赤字決算になったら会社はどうなる?メリット・デメリットなどを解説!

資金調達手帳

赤字決算でも会社はすぐにはつぶれない!


黒字売上げを目指して多くの会社が経営を続けていますが、資金繰りなどの様々な悩みを持つ会社もあるのではないでしょうか。
中には、資金繰りがうまくいかず最終的に赤字決算となってしまう会社もあります。

赤字決算に対し、負のイメージを持つかもしれませんが、実はメリットもあります。また、赤字決算になれば必ず倒産するわけではありません。

今回は、赤字決算に関する知識を解説しながら、赤字決算による利点や注意点も説明します。

そもそも赤字決算とは?


赤字決算とは、事業年度における収益・費用・資産・負債などを計算して年間の損益を算出することです。
法人であれば決算月までの1年間、個人事業主であれば1月から12月までの1年間の計算になります。
決算をする事業年度の最後の月が決算月となり、決算報告書を作成する必要があります。

決算を行う理由としては、正しい税金の申告をするため、業績を分析して改善点を見つけるため、株主や取引先といった関係者に業績を報告するためです。

例えば、小売業を営む場合、なるべく安い価格で仕入れを行い、なるべく高い金額で売れれば手元に残るお金が多くなります。このサイクルを積み上げていくことで黒字決算を目指します。
経営を続けた年に儲けがあれば黒字決算となり、利益に対して課税される法人税を支払わなければいけません。
反対に赤字決算は、支出が収入を超えているために利益が出ていない状態を指します。
赤字が続いてしまえば債務超過となり、会社は倒産に追い込まれてしまいますが、赤字決算とはあくまでも一定期間における赤字です。

そのため、収支がマイナスでも一定期間の前後で利益が出ていれば資金が残っているので、会社がすぐに倒産するわけではありません。
また、税金は利益に対して課税されるため、利益の発生していない赤字決算の状態であれば法人税はゼロとなります。
節税対策にもなるので、決算書で意図的に赤字にする会社も存在します。

赤字決算には種類がある


赤字決算には、いくつかの種類があります。それぞれの種類について解説します。

事業を始めたばかりの頃に起こる創業赤字

起業したばかりの時に発生する赤字を創業赤字といいます。理想としては、会社設立当初から多くの仕事を獲得し、たくさんの売上げを獲得できることを望みます。

しかし、現実的には難しいものです。会社の経営を始めたばかりだと、事業が軌道に乗っていないので売上げが伸び悩む会社も少なくありません。
仕事がなくても、業務で使用するパソコン・電話・コピー機などは必要となり、人件費も発生します。

そのため、創業して間もない時期はどうしても売上げが支出を下回る会社が多くなりがちです。
大きく成長した場合でも「創業当時は苦しい時代が続いた」といったケースも多くあるので、ある程度は仕方ないと割り切る必要があります。
赤字になっても気負いせず、業務を精力的に行い、黒字決算を生み出すためにも努力を惜しまないようにしてください。

受注数が伸びないなどの理由で起こる恒常的な赤字

様々な理由から起こる赤字を恒常的な赤字といいます。

  • 業界全体の利益が縮小傾向にある
  • 経営を脅かすような競合他社が出てきた
  • 創業時から期間が経過しても受注数が伸びない

問題解決のための対策を実施しないと、赤字から抜け出せずに最悪の場合は倒産となる恐れがあります。

対策としては、人員の削減が挙げられますが、一時しのぎにしかなりません。資金が不足してしまえば倒産に追い込まれることもあります。

金融機関からの信用度が下がってしまうので、資金不足に陥ったとしても新たな融資を受けられない場合が多くなります。
融資を希望しても、厳しい審査に通らずに融資が受けられないこともあるので注意してください。

トラブルが発生して起こる臨時的な赤字

事業を行っていても、計画どおりに進まないケースがあるかもしれません。アクシデントによっては一時的に赤字決算になることもあります。

例えば、地震や台風といった自然災害によって工場や営業所の機能がしなくなった時です。営業停止となった期間は利益が出ず、加えて再建するための費用も必要です。

そのほかにも、退職者が増えてしまった際には退職金を用意する必要があります。
新たな設備を増設した際には費用を捻出しなければいけないので、臨時的に赤字となるケースもあります。
こうした臨時的な赤字は、影響がなくなれば黒字に転換できる可能性が高くなるでしょう。

赤字決算でも会社がつぶれないのはなぜ?


