確定申告の手続きを税理士に依頼するとどうなる?メリット・デメリットや費用などを解説
確定申告の煩雑な手続きを代行してくれる税理士。手続きを依頼した時について詳しく解説します。
確定申告は、個人事業主や法人、一定条件を満たした会社員などが行うべき手続きです。
しかし、確定申告書の作成は煩雑であることから、手続きを税理士に依頼することもひとつの方法です。
まずは、確定申告の基本について知り、税理士に相談するか否かを決めることが大切となります。
今回は、確定申告の概要から税理士への依頼のメリット・デメリット・費用について順番に解説します。
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この記事の目次
確定申告を税理士に依頼するメリット・デメリット
こちらからは、税理士に確定申告を依頼する際に生じるメリットとデメリットを紹介します。
確定申告を税理士に依頼するメリット6つ
①正確な作業が期待できる
税理士は、税務にかけては他のどのような業種よりも詳しいプロです。そのため、記帳も正確ですし、これをもとに作成する決算書にもミスはほぼ生じません。
税理士に依頼することで、ミスなく正しい確定申告が終了します。
②節税対策を行ってくれる
税制上で施行されている制度を有効に使うことで、大きな節税効果を生むことがあります。しかし、事業者はその税制を把握していないことも多いです。
税理士に相談すれば有効な節税対策のアドバイスを受けられ、確定申告の際にも的確に対応してくれます。
また、確定申告前から税理士からのアドバイスを受けることで、決算時に慌てることなく余裕を持って節税対策にあたれます。
③資金計画を立てやすい
事業を進めるうえで、資金計画は重要な要素です。税理士は、節税のみならず有益な資金調達方法や、補助金などの申請方法のような相談にも応じてくれます。
これにより、地に足のついた資金計画を立てることが可能であり、経営に余裕が持てることが期待されます。
④コア業務に集中できる
確定申告およびそれにかかる各業務に手間取ることで、本来やるべき事業のコア業務がおろそかになるケースも少なくありません。
税理士に業務を委託すれば、煩雑な仕訳や伝票整理、書類作成をすべて任せることができ、コア業務に集中して業績向上のために注力できます。
⑤その他の税務相談にも乗ってくれる
確定申告以外にも、税務に関する疑問や解決策について、税理士に相談することができます。
これまで把握できていなかった税務について知ることで、今後の節税対策や有利な経営方針の立案にも役立つでしょう。
⑥税務調査の立ち合いも依頼できる
前述でも少し触れましたが、税務調査が来た際には税理士との契約内容によって立会いを依頼することが可能です。
税理士と長期的に契約している場合は、税務調査の際にも帳簿や決算書の内容について税理士が把握しているため、説明もスムーズになります。
確定申告を税理士に依頼するデメリット3つ
①税理士に支払う報酬が発生する
税理士と契約を結ぶと、報酬が発生するため支払わなければなりません。
記帳および確定申告書作成のみや、顧問契約を結ぶなどの契約形態によって報酬は異なりますが、注意が必要です。
②取引きにおける細かな説明が必要
税理士に記帳を依頼する際、請求書や領収書なども預けることになりますが、もし用途不明のものがあればその都度税理士に説明する手間は生じます。
税理士は部外者ですから、詳細を把握するためには、事業者から詳しい話を聞かなければ、正しい記帳ができないためです。
③税務で知っておくべき知識が得にくい
税務のすべてを税理士に任せた場合、自分で行うべき税務業務はなくなるため、事業者が業務の流れや知識を把握できないことも考えられます。
確かに作業の手間は省けますが、実際に税務を把握して事業を進めていくのは事業者です。税務の知識がない状態では若干不安が残ります。
確定申告は税理士に依頼したほうが良い?
