フリーウェイジャパン 井上達也|無料で使えるクラウド型業務支援サービス「フリーウェイ」で”覚悟を決めた”起業家を応援したい
小規模事業者であれば永年無料で使えるフリーウェイシリーズの仕組みとは?
クラウド型業務支援サービスを一部無料で提供しているサービスは様々な企業で行われています。しかし無料期間が短く、すぐに無料枠では使えなくなることが大半です。そのようなサービスとは一線を画しているのは「フリーウェイシリーズ」です。小規模事業者であれば給与計算ソフトや勤怠管理システムが「永年無料」で使えるのです。
今回は、「フリーウェイシリーズ」を提供しているのがフリーウェイジャパンの井上さんに30年間の経営経験や多くの起業家のサポートを実施したことについて、創業手帳の大久保が聞きました。
株式会社フリーウェイジャパン代表取締役。
1961年生まれ。大学在学中の1981年からマイコン(現在のパソコン)を使いこなしプログラミングを行う。その技術力を買われ株式会社日本デジタル研究所(JDL)に入社。同社を退社後は国内最高のシステム開発を目指し、1991年に株式会社フリーウェイジャパンを起業し現在に至る。著書に「小さな会社の社長の戦い方」「起業を考えたら必ず読む本」(明日香出版社)等がある。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
時代の変化に合わせて業態を変化し続ける
大久保:今までどのような事業をやられましたか?
井上:最初に会社を作ったのは今から31年前の29歳の時です。
プログラマーではありましたが当時は、そもそもパソコンを使っている人が少なかったため、オフイスコンピュータのサプライ品やトナーの販売をしていました。
起業当時はお金がなかったのでチラシを作りたくても会社にコピー機はありませんでした。仕方がないので、コンビニで夜中に9時間コピーをし続けました。それでも問い合わせはほんの少ししか無い状況でした。
次にやったのは、パソコンソフトの販売です。
最初にやっていたサプライ品の販売は、競合他社が増えてきた事と、利益率がどんどん下がってきたこともあり、もっと販売単価の高いパソコンソフトの販売に切り替えました。サプライ品で築いたお客様がいたおかげで、なんとか赤字から脱却する事はできました。
大久保:大変なことも色々あったかと思いますが、今の事業に辿り着くまでの経緯を教えていただけますか?
井上:パソコンソフトを販売しているとお客様から、こうした方が良い、こんな機能があったらいいなぁ、という言葉をダイレクトに聞く事ができます。
しかしメーカーにそれを伝えてもまともに取り合ってくれません。そこで、それなら自分が最高のものを作って売ろうと思い立ちました。プログラマとしての意地もありますから、技術にこだわったため開発には数年かかりましたが、1999年にようやく自社製のパソコン経理ソフトが完成しました。
起業してから15年が過ぎた頃から、会社経営というのは未来の社会を予測し今、何をすべきか考える事だと気づきました。
そこで2008年からクラウドシステムの開発を開始しました。またクラウドもSaaSと呼ばれるプラウザが無いと動作しない古いクラウドではなくハイブリッド(現在のアプリ)で開発しようと思いました。
2010年に国内初のクラウド法人税システムを発表し、次々と企業や税理士が使えるクラウドのシステムを作り出して今に至っています。
小規模事業者は永年無料で使える「フリーウェイ」のビジネスモデル
大久保:フリーウェイのサービス概要を教えてください。井上:会社を作る際には、経理や給与計算、請求書、顧客管理など様々なソフトを用意しておかなければなりません。お金のある会社にとってはたかだか月々数万円かもしれませんが起業家にとって、この数万円はなかなか厳しいものがあります。
そんな時、自分自身が起業した時の苦労を思い出し、お金のない人からお金を取るのは僕がやりたいことじゃない。いっその事、全部無料にして、会社が儲かったらお金下さいでいいじゃないか。と思いました。
なので、小規模事業者であれば永年無料で使ってもらって、儲かって会社の規模が大きくなったらお金をください、というシステムにしてます。例えば、給与計算のソフトは5人までは無料で、それ以上は有料版という風にしてます。
つまり、会社を設立する時は資金が少ないと思うので、無料使ってくださいと、会社が大きくなったら還元してください、というのがビジネスモデルですね。
大久保:会計ソフト以外には、どのようなラインナップがありますか?
