法人成りした年の確定申告とは?流れと失敗しないポイントを徹底解説!

創業手帳

個人事業主から法人成りした時にも確定申告が必要


個人事業主が法人を設立して事業を法人に引き継ぐことを法人成りといいます。その際の確定申告について、不明点が多いと感じている人もいるかもしれません。
結論としては、法人成りした時にも確定申告は必要です。しかし、正しい知識を持っていないとリスクが増える可能性があります。

そこで今回は、個人事業主が法人成りをした際に、押さえるべき確定申告のポイントや流れ、必要な書類などを解説していきます。
確定申告に関する疑問を解決するためにも役立ててください。

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この記事の目次

法人成りした年の確定申告で必ず押さえる3つのポイント


法人成りした年の確定申告は、通常の確定申告とは異なり、注意すべき点がいくつかあります。
特に重要なのが「個人と法人で2回申告が必要」「申告期限が異なる」「引継ぎや役員報酬でミスが起きやすい」という3点です。
これらを正しく理解しておかないと、申告漏れや余計な税負担につながるおそれがあります。

個人と法人で2回、確定申告が必要になる

法人成りした年は、個人事業主としての期間法人としての期間が混在します。
そのため、確定申告も「個人の確定申告」と「法人の確定申告」の2回必要です。

個人事業として得た売上げや経費は、設立日までの分を個人の確定申告で申告し、設立日以降の取引きは法人の決算・法人税申告の対象となります。
この区分を誤ると、二重計上や申告漏れが発生しやすいため注意が必要です。

個人と法人で申告・納税の期限が異なる

個人の確定申告は、原則として翌年2月16日から3月15日までが申告期限です。
一方、法人の確定申告は事業年度終了日の翌日から2カ月以内に行います。

例えば、10月に法人成りし、決算期を9月に設定した場合、法人の申告期限は翌年11月末となり、個人の確定申告とは時期が大きく異なります。
「片方を終えたから安心」と思い込まず、それぞれの期限を個別に管理することが重要です。

資産の引継ぎや役員報酬の扱いでミスが起きやすい

法人成りの際には、個人事業で使用していたパソコンや車両、在庫などの資産を法人へ引き継ぐケースが多くあります。
これらは、売却・現物出資・貸付など、引継ぎ方法によって税務上の扱いが異なります。

また、法人成り後に支払う役員報酬は、個人にとっては給与所得となり、年末調整や確定申告の対象です。
役員報酬の金額や支給開始時期を誤ると、法人側でも損金算入できないなどの問題が生じるため、事前にルールを理解しておくことが大切です。

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いつ?法人成りした年の確定申告スケジュール

法人成りした年は、「個人」と「法人」で申告・納税のスケジュールが異なります。
それぞれの期限を正しく把握していないと、申告漏れや延滞税が発生するおそれがあるため注意が必要です。
ここでは、個人・法人それぞれの申告期限と、消費税・住民税の扱いについて解説します。

個人の確定申告は翌年3月15日まで

個人事業主として活動していた期間については、通常の確定申告と同様に、翌年2月16日から3月15日までに申告を行います。
法人成りした場合でも、設立日までの売上・経費は個人の確定申告の対象です。

例えば、10月1日に法人を設立した場合、1月1日から9月30日までの事業所得は、翌年3月15日までに個人として申告します。
「法人を設立したから個人の申告は不要」と誤解しやすいため、注意してください。

法人の確定申告は事業年度終了後2カ月以内

法人の確定申告(法人税・法人住民税・法人事業税など)は、事業年度終了日の翌日から2カ月以内が申告期限です。
これは個人の確定申告とは期限がまったく異なります。

例えば、決算期を3月末に設定した場合、法人の申告期限は5月末です。
また、設立初年度は決算期を短く設定するケースも多く、思ったより早く申告期限が到来することもあります。
設立時点で決算期と申告期限を必ず確認しておいてください。

消費税・住民税はそれぞれ別スケジュールで発生する

消費税については、原則として基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円超で課税事業者となります。
法人成り直後は免税事業者となるケースが多いものの、資本金1,000万円以上で設立した場合、インボイス登録をした場合などは、初年度から課税対象となるため注意が必要です。

