フレックスタイム制のコアタイムとは?導入による効果や注意点も解説
フレックスタイム制は従業員の多様な働き方を実現できる
従業員のワークライフバランスを向上させることを目的に、フレックスタイム制を設ける企業が増加しています。
フレックスタイム制は自由度が高い制度であり、企業は内容を十分に理解した上で導入することが重要です。
そこで今回は、従業員の多様な働き方を実現できるフレックスタイム制についてご紹介するとともに、コアタイム導入で期待できる効果や注意点などを解説していきます。
フレックスタイムの導入を検討している方や、コアタイムについて理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
フレックスタイム制とは?概要
労働時間は、原則は労働基準法第32条で1週間40時間、1日8時間と決まっています。
労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩が必要です。
ただし、勤務時間は企業によって異なります。勤務時間は、勤務を開始した時間から終了する時間までのことを指し、休憩時間も含みます。
また、勤務時間を超えた範囲で働いた場合は、残業となり別途手当を受け取れます。
一方、フレックスタイム制の設定では、清算期間と呼ばれる一定期間の総労働時間の範囲内であれば、始業や終業の時刻を従業員が自主的に決めて働けます。
1カ月を清算期間とした場合、法定労働時間の総枠が以下となるため、清算期間内の総労働時間は範囲内にする必要があります。
清算期間の暦日数 | 1カ月の法定労働時間総枠 |
---|---|
28日 | 160.0時間 |
29日 | 165.7時間 |
30日 | 171.4時間 |
31日 | 177.1時間 |
清算期間が30日であれば総労働時間が171.4時間以下にならないように出勤時間や終業時間を決めなければいけません。
万が一、従業員の総労働時間が法定労働時間を超えた場合は、残業代を支払う必要があります。
フレックスタイム制の「コアタイム」とは?
一般的にフレックスタイム制を導入する場合は、コアタイムとフレキシブルタイムを設定します。
ここからは、フレキシブルタイムとの違いやコアタイムを設定する理由について説明します。
コアタイムとフレキシブルタイムの違い
コアタイムは必ず勤務しなければいけない時間帯です。一方、フレキシブルタイムはいつ出勤しても良い時間帯のことです。
例えば、7時から10時、15時から19時の間がフレキシブルタイムに設定されていた場合、7時から10時の間にいつでも出勤ができ、15時から19時の間にいつでも退勤できます。
従業員が自分で出社時間と終業時間を設定できるということです。保育園の送り迎えに時間を合わせられるなど、多様な働き方ができるようになります。
フレックスタイム制にコアタイムを設定する理由
フレックスタイム制では、コアタイムとフレキシブルタイムを設定できますが、コアタイムもフレキシブルタイムも設定は義務ではありません。
確かに設定しないことで働き方の自由度が高くなりますが、コアタイムを設定する企業のほうが多い傾向にあります。
コアタイムを設定する理由は以下の通りです。
-
- 連携を取りやすくするため
- 会議の開催調整をしやすくするため
コアタイムを設定しない場合、従業員によって始業時間や終業時間が異なります。そのため、従業員同士がコミュニケーションを取りにくくなってしまうかもしれません。
メモ書きやメールなどを活用して情報を共有したとしても、文章だけでは伝わりにくく、誤解が生じる可能性もあります。
一方、コアタイムやフレキシブルタイムを設定すれば連携が取りやすくなり、打ち合わせや会議などの日程調整もスムーズになります。
フレックスタイム制の導入で期待できる効果
フレックスタイム制の導入は、企業に様々なメリットがあります。
ワークライフバランスが実現しやすい
フレックスタイム制を導入すれば、従業員は自分自身で働く時間の設定が可能です。そのため、私的な用事に合わせて仕事のスケジュールが組めます。
保育園の送迎や家族の介護、自分の趣味など、私的な用事に合わせてスケジュールを組めるため、ワークライフバランスの実現が可能です。
プライベートが充実すれば、仕事に対する意欲を高められ、働きがいが向上します。その結果、仕事の質や生産性向上に役立ちます。
ムダな残業を減らせる
フレックスタイム制を導入すれば、清算期間内で労働時間を調整できます。
企業では、部署によって忙しい時期が異なるケースもあります。
ただし、仕事の量に関係なく就業時間内は働かなければいけません。
仕事量が多い部署は残業が必要になるかもしれませんが、仕事が少ない部署は時間を持て余すことも考えられます。
フレックスタイム制を導入すれば、仕事が少ない部署で働く従業員は早めに退社することが可能です。
個人単位での勤務時間を調整することが可能なので、ムダな残業時間を防ぎ残業代をカットできるようになります。
離職率の低下や優秀な人材の確保につながる
子育てや介護が必要であれば、フルタイムでの勤務が難しく退職を選択する方もいます。
しかし、フレックスタイム制を導入すれば業務時間を調整でき、働き続けられる可能性が高まります。
優秀な人材を確保し続けるためには、フレックスタイム制の導入がおすすめです。
また、自由な働き方ができる企業は求職者にとっても魅力的です。
優秀な人材確保にもつながるため、人材不足に悩んでいる企業担当者の方はフレックスタイムの導入を検討してみてください。
通勤ラッシュを回避できる
フレックスタイム制を導入すれば、通勤ラッシュを避けて出社することが可能です。
乗車率が100%を超える電車で通勤する方は多くいるかもしれません。
混雑している電車での通勤は、仕事前に疲れが出てストレスも溜まってしまいます。
フレックスタイム制の導入により、通勤ラッシュや帰宅ラッシュを避けることが可能です。従業員のストレス軽減や離職を防止するために役立ちます。
