「一時支援金」とは?申請期間や給付要件、申請手続きの流れを解説
最大60万円の給付金!緊急事態宣言の影響で売上が減少した企業が給付対象
2021年3月8日から申請受付が開始された「一時支援金」は、緊急事態宣言によって大幅に売上が減少した事業者に向けた給付金です。
中小法人等と個人事業者等が対象となり、給付額上限は60万円(30万円)になります。今回は、一時支援金の概要や申請期間、給付要件や申請手続きの流れをまとめて解説します。
この記事の目次
一時支援金とは
一時支援金とは、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や、不要不急の外出・移動の自粛などの影響により、売上が減少した企業を支援するための給付金です。
中小企業やその他の法人企業等、またフリーランスを含む個人事業者に対して、事業継続を支援することを目的としています。
一時支援金の申請期間は約3カ月
申請は2021年5月31日まで
一時支援金の申請期間は、2021年3月8日~5月31日の約3カ月間(※)です。
すでに申請受付が開始されているため、以下の要件に当てはまる事業者の方は、早めに申請手続きを行いましょう。
(※)特例を利用する場合は、2021年3月19日(予定)~5月31日となります。
給付対象となる事業者の要件
・時短営業等の影響を受けていること
・売上が50%以上減少していること
一時支援金の要件として、「時短営業等の影響を受けていること」「売上が大きく減少していること」の2つがポイントになります。
なお、都道府県による時短営業要請や緊急事態宣言により、売上が減少した飲食店とその取引先、さらに小売業やサービス業の事業者も対象(※)です。
一時支援金は、(資本金10億円以上の企業を除く)中小法人等を対象としていますが、会社以外の法人についても対象となります。
(※)地方創生臨時交付金(協力金)の支払対象の飲食店は除外されます。
飲食店の時短営業等の影響を受けていること
緊急事態宣言により、時短営業を迫られる飲食店とその仕入先や配送業者など、また外出自粛により、人出が減ったことで売上が減少した小売業やサービス業の事業者が対象です。
- <給付対象となる事業者の例>
-
- 飲食店
- 仕入先
- 配送業者
- 小売業
- サービス業 など
上記に加えて、以下の要件が示されています。
- <一時支援金の要件>
-
- 中小法人等(※1)と個人事業者等(※2)が対象となる
- 給付要件を満たす場合は、業種や所在地を問わず対象となる
- 緊急事態宣言が解除された地域も含まれる
- 地方創生臨時交付金(協力金)の支払対象の飲食店は対象外
- 公共法人、政治団体、宗教法人は対象外
- 「性風俗関連特集営業」や「接客業務受託営業」を行う事業者は対象外
- 一時支援金は店舗単位ではなく、事業者単位で申請すること
(※1)資本金等10億円未満、又は従業員数2,000人以下
(※2)フリーランスや確定申告をした個人事業者など
給付対象となる具体的な業種については、経済産業省が公表している資料をご参照ください。
売上が50%以上減少していること
一時支援金の要件である、「事業収入が50%以上減少していること」を証明するために、以下の期間の売上を比較する必要があります。
・時短営業等の影響により大きく売上が下がった期間=対象月
具体的には、2021年の1月~3月のいずれかの月を「対象月」として、2020年又は2019年のどちらかを「基準年」とします(※)。
つまり、2021年の対象月と基準年の同月を比較して、2021年の対象月の売上が基準年同月の売上の50%以下であることが要件となります。
(※)例えば、基準年=2020年、基準月=2021年1月の場合、2020年1月と2021年1月の売上を比較することになります。
一時支援金の支給額
中小法人等は60万円、
個人事業者等は30万円が上限
一時支援金の支給額は、中小法人等は60万円、個人事業者等は30万円を上限として、以下の計算式(※)の差額で求めます。
- <支給額の計算方法>
-
- 支給額 = 基準年1月~3月の売上合計(事業収入)- 対象月の売上×3
(※)例えば、基準年の1月~3月の売上合計が200万円、対象月の売上が40万円の場合は、80万円(=200万円-40万円×3)が支給額となり、上限額60万円(30万円)が支給されます。
申請手続きの流れ
一時支援金の申請手続きは、以下の流れです。
手順 | 主体 | 内容 |
---|---|---|
①仮登録(申請ID発番) | 申請者 | 「一時支援金」の専用サイトからアカウント申請を行います。 |
②アカウント発行 | 事務局 | 申請ID、ログインIDが発行されます。 |
③書類準備/予約 | 申請者 | 事前確認の必要書類を準備して、登録確認機関に予約を行います。 |
④予約受付 | 登録確認機関 | 登録確認機関が予約受付を行い、対面・電話・オンライン等で事前確認のスケジュールを設定します。 |
⑤事前確認 | 登録確認機関 | 提出書類をもとに、実際に事業を行っているか、制度の内容を正しく理解しているかの確認が行われます。 (※登録認定機関は給付対象かどうかの判断は行いません。) |
⑥書類準備/申請 | 申請者 | 仮登録で作成したマイページにログイン後、必要事項を入力して申請手続きを行います。 |
⑦審査 | 事務局 | 一時支援金事務局の審査が行われます。 |
⑧振込 | 事務局 | 事務局から申請者の口座に支援金が振り込まれます。 |
まず最初に、専用サイトから申請のためのアカウントを作る「仮登録」を行います。
次に、登録確認機関の事前確認を間に挟み、事務局に対して本申請を行うという2段階の手順を踏みます。なお、専用サイトからの申請には「GビズID」は不要です。
仮登録と事務局への申請はオンラインで行いますが、事前確認は登録確認機関と日程を調整して、対面やTV会議等で手続きを行います。
登録確認機関とは
