個人事業主の住民税を解説!計算方法や非課税にするためのポイントを知っておこう
個人事業主の住民税は高い?節税のためにできることは?
個人事業主は、事業を運営していく中で様々な税金を納めることになります。
自身が申告する所得税については知っているものの、ほかの税金についてはよく理解できていない方もいるかもしれません。
税金による出費を極力抑えるためにも、所得税以外の税金についても理解しておくことが大切です。そこで今回は、個人事業主が納める住民税について解説していきます。
計算方法から節税対策、非課税にするためのポイントなども解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
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個人事業主が納める住民税の仕組み
住民税は、一定以上の所得がある人が、自身の住む地域に納める税金です。
個人事業主も住民税を支払うことになりますが、給与所得者とは税額の決まり方や分類が異なります。
まずは、個人事業主が納める住民税の仕組みについて解説していきます。
住民税とは?
住民税は現在住んでいる都道府県や市区町村に対して支払う税金です。
所得税は国に納めているため国税に分類されますが、住民税は各自治体に納めていることから地方税に分類されます。
住民税は、地方自治体が提供する公共サービスに使われています。例えば、教育や福祉、救急、ごみ処理などです。
個人事業主は個人住民税の対象に含まれる
住民税は納税者で分類され、個人が負担する「個人住民税」と法人が負担する「法人住民税」の2種類に分かれます。
個人事業主の場合は個人住民税の対象に含まれ、毎年申告する確定申告の内容に基づいて納税額が決定します。
確定申告は毎年2月中旬頃から3月中旬頃まで行われ、その期間中に確定申告を税務署へ提出しなくてはなりません。
住民税は確定申告を行った後に市町村から通知された納税通知書を確認し、指定期日までに納めることになります。
個人事業主が納める住民税の計算方法
個人事業主が納める住民税がいくらになるのか気になる方も多いかもしれません。
住民税額の計算方法は所得を問わず平等の負担が求められる均等割と、所得に対して負担も変動する所得割の2種類があります。
個人住民税は均等割と所得割を足した額を納めることになります。
均等割による計算
均等割とは所得を問わず全員が同じ額を納めるものです。均等割の税額は5,000円を基準としていますが、各自治体によって若干異なります。
おおむね都道府県税が1,500~2,000円、市区町村税が約3,500円になるケースが多いです。
主要都市の均等割は以下のとおりです。なお、2024年度から国税の森林環境税が均等割と合わせて徴収されています。
都道府県 | 都道府県民税 | 市区町村税 | 森林環境税(国税) | 合計金額 |
北海道(札幌市) | 1,000円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,000円 |
宮城県(仙台市) | 2,200円 | 3,000円 | 1,000円 | 6,200円 |
東京都(すべての市区町村) | 1,000円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,000円 |
神奈川県(横浜市) | 1,300円 | 3,900円 | 1,000円 | 6,200円 |
新潟県(新潟市) | 1,000円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,000円 |
石川県(金沢市) | 1,500円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,000円 |
愛知県(名古屋市) | 1,500円 | 2,800円 | 1,000円 | 5,300円 |
大阪府(大阪市) | 1,300円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,300円 |
広島県(広島市) | 1,500円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,500円 |
福岡県(福岡市) | 1,500円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,500円 |
鹿児島県(鹿児島市) | 1,500円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,500円 |
沖縄県(那覇市) | 1,000円 | 3,000円 | 1,000円 | 5,000円 |
森林環境税は課税されているものの、2023年度までは臨時特例分が加算されていたため、合計金額自体は変わっていない市区町村も多いです。
所得割による計算
所得割は前年の所得に基づいて計算されます。個人事業主だと確定申告によって前年の所得額が明らかになっているため、市町村はその所得に基づき住民税を計算します。
つまり、所得割による計算を自ら行う必要はありません。しかし、どれほどの金額になるのかは気になるところです。所得割の計算式は以下のようになります。
(前年所得-所得控除)×標準税率10%-税額控除=所得割
個人事業主で青色申告をしている場合は特別控除が適用されます。
ほかにも、基礎控除や配偶者控除、扶養控除などの所得控除が受けられたり、ふるさと納税などの税額控除を受けたりすることも可能です。
均等割+所得割が個人住民税の税額になる
最終的な個人住民税は均等割+所得割で求められます。例えば、均等割が5,000円、所得割が200,000円だった場合、納めるべき個人住民税額は205,000円です。
詳しい住民税額は6月頃に通知される住民税決定通知書を確認してください。
住民税は経費計上できない!その他の経費計上で節税対策しよう!
