個人事業主が銀行口座を屋号付きにするメリットとは?開設可能な金融機関もご紹介
個人事業主として起業する場合は屋号付きの銀行口座がおすすめ
個人事業主は事業用の銀行口座を用意することで、プライベートと事業の支出を分けて管理できるようになります。
事業用の銀行口座を開設するのであれば、屋号付きがおすすめです。
個人名義でも事業に関する収支の管理は可能ですが、屋号付き銀行口座の開設にはいくつもメリットがあります。
そこで今回は、個人事業主が屋号付き銀行口座を開設するメリットや作成の手順、注意点などを解説します。
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この記事の目次
屋号付き銀行口座とは?
屋号付き銀行口座とは、屋号と個人の名前を名義にして開設される銀行口座のことです。
そもそも屋号とは、個人事業主が事業で使用する名前のことで、主に商店や事務所などの名義がそれに該当します。
法人登記をしていない個人事業主の場合、名義が商号(会社名)となる法人口座を開設できません。
そのため、事業用に開設するのであれば、屋号付き銀行口座が選択肢となります。
個人事業主が開業・または廃業する際の届出書に屋号欄あり、そこに入力して提出することで屋号の登録が可能です。
屋号がなくてもビジネスはできますが、屋号付き銀行口座を開設するためには登録をしなければなりません。
通常口座と屋号付き口座の違い
屋号付き口座は通常口座と同じく個人が開設する銀行口座ですが、銀行の選択肢の多さや開設方法に違いがあります。
通常口座はメガバンクや地方銀行、信用金庫、ネット銀行など様々な金融機関で開設できます。
また、窓口以外にネットや郵送、テレビ電話など幅広い方法で開設できる銀行が多いです。
しかし、屋号付き銀行口座は対応している銀行が限られているため、普通口座よりも選択肢は少なくなってしまいます。
さらに、開設方法も基本的に窓口のみとなっているので、銀行が営業している時間帯に来店して手続きを行う必要があります。
個人事業主が屋号付き銀行口座を開設するメリット
個人事業主にとって、屋号付き銀行口座の開設は様々なメリットがあります。具体的なメリットは以下のとおりです。
金銭の管理がしやすくなる
個人名義の銀行口座でも事業の収支は管理できますが、プライベートの収支と混同してしまい、経費の管理や計算に手間が生じるでしょう。
屋号付き銀行口座を開設し事業に関する収支を分ければ、金銭の管理がしやすくなります。
事業用の口座を個人名義で作ってしまうと、事業における取引きで間違ってプライベート用口座を使ってしまうリスクがあります。
屋号付き銀行口座であれば、プライベート用の口座で取引きしてしまうリスクを防ぐことが可能です。
確定申告時の手間が省ける
確定申告では、事業で生じた収入や経費の申告をするために、提出書類の作成が必要です。
プライベート用の収支と混同していると、公私の線引きがあいまいになり、確定申告の書類作成に手間がかかってしまう恐れがあります。
屋号付き銀行口座では事業の収支だけが明確になるので、確定申告で必要となる帳簿付けや資料作成の手間を省くことが可能です。
顧客から信頼を得やすい
顧客からの信頼を得られやすい点も屋号付き銀行口座のメリットです。
特に個人事業主と顧客が対面する機会がないネットショップの場合、初めての取引きの際代金の支払先が個人名となると買い手から躊躇される恐れがあります。
屋号付き銀行口座であれば、お店の名前付きの銀行口座を振込先に指定することが可能です。
それにより「確実にビジネスが行われている業者」という印象を与えられるため、顧客の不安軽減につながります。
また、屋号付き銀行口座を使うことは、個人事業主が多い業界で差別化できる点もメリットです。
帳簿ソフトとの連動が可能
帳簿ソフトの多くは、屋号付き銀行口座と連動することが可能です。連動させておけば、自動的に帳簿に入出金や引き落としの記録が反映され、入力作業の手間を省けます。
プライベートと兼用している銀行口座となると、帳簿ソフトと連動しても、毎回事業での支出かどうか確認と修正が必要です。
事業の合間に自身で帳簿付けを行う個人事業主にとって、屋号付き口座の開設と連動は経理業務の効率化につながるでしょう。
プライベートな出費を税理士に見せずに済む
経理業務を税理士に依頼するにあたって、銀行口座の履歴を確認することがあります。
その際プライベートと兼用している口座であれば、プライベートの出費まで見られることになります。
しかし、屋号付き銀行口座であれば、事業の収支だけを確認してもらうことが可能です。