税理士へ依頼するには料金が発生するため、必要な額を支払えるかどうかを考えなければなりません。
コストをかける余裕があり、正確な税務処理ができるなどのメリットが欲しい場合は税理士への依頼がおすすめです。
確定申告には煩雑な事務処理があり、売上げを作るメインの業務にさく時間を削られがちです。
税理士に任せて利益につながる仕事へ集中した方が自分で確定申告をするより利益を生むと思えば、依頼するメリットがあります。
税理士と会計士の違い
税理士と会計士は担当する業務内容が異なるため、確定申告の代行は税理士へ依頼しましょう。
税理士の担当業務は、納税者に代わって行う税務・税務書類の作成・納税者との税務相談です。
一方会計士、正しくは公認会計士の担当業務は、企業や学校法人などが作成した財務諸表の監査などを行います。
税理士は税務、公認会計士は監査証明業務という、それぞれでしか担えない業務を行っています。
確定申告を税理士に依頼するべきタイミング
これまで個人事業主自身が行っていた確定申告を税理士へ依頼するタイミングは、次の3つがおすすめです。
・課税所得が500万円を超えた
売上げから経費を引いて出した所得から、各種控除を差し引いて出た金額が500万円を超えたときです。
課税所得が大きくなってくると税理士に依頼した方が節税になる可能性があるため、依頼を検討しましょう。
・年間売上が1,000万円を超えた
経費などを引く前の売上が1,000万円を超えた場合、課税所得も大きくなるので税理士への依頼がおすすめです。
売上げが1,000万円を超えた場合、2年後に消費税納税の義務が生じるため、消費税申告手続きをしなくてはなりません。
メインの業務以外の事務作業が増えるため、確定申告代行だけでなく顧問契約を検討すると良いタイミングです。
・個人事業を法人にする
個人事業の売上が増え事業が拡大してきたら、会社を設立して法人化する方法もあります。
しかし、個人事業主と法人は別人格のため、専門知識にもとづく手続きや費用の支払いが必要です。
それまでの個人事業を廃業して法人を立ち上げるには最終年度の確定申告をしなければならず、正しく計上し確定申告するためにも、税理士への依頼が安心です。
税理士に確定申告を依頼する際の費用相場
税理士へ支払う報酬は、それぞれに異なることから一概に平均的な金額を提示することは難しいです。
ただし、ある程度の相場は存在するため、その金額を契約内容ごとに見ていきます。
決算・確定申告時のみ契約するケース
自分で記帳までを行った時
自身で帳簿の記帳や決算書作成までを行い、確定申告業務のみを委託する際は、だいたい1万円~3万円くらいの報酬が発生します。
業務をすべて税理士に依頼する時
確定申告にかかる伝票整理や記帳、決算書および確定申告書の作成、申告まですべて依頼する時の報酬相場は、10万円~15万円程度です。
年末調整を行ってもらう時
従業員の年末調整を依頼するケースでは、従業員が10名まででおよそ2万円前後、10名以上では1名ごとに1,000円程度の上乗せが生じることが多いです。
税理士と顧問契約をするケース
個人事業主の場合
個人事業主が税理士と顧問契約を結ぶ時、税理士が事業所を訪ねて打ち合わせやチェックを行うスパンやサービスにより、概算で以下のような報酬が発生します。
訪問頻度 | 顧問料(1カ月) | 記帳代行(1カ月) | 決算・確定申告代行(1年) |
---|---|---|---|
毎月 | 20,000円程度~ | 5,000円程度~ | 80,000円程度~ |
3カ月ごと | 15,000円程度~ | ||
半年ごと | 10,000円程度~ |
法人の場合
法人の場合は、個人事業主と比べて法人税の申告について複雑な処理が増えると想定されることから、個人事業主の顧問契約よりも若干高めとなっています。
訪問頻度 | 顧問料(1カ月) | 記帳代行(1カ月) | 決算・確定申告代行(1年) |
---|---|---|---|
毎月 | 25,000円程度~ | 5,000円程度~ | 100,000円程度~ |
3カ月ごと | 20,000円程度~ | ||
半年ごと | 15,000円程度~ |
これらは、あくまで相場であるため、詳細は税理士もしくは仲介サイト・紹介会社に直接相談するのが良いでしょう。
税理士に確定申告を依頼するための準備
税理士に確定申告の業務を依頼する際には、事前にある程度の準備をしておくことが求められます。以下では、準備の内容について解説します。
どこまで確定申告の手続き業務を任せるかを考える
税理士と契約を結ぶ前に、どの部分までの業務を任せるかを決めておきます。確定申告に限った例を出すと、大まかに以下のように分けることができます。
-
- 確定申告書作成のみ
- 確定申告書作成および申告作業
- 伝票整理および記帳と確定申告書の作成
- 記帳や決算書作成から確定申告書作成、申告作業まですべて
これら、税理士に委託できる業務の内容によって、支払うべき報酬額も変わってきます。事業者自身の手間の省略とコストのバランスを見て、委託内容を決めましょう。
税理士に確定申告を丸投げして依頼する際に用意するもの
こちらでは、確定申告の業務をすべて税理士に依頼する場合に用意するものをあげていきます。
・領収書、請求書などの証拠書類
領収書、請求書などの伝票(証拠書類)は、経費および売上げ額を税理士が把握し、記帳するために必要です。
