やってはいけない経費削減|7つのNG行為と対策

創業手帳

あらゆる観点からやってはいけない経費削減を意識すべし


会社の利益を上げるためには、経費を効率的に活用しなければいけません。
しかし、利益を上げることだけを目指していると、やってはいけない経費削減になってしまうことがあります。
経費削減のための施策は、多角的に評価して導入するかどうかを決定してください。ここでは、やってはいけない経費削減を紹介します。

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1.【人材教育・採用編】やってはいけない経費削減


経費削減策の中でも、特に削減しやすい費用が人件費です。
リストラして人員を削減したり、賃金や賞与をカットしたりすれば、手っ取り早く大きな効果を生み出します。
しかし、会社は人によって回っています。人材の経費削減を誤れば会社の将来にも影響するかもしれません。

従業員教育・研修費の削減

将来の人材を育成するための従業員教育や研修費は安易に削減すべきではありません。人材育成は、質が高い商品やサービスを維持するために欠かせない要素です。
人材の質が下がれば、会社の収益力も下がってしまいます。長期的な目線に立ち、研修費や教育にかかる費用の削減は避けてください。

必要な人材の解雇や採用凍結

経費削減策の中でも従業員の反感につながりやすいのが、リストラなど人材の解雇や賃金カットです。
労働契約法では、基本的に労働者との合意なしに労働者の不利益になる労働契約の変更を行ってはならないとしています。
就業規則の変更は内容によっては認められるものがありますが、賃金カットにつながる変更であれば従業員のモチベーションへの影響は避けられません。

また、経費削減を目的に従業員を採用しない、いわゆる「採用凍結」も従業員の士気にかかわります。
欠員が出ても新規採用しなければ他の従業員にしわ寄せが生じ、離職につながる可能性もあります。

2.【品質編】やってはいけない経費削減


会社が提供する商品やサービスの品質には、その企業の考えやあり方があらわれます。経費削減を目的とした施策であっても、品質に影響するものは慎重になるべきです。
品質面においてやってはいけない経費削減をまとめました。

原材料の品質低下

原材料の質を落としてコストが下がれば、利益率が高まると考えるかもしれません。

しかし、原材料の質が下がれば商品の質が下がるリスクがあります。商品の質が下がってしまえば、今までと同じ評価は受けられません。
つまり、長期的に商品や企業の評判を下げ、売上げも下がる可能性があるのです
一度でも質が低いと判断されてしまえば、覆すのは困難です。経費削減は、商品やサービスの質を維持することを前提として考えてください。

品質管理プロセスの簡略化

直接売上げにかかわっていない経費なら削減できると考えるかもしれません。品質管理のプロセスを簡略化したとしても問題なく売上げが出ると思われがちです。

しかし、品質管理プロセスは、不良品の流出や製品の品質維持のために欠かすことはできません。
品質管理プロセスを簡略化するだけの取組みは、製品の質を下げて企業の評判にも悪影響となるので避けてください。
ただし、システムを使った一元管理のように、ただ簡略化するのではなく品質管理をより効率化する取組みであれば実施を検討してみてください。

3.【営業活動編】やってはいけない経費削減


経費の中でも営業にかかわる費用は大きくなるケースが多いかもしれません。
広告宣伝費や販売促進費、人件費といった費用は膨れ上がり安い一方で、売上を支えている費用です。
営業活動でやってはいけない経費削減を紹介します。

広告予算の大幅カット

営業活動の中でも、特に目を付けられやすいのが広告予算です。人件費はすぐに削減するのは困難なケースが多いかもしれません。
しかし、広告費であればすぐに削減できると判断されてしまうことがあります。

広告予算は、単純にカットするのではなく、効果が出ているかどうかを検証することが大切です。
広告の中には、広告効果が高いものとそうでないものがあります。
ターゲットにどれだけアプローチできているのかを観測して、効果が少ない広告は他のものに切り替えるか、削減を検討してください。

また、広告方法が目的に合っているか考えてみてください。
認知度を上げて見込み顧客を増やしたいのか、それとも申込数や顧客数を増やすことを目的にするかで適した広告は異なります。
広告の効果を検証して、費用対効果が高い広告を選択しましょう。

営業部門の縮小

売上げが振るわない時には、営業部門の縮小も選択肢に上がります。営業部門を縮小すれば、人件費を削減できると考えるかもしれません。
人件費の削減によって短期的には営業利益が拡大する可能性はあります。しかし、営業部門を縮小することで、社員のモチベーションが下がるリスクがあります。

また、営業部門を縮小すれば、残った従業員にタスクが集中してしまうケースにも注意してください。
残った従業員が忙しくなって働きにくさを感じれば、離職に心が揺れてしまうこともあるかもしれません。
離職率が上がれば新規採用が必要となり、採用するためのコストが発生してしまいます。

4.【設備投資編】やってはいけない経費削減


企業の設備投資には大きく費用がかかります。設備投資には、オフィスのほか工場や店舗、さらにそこで使用する設備の本体、部品も含めます。
設備投資にかける費用を削減できれば経費を大きく削減できると考えるのは間違いです。設備投資でやってはいけない経費削減を紹介します。

老朽化した設備の使用継続

設備には想定されている能力が発揮できなくなる寿命が存在します。
老朽化によって劣化した設備を使い続けていれば、生産性が低下するケースや事故やトラブルにつながるかもしれません。

設備は適切に設備更新をしていれば、経年劣化のスピードを軽減したり、生産性を向上させたりする効果が期待できます。
企業が運営し続けるために、老朽化している設備は適宜更新や修繕を実施してください。

