Kaizen Platform 須藤 憲司| 「人」を軸にした、Kaizen Platform流 ”オープン経営”
Kaizen Platformm須藤氏インタビュー
(2016/10/19更新)
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前職リクルートでの後悔が生んだ ”Kaizen Platform”誕生秘話
さまざまな有名企業の人材で構成されるKaizen Platform。今回は、代表の須藤氏に組織を運営する上で気をつけていることや、組織としてのパフォーマンスを上げるためのコツを伺いました。
1980年生まれ。2003年に早稲田大学を卒業後、株式会社リクルートに入社し、マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室立ち上げに従事。株式会社リクルートマーケティングパートナーズ執行役員に就任。2013年にKaizen Platform, Inc.を米国で創業。
組織をまとめるのは、“会社の方針”の押し付け
須藤:特に変わったことはないと思うんですが、あえて言うなら「対話」でしょうか。ウチには、リクルートの人もいる、グルーポンの人もいる、ディズニーの人も、ソフトバンクの人も、DeNAの人もいる…という中で、みんなそれぞれの「こういうもんだ / こうしたい」という感覚があります。まずは、その感覚を共有した上で、「でもKAIZENはどうしたらいいのか」というのを聞くようにしていますね。
須藤:みんないろんな経歴があって、当然ながらそのやり方にこだわる傾向があるので、それを聞いた上で、KAIZENでどうしたいかを聞くと。
須藤:そうですね。入社する全員に押し付けます。簡単に言うと「自律性」でしょうか。
- Kaizen Platformが仲間に求めるあるべき姿
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- 業務領域の境界を超えることを厭わず、自ら率先して物事を推進しているか
- 自分の仕事より同僚の手助けを優先する姿勢を持っているか
- 人に言いたくなるような仕事ができているか?胸を張れるものづくり、提案をできているか?
- やっていることを自分だけで独占せずに人に情報共有しているか
- ユーザーからの声に真摯に向き合い、基本的解決に取り組んでいるか
- グローバルなコミュニケーションをサポートしているか
上記の内容を、KAIZENを作って6ヶ月とか10ヶ月の時点で「会社として何を求めるか」として決めました。出身の母体がどうであれ、この場ではこれがルールだから、押し付けますって最初に言うんです。これがこの会社として大事にしてもらうことだからと。
須藤:そうですね。小さい会社から大きくした人もいれば、いろんな人がいたので、「こういうの大事だよね、こうありたいよね」というのをみんなで言葉にしました。
須藤:アメリカの従業員もいますし、日本語があまりしゃべれない従業員もいるんですよね。そうすると、わざわざ英語に翻訳する必要も出てくるので、英語でも日本語でも基本的に共有できるようにしています。例えば、社内の資料は全部英語で書け、とか。
須藤:最初から、世界に行きたいと思っていましたから。日本語から英語にするのは大変ですから、英語を当たり前に使うよというルールにしたんです。英語でのプレゼンも、当たり前ですよ。
須藤:今は、日本が9で海外が1くらいでしょうか。
リアルなコミュニケーションに投資
須藤:そうですね。まず、Slack(チャットツール)を使っています。あと、Qiitaという社内ブログも使っています。基本的には、半数がエンジニアの会社なので、2ヶ月に1回くらい「合宿」とか言って全社員集まってのミーティングを行っています。コミュニケーションに関しては、異常にお金をかけていると思いますよ。
須藤:はい、そういうのにはバンバン行けという雰囲気です。
須藤:ウチの会社は、リモートワークを導入しています。今も、席はガラガラなんです。会社に来なくても仕事ができるって、本当なんですよ。私も韓国やアメリカに出張しますが、どこにいても関係なくチャットができて、電話会議で指示もするし、資料もネットで見ればいい。だからオフィスで仕事しなくてもいいんですが、問題は人と仕事しているということを忘れないこと。やっぱり、コミュニケーションとろうとか、ランチ行こうとか、そういう時間を大事だなと思っています。
金曜の朝、「オールハンズ」と言って社員全員を集めるのですが、その時には朝食を準備しています。コーヒーとか、飲むヨーグルトとか。要は、ごはんを食べると仲良くなるじゃないですか。これが重要だと思っています。
須藤:いや、逆にリモートワークをしているので、朝に会社に来ないんですよね。特に金曜の朝は眠いじゃないですか。だから、ご飯を出すぞってみんなを釣っているんです。
