人材採用と人事管理で最も大切な「EQ(感情指数)」とは
他者を理解・共感する、人間の本質的能力
(2016/09/14更新)
EQとは、自分の感情を認識し、自制する能力であったり、他者を共感的に理解する能力のことを言います。
ゼロから会社を立ち上げるのは誰にとっても大変なことですが、有能な社員を見つけることもまた、相当な努力を必要とします。「この人は仕事になじむのか」、「情熱を持って会社を発展させてくれるか」を見極めるのは容易ではありません。人員配置は思うほど単純なものではないのです。
今回は、EQとは何か、EQをどうビジネスに取り入れていけばよいのかをご紹介します。
この記事の目次
労働生産性最大化のポイントは「EQ」
従業員の資質として何よりも大切なのは、対人関係がうまくできることです。いくら有能であっても、その人が感じが悪かったり気難しかったりすれば、一緒に働きたいと思う人間はいません。知能が高いことはもちろん大切ですが、職場の労働生産性を最大化するには高いEQ(感情指数)を持つ人を採用することを優先させるべきなのです。
また、一般的に優秀だとされている人が持っている「高いIQ指数」は、成功要因の10%にすぎないということも、分かってきています。
EQが一般的に重視されない理由
EQを要素分解すると、
- いろいろなタイプの人たちにどう対処するか
- 自分の感情をどうコントロールするか
- 他者と接しているときその他者の感情にどう反応するか
といったパートに分けることができます。
一見これだけを見ると、一般的に言われている「優秀な人材」の要素にはならないように思えます。会社において経営陣は通常、プロダクトナレッジや目標達成といった面で高い成績を上げている、といった「業績」を最優先しています。つまりは、「IQ」の部分です。
それを踏まえて、人事課は就職希望者の中でも社の業績目標を達成するのに役立ちそうな人材を高く評価することになります。しかし、それだけでは、本質的に有能な人材は採用できないのです。
採用段階でEQを測定するには
では採用段階で、従業員のEQを測定するにはどうしたら良いのでしょうか。人柄や素行を診断するための数え切れないほどの心理学的・人事的テクニックが存在していますが、EQを測る一般的な方法には次のようなものがあります。
NEO-PI-R 人格検査による測定
この検査では、その人の人格が5つの領域のどれに属するかを測定します。人事採用のプロセスでは、応募者の行動パターンをより包括的に把握することが必要です。5つの領域と30の下位領域を使って、人格を詳細に評価することができるこの検査は有効です。
この検査では、その人がある特定のグループの中に入った場合にどのように対処するのか、そしてうまく調和できるかどうかまでわかります。その人が何を考え、何に優れ、どんな傾向があるのかを知りたい場合にも、この検査を使うことができます。検査結果に専門家の説明が必要なこともありますが、導入してみる価値のある検査です。
この心理検査を補足するために、マイヤーズ-ブリッグテストとして知られる16PF(Personality Factors=人格要因)検査を一緒に行うことも可能です。
従業員のパフォーマンスレベルを評価するには
360度評価ツールを使った評価
これは伝統的な管理手法で、全角度から評価するときに使いたいツールです。例えば既存の社員で上司とはうまくやれるのにチームワークには問題があるなど、仕事はよくできるのに対人関係が今ひとつといった人に導入すると効果的です。
普通はマネージャーが人事評定をしますが、直属の部下に対して偏った見方が反映されることは避けられません。このツールでは、個人のパフォーマンスに影響するすべての要因をチェックすることができ、偏向した評価を避けることができるとともに、その社員の弱点も的確にわかります。
この評価ツールは特定の枠組みに基づいたものですが、ビジョンは自らが創造することが求められます。ビジョンを持つことで、ある社員が企業の価値観やビジョンに沿っているかどうかを測定することが可能になるのです。このツールは、あなたの直属の部下や評価される社員の同僚、その他の外部評価の測定基準から独立して、あなたの好みに応じてカスタマイズすることができます。
測定結果が出たら、それをどう扱うか
結果が出たら行動計画を比較検討し策定します。
シンプルなのに効果のあるステップは次のようなものです。
- 当該の従業員にフィードバックを行う
- 結果に基づいた啓発プランの提案
- 長所を認め、短所は改善する(研修やコーチング、カウンセリングの実施など)
- 次回査定でポイントシステムに基づいて改善状況をチェックするが、それまでに評価が向上するよう協力して改善計画を練る。
健全でバランスのとれた職場環境を確保するには
考慮に入れたい重要な要因には次のようなものがあります。
まず、集団力学やグループ内の相互関係に対する意識を整備しましょう。仲間意識が欠如すれば、よくできたロボットが働いているのと同じでチームとしてまとまることは期待できません。
次に、お互いの得意分野や人格のよいところを引き立てながら、集団としてのバランスを見つけていきましょう。IQの高い人とEQの高い人の両方を集団に混ぜて、いろいろな行動タイプの人が健全なバランスを保つよう、グループ内の多様性を高くしましょう。すなわち、「知能が高いメンバー+愛情深く他人に共感する能力が高いメンバー=完璧な調和」を目指します。
これらツールのよい点は、あらゆる個性がバランスをとっているのをつぶさに観察することができることです。偏見のない評価はつまらないかも知れませんが、社員を客観的に見るのに役立ちます。ベストセラー「7つの習慣」では、次のように書かれています。
「よりよい結果を出したいなら、生産性を大事にしなければならない。」
成果とは生産性の高い人たちによってもたらされる結果です。個々の社員の能力開発が進むよう注意を払っていれば、もうパフォーマンスの質や成果に一喜一憂することがなくなります。
(編集:創業手帳編集部)