税理士のみならず、企業コンサルタントからアドバイスを受ける時や雇った従業員に経理を任せる際など、銀行口座を見せる機会は意外に多いです。
プライベートの出費は個人のプライバシーに関わる内容なので、屋号付き銀行口座なら第三者に通帳を見せる抵抗感を軽減できます。
屋号付き銀行口座を開設できる金融機関
屋号付き銀行口座はすべての銀行で対応しているわけではない点に注意が必要です。ここで、どの銀行で開設可能なのかご紹介します。
都市銀行
屋号付き銀行口座を開設できる都市銀行の例は以下のとおりです。
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- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
- みずほ銀行
- りそな銀行
都市銀行は全国に支店があり、ATMの数も多いことから、入出金や振込みの手続きがしやすい特徴があります。
知名度も高いので、顧客や取引先が振込みを行う際の抵抗感も軽減される可能性が高いといえます。
また、都市銀行の口座を持つ人が多い点もメリットです。振込みの際、同じ銀行同士の取引であれば手数料が無料、または他の銀行よりも安くなります。
利用者が多い都市銀行では、その恩恵を受けられる顧客も多いと言えます。
ただし、口座開設の審査が厳しい、ネットバンクよりも手数料が高い点がデメリットです。
他にも、将来的に事業用の融資を受けたいと思った場合、地方銀行や信用銀行と比べて消極的である点にも注意しなければなりません。
地方銀行
地方銀行は、都道府県や地域で展開している銀行です。自分が住む地域の銀行で屋号付き口座開設できるどうかは、直接問い合わせて確認してください。
その地域では知名度が高い銀行であるため、地元の消費者や事業者が利用しているケースが多いです。
そのため、特定の地域に向けて展開しているビジネスでは特におすすめと言えます。
地方銀行では、地元の中小企業や小規模事業者に対する融資も積極的に行っている点もメリットです。
ただし、地方銀行もネットバンクと比べると手数料が高く、また都市銀行と比べてATMが少ない点がデメリットになります。
信用金庫
信用金庫は、都道府県や地域により密着した銀行です。こちらも屋号付き銀行口座の開設が可能かどうかは、銀行に問い合わせてください。
信用金庫は、地元の中小企業や個人事業主の応援に力を入れています。屋号付き銀行口座を開設して関係を築いておけば、融資の相談がしやすくなるでしょう。
地方銀行と同様に地元で利用する顧客や事業者が多いので、その地域で事業を展開している個人事業主に向いています。
口座を開設できる地域が限定されている、ATMの数が少ない点に注意が必要です。
ネットバンク
ネットバンクは実店舗を持たず、口座の開設から取引の手続きまで行える銀行のことです。屋号付き口座を開設できるネットバンクの例は以下のとおりです。
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- 楽天銀行
- GMOあおぞらネット銀行
- PayPay銀行
ネットバンクは、オンラインで手続きを完結できる利便性や手数料の安さから利用者が増えており、事業用としてもニーズがあります。
口座開設も早く、即日から2週間程度で利用できるようになります。
実店舗がないため、トラブルが生じた際には適切に対応がうけられるのかという不安感を抱きやすい点がデメリットです。
ゆうちょ銀行
ゆうちょ銀行は、日本郵政グループに属する銀行です。全国各地にあるので、ATMを使いやすい点がメリットになります。
通常、屋号付き銀行口座は名義の表記が「屋号+名前」となりますが、数ある銀行で唯一屋号のみの名義で開設できることがゆうちょ銀行の特徴です。
そのため、自分の名前を伏せて事業用の銀行口座で取引きしたい個人事業主におすすめです。
ただし、屋号付き口座は振替口座での開設となり、通帳が発行されません。入出金明細は、送付される証明書で確認することになります。
また、インターネットバンキングを利用すれば取引内容をリアルタイムで確認することが可能です。
個人事業主が屋号付き銀行口座を作成する手順
屋号付き銀行口座の開設手順や必要な書類は、各金融機関によって異なります。そのため、事前に確認した上で手続きを行ってください。
ここでは、一般的に必要な書類と口座開設の流れを解説します。
必要な書類
開業届出書 | 事業を営んでいることを証明するために必要です。開業からかなり時間が経過している場合は、確定申告書の控えでも代用できるケースもあります。 |