井上:会計、給与計算や勤怠管理、顧客管理、販売管理など起業した時に必要なものは全て作りました。
お陰様で多くの起業家に使っていただいています。
給与計算だけでも約9万ユーザーのお客様に、ご利用いただいてます。
「経営者」と「サラリーマン」の徹底的な違い
大久保:経営を成功させるために大事なポイントを教えていただけますか?
井上:やはり、「覚悟」が必要ですかね。
サラリーマンから経営者になるには、脳みその切り替えが難しいんですよね。
サラリーマンは、売り上げがなくてもお金がもらえますが、経営者は売り上げがないとお金が入ってきません。
この感覚から抜けきれない人が多い気がします。だから経営者になる方々には、覚悟が必要ですとお話ししています。
会社を作って最初の5年間の僕の年収は180万円です。
サラ金地獄に陥りそうにもなりました。銀行に預金してある700円をおろしたかったんですが窓口に行くのがかっこ悪くて、カードで下ろすために300円預金して千円札にしたこともあります。
起業というとベンチャーキャピタルから出資してもらって、渋谷におしゃれなビル借りてなんて想像している人もいますけど、そういう人は千人にひとりしかいないという事です。
朝から晩まで365日仕事してそれでもお金がなくて日々怯えて暮らす。これが起業の本当の姿です。
大久保:会社を経営するためにはどのような勉強をすべきだと思いますか?
井上:とにかく、ありとあらゆる知識を身につける必要がありますね。
知らなくて良いことって世の中にはひとつも無いんですよ。
知識って図形なんですよ。1つの知識は1つの点でしかないんですけど、2つになると1本の線が生まれます。3つの知識だと線は3本になります。様々な知識を持つと、それぞれの知識を掛け合わせて、色々な発想が生まれてきます。
起業当時、最初の5年間は上手くいかなかったので、図書館にばっかり行って、商業・経営・マーケティングの棚はほぼ全て読みました。本を読むことはおすすめですね。
経営者として成功する人の特徴
大久保:起業に向いている人はどんな人でしょうか?
井上:起業と会社経営はまた別なので、難しいですよね。
起業家の人は、どちらかというと実務型ではなく、営業や技術が得意な人が多いと思います。
なので、大体の経営者はマネジメントや人事に関する業務は苦手なので、そこの部分を補う人を採用できるかが大事です。逆に言うと、実務型の人は起業に向いていないと思います。
大久保:経営者として成功する人の特徴を教えてください。
井上:成功している人を見ると3つ特徴があります。
まず1つ目は10年以上付きあっている社長がたくさんいる人です。成功しない人って短期的な視点しか無い。付き合ってメリットがあるとか、すぐお金になるとか。だからお金にならないなと感じると友達ではなくなってしまうんですよ。成功している人っていつかは、一緒に商売したいねという感じで長期的に付き合う。僕自身、付き合って十数年後に一緒に仕事したなんていう人はたくさんいます。
2つ目は好奇心が旺盛な人です。こういう新しいものができたのか、なんかこれ面白そうだなと興味を引くものがあれば、とことん調べます。知らない事があると気持ち悪くなるんですよ。そしてある時、この前調べたあれって、今回のビジネスに使えるかもという発想も生まれてきます。
3つ目は、何が何でもやり遂げる人です。約束した事は絶対に守ります。自分が納得できるまでやりつづけます。とはいえ人間は弱いものです。頑張ったんだからこのへんでいいんじゃないの。という悪魔の囁きが聞こえてきます。こういう声を振り切って完璧に仕事をこなす。このくらいでいいかなという妥協は一切しません。
成功している人を見るとこういう人が多いと思います。
大久保:経営者として大切にしていることを教えてください。
井上:人とのコミュニケーションを取ることをとても大切にしています。
コロナ禍になり、Zoom会議で2年くらいやりとりをしていた方がいるんですけど、その方とある日飲みにいくことになりました。話してみると、なんと僕の娘の友達のお父さんだったんです。
そういった無駄話ってZoomだとあまりしないと思うんですけど、結構重要だったりもするんです。
こういう商品があるので買ってください、という話だけだったらZoomでも問題ないと思いますけど、「あたながそれをやるんだったら、私はこれやるよ」とか「あなたは今どんなことを考えてるの?」みたいな内容は対面で会った時しか出てこないじゃないですか。
そういった関係をいかに構築していくかを重要視しています。
大久保:製品を作る際に意識していることは何ですか?
