ロンドンで活躍する起業家クラウリー利恵から学ぶ。プロモーションの重要性とは
ブランディングやマーケティングの大切さを知ること。それが日本企業の成長加速につながるポイント!
(2020/03/16更新)
ブレグジット(※)で揺れ、世界からも注目を浴びているイギリス。その中でも、世界屈指の魅力ある街として昔から人気の高いロンドンは、流行や文化の発信地です。そのロンドンで2015年にプロモーションを手がける会社を起業した、POINTBLANK PROMOTIONS 創業者のクラウリー利恵氏に、企業におけるプロモーションの重要性を伺いました。
※Britain + Exitの造語。イギリスのEU離脱の意
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地元愛媛県の企業でグラフィックデザイナーとして働いた後、デザイン事務所「アドデコラボ」を友人と立ち上げる。2004年に渡英し結婚。しばらくは子育てに没頭する。その後、フリーランスとして仕事を再開。イギリスのグローバルブランドでのグラフィックデザイナーを経て、日系コンサル会社の Manager / Deputy Head of Creative and Media Divisionを務める。
2015年に自らの会社Pointblank Promotionsを立ち上げ、海外での日本文化の発信を目指す。グラフィックデザインの知識と経験をマーケティングに落とし込んだ、新しい切り口のブランディングが強みとなる。
2017年には、落語家・桂三輝のウエストエンド・ニューヨーク公演プロデュースの成功を果たし、会社の基礎を築く。現在はOxford Circusに事務所を構え、グローバルブランドのマーケティング、日本のタレント・アーティストの海外向けプロモーションに加え、中小企業や自治体のインバウンド・アウトバウンド双方のビジネスサポートなどを手がけている。
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この記事の目次
思いっきり自由な発想で、大胆なプロモーションを!
クラウリー:会社を起ち上げたばかりで、知名度がほぼゼロという状況の中、会社のプロモーションをしなければならないと考えた時、“とにかくインパクトが大切”だと思いました。
そこで思い立ったのが「Guilty Noodle」という企画です。これは、日本のインスタントヌードルをいかに面白く展開できるかにチャレンジした企画で、「食とアートのコラボレーション」というコンセプトを掲げ、お洒落な若者が集まるロンドンのオールドストリートの駅構内に、1カ月限定のポップアップレストランを作りました。
レストランの内装としては、約60種類のインスタントヌードルを、自動販売機をイメージしてデザインした棚にディスプレーし、訪れたお客さんが楽しくインスタントヌードルを選べるようにしました。店内で食べる方には、ヌードルの種類だけではなく、トッピングも選べるようにしました。
ものすごく限られた予算の中で、いかにアーティスティックな店舗にするかをロンドンの店舗デザイン会社と共に考えた結果、かなりオリジナリティーの高い内装になったのではないかと自負しています。
ちょうど同時期に、パフォーマーのサカクラカツミさんと、落語家の桂三輝さんの海外展開のプロモーションのお手伝いをしていたので、彼らにGuilty Noodleのアンバサダーを務めてもらいました。とにかく、ロンドンの若い世代に“日本の文化は面白い!”と思ってもらえるようにしたくて、2人の面白い映像や写真を撮ってプロモーションに使用しました。
その時に作った3分間のショートムービーや、サカクラさんと三輝さんの絡みがかなり面白く仕上り、ポップアップレストランだけで終わらせるのはもったいないなと思ったので、そのまま2人にGuilty Noodleというユニット名をつけて、舞台にも上がってもらいました。
1週間という短期間で公演内容を練りながら、エジンバラフリンジ(スコットランドの首都で毎年8月に行われる世界最大の芸術祭)で公演をし、ロンドンのレスタースクエア(ロンドンの中心部にある正方形の広場)でも一夜限りの公演を実現しました。自分の企画やブランドだからこそできる大胆な発想で、思いっきり自由なプロモーションを行いました。
その結果として、香港のU Magazine(香港での人気旅行雑誌) やイギリスのオンラインビジネスマガジンに取り上げられました。さらに、SNSでも話題となり、スマホを片手にわざわざ遠くから足を運んでくださるお客さんが増え、いわゆるインスタ映えスポットのようにもなりました。
Guilty Noodleの企画がスタートしてから今年で2年になりますが、今でも地元の若者が覚えていてくれたり、このイベントをきっかけに会社の存在を知ってもらえたり、私個人を認識してくれる人が増えたりと、自信へとつながりました。
