キッチンカーの営業許可書の取り方を徹底解説!申請手順・検査項目・注意点を網羅!

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キッチンカーでの開業を目指すなら許認可や手続きについて確認しよう


近年、低コストで始められるビジネスとして注目を集めているキッチンカーは、自由な場所で営業できる魅力があり、飲食業の新しいスタイルとして人気が高まっています。
しかし、キッチンカーでの営業をスタートさせるには、保健所の「営業許可書」を取得する必要があるなど、様々な許認可や手続きをクリアしなければなりません。

この記事では、キッチンカー営業に必要な許可の取り方から検査で確認される項目、そして押さえておきたい注意点までを徹底解説します。
これから開業を目指す方は、ぜひ参考にしてください。

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この記事の目次

キッチンカーの営業許可書の取り方


キッチンカーでの開業をするには、営業許可を取得する必要があります。では営業許可はどのようにして取得すれば良いのでしょうか。
まずは、営業許可書の取り方について解説します。

1.開業前に保健所へ相談する

まずは営業許可を申請する前に、出店を計画している地域を管轄する保健所に相談する必要があります。
申請手続きをする前に保健所へ相談する理由として、キッチンカーの営業許可に必要な設備が保健所によって異なる可能性があるためです。

例えば、複数の地域で出店を計画している場合、管轄する保健所も分かれる可能性があります。
この場合、それぞれの保健所から営業許可を取らなくてはならず、さらに営業許可に必要な設備が違っていることも考えられます。
そのため、まずは事前に保健所へ相談に行き、営業許可の取得にはどのような条件をクリアしていればいいのか、どのような書類を準備すれば良いのか、車両設備の基準はどうなっているかなどを確認しておくと安心です。

なお、相談に訪れる際にはスムーズに話し合いが進められるよう、キッチンカーの設計図や販売するメニューに関する資料なども作成し、持参するのがおすすめです。
保健所担当者からのアドバイスを受けつつ、開業準備を進めていってください。

2.キッチンカーの発注・整備を行う

保健所に相談してキッチンカーの設備基準などを聞いたら、キッチンカーの発注・整備をしていきます。
通常キッチンカーは新車を購入して改装するか、キッチンカーとして改装されている中古車を購入するかで入手できます。
新車を購入して改装する場合は、保健所で提示された条件を満たしつつ設備を整えてください。

中古のキッチンカーなら設備がすでに揃っているため、新車を購入するよりもコストを抑えやすいです。
ただし、その地域で運営していたキッチンカーでない場合、保健所の基準を満たしていない可能性もあります。
購入時に確認し、必要に応じて設備の追加や改修を行うようにしてください。

3.保健所に提出する書類を準備する

キッチンカーの整備ができたら、次に保健所へ提出する書類を準備します。
地域によって必要な書類が異なるため、申請する保健所の必要書類を事前に確認して準備するようにしてください。
以下の書類は、東京都で営業する場合に準備しなくてはならない書類です。

  • 営業許可申請書
  • 施設の構造および設備を示す図面(2通)
  • 営業の大要
  • 食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳など)

施設の構造および設備を示す図面は、キッチンカーの構造と設備がわかる図面です。営業の大要は定められた書式で、以下の情報を記入していきます。

  • 申請者
  • 仕込み場所
  • キッチンカーの保管場所・営業予定地
  • 仕入先
  • 営業車の情報(自動車登録番号、車台番号、業種、給水タンクの容量)
  • 取扱品目 など

また、申請または施設検査時に衛生管理計画も確認されるので、あらかじめ準備しておいてください。

4.保健所の立会検査を受ける

必要書類をすべて提出すると、保健所の担当者がキッチンカーの整備状況について連絡する方法や、立会検査を実施する日程調整を行います。
キッチンカーが完成した際には、図面通りに改装されているか、営業許可の基準を満たしているかを営業者が立会のもと確認されます。

ここで営業基準に適合していないことが判明すると、営業許可を取得できないので注意しましょう。
適合していなかった箇所はどこか確認し、改善してから後日再検査を受けるようにしてください。

5.営業許可書の交付後、営業開始

すべての検査が終わり、特に問題がなければ保健所から営業許可書が交付されます。営業許可書は即時交付できるものではなく、数日間かかってしまうケースが多いです。
営業許可書が交付されるまではキッチンカーでの営業もできないので、注意してください。

営業許可書が手に入ったら、いよいよキッチンカーで営業を開始できるようになります。
営業許可書は必ず携帯しておき、また許可済みの標識をキッチンカーの見やすい位置に取り付けてください。

営業許可の立会検査でチェックされる10項目


営業許可の立会検査時には、主に以下の10項目をチェックされます。どのような項目について確認されるのか、把握しておくことも大切です。

運転席・調理場の区切り

食中毒を防ぐために、運転席と調理場は完全に別の空間として区切られていなければなりません。
例えば、トラックタイプの車両にキッチンボックスを乗せて製作されたキッチンカーなら、最初から空間が分かれているので心配は不要です。
しかし、バンタイプの車を改装したキッチンカーだと、運転席と調理場が分かれていない場合もあるため、注意が必要です。

