株式譲渡をしたら税金はいくらかかる?税金の種類や計算方法を解説

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株式譲渡で譲渡益が発生すると課税される!


株式を保有する株主が買い手に売却し、経営権を移す取引を「株式譲渡」といいます。株式譲渡を行うことで経営権を移しつつ、売り手の株主は金銭を得ることが可能です。
しかし、株式譲渡によって利益が発生した際には税金が課税され、想定よりも税負担が増えてしまう可能性もあります。

そこで今回は、株式譲渡によって発生する税金の種類や税率、計算方法などを解説します。また、特例制度や注意点なども解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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株式譲渡で発生する税金の種類と税率


株式譲渡で利益を得た際には、様々な税金が発生します。具体的にどのような税金が発生するのか、またそれぞれどれくらいの税率となっているのか、解説していきます。

所得税

株式を譲渡する側が個人の場合、譲渡益に対して所得税が課されます。
所得税は給与などの所得と合わせて計算する「総合課税」と、ほかの所得とは分けて考える「分離課税」の2種類があります。
株式譲渡による利益(譲渡所得)は分離課税で計算するのが基本です。所得税の税率は15%となります。
ただし、2025年から年間所得3.3億円以上の人は追加課税措置として「ミニマムタックス」が設けられました。その結果、税率は最大22.5%です。

また、2037年12月末まで「復興特別所得税」も課されます。復興特別所得税の対象は所得税を納めている個人であり、所得税額の2.1%が税率です。
個人の所得税率は15%になるため、15%×2.1%=0.315%がかかることになります。

住民税

株式譲渡によって所得税だけでなく住民税も課されることになります。
住民税は所得税と同様に分離課税の対象で、ほかの所得と分けて計算しなくてはなりません。税率は一律5%です。
なお、所得税は確定申告によって納めることになりますが、住民税は4~5月頃に納付書が送付されるため、一括または4分割にして納付する必要があります。

法人税

所得税と住民税は個人が株式譲渡を行った際に発生する税金でしたが、法人が株式譲渡で利益を得た場合は法人税が課されます。
法人の場合、個人とは違って課税所得を分類することはありません。つまり、株式譲渡以外で得た利益(事業によって得た利益など)の損益と合計したものです。

法人税の税率は企業形態や資本金、年間の課税所得額などに応じて変動します。
しかし、法人税に加えて法人事業税、法人住民税なども課せられることから、おおむね30~35%が課されます。

相続税・譲渡税(対象者のみ)

株式譲渡をもともとの株価より低い価格、または無償で実施した場合、贈与された側に対して贈与税が課される場合もあります。
また、親族から株式を相続した際にも同様に相続税が課されることになります。
このようなケースに当てはまる人に限られますが、相続や贈与で株式譲渡を受けた際には、必ず税金がどれくらい課されるのか確認しておくことが大切です。

株式譲渡における税金の計算方法


株式譲渡を受けた場合、どれくらいの税金を納める必要があるのか気になる人もいるかもしれません。そこで、続いては株式譲渡における税金の計算方法を解説します。

上場株式を譲渡した場合

上場株式を譲渡した場合、まずは譲渡によって得られた利益(譲渡所得)がどれくらいあるのかを計算する必要があります。
譲渡所得とは、譲渡した金額から必要経費を差し引いた金額です。
必要経費として、株式を取得する際に使った費用や、株式の売買を証券会社に委託する際に支払った手数料などが挙げられます。
例えば、譲渡によって得た金額が50万円、必要経費が5万円だった場合、50万円-5万円=45万円が譲渡所得になります。

譲渡所得を求められたら、次に税率をかけていきましょう。個人であれば所得税と復興特別所得税を合わせた15.315%+住民税5%の計20.315%を譲渡所得に掛けます。
譲渡所得が45万円だった場合、45万円×20.315%=約91,417円が納めるべき所得税・住民税です。

非上場株式(一般株式)を譲渡した場合

株式市場に上場していない非上場株式(一般株式)を譲渡した場合も、上場株式と同様で、まずは譲渡所得を求めてから税率を掛けます。
個人が非上場株式を譲渡する場合は、上記と同じ計算方法で求められますが、法人で非上場株式を譲渡した場合、譲渡する側に対して法人税などが課されるため、注意が必要です。