前述したように、赤字になったとしても会社はすぐに倒産しません。なぜ倒産しないのか、その理由を詳しく解説します。

経理上は黒字になっているため

赤字決算となっても、経理が黒字であれば倒産は防げます。会社の赤字には、お金の赤字と経理の赤字の2種類があるので、それぞれのパターンの状況をまとめました。

・お金の赤字
赤字なので経営が不安定で危険だと推測できますが、実際には倒産といった危険性が低いケースも多くあります。
今月が赤字でも、先月が黒字であれば蓄えがある可能性は高いといえるでしょう。

・経理の赤字
仕事で使用するパソコンやコピー機などの機器や外注費などは会社にとって必要な経費です。
例えば、売上げが1,000万円であっても経費が1,100万円であれば100万円が経理の赤字となります。
また、借入金や減価償却費の合計を照合すると会計上赤字になる場合も経理の赤字です。

上記のバランスによって会社の経営状況が決まり、お金も経理も黒字であれば倒産の危険がない状態です。
経理が黒字の状態は、手元にお金は残っていなくても経理上お金が残っている状態を指します。

前年の利益があるため

今期赤字になったとしても前年の利益が黒字であれば内部留保があるため経営を続けられます。ただし、現状が赤字なのは変わりありません。

利益によって得た現金は着実に減少しているので、赤字の状態が継続しないよう対策を取る必要があります。来期の黒字決算を目指し、早めに問題解決へ取り組んでください。

会社経営のほかに収入源があるため

会社経営以外に収入源があれば事業は継続できます。例えば、金融機関から融資を受けられれば資金調達ができ、現金を得ることが可能です。
一般的には赤字になると融資は受けにくくなりますが、資産を担保に入れるほか、回復計画が立てられれば融資の受入れが可能となる金融機関も存在します。

また、その企業の将来に魅力を感じて投資してくれる人が現れることも稀にあります。
そのほか、トップでもある社長がお金を持っていれば、個人が会社にお金を貸すことで経営を存続させることも可能です。
もし自身に蓄えていたお金があれば、経営を続けるためにも会社にお金を流して存続を図ってみてください。

赤字決算のメリットとデメリット


マイナスのイメージがある赤字ですが、前述したように意図的に赤字決算にする企業は存在します。
なぜ赤字決算にするのか、その理由を知るためにも赤字決算のメリットについて解説します。

また、デメリットもご紹介するので、赤字決算となった時の影響を知るためにも役立ててください。

赤字決算のメリット

まずは、赤字決算のメリットです。どのような点に魅力があるのかを解説します。

1.法人税の節約につながる

法人税は、「課税所得金額×法人税率」で算出されます。会社が黒字決算となれば利益に対して課税される法人税を支払う必要があります。
納税は、決算日の翌月から2カ月後までに納付しなければいけません。

しかし、法人税は利益が出た時のみ課税される税金です。そのため、赤字決算であれば利益はないので法人税を支払う必要はありません。
上記の理由から、納税額を抑えるためにも、あえて赤字決算に持ち込む場合もあります。

ただし、法人住民税の支払いは必要となります。法人住民税は、均等割と法人税割で構成されています。儲かっている法人であればあるほど、納税額も高くなる仕組みです。

2.法人税の還付金を得られる

前期が黒字の場合、今期が赤字でも前期に支払った税金を戻せる制度があります。対象は、青色申告書で確定申告をしている資本金1億円以下の法人です。
この制度は、法人税のみに適用されるため、地方税は還付を受けられません。

還付金の計算は、「還付所得事業年度の法人税額×(欠損事業年度の欠損金額/還付所得事業年度の所得金額)」で算出できます。
ただし、還付されるのは前期に支払った法人税が上限です。適用要件もあるので、詳しい内容は国税庁のホームページを参考にしてください。

3.赤字分を繰り越して翌年度以降の黒字額と相殺できる

赤字決算では利益が出ていないので、法人税はゼロです。赤字分は、翌年以降に繰り越すこともでき、税務会計上繰越欠損金としても扱えます。
翌年以降黒字となった場合も、繰越をした赤字は課税所得から控除されるので、法人税を抑えられる仕組みです。

