間で一律290万円の事業主控除があります。年間の事業所得が290万円以下の場合は個人事業税を納めなくても問題ありません。

消費税

消費税は商品・サービスを取引きした際に発生する税金です。
消費税を納めるのはあくまで諸費者側となりますが、納めるのは基本的に事業者側になるため間接税と呼ばれています。

個人事業主の場合、前々年度の課税売上高が1,000万円を超えた場合と、前年度1~6月までの課税売上高が1,000万円を超えた場合に消費税課税事業者となります。
消費税の計算方法は以下のとおりです。

課税売上にかかわる消費税額-仕入れなどにかかわる消費税額=消費税額

納付税額を計算する際には標準税率10%または軽減税率8%を掛ける必要があります。軽減税率の対象となるのは、飲食料品や新聞です。

個人事業主が支払う社会保険料の計算方法


企業に勤めていた時は会社が社会保険料を半分負担していましたが、個人事業主になると全額負担することになります。
個人事業主が支払う社会保険料は、以下の項目です。それぞれの計算方法について解説します。

国民健康保険料

会社に勤めていた場合は健康保険組合や協会けんぽに加入していましたが、個人事業主になると原則国民健康保険へ加入することになります。
国民健康保険料の内訳は、以下のとおりです。

  • 医療分
  • 後期高齢者支援金分
  • 介護分

40歳未満の場合は医療分+後期高齢者支援金分で保険料が決まりますが、40歳以上65歳未満の場合は介護分が上乗せされ、負担額が増えます。

国民健康保険料は均等割と所得割の合計金額によって計算することが可能です。所得割は基準総所得金額×所得料率で求められます。
各自治体で保険料の早見表やシミュレーターなどが用意されているので、各自治体のホームページから国民健康保険料がどれくらいになるか計算してみてください。

国民年金保険料

個人事業主は国民年金の第1号被保険者となり、自身で保険料を支払っていく必要があります。
第2号被保険者(厚生年金)の保険料は収入によって段階的に決定されますが、第1号被保険者の場合は収入に限らず、一律で月額16,980円を支払うことになります。
この保険料は毎年改定されており、2024年4月~2025年3月に支払う保険料です。

なお、国民年金保険料は一定期間の保険料をまとめて支払える前納にも対応しています。前納を行うと1回あたりの納付額が安くなるため、少しでもお得にしたい方は前納での支払いを検討してみてください。

介護保険料

介護保険料は40~64歳までの人が支払う保険料です。介護保険料を納めていると、介護認定された場合に適切な介護サービスを受けられるようになります。
計算方法は第1号被保険者(65歳以上)と第2号被保険者(40~64歳の医療保険加入者)によって異なります。

また、第2号被保険者でも国民健康保険に加入しているか、別の医療保険に加入しているかによって計算方法が違ってくるので注意が必要です。
今回は個人事業主の介護保険料ということで、第1号被保険者と第2号被保険者で国民健康保険に加入している場合の計算方法をご紹介します。

【第1号被保険者】
第1号被保険者の介護保険料は市区町村ごとに違っており、所得段階に応じた割合をかけることで1カ月分の保険料を算出できます。
所得段階も市区町村によって異なるため、自身がどの所得段階で、どれくらいの割合をかければ良いかは各自治体のホームページから確認してみてください。

【第2号被保険者で国民健康保険に加入】
国民健康保険に加入している場合、計算方法そのものが各自治体によって異なります。以下の項目いずれかを組み合わせて介護保険料を計算するのですが、その組み合わせが自治体によって違います。

  • 所得割
  • 均等割
  • 平等割
  • 資産割

また、介護保険料率も各市区町村によって決まっています。

個人事業主の年収別手取り額シミュレーション


個人事業主の年収別に、手取り額をシミュレーションしてみました。
あくまでも目安になりますが、大まかにどれくらいの手取り額になるのか知りたい方はぜひチェックしてみてください。
なお、すべて青色申告をした場合の金額となっています。