なお、非上場株式などを取得する際に必要経費(特に取得費)がどれくらいかかったのかわからない場合もあります。
取得費がわからないと譲渡所得がわからなくなってしまうため、実務上「概算取得費」として収入金額の5%を取得費とみなして計算してください。

株式譲渡の税金に関連する特例制度


株式譲渡を行うと税金が課されますが、特例制度を活用することによって税負担を抑えることも可能です。ここで株式譲渡の税金に関連する特例制度を2つ解説します。

事業承継税制

事業承継税制とは、非上場株式や事業用資産を、前経営者から後継者に対して贈与・相続された場合に利用できる特例制度です。
この特例制度を利用するためには、都道府県知事から経営承継円滑化法による認定を受ける必要があります。
認定を受けると本来納めなくてはならない贈与税・相続税が免除または猶予され、税負担を軽減させることが可能です。

事業承継税制を受けるためには、会社・前経営者・後継者・制度適用後の4項目における要件を満たさなくてはなりません。
また、事業承継税制を受けるためには事前に特例承継計画を都道府県に提出する必要がありますが、提出期限が2026年3月31日までです。
特例承継計画を提出した企業は、2027年12月31日までに贈与・相続によって株式を取得した場合に税制を受けられることから、期間限定の制度であることを認識しておいてください。

取得費加算の特例

取得費加算の特例とは、相続によって不動産や株式を取得し、売却して譲渡所得を得た場合に、相続税額のうち一部を譲渡資産の取得費用に加算できる制度です。
この特例制度を活用すると取得費が増え、その分譲渡所得を減らせるので、最終的に税負担を抑えられます。

また、取得費加算の特例は上場株式・非上場株式の両方で利用することが可能です。
ただし、実際に適用されるのは相続後3年10カ月以内に売却し、譲渡所得を得た場合に限られます。
例えば、生前贈与によって受け取った株式を売却したとしても、対象外となってしまうので注意してください。

損益通算

特定口座(源泉徴収あり)で取引きした場合でも、株式の譲渡所得は通常どおり分離課税が適用されます。
しかし、その株式が上場株式の譲渡損失だった場合、上場株式の配当金などと損益通算を行うことが可能です。

損益通算を行えば、損失した分で利益を相殺でき、所得額を小さくすることができます。
損失相殺後に損失が残ってしまった場合も、譲渡損失による繰越控除が適用されるため、確定申告によって翌年以降3年間も譲渡損失を繰り越せるようになります。
また、一般口座で取引きした場合でも自ら計算すれば損益通算は可能です。

ただし、損益通算ができるのは上場株式などによる譲渡損益のみで、非上場株式を合わせて損益通算を行うことはできません。

株式譲渡で利益が発生したら確定申告が必要


個人が年内に株式譲渡を行い、利益が発生した際には確定申告が必要となります。
会社員は通常年末調整を会社側が行ってくれるため確定申告は不要となりますが、株式譲渡を行った場合は確定申告を行わなくてはなりません。

20万円以上の所得で確定申告が必要

会社員は基本的に確定申告を行う必要はありませんが、株式譲渡など会社からの給与以外で20万円以上の所得を得た場合には確定申告が必要です。
また、上場株式の口座で特定口座(源泉徴収あり)以外の口座(特定口座(源泉徴収なし)と一般口座)を利用している際には、確定申告を行う必要があります。

ただし、上記でも説明したように特定口座(源泉徴収あり)でも、譲渡損失がある場合は節税をするために確定申告を行ったほうが良いです。

株式譲渡をしても確定申告が不要なケース

株式譲渡で譲渡所得を得た場合でも、確定申告が不要になるケースもあります。主にどのようなケースで確定申告が不要となるのか、確認していきましょう。

株式譲渡で損失が出ている

1つ目のケースとして、株式譲渡を行ったことで損失が発生している場合が挙げられます。
株式譲渡によって損失が出ているということは、給与所得以外の所得が20万円以下となるため、原則確定申告は不要です。