タンク容量

キッチンカーは給水タンクと排水タンクを両方設置しておかなくてはなりません。
必要な容量は保健所によって基準が異なりますが、それ以外の項目でもタンク容量の規定が変わる場合があるので注意が必要です。

提供品目の数 食器の使用 調理工程 大量の水を必要とする調理
40リットル程度 単一品目 使い捨てのみ 簡易的な調理のみ(温める・揚げる・盛り付けるなど) ×
80リットル程度 複数品目 使い捨てのみ 2工程程度までの簡易的な調理 ×
200リットル程度 複数品目 通常の食器と使い捨て両方使用可能 複数の工程からなる調理

タッチレス水栓

キッチンカーに備わっている手洗い設備がタッチレス水栓になっているかどうかもチェックされます。
タッチレス水栓になっているか確認される理由として、手洗い後の再汚染を防ぐためです。
手を洗う時に最初にハンドルを触って水を出しますが、この時点でハンドルは汚れており、洗い終わって水を止める時に再びハンドルを触ってしまうと、せっかく洗った手が再び汚れてしまうことになります。

シンクの数・大きさ

キッチンカーに備わっているシンクの数や大きさは、基本的に保健所によって条件が異なっていますが、手洗い用と調理用のシンクを1つずつ設けることを義務付けている保健所は多いです。
また、シンクの大きさが指定されている場合もあります。必ずシンクの数や大きさについて保健所が提示する条件を満たせるように、事前に確認してください。

収納ケース・棚の配置

収納ケースや棚の配置についても保健所から確認されます。
衛生環境にはあまり関係ないように思えるかもしれませんが、虫が混入する恐れもあるため、きちんと扉が隙間なく閉まるかどうかチェックします。
特にDIYで収納ケースや棚を設置していた場合、不備が出る可能性もあるため注意が必要です。

手を洗浄・消毒するための設備

キッチンカーの営業で食中毒を発生させないためには、手を洗浄・消毒するための設備が必要不可欠です。
手洗い用のシンクはもちろん、手洗い用の石鹸や消毒用のアルコール、キッチンペーパーなどストック分も合わせて用意しておくことが大切です。
手を洗浄・消毒しやすい環境をつくることで、衛生環境の維持にもつながります。

換気扇の有無

キッチンカーで加熱調理をする場合は、換気扇が設けられていないと営業許可を取得できないことがほとんどです。
そのため、キッチンカーには必ず換気扇を設けるようにしてください。

また、換気扇を取り付けたとしても、そこから虫などが侵入するリスクもあるため、きちんと対策を講じておく必要があります。
虫がキッチンカーの中に換気扇を通って侵入しないように、網戸を取り付けるようにしましょう。

冷蔵庫・冷凍庫の設置

保冷が必要な食材を取り扱う場合、冷蔵庫・冷凍庫を設置する必要があります。
限られた調理スペースしかない場合、調理台や作業台としても活用できるコールドテーブルを設置するキッチンカーも多いです。
また、冷蔵庫や冷凍庫を設置する際には、走行中でも電気を供給できる環境を整える必要もあります。
1日中使っていても十分な電気を蓄えられる蓄電池などを準備しておいてください。

ふた付きゴミ箱の設置

調理時に出たゴミを捨てるために、ゴミ箱の設置も忘れずに行ってください。ゴミ箱にも様々な種類がありますが、基本的にはふた付きのゴミ箱を選ぶのがおすすめです。
保健所によっては必要なゴミ箱の容量など、規定が設けられている場合もあるため、事前に確認してください。

仕込み場所の確保

キッチンカーの営業許可を取得するためには、キッチンカーの車両設備を整えることも大切ですが、それとは別に仕込み場所の確保も必要です。
仕込み場所の定義は保健所によって異なるものの、例として東京都では以下の行為を実施する施設を「仕込み場所」と定義しています。

  • 自動車で取り扱う食品の調理・包装など
  • 器具などの洗浄・消毒
  • 給水タンクへの給水
  • 食品や容器包装などの保管

仕込み場所は営業の大要にも記載する項目があるため、必ず確保してください。

キッチンカーの営業許可を取るための前提条件


キッチンカーの営業許可を取得するには、前提として以下の条件を満たしている必要があります。ここで、キッチンカーの営業許可を取るための前提条件について解説します。

保健所の「飲食店営業許可(自動車)」が必要

営業許可にも様々な種類がありますが、キッチンカーでの営業に必要となってくるのは「飲食店営業(自動車)です。
2021年5月末まではキッチンカーの営業許可も販売するメニューによって異なっており、「飲食店営業」「喫茶店営業」「菓子製造業」に分かれていました。
しかし、2021年6月からはメニューに関係なくすべて「飲食店営業」に分類されています。

