不要な会社の備品は売却しても問題ない?正しい経理処理・仕訳例を解説

創業手帳

会社の備品を売却した場合の処理方法を把握しよう


近年はリサイクルショップやフリマアプリなどを活用することで、手軽に中古品を売却できるようになりました。
そのため、会社の備品で不要なものが発生した場合、リサイクルショップなどへ売却しようと考える人も多いかもしれません。
会社の備品を売却した場合、経理処理や仕訳はどのように行えば良いのでしょうか。

そこで今回は、会社の備品を売却処理した場合の経理処理や仕訳方法について紹介します。
また、会社の備品を社員に売却する場合の注意点や消費税が課される条件なども解説しているので、気になる人はぜひチェックしてみてください。

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会社の備品を売却した際の経理処理はどうなる?


会社の備品を売却した場合、経理処理はその備品を購入した際に行った経理処理や決算書の記載、どれくらいで売れたのかなどを把握する必要があります。
そこで、購入時に全額を経費計上している場合と固定資産として計上している場合に分けて、経理処理がどのようになるのか解説していきます。

購入時に全額を経費計上している場合

備品を購入すると、原則資産に計上して使用可能な期間にわたり費用化を行っていきます。
ただし、単価が10万円未満のものや耐用年数が1年未満のものは、購入時や使用時に全額を経費計上しても問題ありません。

もし備品の購入時に全額を経費計上していた場合、売却によって得られた金額は全額収益になります。
備品の売却が本業でなければ、基本的には営業外収益の雑収入で計上することになりますが、購入と売却が同事業年度だった場合や売却益が少なかった場合、費用のマイナスとして処理することも可能です。

さらに、売却する際に発生した付随費用(仲介者への手数料や売却できる状態にするためにかかった費用など)は、支払手数料などの費用として処理します。

購入時に固定資産として計上している場合

購入時に固定資産として計上した場合、貸借対照表から固定資産の除却を行う必要があります。
固定資産の除却とは、事業で使用しなくなった固定資産の簿価(残高)をなくすことです。
減価償却が進んでおり、固定資産の資産価値を失ったとしても、資産を事業で使用し続けている限りは除却することができません。
除却を行う場合は、使用を中止または廃棄する場合に限られるので注意してください。

売却時の貸借対照表にある金額(帳簿価額)と売却額の差額は、固定資産売却損か売却益として記帳します。
また、損益計算書では営業外損益または特別損益に記帳することになります。固定資産の売却は本業と関係しないと判断されるためです。
売却時に発生した付随費用に関しては、固定資産売却益か売却損の計算に含め、売却益の減少か売却損の増加で処理します。

会社の備品を売却した際の仕訳方法


会社の備品を売却する際には、仕訳方法についても理解しておくことが大切です。ここでは、会社の備品を売却した際の仕訳方法について解説します。

消耗品費・事務用品費として処理した場合

備品を消耗品費や事務用品費として処理する場合、売却した時期に合わせて仕訳を行っていきます。

・当年度より以前に購入した備品
当年度から5年前に購入した3万円のデスクを5,000円で売却した場合、売却によって得た金額はすべて当年度の収益となるため、仕訳は以下のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 5,000円 雑収入 5,000円

・当年度に購入した備品
当年度に3万円で購入し、消耗品費で処理したデスクを同じ年度内に1万円で売却すると、購入と売却がどちらも同じ年度内で行われているため、当年度の費用がマイナスになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 10,000円 消耗品費 30,000円
○○ 20,000円

ただし、同じ備品であっても購入と売却を分けて考えている場合、すべて雑収入とする方法で処理することも可能です。

・当年度に購入し、同年度に購入金額以上の金額で売却できた備品
当年度に3万円で購入したデスクを同年度内に売却して5万円になった場合、購入金額を超えた分は雑収入に計上します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 50,000円 消耗品費 30,000円
雑収入 20,000円

固定資産計上した場合

購入時に固定資産として計上した備品を売却した際の仕訳方法は、帳簿価額と売却額にどれくらいの差額があったかがポイントになります。

・購入時の金額と同じ売却額だった場合
3万円で購入したデスクが同額で売却できた場合、帳簿価額の分を現金または預金から受取、固定資産が貸借対照表からなくなることで仕訳が完了します。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 30,000円 備品 30,000円

