フリーランスは失業保険をもらえる?手続きの流れ&注意点を解説

創業手帳

フリーランスでも失業保険は受け取れるが条件を満たす必要がある!


自由に働きたい、好きなことをしたいとフリーランスを目指して退職される方がいます。
しかし、フリーランスを目指して退職した場合、失業保険は受け取れるのかと不安になるかもしれません。

失業保険とは、退職後にほかの会社の正社員を目指す場合に支給が受けられるイメージがありますが、一定の条件をクリアすればフリーランスでも給付金の受取りは可能です。
今回は、失業保険の仕組みや支給額、注意点などをご紹介します。

失業保険の仕組みを解説


フリーランスでも失業保険を受け取りたい時は、まず仕組みを知っておく必要があります。
はじめに、失業保険がどのような制度で誰を対象としているのか、受給できる金額はいくらかなどについて解説します。

失業保険とは?

失業保険とは正式には「雇用保険」と呼ばれ、雇用保険の加入者が失業・退職した場合に給付金を受け取れる制度です。
失業保険の目的は、退職した人が安定した暮らしを送りながら、次の就職先を見つけるための支援です。

そのため、失業保険を受け取るための条件として、求職活動をしていることがあります。
最初の1カ月はハローワークの説明会に参加すれば求職活動の実績となりますが、その後は毎月進捗を報告しなければなりません。

また、フリーランスになる場合には、失業後に開業届を提出することが一般的です。
ただし、提出タイミングによっては、給付金の受給要件を失ってしまうので注意してください。

受給できる金額はいくら?

失業保険の給付金は、年齢やこれまでの月収から算出の賃金日額によって決定される仕組みです。
また、給付日数は自己都合か会社都合のどちらの退職か、雇用保険の加入期間によっても変わってきます。

【失業手当の計算方法】
1.賃金日額=退職前6カ月間の総給与額÷180日
2.基本手当日額=賃金日額×給付金45~80%
3.基本手当の総額=基本手当日額×所定の給付日数
4.毎月の基本手当額=基本手当日額×28日分

これらの計算式で毎月の基本手当額が算出されます。また、年齢によって賃金日額と基本手当日額の上限・下限が設定されており、年齢が若いほど上限額が低くなっています。

最終的に失業手当として受け取れる金額は、「給付日数×基本手当日額」で決定されるものです。
上記の計算式を用いれば大体の金額を算出できますが、複雑な部分もあるためハローワークの窓口で確認すると確実です。
よりたくさん給付金を受け取りたいのなら、独立タイミングの見直しを検討してください。

フリーランスが失業保険を受け取るための条件


失業保険の概要がわかったところで、次はフリーランスが給付金を受け取るための条件を知っておくことが大切です。
独立のタイミングによっては対象外となるケースもあるため、正しく把握しておきましょう。

求職活動を行うことが条件

失業手当の目的は「1日でも早く再就職を見つけるための支援」なので、働く意思を持って求職活動をしている人のみに支給されます。
そのため、フリーランス希望であっても、求職活動を行う必要があります。

開業の検討自体は問題ありません。ハローワーク担当者に独立を考えていることを伝えても、給付金の受給対象から外れはしないといえます。
ただし、独立の準備段階を超えて、開業届を提出すると給付金の受給対象から外れてしまうので注意してください。

独立準備や副業をしていると対象外

独立の検討自体は問題ありませんが、準備期間に入っていると受給できません。
基本的には開業届を提出した日が独立した時だと判断されますが、その前から事業を開始していると見なされるケースもあります。

例えば、事務所や店舗を借りている、取引先と契約を交わしているなどの場合、開業届の提出より前に事業開始の準備をしていると判断される可能性が高くなります。
また、副業をしている場合も、基本的には給付の対象外となるため、失業手当を受け取りたいのなら退職と同タイミングで停止させてください。

開業届を出すタイミングを間違えない

失業保険を受け取るには、開業届のタイミングが大切です。
そもそも開業届とは、新しく事業をスタートする際に提出する書類で、事業を開始した期日から1カ月以内の手続きが必要です。

しかし、失業保険の待機期間中に開業届を提出すると支給の対象外になります。
受給するには待機期間後に事業をスタートし、給付制限から1カ月以上過ぎていることが条件となるので、最低でも給付制限から1カ月以上後に提出してください。

以下の記事では、開業届の基礎知識をご紹介しています。提出するメリット・デメリットもまとめているので、初めて独立する方はぜひ参考にしてください。
開業届を出すデメリットはある?開業届の基礎知識を紹介します