特に、領収書は使途がわからなければ正確な仕訳ができないため、詳細がわかる状態で提出することが大切です。
・事業用銀行口座の預金通帳
確定申告の際には、収支の流れが銀行口座の通帳と合致していなければ、正しい金額を算出できません。
事業用の通帳を別で作ったうえで、定期的に税理士に提出することが理想です。
・各種控除に使用する証明書類
社会保険料や生命保険料の各種控除を受ける時、控除証明書を用意しなければ確定申告書に反映させることができません。
これらの証明書は大切に保管し、税理士に提出できるようにします。
・支払調書
必要に応じて、報酬に対する源泉徴収税額を記載した支払調書を用意します。
税理士に確定申告を丸投げして依頼する際の注意点
税理士に確定申告作業のすべてを任せる時には、以下の点に注意してください。
・必要書類はきちんと整理して早めに渡す
上記にあげた必要書類は、きちんと分類・整理したうえでなるべく早く税理士に出すようにします。
こうすることで、税理士のチェックの手間を少しでも減らすことができます。
遅くとも、確定申告を行う1ヵ月~2ヵ月前にはすべての書類をまとめて渡しましょう。
・レシートや領収書はできるだけすべて見せる
特に、何らかの事由で支出した際のレシートや領収書は、可能な限りすべて税理士に見せることが得策です。
これらの支出が経費計上できるか否かの判断について、特に個人事業主では判断しづらいこともあります。
例えば、取引先との会食が交際費にあたるか否か、購入した本を新聞図書費として経費計上したくとも、本当に事業に供するものかどうかなどです。
上記のような判断を税理士に任せるために、支出した際の伝票で提出できるものはすべて提出するようにしましょう。
・青色申告の特別控除を受けたい旨を伝える
まだ白色申告を行っている場合や、青色申告でも簡易簿記にしか対応できないことで特別控除を10万円しか受けていない場合は、税理士に依頼するタイミングがチャンスです。
なぜなら、税理士には複式簿記での記帳を依頼することが可能であるためです。これにより、青色申告の特別控除55万円(e-Taxでの申告であれば65万円)が適用されます。
そのため、税理士に依頼する際には、青色申告の特別控除55万円(65万円)を受けたいと伝えておきましょう。
どの税理士に依頼するか決める
税理士へ依頼する際には、自分に合った人を選ぶことが大切です。
自分に合った税理士を選ぶには
どの税理士と契約するかを選ぶには、以下のような方法があります。
・自分で近くの税理士事務所を探す、また紹介してもらい直接出向く
まずは無料相談を行っているところを選び、複数社を訪ねるのがおすすめです。
・税理士事務所のホームページを見るか、税理士仲介ポータルサイトを利用する
探し方としては気軽ですし、得意分野を知ることもできますが、相性が合わない可能性もあります。
・税理士紹介会社に依頼する
この方法であれば、自分の要望に合った税理士をピックアップしてくれます。ただし、税理士紹介会社自体が良心的ではないケースも考えられます。
・自社事業や業種について詳しいか、すでに同業種の顧客がいるかを確認する
税理士が税務の専門家であっても、数ある業界全てに精通しているわけではないため、自分の行う事業や業界の知識がある税理士へ依頼しましょう。
専門用語や慣習などは、業界の知識がなければ理解が難しいためです。
・コミュニケーションの取りやすさをチェックする
話しやすく意思疎通がスムーズで、自分と相性が良いと感じる税理士に依頼をするのがおすすめです。
確定申告を完了するまでたびたび連絡を取る必要があるので、ストレスに感じないかも大切です。
・予算と行って欲しい業務に見合った料金体系の税理士を探す
料金体系は税理士や事務所ごとに異なるため、見比べて自分が求める内容と予算に合うところを見つけてください。
確定申告を税理士に依頼する際の流れ
税理士へ依頼すると決めたら早めの依頼が必要です。確定申告期間のひと月前ではすでにスケジュールが埋まり、受けてもらえない可能性があります。
また確定申告だけか、記帳も依頼するかによって必要な時間は変わるため、記帳業務まで含める場合は前年の夏~秋には依頼することをおすすめします。
任せる業務が多いほど、より早めの契約が不可欠です。次の流れで依頼先の税理士を決め、依頼するとスムーズに行えるでしょう。
2.自分に合う税理士を見つけ、必要な契約をする
3.領収書や帳簿など必要書類の提出
4.税理士が作成した申告書を最終確認する
5.税理士が確定申告する
ただし、契約内容によっては依頼者自身で申告する場合もあります。
確定申告後の納税も、自分で行うか税理士への報酬から源泉徴収するか、契約内容によって変わるため、納税し忘れを防ぐために確認しておくことも大切です。
まとめ・確定申告は信頼できる税理士に依頼して効率化しよう
確定申告の業務を事業者自身で行う際は、本来のコア業務を圧迫してしまう可能性があるほか、税務の知識が乏しいと難解です。
そこで、税理士に業務を依頼することは事業者の負担を減らすうえで有効な方法です。
税理士への依頼には、メリットとデメリットがそれぞれに存在するため、十分に検討して決めましょう。毎年の確定申告ですから、少しでも自分に有利な方法を選んでください。
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(編集:創業手帳編集部)