・購入時の金額よりも高く売却でき、仲介業者に手数料を支払った場合
3万円で購入したデスクが売却時に5万円になり、仲介業者に手数料5,000円を支払った場合、手数料を支払うタイミングによって仕訳が異なってきます。

【売却額から手数料が差し引かれている場合】

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 45,000円 備品 30,000円
固定資産売却益 15,000円

【手数料を後から支払った場合】
入金があった時

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 50,000円 備品 30,000円
未払金 5,000円
固定資産売却益 15,000円

支払いが完了した時

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
未払金 5,000円 現預金 5,000円

【売却するよりも先に手数料を支払っていた場合】
支払いが完了した時

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
前払い費用 5,000円 現預金 5,000円

入金があった時

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 50,000円 備品 30,000円
前払い費用 5,000円
固定資産売却益 15,000円

・購入時の金額よりも低い売却額で、仲介業者に手数料を支払った場合
3万円で購入したデスクを1万円で売却し、仲介業者に手数料5,000円を支払った場合の仕訳は以下のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 15,000円 備品 30,000円
固定資産売却損 15,000円

会社の備品を社員に売却した場合の仕訳例


会社の備品を中古品店ではなく社員に売却した場合、仕訳はどのようになるのでしょうか?ここでは、社員に売却した場合の仕訳例を紹介します。

固定資産に計上されている備品の場合

固定資産に計上されている備品を社員に売却した場合だと、帳簿価額との差額を固定資産売却益または売却損によって仕訳をしていきます。
例えば、固定資産に計上していた工具(帳簿価額1円)を社員に相場よりも安い1万円で売却した時、仕訳は以下のようになります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 10,000円 工具 1円
固定資産売却益 9,999円

固定資産に計上されていない備品の場合

固定資産に計上されていない備品を売却した場合、雑収入として仕訳を行います。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 10,000円 雑収入 10,000円

雑収入として仕訳を行うのは、本業以外の収入になるためです。

会社の備品を社員に売却する際の注意点


会社の備品を社員に売却すること自体は可能ですが、注意しなくてはならないこともあります。ここでは、社員に売却する際の注意点を紹介します。

無償や相場を下回る金額で譲渡するとみなし給与になる

会社の備品を社員に売却した場合、相場を下回る金額または無償で譲渡すると、みなし給与に該当する可能性があります。
例えば会社の備品として購入した20万円のPCを、直後に社員へ5万円で売却したとします。すると、社員は相場よりも15万円得したということです。

社員が得をした15万円分に課税しないとなると、同じ15万円の経済的利益を会社から得ても、金銭提供の場合とPCを提供した場合とで所得税が変わってしまいます。
そのため、安くPCを手に入れた場合の利益が給与とみなされ、所得税を課しているのです。

現物給与の対象となるのは、備品以外にも以下の項目が該当します。

  • 食事・食事代の補助
  • 定期券(通勤用)、駐車場代
  • 記念品
  • 会社の商品・製品の譲渡や値引き販売
  • 商品券・カタログギフト
  • 社宅や寮、家賃補助
  • 社員食堂や保養所を利用できる権利
  • 社員旅行、レクリエーション費用
  • スポーツクラブやゴルフクラブの入会金・年会費など
  • 冠婚葬祭の御祝儀や見舞金、香典など
  • 人間ドックの会社負担分
  • 金銭の貸付 など

これらは通貨に換算して給与所得として課税対象となりますが、通勤用の定期券や食事代、社宅・社員寮、社員旅行費などは一定の範囲内であれば非課税になります。

相場に迷う場合は税理士など専門家に相談を

相場を下回る金額で売却すると給与とみなされてしまうため、社員にどれくらいの金額で売却すれば給与に該当しないかが重要となってきます。
金額を決めるポイントとしては、市場の価格などと照らし合わせて妥当性が高く、経済的利益の供与ではないことを証明できるようにすることが大切です。

例えば中古品市場で購入した場合の相場や、社員ではなく第三者に対して売却する際の金額と同程度にすれば問題ありません。
ただし、これはあくまでも目安であり、見る人によっては給与に該当してしまう可能性もあります。
そのため、相場に迷ったら税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

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会社の備品を売却すると消費税が課される場合もある!