井上:「最高のもの」を作ることですね。
例えば、1つの商品の販売価格を先に決めて、その予算内で採算が取れる商品開発をしようとすると大抵上手くいかないと思います。
クオリティの高い、最高の商品を作ることが大切です。価格も手頃、機能もそこそこという中途半端なものは結局、売れないんですよ。
成功した経営者は「お節介」な方が多い
大久保:起業初期の頃を振り返ってみて、やっておきべきだったと思うことはありますか?
井上:身もふたもない話ですが、もし起業した当時に戻ったら、サラリーマンに戻るかもしれません。サラリーマンであれば、休日になれば、頭を切り替えて遊びにも行けるし、キャンプに行ったりもできる。
しかし、起業した人は、そういったプライベートな時間と仕事を分けるのが難しくなります。そう考えると、起業したことが正解だったのかは今でもわかりませんね。
大久保:つまり相当な覚悟がないと起業できないということですね。
井上:そういうことです。
もう一点はBtoBじゃなく、BtoCをやるべきだったなと思います。
BtoBは、新参者がなかなか上に行けないんですよ。
一方でBtoCであれば、個人の人は商品やサービスが良ければ買うし、美味しければ食べてもらえます。
BtoBモデルであれば、企業としての信用も大切になってくるので、必然的に大企業が強くなるんです。
なので、今から起業して、会社を大きくしたいならBtoCが良いのかなと思いますね。
大久保:BtoBモデルで起業するのであれば、大手企業と戦う覚悟を持つ必要があるということですね。
井上:当社もそこが今一番の問題点ですね。創業30年以上の当社でさえ、大手企業の数分の一の歴史しかない。新参者ということです。
あと今後起業する方にアドバイスするのであれば、自分の得意分野や詳しい分野から始めるべきだと思います。
全然知らないような業種での起業はなかなか難しいので、わかってるところで戦うというのは重要かもしれません。
そして、少し「お節介」なぐらいが成功すると感じています。
お節介なくらいに人のために動いていると、誰かが恩に思ってくれる人が出てきます。そこから次に繋がることがあるんです。
うちも資金繰りに困った時、10数年前から付き合っている人に、こういう仕事があるからやってみない?と仕事をもらったこともあります。
そういう意味で、長くやっててよかったなと思います。
大久保:社長を長く続けていくコツなどはありますか?
井上:仕事している時が一番心が安定するという社長が多いですね。なので、仕事をするのが好きな人は社長を長く続けられるポテンシャルを秘めていると思います。
あと、儲かるからやる、という経営者もいますが、結局その商売が好きじゃないと長続きしないと思いますね。
強い覚悟を持ってチャレンジする起業家を応援したい
大久保:今後の展望を教えてください。
井上:起業家のために何かやりたいですね。
実際、起業家が無料で使えるソフトウェアを作ったのも、お金儲けが全てではないと考えているからなんです。
僕の場合、0を1にすることは得意なんですけど、1を10にすることができないんです。
そういった意味で、色々な会社の起業を手伝ったりとか、僕自身の起業アイディアで社長になる人と一緒にやるとか、そういうことをやり続けたいなと思います。当社でも今度新しく起業塾をやろうと思っています。
起業塾って、成功してない人や会社を経営したことがない士業の人がやってる事が多いんですよ。だから本当の起業を教える塾を作ります。もちろん無料ですよ。
大久保:最後に、起業家へメッセージをお願いします。
井上:「起業」は甘くねぇぞと伝えたいですね。
どんなことでも死んでもやり抜く気があるんだったら、必ず上手くいきます。
強い「覚悟」を持って、起業にチャレンジしてもらいたいですね。
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(取材協力:
株式会社フリーウェイジャパン代表取締役 井上 達也)
(編集: 創業手帳編集部)