クラウリー:イギリスで行われる日本のPRイベントに行くと、ブランディングやマーケティングにあまり力を入れていない企業が多いなと思い、残念に感じていました。
プロモーションイベントをするからには、地元の人たちの心に爪痕が残せるようなものにするべきだと思います。
イベントの次につながるようなビジネスプランもなく、イベントをして終わりではあまり意味がありません。せめてローカルの雑誌やインフルエンサー、あるいはその後のビジネスにつながる人たちを招待すればいいのに……と思い、「そういうことができる人がいないのなら、自分がなればいい、そういう会社を作りたい!」と思ったのがきっかけです。
ロンドンには世界中から面白いビジネスチャンスが集まる
クラウリー:ロンドンの魅力は、いろいろな国からの面白いビジネスチャンスがあることです。
あと、見せ方、マーケティング、ブランディングの強い国なので、ここロンドンでしっかりとブランドを確立すれば、今後世界で活躍できるようなブランド力の強い会社になれると思います。
クラウリー:ブレグジットは、ロンドンを拠点にヨーロッパ展開をしていた企業や、しようと考えていた企業にとっては影響が大きいと思います。そうでない国内向けの企業にとっては、もしかすると逆にメリットが出てくるかもしれませんね。
クラウリー:オンラインビジネス系や飲食系、マーケティング、リクルート系などが多いのではないかと思います。
日本人にとってチャンスがある領域は、やはり日本食人気は根強いので、チャンスがあるというか、やりやすい分野ではないかと思います。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、オンラインに移行するなど、教育や労働に関する考え方が変わってきているので、そういったことに関連づけたビジネスで面白いアイディアがあれば、チャンスになるのではないでしょうか。
現地の入念なリサーチなしに海外起業はできない
クラウリー:ありきたりですが、まずは市場のリサーチが重要です。競合やパートナーになれそうな会社、どのようなものが人気かなど、まずは徹底的に調べて、自分たちのビジネスに可能性があるかを考察するところから始めることがよいと思います。
クラウリー:まだまだ経験の足らない身なので、わかる範囲でのアドバイスになりますが、イギリスのエージェンシーや企業を相手に話す場合、契約するまではセールス担当者が対応をするので、話がトントン拍子に進みます。それでよい会社だと信じて、いざ契約を交わしプロジェクトをスタートさせると、プロジェクトマネージャーの要領が悪く、急に思うように物事が進まなくなることがあります。
最初に話をするセールス担当者だけではなく、プロジェクトマネージャーの良し悪しを見極めて、ビジネスパートナーを選ぶことが大切です。プロジェクトマネージャーの対応が悪い場合は、会社を変えてもいいくらいだと思います。
どんなに良い商品でもブランディングとセールスは必要!
クラウリー:良い商品を持っていけば、みんなが良さを分かってくれて自然に売れると思っていることです。
ちゃんとブランディングやセールスをしなければ、どこでだって簡単に物は売れません。BtoB(企業が企業にモノを売る)でもBtoC(企業が個人にモノを売る)でも、“モノを売るときにはセールスパーソンが大事”という認識が薄いのではないでしょうか。セールスはかなりテクニックのいることなので、しっかりと売れるセールスパーソンがキーポイントだと思います。
クラウリー:自分の商品、サービスのターゲットが誰なのか、自分のブランドは何者なのかをしっかり持つことです。
あと、ブランドやビジネスのストーリーをしっかり持つことですね。ターゲットがしっかりと定まっていない商品やサービスは、どこの誰にも響かないと思います。
これからはイギリス⇔日本双方向のビジネスを展開したい。「一緒にやりましょう!」
クラウリー:今後は、展示会やイベント、マーケティングをして終わりではなく、ちゃんとモノを動かせる会社にしたいと思っています。
そのために、パートナー会社としっかり連携を組んで、日本の商品、サービスをイギリスやヨーロッパで根付かせるようお手伝いをしていきたいと思っています。また弊社では、昨年は重点的にインバウンド、アウトバウンドのビジネスを進めてきたのですが、これからはその逆で、イギリスやヨーロッパの会社が日本進出する場合のお手伝いもしていきたいと考えています。
クラウリー:よく、日本からヨーロッパは遠いといわれるのですが、こちらで面白く展開できる日本の商品やサービスが、まだまだたくさんあると思います。一緒に面白いビジネスができることを、お待ちしています。
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(取材協力:
Pointblank Promotions/クラウリー利恵)
(編集: 創業手帳編集部)