限界利益とは?計算方法と事業での活用方法

創業手帳

限界利益を活用して経営判断を正しく!限界利益率、損益分岐点についても解説


事業を営む上では、様々な指標を用いて事業の方向性を探り、経営判断の材料とする分析が欠かせません。
限界利益は、そのような経営判断の材料として役立つ指標のひとつです。限界利益を用いることで、今後の事業の成功の可否や事業にかけるべき予算などが計れます。

事業計画や赤字事業の存続の可否で迷った際も、限界利益は役立つ指標です。限界利益の計算方法や実際の使い方などを理解しておきましょう。
また、関連する用語や指標についても解説します。

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限界利益の概要


限界利益は、商品やサービスを販売した際に出る売上と連動して得られる利益です。
限界利益を見ることで、その事業が儲かっているかどうか、費用が掛かり過ぎていないかどうかわかります。
そのことから、限界利益は事業を存続できる見込みを判断するための指標として使われることが多くなります。

限界利益は、売上と連動して得られる利益であるため、粗利や営業利益などの数値と似ている面を持つ指標です。
しかし、限界利益の意味や使い方は粗利や営業利益とは異なります。ここでは、限界利益の意味や意義、粗利や営業利益との違いについて確認しておきましょう。

限界利益の意味

限界利益とは、原価と売価の間にどれくらいの利益が生まれるのかがわかる指標です。
商品やサービスを販売した売上から、それにかかった変動費を引いた後に残った利益が限界利益となります。

売上にかかった費用は原価であり、限界利益とは原価と売価の差額を計算したものです。
原価と売価のみで利益を計算することで、その事業の単純な利益の大きさが見え、事業の収益性がわかるという仕組みです。
実際には、事業を営むためにはそれ以外の経費も必要ですが、まずはそれらを取り除くことで、単純に事業単位で利益が出るかどうかを見ることができます。

限界利益を使うシーン

限界利益を用いるシーンとしては、第一に事業としての収益力を知りたい時が挙げられます。
限界利益はどれくらいの利益が出るか知る指標として、事業の収益力を明確に示します。

また、限界利益の数値によって営業利益が赤字でも事業に価値があるかどうか判断することも可能です。
事業で赤字が出ている場合、経営者としては存続か撤退か、決定しなければいけない時もあるでしょう。
赤字事業を継続していけば、いずれ経営が破綻してしまうかもしれません。しかし、限界利益の数値によっては、改善次第で黒字化の可能性が見えることもあります。

粗利・営業利益との違い

限界利益は、原価と売価の間に生まれる利益です。
これと同じように利益を示す指標として、粗利(粗利益)や営業利益がありますが、これらの数値と限界利益には違いがあります。

限界利益は、売上高から変動費にあたるものを引いた差額です。売上原価や販売管理費といった区別なく、売上にかかった総費用から変動費だけを引きます。
ところが、粗利や営業利益は、限界利益とは異なるものを売上から引いたものです。

粗利は、商品やサービスを販売して得た売上高から売上原価を差し引いて求められます。
売上原価は商品を仕入れたり、製造したりするのにかかったすべての費用です。
限界利益が変動費を引いたものであるのに対し、粗利から引く費用には販売管理費にあたる変動費を含みません。

粗利は損益計算書の中の「売上総利益」と呼ばれるものにあたり、純利益を出す前の基礎となる数字です。
そして、粗利から販売管理費を差し引いたものが営業利益となります。

つまり、営業利益は売上高から売上原価と販売管理費を引いたものです。限界利益は変動費のみを引きますが、営業利益はそれ以外の費用も引いて出します。
言い方を変えると、営業利益は限界利益から固定費を引いたものとも言えるでしょう。営業利益は営業活動によって生まれた利益を示します。

粗利は販売管理費を含めず、単純な利益の基礎を示すもの、営業利益は事業自体には関係が薄い費用まで引いたものです。
同じように利益を示す数字ですが、限界利益とは違った目線で計算されています。

限界利益の計算方法と関連費用の解説


限界利益は、売上高から変動費のみを引いたもので、計算方法は売上高-変動費=限界利益です。ただし、経営に関わっている費用は変動費だけではありません。

費用には、商品を作るための材料を仕入れる費用やそれを商品にする費用、また、それ以外にも事業を運営するためにかかる費用などがあります。
こうした費用は固定費と変動費に分けられますが、限界利益では変動費のみを使って計算します。