一度営業許可を取得すると、その有効期限は5年間になります。5年後には再度申請・更新手続きが必要です。
また、キッチンカーを複数台使って運営する場合、すべてのキッチンカーで営業許可を取得する必要があります。
例えば、5台のキッチンカーを使って営業する場合、5台分の営業許可を取得しなくてはなりません。

営業許可は出店地域管轄の保健所から取得

キッチンカーの営業許可を取得する場合、出店地域を管轄している保健所に相談して取得することになります。
ここで注意したいのは、営業者の住所地を管轄する保健所ではなく、出店地域を管轄する保健所であることです。

保健所の管轄エリアは自治体によって異なるため、事前の確認が必要です。
例えば、さいたま市で営業許可を取得した場合、市内のみでの営業が可能となります。
しかし、東京都ならどの保健所で手続きをした場合でも、都内全域での営業が許可されます。

飲食店営業許可取得には「食品衛生責任者」の資格が必須

キッチンカーの営業許可は「食品衛生責任者」の資格がないと取得できません。なぜなら、必要書類の中に「食品衛生責任者の資格を証明するもの」があるためです。
そのため、保健所で申請する前にまずは食品衛生責任者の資格を取得するようにしてください。

食品衛生責任者の資格は、各都道府県で実施されている講習会に参加することで取得できます。
講習会は合計6時間程度で、受講料は地域によって異なりますが1万円程度が基本です。
なお、以下の資格を取得していれば、講習会に参加していなくても申請するだけで食品衛生責任者の資格が取得できます。

  • 調理師
  • 栄養士
  • 製菓衛生士
  • と畜場法に規定する衛生管理責任者
  • と畜場法に規定する作業衛生責任者
  • 食鳥処理衛生管理者
  • 船舶料理士
  • 食品衛生管理者、もしくは食品衛生監視員になれる資格を持っている人

営業許可書の取得にかかる費用と期間の目安


営業許可書を取得するために、どれくらいの費用がかかり、申請からどれくらいの期間で取得できるのでしょう。
まず費用に関しては、各保健所によって申請に必要な金額が異なります。
例えば、渋谷区の場合、申請手数料として18,300円が必要です。一方、同じ都内でも港区は16,000円になります。
このように、各保健所によって申請に必要な金額が違っているので、前もって確認しておいてください。

また、申請から交付されるまで数日から1週間以上かかることもあります。東京都では営業開始の10日前までの申請が目安です。
しかし、申請書を提出してから立会検査までに1週間程度、立会検査から営業許可書が交付されるまでに5日程度かかります。
そのことを考えると、営業したい日の10~14日前までに申請を行っておけば、余裕をもってキッチンカーでの営業をスタートできます。

キッチンカーの営業許可、よくある疑問をまるごと解決!

Q.営業許可を取らないでキッチンカー営業をしたらどうなりますか?

A. 営業許可を取得せずに食品を販売すると、食品衛生法違反となり、営業停止命令や罰則を受ける可能性があります。
加えて、事故や食中毒が発生した場合には損害賠償責任や信用失墜のリスクも大きくなります。必ず営業前に許可を取得してください。

Q. 営業許可を取れば、全国どこでも販売できますか?

A. いいえ、営業許可は取得した保健所の管轄地域内でのみ有効です。複数地域で販売したい場合は、それぞれの管轄保健所で別途許可を取る必要があります。

Q. どんな車両でもキッチンカーにできますか?

A. 原則として、営業許可基準(シンクや給排水タンクの設置など)を満たせば使用可能ですが、軽トラックやワンボックスなどは車種によって制限がある場合もあるため、改造前に保健所に確認するのが確実です。

Q. 営業許可が不要なケースはありますか?

A. 包装された飲料・アイス・お菓子などを販売するだけの場合、一部地域では営業許可が不要なケースもあります。
ただし、販売する商品によっては例外もあり、また届け出が必要なケースもあります。必ず保健所に確認してください。

Q. 営業許可を取った後も何か手続きは必要ですか?

A. 出店場所ごとに届け出が必要な場合や、定期的な設備点検・営業許可の更新が求められる自治体もあります。営業開始後も、保健所や自治体の指導を都度確認してください。

Q. 営業許可以外に準備しておくべきことはありますか?

A. 賠償責任保険への加入や、LPガス使用に関する講習の受講が推奨されます。トラブル時の備えとしても有効です。

まとめ・営業許可書をスムーズに発行するために事前の準備が大切!

キッチンカーの営業許可書を取得するためには、食品衛生責任者の資格や車両の取得・改装などが必要です。
スムーズに営業許可書を取得できるように、出店地域を管轄する自治体のホームページを確認し、条件などをあらかじめ確認しておきましょう。

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(編集:創業手帳編集部)

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