起業家が「アポ」を取るためにやるべきこと「 アポの5原則」著者・藤島幸恵さんインタビュー(後編)

創業手帳
※このインタビュー内容は2017年12月に行われた取材時点のものです。

営業のプロが教えるアポ取りの極意

(2017/12/18更新)

前回は、アポを取る前に行っておきたい準備について解説していただいた藤島幸恵さん。
後編では、いよいよ「アポを取るためにやるべき5原則」について、お話を伺いました。起業を成功させるための営業活動のコツをお届けします。

前編はこちら→「アポの5原則」著者・藤島幸恵さんが語る、アポを取る前にやっておきたい準備(インタビュー前編)

藤島幸恵(ふじしま さちえ)
1990年住友生命保険相互会社に入社。
26年間、個人・中小法人営業に従事。プレーヤーとして在籍中は常にトップクラスの成績を上げ続け社内表彰多数・MDRT複数回入賞。飛び込み・職域活動が嫌で、入社後すぐにお客様が待っていて下さる「アポイント」の探究を始める。
3年目には「紹介メソッド」を開発した後、「アポの5原則®メソッド」などのメソッドや教材を開発。一切の営業をせず口コミのみで広がり、「アポの5原則®」「紹介ノウハウ」を約3,000名に伝える。
2016年に「Cocoro Sales LAB.」を立ち上げ、自身も生損保営業に携わりながら“営業現場に一番近い講師”として、保険会社を中心に、企業研修・オープンセミナー・少人数グループコンサル等を展開。

「うやむやな言い方」でアポを取らない

さて、いよいよアポの取り方について、です。
アポ取りが苦手な人の場合、何となく用件をうやむやにしてアポを取る、ということがあると思います。自信がないときにそういうことをしがちです。「久しぶりに、ご挨拶を……」などと言ってしまうのですね。

でも、これをやると後で自分が困ります。なぜなら、商談という「土俵」に乗ったときに駆け引きが生まれ、それに失敗すると自分に心理的にダメージがあるからです。

営業という仕事は、モチベーションが下がると続きません。効率も落ちます。
ですから、ヘンに営業ということを隠さずに、最初から正直に用件を伝えましょう。断りも増えるかもしれませんが、最終的な成果で見ると、圧倒的に良くなっているはずです。

実際、話をしてみたら、可能性が無く、ただ単にお茶を飲むだけになってしまうこともあるかもしれません。そういうときは、「前向きに諦める」と、意外と良い結果になることがあります。無理なものをどうにかしようとしない。もうポジティブにあきらめて、下心なくその場を楽しんでしまいましょう。すると、人間関係ができて、話が良い方向に行くというケースもあります。そうなったら、次の商談のアポをその場で取りましょう。

この時点でやっと必要になるのが、「アポの5原則」です。

アポの5原則(マインド編)

1・アポは「その場で取る」ことが基本

これはあくまでも原則ですが、アポは時間が経つと取れなくなります。だから、「後で」、「今度」ではなく、その場でいただきましょう。忙しい人ほど、その場でアポをいただくことが重要です。

2・舞台設定にこだわる

雑音の多い場所だと集中できない、なんていうこともあります。よく喫茶店で、他の人がのぞき込めたり、会話の内容まで聞こえてしまう場所で、提案書を広げている営業さんがいますが、これではお客さまも安心できません。何より自分が気になるので、商談も不調になってしまいます。だから、場所、舞台設定をしっかりしましょう。

私の場合は、場所によって使うお店などを決めています。よく知った「ホーム」で商談ができれば、それだけで安心でしょう? 顔なじみになっておけば、店員さんも多少の無理は聞いてくれたりします。

3・忘れない人間はいない

商談は関係が希薄なところからはじまります。つまり、相手にとって、最初の商談の段階での営業マンは「どうでもいい人」ということです。どうでもいい人だから、約束も忘れやすい。だからリマインドします。

4・相手も自分も尊重する

「お客さま第一」は営業の基本。ただし、自分も相手も同時に大事にすることを考えましょう。そこは、釣り合っていないといけません。

営業に限らず、相手のために自分が我慢しすぎると、人間は、いざ上手くいかなかったときに相手のせいにしたりします。
「私がこんなに我慢しているんだから、あなたも我慢しなさいよ」と。それが無意識に出てしまうんです。だから、「自分を満たす」ことも大事です。

ちなみに、意外に多いのが「アポを取ったら相手に悪いのでは?」と考える方がいらっしゃることです。これは一見、相手の事を想っていそうですが、よく考えると、「自分が傷つくのでは?」と自分のことを考えているだけ、というケースもあります。
両方が大事でつりあっているという状況は、意識的に作らないとバランスが崩れます。意識することが大事です。

5・アポのある人だけが見込み

アポがある人、アポの可能性がかなり高い人に集中していきましょう。こんな楽なことはないです。

一方で、「妄想の見込み」は、頭を支配してしまうので、効率が悪くなります。パソコンも、アプリケーションがいろいろ起動していると重くなりますよね。そこで、使わないアプリを閉じると急にサクサク動きますよね。それと一緒です。

5つのステップ(スキル編)

次は、テクニック、スキルの話です。
先述したマインドをふまえた上で、私が25年以上の営業経験からまとめ上げたのが「アポの5原則 FiveStep Method」です。

アポの5原則「FiveStep Method」
  • 1.スケジュール帳を開き目の前で書き込む
  • 2.日時と場所を設定する
  • 3.用件と所要時間を伝える
  • 4.アポカードを渡す
  • 5.事前に確認TELすることを伝える