税金の中には必要経費に分類できるものとできないものがあります。個人事業主が納める住民税は事業主個人にかかる税金となるため、経費計上できません。
基本的には自身の銀行口座や現金で住民税を納めれば記帳は不要ですが、万が一事業で活用している銀行口座から納めた場合は仕訳が必要です。
住民税を仕訳する場合は、事業主貸の勘定科目を用います。あくまでも「事業用の口座から住民税額分を事業主に貸した」ことを表記しておかなくてはなりません。
住民税は経費計上できないものの、その他の必要経費を計上することで節税対策は可能です。
必要経費は細かくても正確に計上することで総所得が減り、住民税を含め所得税や個人事業税などの節税につながります。
そのため、事業の経費としてかかった金額はしっかりと記録しておくことが大切です。なお、節税対策として住民税を非課税にすることも可能です。
非課税にする方法については以下で詳しくご紹介します。
個人事業主の住民税を非課税にする方法
個人事業主は住民税を必ず納める必要がありますが、課税売上や所得が一定未満だった場合は非課税となります。どのようにすれば住民税を非課税にできるのかご紹介します。
青色申告の特別控除を受ける
青色申告の特別控除を受ける方法が挙げられます。青色申告の特別控除は所得税の計算で適用されますが、住民税にも適用されます。
青色申告特別控除を受けた場合の控除額は、65万円・55万円・10万円のいずれかです。
住民税の所得割は約10%になるため、もし65万円の特別控除が受けられる場合は65,000円分の節税が可能です。
事業の売上げから必要経費と青色申告の特別控除を差し引き合計所得が43万円以下になれば、所得税の基礎控除(43万円)が差し引かれて住民税の所得割分が非課税になります。
均等割分の住民税は納める必要があるものの、住民税は所得割分の負担が大きいため、かなりの節税効果が期待できます。
学生であれば勤労学生控除を受ける
個人事業主の中には学生の方もいます。もし学生であれば青色申告の特別控除だけでなく勤労学生控除を受けることも可能です。
住民税における勤労学生控除額は26万円になります。
売上げから必要経費を差し引いた合計所得が69万円以下だった場合、青色申告の特別控除額43万円と勤労学生控除26万円が差し引かれるため、住民税の所得割分も非課税となります。
ただし、勤労学生控除を受けるには要件が設けられており、どの学生でも利用できるわけではないため注意してください。要件は以下のとおりです。
- 【所得制限】
-
- 給与所得など勤労による所得がある
- 合計所得金額が75万円以下、かつ上記の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下
なお、通う学校は特定の条件を満たしている必要がありますが、比較的幅広い学生が適用されています。実際に適用されるか不安な方は、学校に問い合わせてみてください。
個人事業主の住民税の納税時期
住民税を納める時期は、普通徴収と特別徴収によって異なります。特別徴収は給与から天引きされる形で徴収されているため、個人事業主は普通徴収の納付です。
普通徴収の場合、毎年6月頃に住民税決定通知書と納付書が送付されてきます。通知書には納付期限も明記されているため、必ず期限までに収めるようにしてください。
- 【納付期限】
-
- 一括納付:6月30日
- 分割納付:6月、8月、10月、翌年1月の各末日
個人事業主の住民税の納付方法
個人事業主が住民税を納める場合、様々な手段を活用して納付することが可能です。
納付方法 | 場所 | 納付金額の上限 |
市区町村の窓口 | 各市区町村の役所にある納税課など | - |
金融機関の窓口 | 指定金融機関、郵便局 | - |
口座振替 | - | - |
コンビニ | 主要コンビニ、MMK設置店 | 30万円まで |
Pay-easy(ペイジー) | Pay-easy対応のATM、ネットバンキング | |
スマホアプリ | PayPay、d払い、auPay、LINEPay、楽天ペイ、楽天銀行アプリ、Jcoinペイ、PayB | 30万円まで |
クレジットカード | モバイルレジアプリ | 30万円まで |
モバイルバンキング | モバイルレジアプリ | 30万円まで |
なお、地方税共通納税システム(エルタックス)でも住民税の支払いは可能ですが、普通徴収ではなく特別徴収に対応しているため、個人事業主が住民税を支払う際には利用できません。
また、コンビニやスマホアプリ、クレジットカード、モバイルバンキングに関しては、利用可能な納付金額の上限が30万円までと決められているため注意が必要です。
税金の詳しい納付方法について知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
個人事業主が住民税を払い忘れたらどうなる?