定期メンテナンスの間隔延長

設備に応じて、清掃や修理、チェックなどの定期メンテナンスが必要です。
しかし、メンテナンスは設備に問題がない時も実施するため、回数を減らしたり取りやめても問題ないと判断されてしまうことがあります。

定期メンテナンスの間隔が長くなれば、それだけ経費も削減できると考える人もいるかもしれません。
しかし、定期メンテナンスの間隔は、耐用年数や部品の寿命に応じて決められます。
メンテナンスの間隔が延長されることで、トラブルに見舞われるリスクが高まります。
メンテナンスを怠いトラブルが起きれば、修理費が余計にかかる可能性もあるので注意が必要です。

5.【研究開発費編】やってはいけない経費削減


研究開発費は、新製品や新技術の開発、改良のために発生する費用です。研究開発費は削減しても、すぐに売上げに影響するわけではないと削減されてしまうケースがあります。
しかし、研究開発費を削減することによって企業の将来にも影響を与えるかもしれません。やってはいけない研究開発費の削減について紹介します。

新製品開発の停止

研究開発費は、新製品を生み出し続けるために不可欠な経費です。新製品の開発をやめてしまえば企業の成長は望めません。
スピーディーに市場が移り変わる時代において、成長をやめた企業は存在価値を失う可能性があります。
他の企業と差別化して企業が存続し続けるために研究開発費は必要です。

技術革新への投資縮小

技術革新とは、様々な分野で画期的なブレークスルーが発生するようなツールやシステムの創造や応用を意味しています。
技術革新によって自動化や効率化が進めば、コスト革新や生産性の向上も期待できます。

しかし、技術革新はそう簡単に起きるものではありません。技術革新への投資は、将来企業がより収益性、効率性を高めるために必要な投資です。
短期的に結果が出なかった場合でもすぐに投資縮小するのはおすすめできません。

6.【福利厚生費編】やってはいけない経費削減


企業が支払う経費の中でも、大きな割合を占めているのが人件費です。
人件費には給与や賞与のほかに、採用費や教育費も含まれます。多くの項目があるため削減しやすいと思われがちですが、やり方を間違えれば労働環境が悪化するかもしれません。
ここでは人件費の中でも福利厚生の費用に限定して紹介します。

健康保険や年金制度の縮小

社会保険に該当する健康保険や厚生年金保険、介護保険は、企業に法律上の支払い義務がある保険です。雇用保険と労災保険である労働保険も会社が支払う必要があります。

法人税は利益によって納税額が決まるため、赤字になれば課税されません。しかし、社会保険料は利益とは関係なく支払いが必要な費用です。

社会保険料は、給与の支払い方や手当の支給方法によって削減が可能です。また、健康保険組合の選択によって保険料を削減できます。

しかし、従業員が社会保険の適用にならないように、労働時間を縮小する方法はおすすめできません。
従業員は企業の将来を担う存在です。コストが発生しても、優秀な人材を育成したほうが将来のリターンが大きくなる可能性があります。

職場環境改善の取組み中止

福利厚生費には、法律で義務付けられた法定福利費以外にも、企業独自で設けられた法定外福利厚生費があります。
法定外福利厚生費には、従業員の生活補助や健康維持、労働環境改善などがあります。

例えば、職場環境改善のために職場にブースを設置したり、仕事で使いやすいデバイスを支給することも福利厚生のひとつです。
社員食堂やカフェを設置することで、より労働意欲が高まるかもしれません。
こうした職場環境改善の取組みは、利益に寄与していないと判断されてしまうこともあるでしょう。
しかし、福利厚生は優秀な人材を確保したり、社員の集中力を上げたりするために、大きな役割を果たしています。

ワークライフバランスの取れた環境は、組織全体の生産性を向上できます。より効率的に働くために必要な費用は削減しないように注意してください

7.【IT投資・セキュリティ対策編】やってはいけない経費削減


IT化が進む現代において、IT投資やセキュリティ対策の費用は必ず発生する経費です。IT投資やセキュリティ対策でやってはいけない経費削減を紹介します。

旧式のシステムの使用継続

企業で使用しているシステムは、定期的な更新が必要です。更新に費用がかかるからと古いシステムを使い続けるのはおすすめできません。
旧式のシステムは情報処理能力が低いほか、セキュリティ面でもリスクが高くなります。システムがストップしてしまえば事業も止まり、顧客や取引先に損害が広がるかもしれません。

賠償金の支払いや風評悪化による株価下落のリスクもあります。企業の信用を維持するためにも、システムは適切な頻度で更新することをおすすめします。

サイバーセキュリティ対策の縮小

不正なアクセスやサイバー攻撃は増え続け、今後も企業にサイバーセキュリティ対策が求められます。
なりすましやウイルス、マルチウェアなどの方法でデータの漏洩や改ざんの被害を受ける可能性も考えられます。
また、被害を受けたことに気が付かずに、ウイルスに感染したメールを送信して被害を広げてしまうケースも少なくありません。

サイバーセキュリティ対策を縮小することは、自社だけでなく他社に被害を広げるリスクがある行為です。企業の将来を守るためにもセキュリティ対策への投資は必要です。

まとめ:やってはいけない経費削減を知って企業の健全性と成長を実現

経費削減の本来の目的は、企業にとって無駄になっている経費を削減して生産性向上につなげることです。
ただし、単純に人件費や製造費用を削減すれば良いわけではありません。必要な部分には経費をかけて、無駄になる部分だけをカットします。
無駄が少ない企業は財務体質も健全になり、ビジネスの成長にも期待が持てます。やってはいけない経費削減を知って、企業の成長に活用してください。



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(編集:創業手帳編集部)

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