限界利益の計算や読み取り方を知るためには、こうした関連費用を理解しておくことも大切です。
また、限界利益から出せる限界利益率や損益分岐点の考え方も押さえておくと役立ちます。

固定費と変動費

限界利益の計算をするには、固定費と変動費を区別する必要があります。
会社の費用を変動費と固定費に分けることで、実際に売り上げを作るためにかかる費用と売上に関係なくかかる費用が区別できます。

固定費は売上に関係なくかかる費用で、人件費やオフィスの地代家賃など、毎月一定の金額が発生するものです。売上の変動と関係なく、商品が売れなくても発生します。

一方、限界利益の計算に使う変動費は、売上の変動とともに金額が変わる費用です。
仕入れ金額や外注費、燃料費などがあります。変動費の金額は売上高に対して一定の比率で変動し、売上がアップすれば増え、ダウンすれば減ります。

限界利益率

限界利益率は、売上高に対する限界利益の比率です。事業の売上に占める限界利益の割合を示します。
限界利益だけではなく限界利益率まで見ることで、売上高に対する収益力の高さがわかります。

限界利益率からわかるのは、売上の増減によって限界利益がどれくらい増減するかです。
限界利益率の高い事業は、売上高の増加がそのまま利益の増加につながりますが、反対に限界利益率の低い事業は、売上高が増加しても利益の増加があまりありません。

限界利益率はひとつの事業の存続を検討する時にも使えますが、2つの事業や製品などを比較して、どちらの事業のほうが儲けやすいか比べることもできます。
また、限界利益率には一般的な目安があり、目安は業種ごとに異なります。そのため、自社の限界利益率を見る際には、業種の目安と比較することも大切です。

一般には、企業内部で付加価値を高められる業種ほど限界利益率は高くなると言われています。
つまり、流通のみを行う卸売業などでは限界利益率は低く、知的サービスなどは高くなる傾向です。

損益分岐点

損益分岐点も、限界利益と関連するものです。限界利益率が高くなるほど損益分岐点が下がり、限界利益率が低いと損益分岐点は高くなります。
また、損益分岐点において限界利益と固定費はイコールとなります。

損益分岐点とは、収益と費用が等しくなる点のことで、文字通り利益と損失の分岐する境目です。
いわゆる赤字と黒字の分かれ目であり、損益分岐点を超えると事業は黒字になり、超えられなければ赤字になります。
損益分岐点は、利益を増やすために何をすべきか判断する材料です。損益分岐点では会社の利益状況がわかり、固定費と変動費の改善点がわかります。

損益分岐点の分析に使われる表の横軸は販売数量、縦軸では費用と売上高を示します。
費用は固定費によって底上げされるため、縦軸の固定費の金額が起点となって始まるのが一般的です。一方売上高はゼロからスタートします。

その後、費用は変動費と固定費を合わせて比較的緩やかな右肩上がりで伸びていき、売上高は常にその時点の費用の金額を超えるため、費用よりも急な傾斜で伸びるのが普通です。
しかし、費用は固定費で底上げされた上に、売上に比例してかかる一定額の変動費がかかるため、売上が費用に追いつくためには一定以上の販売数が必要です。

その一定以上の販売数と金額を示すのが損益分岐点です。
売上に占める変動費の割合が費用の上昇率を作るため、変動費が少なければ少ないほど、損益分岐点も低くなり、限界利益も同様に、変動費が少ないほど高くなります。

損益分岐点について詳しくはこちらから>>
損益分岐点の意味と計算・使い方|経営者のための基礎知識

変動損益計算書

変動損益計算書とは、通常の損益計算書の内容を変動費と固定費に分類し直したものです。
損益計算書は、売上高や売上原価、販売管理費などをまとめた計算書であり、そこからは売上総利益(粗利益)と営業利益などが読み取れます。
しかし、売上原価も販売管理費も、固定費と変動費が混ざっており、売上に対する限界利益は簡単に読み取れません。

そこで、変動損益計算書では、売上原価と販売管理費の内訳を変動費と固定費に分け直し、再計算して限界利益を見えやすくします。
売上原価の中の主な固定費は製造人件費、変動費は材料費や仕入れ費用などです。
また、販売管理費の中の主な固定費には、販売人件費や地代家賃、通信費などの経費があり、変動費には輸送料などがあります。