赤字の繰越は、最長で10年もの間にわたって相殺が可能です。そのため、1億円赤字が出た場合でも、その後10年の間に1億円以上の黒字を出せばすべて相殺できます。
欠損金の繰越控除は、青色申告書で確定申告をしている企業かつ、その後の事業年度でも連続して確定申告を提出している企業が対象です。

赤字決算のデメリット

次に、赤字決算となった際のデメリットを解説します。どういった影響を受けるのか、あらかじめリスクを把握することが大切です。

1.銀行などの金融機関から融資を受けにくくなる

赤字決算となった際の最大のデメリットは、金融機関からの融資が受けにくくなる点です。
融資が受けられなければ事業を継続するための費用を捻出できないので、倒産になることがあります。

赤字になると信用格付けがダウンして「要注意先」に分類されるだけでなく、融資の新規依頼が難しくなるので、新しい事業をスタートさせたい場合や経営の改善も難航します。

そのため、節税しようとして赤字決算を繰り返すのは危険です。
2期連続で赤字決算となった場合、金融機関によっては既存の借入れの一括返済を求められるケースもあります。
節税ばかりに気を取られていると、経営が継続できない危険性もあるので注意してください。

2.毎年になると債務超過で倒産の危険性が高まる

毎年赤字になれば累積赤字が増えてしまいます。融資が受けられない状態が続いてしまえば、債務超過を引き起こして倒産する危険性が高まるので注意してください。
節税しようと赤字決算に持ち込む企業も存在しますが、会社を存続させるためには利益を出せる状態を目指すことが大切です。

赤字決算が出た際にすべき対応


赤字決算が出た際に経営を立て直すための対処法をご紹介します。赤字を脱却して黒字を目指すためにも、以下の方法を参考にしてください。

還付を請求する

前述したように赤字決算となった場合は、欠損金の繰戻しによる還付制度を活用できます。しかし、還付は自動的に行われないため、自身で請求する必要があります。

請求書は国税庁のホームページからダウンロード可能なので、赤字決算となった際には忘れずに申請を行ってください。

理念の見直しを図る

赤字が継続している場合は、理念が曖昧になっていることもあります。何を指針にして業務を行えば良いのか、従業員がわからなくなっている状態です。

従業員の統一感を図れなければ、赤字を解決するために一体となって動けません。今一度見直しをして会社にとって最適な理念を立てます。

利益追求のための見直し・コスト削減を行う

赤字を見直すためにも利益の追求やコスト削減は必須です。特にコストの削減は大切な事柄なので、日々の業務で無駄になっているものはないかを再度見直すことも大切です。

  • 広告費
  • 人件費
  • 原材料費
  • 外注費 など

コストが減るだけでも経営の負担は軽減できます。コストが削減できた際には、利益追求のためにも新しいサービスの開発や提供について考えてみてください。

資金調達方法を考える

資金が底をついてしまえば経営の継続は難しいものです。資金が足りなくなる予想があれば、早めに資金の調達方法を考えてみてください。

前述したように、個人が会社にお金を貸す形で経営を続けられます。
信用度をアップさせる策を投じて金融機関に融資を依頼するなど、倒産しないためにも迅速な行動が不可欠です。

まとめ

赤字決算となっても税法上のメリットを受けられます。しかし、一過性の赤字でない限りはデメリットがあり、経営に影響を与えかねません。

融資が受けられなくなってしまえば、新規事業の開拓も難しくなってしまいます。赤字から脱却をするためにも、すぐに対策に取りかかり黒字経営を目指してください。

創業手帳(冊子版)では、赤字決算や黒字決算に関する情報をはじめ、起業における様々なノウハウをご紹介しています。
会社の経営や起業に役立つ情報が満載なので、ぜひご活用ください。

関連記事
赤字経営でも会社はつぶれない!?メリットやデメリット、黒字化の方法を徹底解説
赤字になった年の法人税はどうなる?免除や還付の有無は?

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳別冊版「資金調達手帳」は資金調達の方法をはじめとし、キャッシュフロー改善のマル秘テクニックや創業計画書の書き方も充実。無料でお届けいたしますのでご活用ください。

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す