“オープンな社風”が生む組織の躍動感
須藤:毎週、最初は会社の状態を私が全部共有しています。こういう案件があって、どうなっているという業績ですね。その後は、各セクションが報告。あと、入社・退社・ゲストの紹介とか。
須藤:はい。社員も、業務委託も、派遣も、いろいろな人がいますが、基本的に同じように仕事をしています。お客さんが来ても、社内の数字をオープンにしているような会社なので、特に誰が来ても気にすることはないですね。
須藤:そうです。逆に、オープンにしないと難しいですね。「これ言っていいのかな」と余計な気をつかうじゃないですか。
須藤:オールハンズも、グロースハッカーだけじゃなくて、外部のスタートアップとか、投資家とか、いろんな人が見に来ますよ。
グロースハッカーの働き方も変える
須藤:一番最初は、ウェブ制作会社130社くらいと提携しました。その後に、「創業特区」になっている福岡市と一緒に、グロースハッカーのネットワークを作りました。今は、派遣会社とも提携しているので、派遣会社が集めてくれるというルートもあります。もちろん、個人で入ってくる時もあるので、いろいろですね。
須藤:そうですね。
須藤:そうですね。例えば、「ホームページ改善」という案件に対して、いろんな人がデザインを出してくるんです。その中から選んでテストして進めていきます。
須藤:そうですね。競争しているというのもありますが、どの業界に強いデザイナーかが分かるというのも強いですね。この人はインターネット通信に強いとか、この人は何件実績があるとか。人によって全く強みは変わってきますから。
須藤:例えば、「お客さんを金融領域だけに限定する」といって単価の高い依頼に集中することもできますし、「バーチャルな改善チームを作りたい」という方法もある。いろんな働き方ができるんです。
ママを育成して雇用創出
須藤:品質は高くないと。品質もあげたいし、量も増やしたいです。だから、それこそ、地道な育成活動もやっているんですよ。デジタルハリウッド大学と組んで事業を作ったりとか、大学の授業にしてもらったりとか。例えば、佐賀大学などでグロースハッカーの授業で単位が取れるんですよ。
あと、ママさんのグロースハッカーを育てようと、トレーニングを支援しています。ド素人のママさんが、9ヶ月トレーニングを受けたら、とっても売れっ子になったんです。これはリクルートにも協力してもらっています。初心者を鍛えてデジハリに入学してもらって、卒業するとリクルートからキャッシュバックがもらえる仕組みにして。ママグロースハッカーズという会社まで作ってしまいましたから。
須藤:そうですよ。地味な話かもしれませんが、シングルマザーの方も4割以上いらっしゃいます。そういう人たちからすると、子供を大学まで出したいから、月30万~50万稼ぎたい。これ、今の時代であれば全然いけるんですよね。案件取れるようになって、売れっ子になっている例はたくさんあります。
グロースハッカー表彰で好循環を生む
須藤:私たちはグロースハッカーの表彰もしています。メディアやお客さんも呼んで。これも仕事のきっかけになっているようです。
須藤:はい、かなり喜ばれています。
須藤:そうですね、エコシステムにしようと、いろんな会社と提携しています。電通とか、パソナとか。
KAIZENの目指す”マーケの統合”と“海外展開”
須藤:基本的には、プロダクトの開発と、海外展開の2つです。
須藤:そうですね。
須藤:いえ、新しいサービスが中心です。
須藤:KAIZENで提供している広告はGoogleなんですけど、今後は、FacebookやYahooにも広げていこうと思っています。後は、CRM。メルマガのKAIZENにも着手したいですね。
須藤:今は日本とアメリカで事業をしています。お客様自体は、オーストラリアとか、ロンドンとか、スペインとか、各地にいらっしゃいますけれど。今後は、アジアにも広げていこうと思っています。先日はタイの会社と提携しましたし、今度は韓国。そして台湾。この3カ国でアジアはやろうと思っています。あと、ヨーロッパにもパートナーを見つけたいですね。
須藤:そこまで行けるといいんですけど、どうでしょうね。タイと台湾は分かりやすいんです。日系企業の進出も多いし、日本のお客様がすでにいるので、デザイナーを集めれば商売できそうだなと。韓国は逆で、韓国ローカルのお客さんを取れると日本も取れるかもしれない、と考えています。
須藤:全く同じサービスはないですね。
“創意工夫を発揮する”場をもっと増やしたい
須藤:私たちがやりたいことは本当に簡単で、「蛇口をひねると水が溢れるように仕事がたくさんあって、人々の創意工夫を発揮できる場がたくさんあるという状況を作る」こと。例えば、福岡には仕事がなくても、東京には山ほどインターネットの仕事がある。だったら、東京から福岡につなごう、ということなんです。サンフランシスコで営業して、バングラデシュに発注したらいいよね、みたいな。