製造人件費は、製造業における商品を作るのにかかる費用で売上原価にあたりますが、販売人件費は販売管理費です。
どちらの人件費も生産量には関係ないため、固定費となります。

売上高から変動費である材料費や輸送費などを引いたものが限界利益として表示されます。
そこからさらに固定費を引くと営業利益が出るので、通常の損益計算書と照らし合わせ、正確に再計算されたかを確認できるでしょう。

限界利益の活用方法


限界利益や限界利益率は、企業経営においてある事業の分析をするために活用されることが多いものです。
限界利益や限界利益率を用いることで、会社が進めている事業の現状と将来性を数字で表わせます。
また、それぞれの事業について比較したり次の努力目標を立てたりするなど、いろいろな分析と経営戦略に生かせます。

限界利益や限界利益率が実際にどのように企業内で使われるのか、限界利益の具体的な活用方法についてチェックしてみましょう。
限界利益を深く理解でき、経営判断に有効に使えるようになります。

事業の存続の判断

限界利益の活用シーンとしては、事業の存続の判断が多いものです。ある事業の限界利益や限界利益率を見ることで、その事業を継続するか撤退するかの判断ができます。

たとえば、営業利益が赤字の事業が現在あったとします。営業利益が赤字ということは、今は利益よりも費用のほうが大きくなっているということです。
そのため、経営陣としては赤字事業を撤退したほうが良いか頭を悩ませるかもしれません。

ここで限界利益の出番です。営業利益が赤字でも、もし限界利益率が黒字になっていれば、今後の状況次第で黒字化する可能性があります。
もっと売上を伸ばす、無駄にかかっている固定費を見直すなど、黒字転換の可能性が見える場合には継続するのも悪手ではありません。
しかし、反対に限界利益も赤字の場合、売れば売るほど赤字になっている状態です。
そのため、変動費を見直して黒字化が見込めないようであれば撤退が正しい判断と言えます。

限界利益の目安

基本的に、限界利益率は高ければ高いほど好ましいと考えられます。
ただし、業種によってその数値は異なるため、比較対象は同業種の事業を選ぶことが必要です。

一般的には、小売業で20~30%の限界利益率、卸売業では5~10%程度に収まります。ただし、一部の高級品の販売ではこの範囲ではありません。
製造業の限界利益率は30~60%です。また、通信会社やITソフト、アミューズメント関連の場合には、100%近いものもあります。
たとえばこれらの業種では、利用者が一人増えても、そのためにコストがかからないためです。

赤字リスクを減らす施策を取る

限界利益や限界利益率を見て、事業の存続を決めた場合、赤字となるリスクを減らす施策が必要となります。
赤字リスクを減らすためには、売上高を上げるか損益分岐点を低くするかが必要です。売上アップの施策や費用を抑える施策を取り、事業の利益の安定を図ります。

商品・サービスの価格設定

限界利益や限界利益率は、商品やサービスの価格を決める目安にもできます。
消費者が受け入れやすい価格と自社が利益を出せる価格のバランスをより正確に見極めることで、最も適切な価格を設定できます。
また、割引セールなどをする際も、利益を出せる値引き率、赤字にならないラインを明確にすることが可能です。

安くすれば消費者が手を出しやすくなるのは当然ですが、そもそも事業は利益を出せなければ意味がありません。
安売りしすぎないためにも、限界利益率や損益分岐点を知ることが大切です。

予算の作成

予算を正確に作成するためにも、限界利益や限界利益率は活用できます。予算作成では、売上高に対して費用がいくら必要となるのか把握することが大切です。
変動費は売上高に応じて変化するため売上目標がわかれば、それに対しての変動費もわかります。

変動費を算出するためには、まずは目標売上と限界利益率を定めることが必要です。限界利益率は業界の標準的な数値や過去の水準などをもとに決定します。
限界利益率が決定すると限界利益がいくらになるか算出でき、さらに、売上から限界利益を引くことで変動費の予定額が出せます。

まとめ

限界利益や限界利益率は、事業の現状と将来性を知るための指標となる数値です。
限界利益を活用すると、事業ごとの存続の可否や商品の価格、予算の決定などがしやすくなります。
粗利益や営業利益とも違った視点から売上金額や収支を知ることができ、事業そのものの価値がわかります。

経営に関わる人は、限界利益を活用して事業の安定や成長を図り、健全な経営を目指しましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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