年収300万円

年収300万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約70,000円
住民税 約146,000円
国民健康保険料 約286,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約2,300,000円

年収400万円

年収400万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約132,000円
住民税 約234,000円
国民健康保険料 約401,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約3,230,000円

年収500万円

年収500万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約222,000円
住民税 約323,000円
国民健康保険料 約516,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約3,940,000円

年収600万円

年収600万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約387,000円
住民税 約411,000円
国民健康保険料 約631,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約4,370,000円

年収700万円

年収700万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約568,000円
住民税 約500,000円
国民健康保険料 約746,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約4,990,000円

年収800万円

年収800万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約749,000円
住民税 約588,000円
国民健康保険料 約860,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約5,600,000円

年収900万円

年収900万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約928,000円
住民税 約688,000円
国民健康保険料 約888,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約6,300,000円

年収1000万円

年収1,000万円の税額・保険料・手取り金額は以下のとおりです。

所得税 約1,153,000円
住民税 約788,000円
国民健康保険料 約890,000円
国民年金保険料 約200,000円
手取り 約6,970,000円

個人事業主が手取りを増やすためのポイント


ここまで個人事業主の手取り額をシミュレーションしてきましたが、思っている以上に税金や保険料で差し引かれてしまい、手取りが少ないと感じる人も多いかもしれません。
しかし、様々な工夫を凝らすことで受け取れる金額を増やすことも可能です。最後に、個人事業主が手取りを増やすためのポイントのご紹介です。

確定申告で所得控除を利用する

個人事業主に限らず、所得がある人は原則所得税を納めることになります。この所得税は累進課税に該当するため、所得が増えれば増えるほど納める金額も高くなっていきます。
少しでも所得税で納める額を減らすためには、所得控除を活用してください。

所得控除は基礎控除を含めて全部で15種類もあります。
例えば一定額以上の医療費を支払っている場合、医療費控除が適用され、(1年間に支払った医療費-保険金などで補てんされた金額)-10万円で算出した金額が控除額です。
ほかにも、生命保険料控除や寄付金控除、扶養控除などもあるため、利用できる控除がないか探してみてください。

家事按分で経費計上する

個人事業主の中にはオフィスを持たず、自宅で仕事をしている人もいます。自宅で仕事をする場合は、家賃や光熱費の一部を経費として計上することが可能です。
生活費と事業費を既定のルールによって仕分け、事業に使用した分だけ算出することを家事按分といいます。

家事按分の対象になるのは、主に以下の項目です。

  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 自動車関連費(車両の購入代金、ガソリン代、駐車場代など)

必要以上の按分率や、生計を共にする家族・親族がいる場合に支払う家賃などは経費計上できないため注意が必要です。

小規模企業共済を活用する

小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の経営者および役員などが利用できる退職金制度です。老後の生活資金を確保するために用いられます。
小規模企業共済の大きなメリットは、掛金が全額所得控除の対象になる点です。
例えば毎月5万円を掛金として積み立てていた場合、60万円の所得控除を受けられることになります。

毎月の掛け金は1,000円~7万円の範囲で、500円単位で自由に設定することが可能です。
加入後も増額・減額が可能なので、売上的に余裕があれば掛金を増やし、生活費が心もとないのであれば減額するなど、臨機応変に変更してください。

個人事業主の手取りを増やすなら節税と控除を上手に活用しよう

今回は、個人事業主の手取り額についてご紹介してきました。個人事業主は所得税や住民税などの税金に加え、社会保険料を全額自己負担で支払わなくてはなりません。
しかし、節税と控除を上手に活用していけば、手取り額を増やすことは可能です。
手取り額を増やしたい方は、今回ご紹介した方法を参考に取り入れてみてください。

創業手帳では、個人事業主が支払う必要がある税金の時期について、カレンダー形式でまとめた「税金カレンダー」を無料配布中です。税金を支払い忘れてしまうと、無駄な出費がかかってしまいますので、ぜひこちらを活用して、税金の支払い忘れがないようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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