浅田真央×エアウィーヴの影の立役者が伝授!お金をかけずに効果を生むPR方法【その2】

創業手帳
※このインタビュー内容は2020年04月に行われた取材時点のものです。

【プレスリリース・パンフレット編】誰でもできる!反響が生まれるプレスリリース作成のコツ

(2020/04/23更新)

国民的アイドル浅田真央さんをイメージキャラクターにして、エアウィーヴの売り上げを大幅アップさせた影の立役者である笹木郁乃氏。彼女が語る効果的なPRシリーズの第2回目は、プレスリリースについてです。
プレスリリースを出すことは簡単ですが、ほかの情報に埋もれてしまい、なかなか読んでもらえない現実があります。そうなってしまわないための、効果的なプレスリリースの作り方を教えていただきました。また、会社の顔でもある会社案内パンフレットについても、読まれる作り方を聞いています。

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笹木郁乃

笹木郁乃(ささき いくの)株式会社LITA 代表取締役、PRプロデューサー

「PRをより身近に、PRの力で人生に感動を」を信念に活動を続ける。山形大学工学部機械システム工学科を首席で卒業後、「アイシン精機株式会社」に研究開発職として勤務。さらなる自分の可能性に挑戦するため寝具メーカー「株式会社エアウィーヴ」へ正社員1人目として転職し、営業・マーケティング・PRを兼務。社長と二人三脚でPRの力で年間売上1億円の会社を5年で115億円へと急成長させることに貢献。その後数社を経て現在は独立し、PR講師として3年で1200名の起業家・経営者に指導する実績を持つ。「0円PR」(日経BP社)が好評発売中。

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プレスリリースで発信されるべき内容や見せ方のコツ

ープレスリリースとは何ですか。役割について教えてください

笹木:プレスリリースとは、メディアに向けたお知らせです。大企業はもちろん、中小企業、フリーランス、どのような方でもプレスリリースを出すことができます。

一般的には、A4判縦長のペーパー数枚に、横書きで伝えたいことをまとめます。
例えば、
「新商品を発売します」
「書籍が増刷されました」
「イベントを開催します」
といった具合に、伝えたい情報を載せて、メールや郵送、FAXなどでメディアへ送ります。メディアではまだまだFAXで情報提供を求められることもあるのです。

プレスリリースは、メディアPRの中でも効果が高い方法の1つです。

また、プレスリリースはメディアの人たちの情報収集源にもなっています。
実のところ、メディアで発信される情報の100%を自分の足や人脈だけで探しているわけではありません。人力の情報収集には限界があるため、企業や個人からの情報提供によって新聞記事や特集が組まれたりすることもあるのです。

自社の特徴をよく分析し、リリースを送る媒体を選んで情報提供することで、取材される確率は上げられます。日頃からメディア研究を心がけましょう。

ー作成までの具体的な流れは
プレリリースプレスリリース作成の流れ 参考:「0円PR」 出版社/日経BP

笹木:最初に持ってくるのは「新規情報」
プレスリリースには、ニュースとしての価値が必要です。「昨年、新商品を発売しました」では、メディアにとって取り上げる理由がありません。「昨年発売した新商品が5万個販売突破したことを記念して、イベントを開催します」など、何らかの新規情報を用意し、そこから話を展開していきます。

2番目は「社会の現状」
例えば「コロナウイルス感染拡大に伴い、リモートワークの機会が増えたことでコミュニケーション不足に悩む人が増加しています」といった事実を伝えます。できれば、グラフや数字などの具体的なデータを用いて根拠を示せるようにしましょう。

3番目は、社会の現状と新規情報をつなぐ「活動の動機」
「このコミュニケーション不足を解消するために開発したのが、この商品です。」
ここは非常に大切なところです。この部分で記者に「なるほど。」と思ってもらえるかがポイントになります。

4番目は「ストーリー」
開発秘話や苦労話などがあると、より興味が湧いてくるはずです。写真などを入れてイメージできるようにするのもよいでしょう。

5番目は「決意」
「この商品をご利用いただくことで、ストレスを軽減しつつ社内のコミュニケーションを活発化し、日本の生産性向上に役立てればと考えております」など、あなたの会社が目指すビジョン、社会にどう貢献したいかを宣言します。