KAIZENの仕事をしている人って、みんな改善活動がすごく好きなんですよね。「もうちょっと良くできるんじゃないか」というのは、人間の原始的な欲求なのかもしれません。だから、そういう機会をとにかく増やしたい。普通の仕事が普通にあって、通勤しなくても仕事ができて、価値を発揮して、役に立っていると思える。これが当たり前になって欲しいです。
バイトの雑誌とかで面接を受けて、ようやく仕事を見つけるのではなくて、今すぐ「ここを改善しよう」と提案できて、それでお金が入ってきたらハッピーじゃないですか。
須藤:人が創意工夫を発揮するための会社ですね。テクノロジーは、明確にそれを支えるサブ的な要素です。
須藤:女子高生がやっても、リタイアした人がやっても、ママがやってもいいわけですよね。年齢や立場や職業を問わずできるので、仕事に触れる機会はもうたくさんあるんです。あとは、改善したほうが良い仕事をインターネット上に引っ張りだすだけ。
須藤:そうです!だから、大学生のインターンとかには、「NPOの改善を無料でいいからやって来な」とバイト代を払ってやってもらっています。NPOのサイトを改善して募金を増やす方法を考えたりですね。
須藤:その人たちも、いずれどこかでマーケティングをやるでしょうから、そんな時にKAIZENを使ってくれるといいな、ということでやっています。小さい会社ですが、創業の時からCSRというほどではないですけど、社会貢献できることは考えていますね。例えば教育を頑張るとか、頑張っている人を表彰するとか。お金儲けでなくても良い、という感じです。
創業当初から不変のCSR精神
須藤:そうですね。創業1年目のときに、国家戦略特区の福岡市と提携しました。民間のどんな大企業より最初に取り組んでいますよ。
須藤:ウチは、補助金などももらっていません。むしろ、雇用をいっぱい生んで、お金を落としている。価格も、東京と全く同じ単価でやっていますよ。
須藤:サスティナブルじゃないんですよね。結局、続けようと思うと儲けが必要ですし。お金は私たちに落とさなくていいから、地元の教育してくれる企業に支援して欲しいです。私たちは本業として、商売でやるから、それを使っていいことできたらいいなという切り口でしか見ていないです。
だから、ママの育成とかにお金はできないけど、スポンサーは連れてくる。先ほどのリクルートの例であれば「大企業には、CSRの予算があるでしょう?卒業したら、払ってママを支援してよ」と言う。リクルートにとっても、それがPRになりますし、女性活躍を進めていく中で、一つの考え方を提示できますから。私たちは育ってくれれば裏方でも何でもいいので。ということを、福岡市からお墨付きをもらって、デジタルハリウッド大学にはコンテンツを提供してもらって、こんなことを創業からずっと続けています。
起業家へのメッセージ
須藤:「起業して何がしたいのか」は人それぞれだと思います。自分が食べていくために起業している人もいれば、世の中の役に立ちたいから起業している人もいる。
その中で、私がすごく思うのは、せっかく会社を作ったのだから、社会との関わりは絶対重要だということ。だから講演依頼などもできる限り受けるようにしています。人や社会の役に立たないと、会社は価値が無いと思います。逆に言うと、社会の役に立つためにやっているんですから、それは小さい会社がやっても、創業1ヶ月目の会社がやっても良いわけです。私、創業して2ヶ月目か3ヶ月目のときに、アイスバケツチャレンジがアメリカから回ってきて、速攻でやって、速攻で寄付しました。あと、赤字の会社でも、個人で寄付もずっと続けてきました。
売上が増えたら寄付する、なにか良いことがあったら寄付する、寄付じゃなくても何でも良いんですけど、社会への貢献を考える。自分たちが儲かったら良い、雇用があるから良いという発想もあると思いますが、社会との関わりの中で会社は存在しているのだから、ボランティアでも、社会貢献でも、このことはずっと考えていくべきだと思います。私は、儲かっていなくても、考えていましたから。
須藤:そうですね。結局資金調達をしたとか、大企業の営業を取ってきたとか、有名企業から人を引っ張ってきたりとか、ということばかり注目されたりするじゃないですか。でも、それはなぜできているのかというと、根本にこの考えがあるからですね。
これが結果的に人に繋がるし、実体が伴っていなくても、目線が高ければ大きな会社になるのではと思います。逆に、「儲かったらCSRをやろう」というのは、ウソじゃないかと思ってしまうので。
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前職リクルートでの後悔が生んだ ”Kaizen Platform”誕生秘話
(取材協力:Kaizen Platform Inc./須藤憲司)
(編集:創業手帳編集部)