フリーランスが失業保険を受給するための流れ


ここからは、会社を自己都合で退職してから失業保険を受け取るまでの7ステップをご紹介します。
それぞれのステップの詳細や注意点を知っておくと、よりスムーズに受給まで進められます。また、開業届の提出や再就職手当の手続きなどもまとめました。

1.ハローワークで求職の申込みをする

退職後は、まず地域のハローワークで求職の申込みをします。その際には、退職後会社から受け取った離職票と雇用保険被保険者証を持参します。
なお、会社から発行されるまでに2~3週間ほどかかるケースもあるため、急ぎで必要なら事前に会社へその旨を伝えておいてください。

ハローワークで必要書類を提出した後に希望する仕事や給与、勤務地などを申請し、今後のスケジュールを確認します。
開業と転職のどちらにしようか迷っている段階でも、求職の申込みは行っておくと良いでしょう。

2.待機期間

ハローワークでの手続き後から7日間は待機期間となります。
この期間に働くと受給までの期間が延長になるほか、もし開業届を提出した場合には就職と見なされて給付金は受け取れないので要注意です。

3.職業講習会・雇用保険説明会に参加

失業保険の受給対象だと認定されたら、雇用保険説明会に参加します。説明会では、失業保険の仕組みや受給までのフローなどの詳しい説明を受けられます。

また、職業講習会への参加も必須です。もし欠席すると受給できなくなるため、ハローワークが指定した日は予定を空けておき、必ず参加してください。
講習会ではハローワークの利用方法についての説明があり、参加するだけで求職活動をしたと扱われます。

4.失業の認定

待機期間と給付制限期間の経過後、指定日にもう一度ハローワークへ行って失業の認定を受けます。それ以降は4週間に一度ハローワークで認定を受ける仕組みです。

1回目以降の認定を受けるためには、今回の認定日の前日までに2回以上の求職活動や就職に関するセミナーへ参加している必要があります。
なお、初回の認定に関しては、職業講習会に参加するだけで認定されます。

5.給付金の受け取り

認定日から5営業日以内に指定口座へと給付金が振り込まれます。
ただし、あくまでも原則5営業日であるため、年末年始や連休などと重なった場合には遅れる場合もあるようです。
また、年齢や加入期間などによって金額は変わってくるため、計算方法が複雑に感じる時はハローワークに問い合わせをするようおすすめします。

6.開業届の提出

待機期間と給付制限から1カ月以上経ったら、開業届の提出タイミングです。
提出すると受給資格は失効するため、全額受け取りたい方は受給が終わってから手続きをする方法もあります。
それまでは、開業の段取りや予定などを考える時間としても良いでしょう。

7.再就職手当の手続き

開業届を提出したら、ハローワークで再就職手当の手続きを行います。ここからは、再就職手当の概要や受給する条件、流れなどをご紹介します。
再就職の申告をせずに給付金を受け取ることは不正となるので、注意してください。

再就職手当とは?

再就職手当とは、受給期間中の早期再就職を支援するための制度です。
次の仕事が早く決まるほど受け取れる金額が多くなり、3分の1以上給付日数が残っていると合計支給額の60%、3分の2以上だと70%程度支給されます。

計算方法は、基本手当日額×所定給付残日数×60または70%です。支給残高は、雇用保険受給者資格証に記載の「基本手当日額」と「所定給付日数」から計算してください。
例えば、支給残高が80万円であれば、80万円×60%=48万、80万円×70%=56万円となります。

再就職手当を受給する条件

フリーランスが再就職手当を受給するための条件は以下の6つです。

  • 基本手当の受給条件をクリアしている
  • 待機期間と給付制限日数終了から1カ月以上後に開業届を出す
  • 支給日数が3分の1以上ある
  • 1年以上は事業を継続できる見込みがある
  • 過去3年間は再就職手当を受け取っていない
  • 独立を目的とした退職ではない

6つの中でも特に注意したい点が、開業届の提出時期と1年以上継続できるかです。1年以上の長期契約を結んだクライアントがいると、継続の証明となります。

再就職手当の手続きを行う流れ

フリーランスになるために自己都で退社した場合の再就職手当の手続きは、以下のような流れです。
1.離職票をハローワークへ持参し、求職の申込みを行う
2.7日間の待機期間が終了した後、雇用保険説明会・職業講習会などを受講する
3.1回目の失業認定を受ける
4.求職活動を実施し、4週間に1度ハローワークへ実績を報告する
5.開業届を提出する
6.ハローワークに開業届を持参し、再就職手当を申請する
7.審査をクリアし、受給対象と判断されれば受給される

ハローワークでの手続きは必要なものが多く、受給までにそれなりの時間もかかります。
具体的には、1回目の失業認定を受けるまでに約1カ月、再就職手当の申請から給付までにも約1カ月は待つといわれています。