個人事業主や法人は一定の売上げを超えた場合や税務署に届出を出していた場合、消費税課税事業者として消費税の申告および納税を行う必要があります。
備品を売却した場合でも消費税が課される可能性があるため、注意が必要です。

備品売却時に消費税が課される条件

備品の売却時に消費税が課される条件は以下のとおりです。

  • 国内で消費されている
  • 事業者が事業のために行っている
  • 対価を得ている
  • 資産を譲渡している

これらの条件を満たすと消費税が課されるため、備品売却のほとんどのケースで消費税が課されるといえます。
条件に当てはまらないケースとしては、備品を国内ではなく海外に輸出した場合、国内で消費されている条件には当てはまらないため、消費税はかかりません。

ケース別消費税の取り扱い

実際に消費税が課される場合、仕訳時の取り扱いはどうなるのでしょうか。
ここからは、ケース別に消費税の取り扱いについて解説します。なお、以下で紹介する事例はすべて税込方式によるものとします。

売却損が発生した場合

固定資産として計上した5万円の備品を1万円で売却した場合、消費税は売却額1万円に対して課税されます。
会計ソフトは売上げなどに対して仕訳を入力すると、自動的に消費税を認識しますが、固定資産を売却する場合は消費税を正しく認識しない可能性があります。
そのため、段階に分けて仕訳を行い、消費税を認識できるようにしましょう。

まずは売却額に対して消費税を認識するために、売却額全額を売却益(課売)として記載します。仮受消費税は売却額1万円÷1.1×0.1で求めることが可能です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 10,000円 固定資産売却益(課売) 9,091円
仮受消費税 909円

次に、売却簿価金額を売却益のマイナスとして仕訳します。これは、売却損益が売却額ではなく売却簿価を差し引いた後の金額となるためです。
ただし、消費税は売却額に課税されることから、ここでの仕訳は不課税取引とします。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
固定資産売却益(不課税) 50,000円 備品 50,000円

最後に、売却益のマイナス(借方)を売却損に振り替えます。この仕訳は振替仕訳になるため、消費税は関係なく、不課税取引で記載していきます。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
固定資産売却損(不課税) 40,909円 固定資産売却益(不課税) 40,909円

売却益が発生した場合

固定資産として計上した5万円の備品が7万円で売却した場合、売却損と同様に売却額7万円に対して課税されます。そのため、仮受消費税は7万円÷1.1×0.1=6,363円です。
消費税を考慮して仕訳を行う場合、売却額全額を売却益(課売)で記載していきます。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現預金 70,000円 固定資産売却益(課売) 63,637円
仮受消費税 6,363円

次に売却簿価金額を売却益のマイナスとして記載します。ここでの仕訳は不課税取引になります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
固定資産売却益(不課税) 50,000円 備品 50,000円

仕訳を分けることで、売却額7万円に対する消費税が認識され、売却益13,637円が計上されることになります。

除却した場合

固定資産を除却する場合、資産の譲渡は行われないため、すべて不課税での取引きとなります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
固定資産除却損(不課税) 50,000円 備品 50,000円

会社の備品を経営者個人のものにすると業務上横領になる可能性がある


仕訳が面倒などの理由から、会社の備品を経営者個人のものに勝手にしてしまおうと考える人もいるかもしれません。
しかし、会社の備品を勝手に経営者個人のものにしてしまうと、業務上横領になる可能性があります。
業務上横領の罪に問われてしまうと、10年以下の懲役刑を科せられてしまいます。被害額が少額だったとしても逮捕される可能性があるので、注意が必要です。

会社で処分する予定だった備品を個人のものに勝手にした場合も同様です。ただし、備品の所有者が所有権を放棄していることが明らかなものに関しては例外となります。
所有権を放棄しているものだと、業務上横領における「業務上自己の占有する他人のもの」に該当しないと考えられます。
個人のものとして扱ったとしても、業務上横領罪は成立しない可能性が高いです。

まとめ・会社の備品を売却する際は正しい事務処理を行おう

会社の備品を売却する際には、条件などによって経理処理や仕訳方法が異なってきます。
売却による経理処理や仕訳によって、税務調査や社員の所得税にまで影響が出る可能性もあることから、正しく事務処理を行うように心がけてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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