また、上場株式と非上場株式はどちらか一方で黒字が出た場合でも、損益通算は行えないことになっています。
給与所得や不動産所得など、ほかに所得があった場合でも相殺できません。
ただし、損失額が大きく、翌年以降に発生する譲渡益と相殺したい場合は確定申告を行う必要があります。

特定口座の源泉徴収ありを選択している

株式を保有する際には証券会社で口座を開設しますが、この時「特定口座」か「一般口座」かを選ぶことになります。
また、特定口座も「源泉徴収あり」か「源泉徴収なし」かを選ぶ必要があります。

特定口座(源泉徴収なし)は年間取引報告書を活用することで、手続きも簡単になりますが、それでも確定申告は必要です。
一般口座の場合も所得金額を自分で計算し、確定申告で納税する必要があります。

一方、特定口座(源泉徴収あり)は、源泉徴収によって税額が天引きされるため、別途確定申告を行わずに済みます。
ただし、特定口座内で取り扱えるのは上場株式のみであり、非上場株式を扱う際には一般口座の開設が必要です。

NISA口座で取引している

NISA口座で取引きをしており、株式譲渡による利益が出た場合も確定申告は不要です。
NISAは口座内の少額上場株式による譲渡益や配当金額を、一定額非課税にする制度を指します。
譲渡益が出たとしても、NISA口座であれば非課税になるため確定申告をしなくても問題ありません。

ただし、損失が出た場合はその損失もなかったものとみなされ、損益通算や繰越控除ができなくなってしまう点には注意してください。

株式譲渡の税金に関して注意すべきこと


株式譲渡の税金について、様々なシーンによって注意すべきことが異なります。そこで、株式譲渡の税金に関して注意すべきことを、それぞれのシーンごとに解説していきます。

第三者の株式譲渡の場合

保有する株式の企業とは関係ない第三者が株式譲渡を行った場合、個人か法人かで株式譲渡にかかる税率が変わってきます。
上記でも説明したように、個人が株式を譲渡する場合は20.315%の税率が課されることになります。

譲渡価格が時価の1/2未満だった場合も買い手側が法人の場合は同様に20.315%となりますが、買い手側が個人だった場合は譲渡価額と時価との差額に税率が課されるので注意が必要です。
また、譲渡額が時価を超えている場合、買い手側が個人だと時価部分に対して譲渡所得税、超えている部分には贈与税が課されることになります。
法人の場合は時価部分と超えている部分、それぞれに法人税が課されます。

親族同士の株式譲渡の場合

親族が保有する株式を別の親族へ譲渡する場合、譲渡価額の設定に注意が必要です。
親族同士だとできるだけ税負担を抑えようとして、わざと譲渡価額を低く設定する可能性も考えられます。

しかし、適正な時価より低い価格で株式譲渡が行われた場合、時価との差額分は贈与したものとみなされてしまうため、買い手側に贈与税が課されるリスクがあります。
税負担を少なくしようとして、かえって納める税金が増えてしまう可能性もあることから、親族同士でも株式を譲渡する際には時価を計算し、適正な価格設定を行うことが大切です。

同族会社間の株式譲渡の場合

同族会社間で後継者に経営を引き継がせるために、株式譲渡が行われる場合もあります。この時に注意したいのが、勝手に株式譲渡を進めてしまうことです。
通常、会社間で株式譲渡を行う場合、従業員や株主に承認をもらった上で進められます。
しかし、同族会社間だと株主総会などの話し合いの場を設けることなく、すぐに譲渡の手続きを進めてしまうこともあるかもしれません。

そうなると、従業員や株主から反発を受け、経営リスクが高まってしまいます。
いくら同族会社間であっても、株式譲渡を進める際には従業員や株主から理解を得ることが大切です。

まとめ・株式譲渡の税金について正しく理解し、税負担を少しでも抑えよう

今回は、株式譲渡にかかる税金の種類や税率、計算方法などを解説してきました。
株式譲渡は中小企業のM&Aでも行われることが多いですが、株式譲渡によって譲渡益が発生した際には税金がかかってしまいます。
特例制度などをうまく活用して、税負担を少しでも抑えられるようにしましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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