補助金・助成金に税金はかかる?区分や会計処理時の注意点などを解説
補助金は一部課税対象に!区分を把握しておこう
補助金は、国や地方公共団体が起業に対して交付する給付金です。技術振興や企業応援などが目的で、審査に通過した場合のみ利用可能となります。
そのような補助金は、一部ですが課税対象となる点に気をつけなければいけません。
そこで今回は、補助金・助成金に税金はかかるのか、非課税対象になるのはどのような補助金・助成金なのかなどの疑問に答えていきます。
これから補助金や助成金を利用したいと考えている人は、ぜひ目を通してみてください。
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この記事の目次
補助金・助成金などに税金はかかる?
補助金や助成金は、国や地方自治体から受け取れる給付金です。それを受け取った場合、税金はどのような扱いになるのかを知りたい人もいるのではないでしょうか。
まずは、所得税や法人税、消費税の扱いを解説します。
所得税・法人税の場合
補助金・助成金は、会計において収益という扱いになります。そのため、所得税や法人税は原則課税対象になると覚えておきましょう。
課税されるのは、補助金・助成金に売上げなどを足した収益から経費(損益)を差し引いた金額です。ただし、個人の場合は非課税です。
所得税法や新型コロナ税特法などに基づいて非課税となるものを、以下に紹介します。
-
- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金
- 新型コロナウイルス感染症対応休業給付金
- 特別定額給付金
- 子育て世帯への臨時特別給付金
- 学生支援緊急給付金
- 低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金
など
消費税の場合
消費税に関しては、モノやサービスの授受がないことから、原則対象になりません。
しかし、経費補てんを目的とする補助金・助成金は消費税分を返還しなければいけないケースもあります。詳しくは以下のとおりです。
消費税分の返還が求められるケースとは?
消費税分の返還が求められるケースは、経費補てんを目的とする補助金・助成金を受け取った時です。
基本的には課税されませんが、そのような場合は注意が必要です。
例えば、110万円分の備品を購入した時に補助金・助成金の申請を行い、50%分(55万円)が対象となったとします。
この場合、55万円の10%にあたる5万円分が消費税相当とみなされます。
原則としては備品購入時にかかった10万円を仕入控除税額として控除できますが、助成金を使ったので5万円でなければ適正とはいえません。
消費税分を返還する場合の算出方法
消費税分を返還する際の計算式は、課税売上割合によって変わります。課税売上割合は、課税期間中の売上げの中で課税売上高がどのくらいを占めているかを表すものです。
・課税売上割合が95%以上であり、課税売上高が5億円以下の法人など
仕入控除税額=補助金・助成金の額×10/110
・課税売上割合が95%未満もしくは課税売上高が5億円超の法人などで、一括比例配分方式により消費税の申告を行っている
仕入控除税額=助成金など×補助対象経費のうち課税仕入額/助成など対象経費×課税売上割合×10/110
・課税売上割合が95%未満もしくは課税売上高が5億円超の法人などで、個別対応方式による消費税の申告を行っている
(助成金など×補助対象経費のうち課税売上対応分/補助対象経費×10/110)+(助成金など×補助対象経費のうち共通対応分/補助対象経費×課税売上割合×10/110)
補助金・助成金などで課税対象になるもの
補助金・助成金などで課税対象になるものもあります。具体的にどれが課税対象になるのかを確認してみてください。
1.事業所得などに区分されるもの
事業所得に区分される補助金・助成金は、事業に関して支給されるものです。
事業者の収入が減ってしまった時に補てんする補償や支払賃金などの必要経費の補てんを目的としたものなどが該当します。
補償金を含めた1年間の収入から経費を差し引いた金額が赤字になる場合は、税金の負担が発生しません。
支払賃金などの必要経費を補てんする場合は、支出自体が必要経費となります。具体的には、以下が挙げられます。
-
- 事業所得者向けの持続化給付金
- 家賃支援給付金
- 農林漁業者への経営継続補助金
- 文化芸術・スポーツ活動の継続支援
- 感染拡大防止協力金(東京都)
- 雇用調整助成金
- 小学校休業等対応助成金
- 小学校休業等対応支援金
- 肉用牛肥育経営安定特別対策事業による補てん金
など