限られた文字数でこれらを誤解なく説明するのは無理ですので、ここでは、最も重要な「事前に確認TELすることを伝える」についてだけ触れておきます。

以前、私はこんな失敗したことがあります。
あるお客さまに対して、アポイントの前日に確認の電話をしたところ、すごい剣幕で怒られてしまったのです。

というのも、そのときお相手はとても忙しい状況で、イライラされていたようです。「こんなバタバタしているときに保険の話なんてできるか!」となって、電話の用件が《アポの事前確認》であることもお伝えできずに切られてしまい、結局、アポもキャンセルとなり、案件としても消えてしまいました。

なぜ、そうなったのでしょう? 私はどうすればよかったのでしょうか?
事前の確認TELは、ドタキャンを防ぐ重要な手段です。しかし、その一方で、相手が忙しい場合は、営業マンがわざわざ電話で確認してくること自体を疎ましく感じてしまう可能性があります。電話の目的や所要時間がわからなければなおさらでしょう。

だからこそ、アポを取る際には、「事前確認の電話をしますね」と一言伝えておくとよいのです。そうすれば、「ああ、事前確認だから一言二言ですぐ済むだろう」と相手も理解できますし、むしろ「熱心で、丁寧な仕事をするね」という評価にもなるわけです。

マインド・スキルは車の両輪

マインド、スキルでそれぞれ5個のステップを紹介しました。
この両者は、例えるなら「車の両輪」です。「マインドは整った。じゃあ次はどうしたらいいの?」となったときに役に立つのがスキルです。詳しくは、拙著『誰も教えてくれなかった営業の超基本! アポの5原則』(ぱる出版)をぜひ参考にしていただければと思いますが、お客さまが100人いれば100通りの反応があります。そのときの自分の状況によっても変わります。だから、試して試して試してください。

自分だけのオリジナルな工夫は失敗から生まれます。相手によって、微調整できるようになって初めて、アポ取りのスキルは自分のものになっていくと思います。

起業して思う事。不安な時から自分を受け入れるまで。

起業するときには、会社を辞めるまでに5年くらい悩みました。
当時決めていたことは、「感謝溢れる卒業をする」ということ。つまり、感謝できる状態になるまでは独立しないということです。だから、社内で求められる役割にもできる範囲で応えつつ、自分から会社に感謝ができる状態になってから起業しました。

実際に起業してからは、不安な日々でした。生きていると感情のアップダウンがありますが、最初は「アップダウンがある」ということ自体がストレスで、自分にダメ出しをする日々でした。ですが、「波があるんだ」ということを自分で受け入れてからは楽になりました。

今は好きな仕事ができ、やりたいお仕事もいただき、本の出版の話も来て、事業は上手く回っていると言えます。ですが、やはり心理状態が悪いときには仕事に影響します。

例えば、「あれも無い、これも無い」と思っていると、不安ばかりが増幅していきます。私はその状態を「欠乏のエンジン」と呼んでいるのですが、そういう時に状況は良い方向に向かいません。特に、起業家はエネルギーが強い人が多いので、大変なことになってしまいます。

だから、同じ「思う」のであれば、「欠乏のエンジン」ではなく、感謝の前向きな気持ちでエンジンを回さないといけないと思っています。

恐れずに手放すと入ってくる

私などは、まだまだ起業についてアドバイスする資格はありません。逆に、相談させていただきたいくらいですが、コーチングと絡めて二つほど申し上げたいと思います。

一つは、「それは、お金がもらえなくてもやりたいと思える起業ですか?」ということです。
コーチングでは、独立・起業を考えている人に、「それは、お金がもらえなくてもやりたいことですか?」と質問することがあります。もちろん、起業したらプロですから、しっかりお金をもらわないといません。自分を必要以上に安く売ってはいけないし、自分の価値をきちんと伝えないといけません。正当な報酬をいただくことは、仕事をする上で重要なことです。

ですが、その一方で、「それは、お金がもらえなかったとしてもやりたい仕事なのか?」と考えられることが大事です。「YES」であれば、大変な時でも踏ん張れるでしょうし、好きなことをやれるのは幸せなことだと思います。おかげさまで、私は「YES」と即答できます。今している仕事が、私が本当にやりたいことだからです。

もう一つは、「恐れずに手放す」ことです。
自分の中のスペースを空けると、自分の中に必ず本当に欲しいものが入ってきます。恐れて、もがいて、悩んだら、自分と向き合う時間を作ってみてください。

そして、「本当はどうしたいの?」と自分に聴いてあげましょう。そして「要らない」と思ったもの、ネガティブな感情は手放しましょう。そうすると、新しいものが入ってきます。

起業は簡単に成功することではありませんが、ご自分が積み上げてきたものを信じてがんばってください。私もがんばります!

藤島幸恵さんの著書・詳細はこちらから!

藤島幸恵さんの著書「誰も教えてくれなかった営業の超基本! アポの5原則」の詳細は、こちらからどうぞ!

また、2月16日(金)には、大阪梅田 蔦屋書店にて、出版トークセミナーが開催されます。
詳しくは、大阪梅田 蔦屋書店のホームページからご覧ください。

(取材協力:Cocoro Sales LAB./藤島幸恵
(編集:創業手帳編集部)

創業手帳は、起業の成功率を上げる経営ガイドブックとして、毎月アップデートをし、今知っておいてほしい情報を起業家・経営者の方々にお届けしています。無料でお取り寄せ可能です。



創業手帳
この記事に関連するタグ
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す