また、住民税については、法人成りした年は、個人住民税と法人住民税の両方が発生するケースが一般的です。
個人住民税は前年の個人所得に基づいて課税され、法人住民税は法人が存在するだけで均等割が課されます。
「法人化=住民税が一本化される」と誤解しやすいため、設立初年度は特に注意が必要です。

そして法人は所得の有無にかかわらず均等割が発生します。
赤字であっても納税が必要になるため、設立初年度から資金繰りに影響する点として押さえておいてください。

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法人成りした時の確定申告の流れ


続いては、法人成りした時の確定申告の流れについて5つのステップに分けて解説していきます。
流れを把握しておけば、スムーズな申告につながるため参考にしてみてください。

1.取引を記録する

確定申告をするためにも、1年に渡る取引の記録が必要です。
帳簿を作成することになりますが、決算前にまとめて記帳すると作業量が膨大になるため、ミスが発生しやすくなります。

記帳に関しては、銀行の通帳やオンラインバンキングの利用明細、請求書や領収書などのデータを基にして記録していきます。
負担を軽減するため、ミスを防ぐためにも記帳は会計ソフトなどを使用して定期的に記録していくよう心掛けてください。

また、記帳後に帳簿の残高と実際の残高が一致するか確認することも重要です。

2.決算整理事項を確認する

次に決算整理事項の確認です。監査人によって帳簿と現物がチェックされ、資産の実在を確認するための手続きです。
銀行口座の残高や固定資産といった項目がチェックされます。

確認作業が終了したら、決算整理仕訳に移ります。
通常の取引記帳では反映できない項目を補足するために行う作業となり、当期分の収益や費用を正しく計上して、正確な財務諸表を作成することが主な目的です。

決算整理事項の確認と決算仕訳は、決算時にしか行えない作業です。そのため、計画的に進めてください。

3.決算書を作成する

会社の決算状況を示す重要な書類を決算書といいます。作成が求められる書類は以下の通りです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書

貸借対照表は、企業が保有している資産と資産の調達方法を一覧にした書類です。
損益計算書は、売上と支出を計上して収益を求める財務諸表となり、キャッシュフロー計算書は決算期間の現金の流れを示すための書類となります。
これらは、会計ソフトを活用すれば自動作成できるので負担を軽減できます。

4.確定申告書を作成する

決算書ができたら、次に確定申告書を作成していきます。
自力での作成や会計ソフトを使用しての作成も可能ですが、法人税の申告書は種類が多いです。
記載する内容も複雑なので、専門的な知識が必要になる場面も多々あります。

そのため、スムーズな作成のためにも税理士といった専門家への相談も検討してください。
相談することで、正確な手続きをスムーズに進められます。

5.申告書を提出して書類を保存する

法人税や法人事業税など、各種税金の申告書の作成が終わったら税務署や都道府県税事務所に提出をします。
申告と納税の期限は、原則事業年度終了日の翌日から2カ月以内です。期限を過ぎれば延滞税といったペナルティが発生するので注意してください。

また、作成した貸借対照表や損益計算書は、保存する義務があります。
原則、税法上7年、会社法上10年の保存義務となっているため、紛失しないよう大切に保管してください。
税務届出書や税務申告書は、保存期間の定めはありません。しかし、企業の経営記録となるため決算書と同じように保管しておきましょう。

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確定申告の際に必要な書類


確定申告に必要な書類は以下の通りです。

・法人税申告書
法人税を計算して申告するための書類です。初年度の決算に基づいて所得金額や税額を記入してください。
書類は、税務署で受け取るか、国税庁のWebサイトからダウンロードできます。

・法人事業概況説明書
事業内容や売上、従業員の数などを記載する書類を法人事業概況説明書といいます。
この書類を基にして税務署が税務処理を行うため、わかりやすく且つ正確に記載する必要があります。

・決算書類
法人の財務状況を示す書類です。
初年度の決算書は翌年以降の経営判断にも影響を与えるものなので、適切に作成する必要があります。

・勘定科目内訳明細書
資金調達に必要な書類となりますが、財産や取引状況を把握するために活用される書類でもあります。
預貯金をはじめとして16項目の内訳書を提出しなければいけません。

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法人成りした時の確定申告でよくある質問


法人成り後の確定申告に関するよくある質問をまとめています。疑問を解決するためにも役立ててください。

開業日と設立日の間の売上は、個人と法人のどちらで申告?