フリーランスが失業保険を受給する際の注意点


失業保険を受ける条件や流れなどを説明してきましたが、スムーズな受給を実現するためにはいくつか気をつけたいポイントもあります。
受給をストップされた、断れたなどがないよう、注意点についても押さえておいてください。

待機期間・給付制限中の仕事に気を付ける

待機期間・給付制限中の仕事は、受給資格を失う恐れがあります。
待機期間とは本当に失業しているのかをハローワークが確認する期間で、その間に仕事をするとその分支給が先延ばしされます。

また、この期間に開業届を提出すると、就職したと判断されて失業手当も再就職手当も受け取れません。
待機期間・給付制限中はフリーランスとして働いたり、独立準備をしたりは避けるべきです。
また、副業も仕事扱いになるので、退職と同時にやめたほうが受給を断られるリスクを軽減できます。

不正受給は必ずバレる!

ハローワークに開業届の提出をしなければフリーランスになったことはバレないのでは、不正受給も可能では……などと頭に浮かぶ場合もあるかもしれません。
しかし、不正受給は必ずバレます。厚生労働省からも「不正受給は必ず発見されます」と警告が出ており、開業の未申告や不正受給は非常にリスクが高い行動です。

ここからは、フリーランスなのになぜバレるのか、もしバレたらどのようなペナルティがあるのかをまとめました。

バレる理由

どれくらい徹底して秘密にしたとしても不正受給がバレる主な理由は、納税履歴・密告・調査の3つです。
ここからは、どのような経緯でバレてしまうのかをさらに具体的に説明します。

1.納税履歴からバレる

納税履歴から働いていることがハローワークに知られることがあります。
税務署とハローワークはまったくの別機関ですが、マイナンバーカードの普及によって、以前よりも様々な機関の間で情報が共有されるようになりました。
そのため、別の機関だからといってバレないわけではありません。

また、マイナンバーはあらゆる機関の情報がひとつにまとまっており、共有も可能です。
マイナンバーが登場したことで失業保険に限らず、不正受給はより困難になりました。

2.元同僚・上司から密告されてバレる

元同僚や上司からの密告で不正がバレることもあります。
一緒に働いていた人だけでなく、あなたがその会社に勤めていたと知っている関係者であれば、誰からでも密告されるリスクがあると忘れてはいけません。

自分の知人にそのようなことをする人はいないと考えていても、不正を許せない気持ちから密告することはあります。
また、不特定多数の人にバレること原因のひとつに、SNSへの書込みも挙げられます。

3.ハローワークの調査でバレる

ハローワークが受給者の自宅へ訪問し、働いていないかを調べられてバレるケースもあります。
長時間家にいない、スーツを着て毎朝外出しているなどを発見すれば、働いているかもしれないと見なされて、より厳密な調査がされます。

また、受給者本人に対してだけでなく、会社への調査も厳正に行っている点も忘れては行けません。従業員名簿書類などを見て、働いていないかをチェックしています。
このように、ひとつの調査方法だけでなく、あらゆる手段を扱って徹底的に調べているため、隠すことは容易ではありません。

不正受給がバレたらどうなる?

不正受給がバレた場合、5つのペナルティが発生します。

  • 支給停止
  • 受給した全額の返還命令
  • 受給金額の2倍を納付命令
  • 滞納金の発生と支払い
  • 刑事告発

不正が発覚したタイミングで支給がストップされるだけでなく、受給額の返還命令と2倍の納付命令を受けます。
つまり、受給額の3倍を納付しなければならず、それに加えて年率5%の滞納金が発生します。
バレないだろうと軽い気持ちで不正に受給すると、3倍返しになって戻ってくるので、不正な受給は絶対にやめてください。

まとめ

フリーランスであっても、一定の条件をクリアすれば失業保険・再就職手当を受け取ることは可能です。
開業届の提出タイミングや求職活動を前提とする点に気をつけつつ、給付金を受け取りながら独立の準備を進めましょう。
なお、スムーズな受給のために、待機期間や給付制限中の仕事に気を付けるのはもちろんのこと、不正受給はバレるとペナルティを科されるため、絶対に避けてください。

創業手帳の冊子版(無料)は、創業前後の疑問や不安などを解消するアドバイスを掲載しています。起業で成功した方の実体験や事例などもご紹介しているので、これからフリーランスとして独立したい方はぜひご覧ください。
関連記事
起業に失敗しても失業保険を受け取れる受給期間が4年に延長!?
「副業と失業保険の関係について教えてください!」読者の質問に社労士の榊氏が答えます

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す