新型コロナウイルス感染症の影響を受けた人を支援するための補助金・助成金はもちろんですが、ほかにも課税対象となるものがあるので把握しておくべきといえます。
特に、事業に関する補助金・助成金を受けた場合は、適切に税金を支払っているかチェックすることが大切です。
2.一時所得に区分されるもの
一時所得に区分されるものは、事業に関連しない補助金・助成金です。所得水準が一定以下になった人に対して一時的に支給される補助金・助成金を指します。
一時所得には50万円の特別控除があるため、ほかの一時所得との合計が50万円を超えなければ、課税対象になりません。
一時所得に区分される補助金・助成金は、給与所得者向けの持続加給付金やGo Toキャンペーン事業における給付金、すまい給付金、地域振興券などです。
事業所得に区分される補助金・助成金は事業を支えるためのものですが、こちらは個人の生活をサポートするようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。
3.雑所得に区分されるもの
雑所得に区分される補助金・助成金は、先ほど紹介した2つのどちらにも該当しないものです。
一般的な給与所得者の場合、給与所得以外の所得が20万円以下だと確定申告をする必要がありません。
具体的には、雑所得者向けの持続加給付金や企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における割引券(通常時)、東京都のベビーシッター利用支援事業における助成(通常時)などが該当します。
これらは、事業所得にも一時所得にも該当しない補助金・助成金なので、雑所得扱いです。
補助金・助成金などで非課税対象になるもの
補助金・助成金の中には、非課税対象になるものもあります。続いては、どのような補助金・助成金が非課税になるのか解説します。
1.支給の根拠になる法律が非課税の根拠になる
雇用保険臨時特例法や雇用保険法、生活保護法、児童手当法、児童扶養手当法、被災者生活再建支援法などに基づいて支給される補助金・助成金は、受け取ったとしても非課税となります。
休業手当を受けられない人や被災した後の生活再建を目指している人などをサポートするものです。
以下に、該当するものをいくつか紹介します。
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- 新型コロナウイルス感染症対応休業支援金
- 新型コロナウイルス感染症対応休業給付金
- 雇用保険の失業等給付
- 生活保護の保護金品
- 児童(扶養)手当
- 被災者生活再建支援金
など
受け取る予定の補助金・助成金がこれらに当てはまる場合は、非課税となるので間違えないようにしてください。
2.新型コロナ税特法が非課税の根拠になる
新型コロナ税特法では、2020年4月30日に交付された法律で新型コロナウイルス感染症などの影響に対応するための臨時特例を定められています。
納税者の事業で大幅な収入の減少(およそ20%)があった場合やそれに近しい状況に陥った事実がある場合、国税の納付を1年以内に限って猶予を持たせるという内容です。
納期限から1年間は、延滞税が発生することはなく、担保も必要ありません。
また、特別定額給付金や子育て世帯への臨時特別給付金も該当します。
これらの給付金はすでに受付けを終了していますが、同じようなものが給付された時には非課税になる可能性が高くなります。
そのため、利用できる補助金・助成金がある時は、新型コロナ税特法が根拠となって非課税になるかを確認してください。
3.所得税法が非課税の根拠になる
所得税法は、個人の所得に関する税金を定めた法律です。補助金・助成金の中には、所得税法が非課税の根拠になっているものもあります。
具体的には、以下が該当します。
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- 学生支援緊急給付金
- 低所得のひとり親世帯への臨時特別給付金
- 新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
- 企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
- 東京都のベビーシッター利用支援事業における助成
- 東京都認証保育所の保育料助成金
など
企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における割引券に関しては通常時のものが課税となりますが、特例措置におけるものは非課税となるので混同しないように注意してください。