コアタイムを含むフレックスタイム制の導入手順
ここからは、コアタイムを含んだフレックスタイム制の導入手順を解説していきます。
1.フレックスタイム制のルールを考える
まずは、対象となる従業員の範囲や清算期間を考える必要があります。
・労働者の範囲
対象は、全労働者のみならず、特定の従業員や部署、職種など、限られた従業員のみと定められます。
・清算期間
3カ月以下の期間で定めてください。
・総労働時間
清算期間内に労働する時間として、週平均40時間以下もしくは1日あたり8時間以下となる労働時間を定めます。
上記以外にも、1日の標準労働時間やコアタイム、フレキシブルタイムのルールについても決める必要があります。
2.就業規則などに規定する
フレックスタイム制を導入する場合、就業規則に始業時刻や終業時刻を従業員に委ねることを定めなければいけません。上記で検討したルールをもとに、作成してください。
3.労使協定を締結する
使用者(会社)と従業員で締結する協定を労使協定といいます。
フレックスタイム制を導入するのであれば、前述した労働者の範囲や清算期間といったルールについて話し合い、双方で合意が得られた場合のみ締結されます。
労使協定は、清算期間が1カ月以内であれば締結するのみで、労働基準監督署への届け出は必要ありません。ただし、期間が1カ月以上であれば届け出が必要です。
4.労働基準監督署に届け出る
清算期間が1カ月以上の場合のみ、労使協定を管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。就業規則変更の届け出も同時に行ってください。
清算期間が1カ月以内であっても届け出をする必要があります。忘れずに申請してください。
5.従業員に説明して周知させる
就業規則変更後には、全従業員への説明も行わなければいけません。説明が必要な内容は以下の通りです。
-
- 制度変更の目的
- 労働時間の管理方法変更
- 労働時間管理の注意点
- 時間外労働手当の取扱い
- 休日労働の取扱い
- コミュニケーション面のデメリットや対策
制度を運用している段階で新しく課題が見つかるケースもあります。定期的に現場への聞き取り調査を実施し、その都度対策を講じるようにしてください。
フレックスタイム制導入におけるコアタイムのポイントや注意点
フレックスタイム制を導入する際のポイントや注意点を解説していきます。
コアタイムにおける遅刻・早退について
コアタイムの時間帯に遅刻や早退をした場合でも、1カ月の総労働時間を満たしていれば減給は不可能です。
しかし、コアタイムでの遅刻や早退が増えてしまうと、仕事に様々な影響が出てしまうかもしれません。
そのため、コアタイムでの遅刻や早退についてのルールを就業規則で定めておくことが重要です。
-
- コアタイムでの遅刻や早退で減給処分を定める
- コアタイムでの遅刻や早退の有無を人事評価に取り入れる など
遅刻や早退を減らす仕組みづくりを考えてみてください。
コアタイムの適切な長さか確認する
コアタイムの時間は法律では規定されていません。自由に設定できます。
しかし、所定時間の多くをコアタイムに設定すれば、始業時刻や終業時刻を選択する余地がなくなるため、フレックスタイム制といえなくなってしまいます。
また、コアタイムは11時から12時、13時から15時などのように、分割での設定も可能です。
しかし、9時から10時、15時から17時といった時間に設定してしまえば、コアタイムの時間が短くても、始終業時間を自由に決められるとはいえないため、フレックスタイム制が認められなくなってしまいます。
コアタイムを設定する趣旨に違反しないよう、適切な長さであるか必ずチェックしてから導入してください。
労働時間を把握しやすい環境に整備する
フレックスタイム制では、従業員が始業時刻や終業時刻を設定します。
そのため、従業員の労働時間を把握しにくい点がデメリットです。
実労働時間の算定や健康管理のためには労働時間を把握する必要があり、フレックスタイム制を導入した場合には、従業員の労働時間を把握することが大切です。
その際には、厚生労働省によるフレックスタイム制のガイドラインに従い、適正な労働時間の把握を目指してみてください。
割増賃金が増える可能性がある
フレックスタイム制でも、労働時間を超えれば残業代を支払う必要があります。法定時間外労働に加え、法定休日労働、深夜労働に対しては割増賃金を支払わなければいけません。
夜間に働く従業員が増えれば、深夜労働に対する割増賃金額も増えることに注意してください。
コアタイムがないスーパーフレックスタイム制もある
スーパーフレックスタイム制ではコアタイムが設定されていないため、始終業時刻を自分の好きな時間に設定できます。時間だけではなく働く場所にもとらわれない柔軟な働き方が可能です。
ただし、従業員同士のコミュニケーション不足により問題が生じたり、打ち合わせや会議の時間が決めにくかったりします。
勤怠管理も煩雑になりやすいため、コアタイムの必要性を十分に考えてから制度の導入を検討してください。
フレックスタイム制の導入で成功するには事前の準備が必要!
今回は、コアタイムを含めたフレックスタイム制について解説してきました。
働き方改革が進み、仕事とプライベートのバランスが取れた働き方を進める企業が好まれる傾向にあります。
また、フレックスタイム制を導入すれば、ワークライフバランスが実現しやすく、離職率の低下や優秀な人材確保にもつながります。
一方、コアタイムを決める必要性を十分に考慮し、割増賃金が増加することにも注意が必要です。
今回ご紹介したポイントや手順を参考に、導入を検討してみてください。
創業手帳(冊子版)では、フレックスタイム制と同じように従業員の働きやすさに関連する制度や取組みのほか、企業運営や起業に役立つ情報をまとめています。企業経営に関する知識を深めたい方は、ぜひ活用を検討してみてください。
(編集:創業手帳編集部)