本人確認書類 | 本人確認に使用できる書類例は以下のとおりです。 ・運転免許証 ・パスポート ・マイナンバーカード ・健康保険証明・介護保険証 ・年金手帳 ・住民票の写し ・戸籍謄本・抄本 ・公共料金や国税・地方税の領収書 |
屋号を確認できる書類 | 屋号を確認できる書類例は以下のとおりです。 ・国税や地方税の領収書・納税証明書 ・社会保険料の証明書 ・公共料金の証明書 ・税務署収受印付きの確定申告書 |
本人確認書類に関しては、運転免許証やパスポートなどの顔写真付きの証明書であれば、1点で十分です。
しかし、健康保険証や住民票の写しなどの写真なしの資料は、2点以上必要になるケースが多いです。
開設手順
屋号付き銀行口座を開設するまでのステップは以下のとおりです。
開業届を提出する
屋号付き銀行口座を開設するためには、その屋号で事業を営んでいる証明が必要です。
そのため、開業届出書を作成して所轄の税務署に提出し、受け取った控えはなくさないように保管してください。
開業届は事業を始めて1カ月以内に提出する義務があります。
未提出であったり期限が経過しているからといって罰則を受けることはありませんが、屋号付き銀行口座を開設する予定であれば、速やかに届出することをおすすめします。
すでに屋号を付けずに開業届を提出している場合や途中で屋号を変更したい時は、確定申告書に記載して申告すれば問題ありません。
金融機関を選ぶ
銀行口座を開設する金融機関を選びます。上記で解説したとおり、屋号付き銀行口座を開設できる金融機関は複数あり、メリット・デメリットも異なります。
知名度が高い金融機関でも、近場に支店やATMがないと使い勝手が悪くなるので注意してください。
また、手数料や利率、各種サービスを比べて、自分の事業に適した金融機関を選ぶことがポイントです。
準備した必要書類の提出
金融機関が提示する、屋号付き銀行口座を開設に必要な書類を用意してください。
上記で一般的な必要書類をご紹介していますが、実際に必要な書類は異なるので、各銀行のホームページから確認しておきましょう。
実店舗がある金融機関では、窓口に来店して提出することができます。ネットバンクの場合、データか郵送で提出となります。
審査・口座開設
必要書類を提出すると審査が実施され、通過すると口座開設となります。金融機関によって審査期間は異なりますが、1週間から1カ月が目安です。
書類に不備があった際は、追加で書類の提出を求められます。その際、提出が遅れると審査機関がさらに延びてしまうので注意してください。
屋号付き銀行口座を開設する際の注意点
屋号付き銀行口座の開設に大きなデメリットはないものの、注意点があるのでご紹介します。
口座開設の手間がかかる
屋号付き銀行口座は、基本的に窓口で開設の手続きを行わなければなりません。営業時間内に銀行に来店する手間が生じます。
また、本人確認書類や屋号の確認書類など提出書類の用意にも手間がかかるので、余裕を持って準備してください。
ネットバンクであれば、オンラインで手続きを完結できます。ただし、実店舗よりも選択肢が少なる点に注意してください。
審査に時間がかかる可能性がある
詐欺やマネーロンダリングなどの犯罪防止のために審査基準を厳しくしている金融機関も多く、審査に時間がかかってしまうケースがあります。
そのため、自分が希望する日までに口座開設ができない可能性がある点に注意してください。
先に述べたとおり、不備がなければ開設まで1週間から1カ月程かかります。「この日までに口座を用意したい」という希望があれば、早めに開設の手続きを行ってください。
また、書類の不備があると審査機関が延びてしまうので、申込書や提出書類をよく確認した上で開設の手続きを行いましょう。
事務所最寄りの支店以外では断られる可能性も
金融機関によっては、事務所や店舗など拠点から離れた支店では口座を開設できないことがあるので注意してください。
拠点から離れた場所の支店を選んだ場合、銀行側から不審に思われて利用目的を確認される可能性があります。
そのため、特別な事情がない限り、拠点に近い支店に申し込みましょう。
まとめ
法人格を持たない個人事業主は法人口座を開設できませんが、屋号付き銀行口座を事業用として利用できます。
屋号付き銀行口座があれば、事業用の収支管理がしやすくなり、取引先や顧客から信頼を得やすいなどのメリットがあります。
屋号付き銀行口座は対応している金融機関が限られるため、自分のビジネスや目的に合わせて慎重に選択しましょう。
今後、事業拡大のために融資を検討しているのであれば、個人事業主に対して積極的に支援してくれる銀行を選ぶのがおすすめです。
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(編集:創業手帳編集部)