最後に、記者発表会やイベントなどの「告知」
具体的に、いつ、どこに行けば取材ができるかを明確にしておきましょう。当日取材できる人を書いておくのもよいと思います。

自社のアピールだけでなく読者に役立つ情報を盛り込む

ープレスリリース作成の際に心がけたい書き方のポイントは

笹木:プレスリリースに絶対欠かせないのは、【社会性】、【公共性】です。
自社の商品やサービスが世の中にどのように役に立つのかどんな人を助けることができるのかが、必ずわかるように書きましょう。

記者の仕事は、商品や会社の宣伝ではありません。ニュースとして伝える価値のある情報であれば、自ら取材に行って記事にします。消費者の欲しい情報、役立つ情報の提供がニュースの目的だからです。このポイントは忘れないようにしましょう。

プレスリリースは、タイトルと写真で8割決まると言っても過言ではありません。
記者さんは毎日大量のプレスリリースを受け取っているので、パッと見て目を引くかどうか、第一印象で取り上げてもらえるかどうかで決まってしまうのです。

タイトルは、具体的なイメージが一瞬で描けるようなわかりやすさが重要です。また、内容が分かるだけでなく、インパクトも大切です。
例えば、私が過去に添削したプレスリリースに、こんなタイトルがありました。

金髪ひとり社長が伝える、会社に頼らない生き方
著書重版決定お礼記念セミナー(大放談会)

キャッチコピーとしてはいいのですが、なんとなく漠然としていてなにを取材したらよいかわからず、撮れる画がイメージできません。
そこでこのように改善しました。

ポスト終身雇用時代の「ひとり社長」セミナーを開催
〜金髪ひとり社長が伝える、独立、開業、稼ぎ方〜

改善前のリリースタイトルに抜けていたのは「独立、開業、稼ぎ方が学べるセミナー」という事実です。当事者にとって当たり前すぎて、逆に抜け落ちていました。この事実を加えただけでも何を取材したらよいか、どんな画が撮れるかイメージがつくと思います。

固有名詞や数字を加えたタイトルにすると、具体的な取材イメージができるため、取り上げる側に安心感を与えることができます。
写真は加工したものではなく、撮ったままの写真を掲載するようにしてください。写真選定で気をつけるべきポイントは「加工なしの写真」を使うことと、「そのままテレビや新聞で使っても大丈夫な写真」を使うことです。

ー取り上げてもらうためのプレスリリースの送り方は一斉?ピンポイント?

笹木:私がオススメしているのは、20~30媒体に絞って郵送することです。典型的な大きなPR会社では、200~300媒体にメールやFAXで配信しています。配信代行業者もあるためそれほど手間はかかりませんが、中小企業が大手企業の真似をしても勝てません。

配信先を絞る理由は、プレスリリースをラブレターだと思って配信するためです。ラブレターは大量に書いたりしませんよね?受け取る相手のことを考えながら書くと思います。

プレスリリースも同様に、「この雑誌の編集者さん宛」「この新聞記者さん宛」といった具合に、あなたから個人(特定の人)に宛てて書くことで、取り上げてもらう確率がグッと上がります。

また、郵送することも相手に思いを届けるひと手間。FAXやメールは一斉送信が可能ですが、郵便を出すためにはいくつもの工程があります。この郵送作戦のポイントは【宛名は手書き】【個人名(記事名)】で送ることです。

「この記事を書いた記者さんにお伝えしたい!」と思っても名前がない。そんなときは「○月○日~~~の記事ご担当記者様」と特定して送ります。受け取るメディアの方も人ですから、ラブレターの本気度によって興味が湧いたり、プレスリリースをしっかり読んでくれたりするようになり、取材確率が上がります。

思いのこもったものが目に留まるのはプレスリリースだけではない


ここからはパンフレットの話です。

ー会社紹介などのパンフレットを作成する際の注意点はなんですか?捨てられないようにしたいです

笹木:会社パンフレットはきれいに製本されたものが多いですよね。しかし、会社パンフレットをなかなか見てもらえない、と感じている方も多いのではないでしょうか。

私が思う、捨てられてしまうパンフレットの特徴は2つ。
1) きれいにまとまっている
2) 作り手の顔が見えない
誰がつくっても同じようになってしまうものは、印象に残りません
会社概要や実績、業務内容が一目でわかる資料も大切ですが、そこに載っている情報だけではメディアの方の興味を引くことは困難です。

SNS時代のPRは「ファンを増やすこと」がセオリ―。
だから、完璧ではなく欠点を含めた個性を見せることがポイントです。
また、プレスリリースのようにプレゼンする相手に合わせて少しずつカスタマイズしていくと、よりラブレターのようになり心がグッと引き寄せられます。