開業日と会社設立日の間に発生した売上は、原則として個人事業主としての売上に該当します。
法人としての売上になるのは、法務局で会社設立の登記が完了した日(設立日)以降に発生した取引からです。

例えば、10月1日に会社を設立した場合、9月30日までの売上は個人の確定申告で申告し、10月1日以降の売上は法人の決算・法人税申告の対象となります。
契約日や請求日ではなく、売上が計上されるタイミングを基準に判断する点に注意が必要です。

この区分を誤ると、個人と法人で売上を二重計上してしまったり、逆に申告漏れが生じるおそれがあります。
判断が難しい取引については、税理士などの専門家に確認すると安心です。

会社設立のための費用は、個人と法人のどちらの経費になる?

会社設立のためにかかった費用は、原則として法人の経費として扱います。
登録免許税や定款認証費用、設立時の司法書士・行政書士への報酬などは、法人設立後に「創立費」や「開業費」として計上するのが一般的です。

これらの費用は、たとえ法人設立前に個人が立て替えて支払っていた場合でも、法人設立後に法人が個人へ返金(立替金の精算)することで、法人の経費として処理できます。

一方、設立準備とは直接関係のない個人的な支出や、事業とは無関係な費用は法人の経費にはできません。
どこまでが設立費用に該当するか判断が難しい場合は、税理士などの専門家に確認することをおすすめします。

複数の事業のうち一部のみ法人成りした時の確定申告は?

2種類以上の事業を営んでおり、その一部のみを法人に移行した場合は、以下のように区分してください。

  • 法人化した事業:法人側で売上や経費を計上
  • 法人化していない事業:個人側で計上

事業ごとに、独立した会計処理を続けなければいけません。
領収書や銀行口座、契約関係などが混在しやすいため、口座や契約、クラウド会計のアカウントなどは、個人と法人で分離することがポイントです。
混在した場合、税務調査で問題視される可能性が高くなる点に注意してください。

個人事業で従事していた従業員を法人成り後も雇用する場合の年末調整は?

法人成りした年の年末調整は、個人と法人でそれぞれ別に行う必要があります。
従業員は、個人事業から法人へ転職したことと同様の扱いになるため、源泉徴収票に関しても個人と法人分を分けて作成しなければいけません。

法人成りした年に個人・法人で赤字になった時はどうする?

赤字の取り扱いに関しては、個人と法人で異なる点に注意してください。

・個人:所得税
青色申告であれば3年間繰越控除が可能です。法人成りをしても個人の赤字は繰り越せます。(個人の所得と相殺する)

・法人:法人税
青色申告であれば10年間繰越控除が可能です。ただし、法人化初年度も青色申告をすることが前提です。
個人の赤字を法人に引き継ぐことはできないので、両者は別枠として扱われることになります。

個人事業税の見込控除とは?法人成りした年でも使える?

個人事業税の見込控除とは、確定申告の際に、当年分として課税される見込みの個人事業税をあらかじめ必要経費として差し引ける制度です。
法人成りした年であっても、設立日までに個人事業として所得がある場合は、個人事業税の見込額を経費として計上できるケースがあります。

ただし、事業内容や所得金額によって個人事業税が課税されない場合もあるため、一律に適用できるわけではありません。
判断が難しい場合は、税理士などの専門家に確認することをおすすめします。

法人成りした年に、所得税の減額申請は必要?

法人成りした年は、事業所得が途中で終了するため、当初予定していた所得税額より実際の税額が少なくなることがあります。この場合、予定納税をしている人は「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請」を行うことで、税負担を軽減できるかもしれません。

ただし、すべての人が申請対象となるわけではなく、申請期限や条件も定められています。
法人成り後の所得状況を確認した上で、必要に応じて手続きを検討してください。

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まとめ・法人成りした時には確定申告を適切に実施しよう

法人成りをした際には、法人だけではなく個人の確定申告も忘れずに行わなければいけません。
それぞれの手続きをスムーズに行うためにもポイントを理解し、適切に実施することが大切です。
必要であれば専門家からの助言を受けると、効率良く申告できるでしょう。



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(編集:創業手帳編集部)

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