登録確認機関は、一時支援金のための専門組織というわけではありません。
ものづくり補助金、事業再構築補助金、事業承継補助金といった経済産業省系の補助金を申請する際に、事業計画策定やコンサルティングを受け持つ認定支援機関(認定経営革新等支援機関)が一時支援金の事前確認を行います。
一時支援金の登録確認機関としては、以下の機関が示されています。
ただし、上記の認定支援機関がすべて一時支援金の登録確認機関ではない(※)ため、「認定支援機関が一時支援金の登録確認機関となっているか」を確認する必要があります。
(※)認定支援機関のうち、約9,100件(3月1日時点)が登録確認機関として登録されています。
また、以下のように普段から付き合いのある認定支援機関が、一時支援金の登録確認機関である場合は、対面やTV会議で行う事前確認を電話による質疑応答のみで済ませることができるため、事務局では身近な登録確認機関による事前確認を推奨しています。
- <身近な登録確認機関の例>
-
- 商工会や商工会議所などの所属団体
- 銀行や信用金庫などの与信取引先
- 税理士や行政書士などの顧問契約を結んでいる事務所等
なお、登録確認機関は一時支援金のサイトから地域を指定して検索できます。
申請手続きに必要な書類
一時支援金の申請に必要な書類は、以下のとおりです。
なお、「中小法人等」「個人事業者等(事業所得)」「個人事業者等(主たる収入が雑収入・給与所得)」によって、必要な書類が異なるので注意しましょう。
登録確認機関による事前確認
事前確認では、以下の書類の有無がチェックされます。書類がない場合は、その理由についての説明が求められます。
- <登録確認機関がチェックする書類>
-
- 確定申告書類
- 対象月の売上台帳等
- 履歴事項全部証明書(中小法人等のみ)
- 本人確認書類
繰り返しになりますが、登録確認機関が以下に該当する場合は、書類の確認が省略され、電話のみで事前確認を済ませることができます。
- <書類確認が省略されるケース>
-
- 登録確認機関が、所属団体である場合
- 登録確認機関が、事業性の与信取引がある金融機関である場合
- 登録確認機関が、顧問先の士業である場合
これは、登録確認機関が上記に該当すれば、申請者の証拠書類の情報を確認可能だという前提があるからです。
登録確認機関がこれらに該当しない場合は、登録確認機関に予約(※)をとった上で、対面やTV会議によるリアルタイムでの書類確認が必要となります。
事前確認が完了すると、登録確認機関から「事前確認通知番号」が発行され、事務局に送られます。この時点で、仮登録で開設したマイページから事務局への申請ができるようになります。
(※)必ず事前に予約してください。
オンラインで事務局へ申請する方法
事務局への申請は、仮登録で作成したマイページからオンラインで行います。
基本情報として、以下の内容を入力します。
- 法人名/屋号
- 住所
- 氏名
- 連絡先
- 2019年1月~2021年3月までの毎月の法定帳簿に対応した月間事業収入
さらに、事前確認で準備した書類を画像化して、マイページから送信します。
オンライン申請ができない場合は、事務局が設置する「申請サポート会場」を利用するという選択肢もあります。申請サポート会場については、以下にお問い合わせください。
宣誓・同意書と注意事項
申請者本人の署名による宣誓・同意書が求められます。
宣誓事項・同意事項は以下のとおりです。
- <宣誓事項>
-
- 給付要件を満たしていること
- 申請内容に虚偽がないこと
- 暴力団排除に関する誓約事項を遵守すること
- 受給後も事業を継続する意思があること
- <同意事項>
-
- 所定の書類(帳簿書類など)を電磁記録等により7年間保存すること
- 審査に関する調査で求められた書類等を速やかに提出すること
- 事務局等が行う関係書類等の提出指導、事情聴取、立入検査等の調査に応じること
- 受給要件を満たしていないことが判明した場合(※)や不正受給等が発覚した場合は、支援金を返還すること
- 申請内容等の情報について、本事業の事務のために第三者に提供及び第三者から取得する場合があること
- 給付規定に従うこと
(※)都道府県による時短要請に伴う協力金を受給している場合など
また、事務局への申請に関して注意事項が示されています。以下に該当する場合は、不備修正により、審査に時間がかかってしまうのでご注意ください。
- <注意事項>
-
- 画像化した証拠書類が不鮮明であったり、見切れていたりする
- 画像化したファイルにパスワードが設定されている
- 確定申告の年度が古いなど、指定の確定申告書と異なる
- 申請画面で入力したものと証拠書類の売上高が異なる
- 収受日付印がない/e-Taxの受信通知がない
- 売上台帳ではない書類(通帳の入金記録・請求書等)が添付されている
さらに詳しい注意事項は、一時支援金の専用サイトで解説しています。
不正受給があった場合には、年3%の延滞金と、「支給金額に延滞金を加えた額の2割」を加算した金額を返還することになります。
また、不正受給を行った申請者の氏名等の公表や、刑事告発されるケースもあるため、要件をよく確認した上で、申請手続きを行いましょう。
まとめ
緊急事態宣言による営業自粛の影響として、クローズアップされるのは飲食店です。
しかし、飲食店のみならず、人出の減少により小売業やサービス業なども同じようにダメージを受けていることは明らかでしょう。
これらの事業者を総合的に支援するのが、一時支援金です。
売上50%減というシンプルな給付要件ですが、緊急事態宣言に関連するものであるかという部分において、客観的判断が難しいケースも出てくる可能性があります。
これらについては、商工会や取引銀行、税理士などの顧問先といった「登録確認機関」に相談することもでき、事務局でも問い合わせ窓口を設けています。
申請期間は、2021年3月8日~5月31日の約3カ月間と短いため、早めの申請手続きを心がけましょう。
(編集:創業手帳編集部)