そこで私がオススメしているのは、「社長や担当者が作成するパワポ(*)会社資料」です。

下手でも、短くても構いません。思いを込めた“あなた(プレゼン相手)のための”会社資料。これはなかなか捨てられません。
社長や担当者は商品やサービスができるまでの失敗や学んだこと、苦労、様々なことを体験しています。その体験を本人の言葉で語る。これも大切なポイントです。

*パワポ:PowerPointの略

ーパンフレットはパワポ作成でも良いとのことですが、本当に見てもらえますか

笹木:先ほどお伝えしたように、会社資料もラブレターのようにつくる。きれいな言葉を並べなくても、思いを伝えるために会社や社長のストーリーを入れると「へぇ。そんなことがあったのか」と商品情報やサービス内容では見えてこなかった一面を見せることができます。
実際につくるのは社長でなくても構いません。でも、社長と同じ熱量でストーリーを語れる人による作成が望ましいです。社長や担当者が自分の言葉で語るストーリーだからこそ、情熱やキャラクターがダイレクトに伝わるようになります。

宛名のページをつくることも大切です。とても簡単なことですが、「○○○株式会社△△様へ」という一文は、ささやかながら効果が大きい工夫の1つです。最初の1ページに加えるだけで、「あなたのために」というメッセージが伝わり、好感度が大きく変わります。
興味のない相手からのラブレターでも自分宛に書かれたものであれば、「少し読んでみようかなぁ」と思いませんか?それと同じです。まずは表紙から興味を持ってもらえるようにしましょう。

ー笹木さんは、きれいさ、分量不要と言いますが、それで情報が伝わりますか?コンパクトにして伝える方法は

笹木:まずはしっかりとPR設計を立てる。これが大前提です。
きちんと会社のことを整理し、どんな変化を提供できるかを明確にしておく。そのうえで、相手の知りたい基本情報(商品やサービスについてや実績など)、こちらが伝えたい自社の特徴(プロフィールorストーリー、アフターフォロー体制など)をできるだけ短い言葉で箇条書きにして書いてみる。そこからどうしても伝えたいことの優先順位をつける。

そうすることで、軸をぶらすことなく資料へ盛り込む情報を選ぶことができます。
伝えたいことは文字だけで表現するのではなく、写真やグラフなどを加えることでよりわかりやすく伝えるようにしましょう。

特に商品やサービスへの思いは、開発ストーリーなどにすることでコンパクトに情報を伝えることができます。ファンを増やすためには、具体的でわかりやすいストーリーが重要です。

ーパンフレットに盛り込むべき情報はなんですか

笹木:私がPR塾でお伝えしているのは次の8ステップです。
1) 表紙
2) あなたの商品、サービスとは(会社のミッションと事業内容)
3) 実績
4) プロフィールorストーリー
5) サービスの特徴・概要
6) お客様の声
7) 費用、お申し込みの流れ、アフターフォロー体制
8) お問い合わせ先

この中で一番重要なのは「実績」です。
実績は第三者からの他薦であり、根拠のある事実です。初めて知る人にとっては、品質保証にもなるのです。しっかりアピールしましょう。

実績というと「自慢っぽく見えて、気が引ける…」という人もいると思います。きちんとした資料で裏付けを示せば、あくまで事実を伝えているのであって、自慢でも実際よりもよく見せようとしているのでもないことが相手に伝わります。プレゼンするときには1つひとつ読み上げなくてよいので、パンフレットにはできる限りすべて入れるようにしましょう。

「あなたの会社が目指す世界観(ミッション)」は、パワポ1枚で示すようにしてください。顧客や社会にどんな変化を与えたいのか、長めの時間軸で考えるとイメージが湧きやすくなると思います。ミッションは長々と語らずバシッと印象付けたら、誰もが一番興味のある「実績」情報に移りましょう。

プレスリリースもパンフレットも、紙一枚にどれだけの情報と熱量を込めることができるかが大切です。伝えたいことの先に相手の顔が見えていることがポイント。ただやみくもに情報を詰め込むのではなく、読む人の心に響く書き方を心がけましょう。

次回は、SNSがテーマです。
創業手帳の別冊版「広報手帳(無料)」では、広報の大まかな流れなど、販路拡大に必要なノウハウが掲載されています。併せてご活用ください。

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(取材協力: 株式会社LITA 代表取締役 笹木郁乃
(編集: 創業手帳編集部)



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