似たような補助金・助成金もあるので、課税と非課税のどちらに該当するのか、あらかじめ確認しておくと安心です。
補助金・助成金などを受け取る場合の仕訳方法
個人事業主や法人が補助金・助成金を受け取った場合、普段とは違った会計処理が必要です。
続いては、補助金・助成金などを受け取った時の仕訳方法を解説します。
基本的な収益計上時期
補助金・助成金は、支給が決まった日が属している年度の収入に計上します。つまり、交付決定通知が行われた日が属している年度の雑収入に計上することになります。
申請したタイミングではなく、決定してからになるという点に注意してください。
例えば、第5期中に申請して第6期に50万円の補助金を受け取ることになったとしたら、第6期の収益として計上します。
このような場合、第6期で行う仕訳は現金預金が50万円、雑収入が50万円です。
例外的な収益計上時期
補助金・助成金の中には、経費を補てんするためのものもあります。そのような場合は、支払いを先に行い、支払った経費をもとに実績報告をするという流れになります。
そして支給額が決定するので、収益計上時期が変わる可能性があるという点に注意が必要です。
経費の支払いと補助金・助成金の支給額の決定が同じ事業年度内であれば特に問題はありません。
しかし、交付が確定するタイミングが翌期になってしまう場合もあります。
翌期にまたがってしまった時は、経費と補助金・助成金が対応するようにするため、経費が発生した日が属する事業年度で取り扱うことが定められています。
収益として計上するタイミングが変わってしまうケースもあるため、例外的な事例も把握しておくと安心です。
交付が確定するタイミングが翌期になってしまっても焦らなくて大丈夫です。
会計処理をする際に気をつけたいこと
会計処理を行う際、いくつか気をつけたいポイントもあります。最後に、把握しておきたい注意点をピックアップしてご紹介します。
1.決算期をまたぐ場合は未収入金の勘定科目で仕訳をする
補助金・助成金が支給されるタイミングは、申請をしてからタイムラグが生じます。
採択や支給が決定しても、実際に支給されるまでにさらに時間がかかるといったケースも珍しくありません。
申請から支給までに時間がかかると、会計年度をまたいでしまうこともあります。
会計年度をまたいでしまった時は、借方では未収入金の勘定項目として仕訳をし、貸方では雑収入としてください。
そして、補助金・助成金が入金されたら借方は普通預金、貸方は未収入金の勘定項目で仕訳を行います。
2.圧縮記帳は必ずしもベストな選択とはいえない
圧縮記帳は、一定の資産を取得した際に損金計上し、課税所得を抑えられる手続きです。
圧縮記帳の導入により、一時的に課税負担が増えてしまい、資金繰りが悪化することを回避できます。しかし、それがすべての場合においてベストな選択とはいえません。
なぜなら、適用した年の税負担は軽減できますが、翌年以降の税負担は大きくなってしまうからです。
納税義務がなくなったわけではないため、翌年以降の課税対象となり、数年かけて支払うことになります。
圧縮記帳を採用するかどうかは、企業の判断に委ねられます。しかし、安易に決めるのではなく、経営計画や資金計画などを加味した上で慎重に考えなければいけません。
メリットだけではなくデメリットも把握した上で検討するようおすすめします。
3.記載漏れや誤りがないように気をつける
補助金・助成金も、普段の会計処理と同じく、計上漏れとなった場合のペナルティがあります。
期限内に申請された申告書に書かれている納税額が支払わなければいけない金額より少ない時は、過少申告加算税を支払うことになります。
過少申告加算税は、修正後の納税額の10%相当とされていて、本来支払うはずだった分と一緒に納めなければいけません。
さらに、期限を過ぎているケースでは、延滞税も発生します。金銭的な負担が大きくなってしまうので、記載漏れや誤りがないように気をつけてください。
まとめ
補助金・助成金は、生活や事業を再建するために役立つため、利用する人や企業はとても多くいます。
しかし、補助金・助成金に税金がかかる場合とそうでない場合があることなどを知らないというケースも少なくありません。
課税対象になるものは正しく会計処理しないと、ペナルティの対象になってしまうので注意が必要です。
会計処理を行う際は、決算期をまたぐのか、記載漏れはないかなどを細かく確認してください。
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(編集:創業手帳編集部)
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