住民税は特別徴収なら会社が天引きしているため、払い忘れが発生することはありません。
一方、普通徴収だと納税通知書が送られてくるものの、つい通知書の確認が遅れてしまい、払い忘れが発生してしまうことも考えられます。
住民税に限らず、税金を滞納してしまうと延滞税というペナルティが発生します。延滞税は以下の計算式から求めることが可能です。
延滞した分の税額×延滞利率×延滞日数÷365日
計算式に使われている延滞利率は、納期限の翌日から2カ月以内と2カ月以降によって変動します。
-
- 2カ月以内:年7.3%または特例基準割合+1%のいずれか低い方
- 2カ月以降:年14.6%または特例基準割合+7.3%のいずれか低い方
特例基準割合は毎年改正されており、2024年1月1日~12月31日までは2カ月以内だと2.4%、2カ月以降だと8.7%かかります。
例えば10万円の住民税を90日間滞納した場合、以下のようになります。
(10万円×3.4%×60日)÷365日=558円
(10万円×14.6%×30日)÷365日=1,200円
558円+1,200円=1,758円
本来納めるべき10万円に加えて、1,758円の延滞税がプラスされます。
もちろん、滞納期間が延びればその分延滞税も高くなっていくので、忘れずに住民税を納めてください。
個人事業主が住民税以外で納める税金の種類
個人事業主は住民税以外にも税金を納める必要があります。どのような税金があるのか、再度確認してみてください。
所得税
所得税は1月1日~12月31日までに得た所得に対して課税される税金です。
住民税と同様に国税に分類され、年間1,000円以上の課税所得がある人は原則納税の義務が発生します。
所得税は所得金額が大きければ大きいほど、税率も上がっていく「累進課税制度」が適用されています。
例えば1,000円~1,949,000円までは税率5%、3,300,000円~6,949,000円までは税率20%です。所得控除の適用を受ければその分所得税の負担を軽減できます。
個人事業税
個人事業税は、個人で事業を営んでいる人に課せられる地方税です。個人事業税が課せられる業種は地方税法などで決まっており、70業種が該当しています。
個人事業税の場合は前年所得が290万円未満であれば非課税です。290万円以上だった場合、8月頃に都道府県事務所から納税通知書が送付され、原則2回に分けて個人事業税を納めることになります。
なお、業種の区分によって税率が異なります。自身が手掛ける事業がどの税率になるか確認したい場合は地方自治体のWebサイトを参考にしてください。
消費税
消費税は、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以上になると課税事業者として確定申告を行う義務が発生し、消費税額を納めなければいけません。
売上げにかかった消費税から仕入れなどにかかった消費税(課税仕入れ)を差し引くことで、消費税額が求められます。
また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、消費税課税選択届出書を提出している場合や、特定期間(前年1月1日~6月30日までの期間)の課税売上高が1,000万円を超えている場合も消費税の課税事業者になります。
これらに該当しない場合は免税事業者となり、消費税の納付義務はありません。
まとめ・個人事業主の住民税納付時期までに計算法や節税法を把握しておこう
住民税は住んでいる地域や所得額に応じて変わってきます。ご紹介した計算方法などを用いて、自身が納める住民税額がどれくらいなのか把握しておいてください。
また、住民税の納付時期は所得税と異なり、6月頃になります。個人事業主は普通徴収となるため、払い忘れがないよう注意してください。
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(編集:創業手帳編集部)