ビジネスで必須のスマートフォンにて、「BYOD」が正しい選択肢なのか

創業手帳

仕事で使うスマートフォンの“正しい調達方法”を紹介します!

(2020/02/06更新)

令和元年版の「情報通信白書(総務省)」によると、スマートフォンの世帯普及率は約8割となり、固定電話やパソコンを超えて、最も普及している情報通信機器になっています。

たしかに、街で周囲を見渡しても、スマートフォンを持っている人ばかり。それはビジネスの世界でも同じだということは、ほとんどの人が実感しているでしょう。

しかし、ビジネスで使用するスマートフォンは「誰のもの」なのか、きちんと考えたほうがいいのです。

毎月1.5万部、累計100万部発行している「創業手帳」冊子版には、社内システムを導入するためのチェックリストを掲載しています。あわせてご活用ください。

ビジネスでのスマートフォン活用 その3つのカタチとは?

ビジネスの現場でも欠かせないアイテムとなっているスマートフォン。取引先のあの人のスマートフォン、パートナーのあの人のスマートフォン、そして起業したばかりのあなたのスマートフォン、それぞれ、「誰のもの」なのでしょう? 実はいま、ビジネスで使われているスマートフォンは、その持ち主別に、3つのカタチがあるのです。

会社から支給されたスマートフォン

1つ目のカタチは「会社所有のスマートフォン」です。

ビジネスで使うのですから、そのスマートフォンはやはり会社から支給されるものというのが、本来の姿でしょう。

ところが、「個人のスマートフォンと会社のスマートフォンの二台持ちになって面倒だ」という従業員側の課題、さらには「高価なスマートフォンを購入するのはコスト負担が大きい」という会社側の課題もあって、案外、会社支給のスマートフォンを使っている人は多くありません。

勝手に仕事でスマートフォンを使う「シャドーIT」

2つ目のカタチは「個人所有のスマートフォンを勝手に使用する」になります。

会社がスマートフォンを支給してくれなくても、お客様との電話でのやり取り、メールの確認などが外出先でできないと問題です。名刺に固定電話しか記載していなくても、取引先から「携帯電話(スマートフォン)の番号も教えてください」と言われるのは珍しいことではありません。そうなると、個人のスマートフォンの番号を教えてしまうものです。さらには、会社のメールも個人のメールに転送してチェックしますし、もっと進むと会社のサーバーにアクセスして書類の確認をするかもしれません。

このように、会社に無許可で個人の情報通信端末(スマートフォンやタブレット、ノートパソコンなど)をビジネス利用することは「シャドーIT」と呼ばれています。会社からその端末のセキュリティを制御することができず、情報漏洩のリスクが非常に高くなります。この状態は絶対に避けなければなりません。

私物の情報端末などを持ち込んで業務で利用する「BYOD」

3つ目のカタチも、個人所有のスマートフォンですが、それを会社で適切に管理する「BYOD(Bring Your Own Device)」です。

シャドーITを避けるには、会社でスマートフォンなどを支給し、きちんとセキュリティなどの端末管理をすべきなのですが、ここで問題になるのが、スマートフォンの値段です。

一台数万円するスマートフォンの購入費用は、大きなものです。特に起業したばかりの段階では、従業員数が少ないとはいえ、人数分のスマートフォンを購入するのはなかなか難しいかもしれません。

そこで、個人のスマートフォンをビジネスでも安全に利用できるようにするのが「BYOD」の考え方です。個人のスマートフォンをビジネス利用するにあたって、通信費用などを一部会社が負担します。そして、会社が指定するセキュリティ対策を施し、MDM(Mobile Device Management:モバイルデバイス管理)ツールなどを活用して、会社が適切にそのスマートフォンを管理できるようにします。

創業企業は「BYOD」を選ぶべきなのか

創業したばかりの企業では、BYODを選択するわけ

先で説明した3つのスマートフォン導入においては、シャドーITはもってのほか、会社でスマートフォンを購入、支給するカタチがベストな選択であることがわかります。しかし、BYODにもメリットはあります。

・コストを抑えることができる
先程も触れましたが、スマートフォンの端末は高価です。何かとお金がかかる創業時には、少しでもコストを抑えたいもの。従業員の個人スマートフォンを使えるならば、それに越したことはないと言えます。

・手間暇がかからない
スマートフォンを購入する場合、そのセキュリティの設定、業務で使う各種アプリケーションのインストールや初期設定などを、担当者がしなければなりません。しかし、BYODならば、従業員にセキュリティの内容、使用するアプリの設定などを伝えて各自で作業してもらえばいいので、手間暇を削減できます。また、創業後、順調にビジネスが拡大すれば、従業員も増えていきます。そのたびにスマートフォンを買い足していくのも面倒です。

・従業員の負担も小さくなる
個人のスマートフォンと仕事用のスマートフォンの二台持ちは案外、負担になるものです。スマートフォンの悩みの一つ、バッテリーの心配も二倍になります。どうせなら一台で済ませたい、と思うのも理解できます。

コスト、手間暇などを考慮すると、BYODが創業間もない企業には現実的かもしれません。

BYODは、自社にとって本当にメリットになっているのか?

確かに、創業企業にとっては、「BYOD」は良い選択肢に見えます。しかし、先に挙げたメリットが、自社にとって本当にメリットになるのか、検証してみましょう。

・コストは、端末購入費だけではない
確かに、BYODならば、端末購入費は削減できます。しかし、従業員に対して、「通信費の一部負担」、「MDMを導入」など端末購入費以外のコストは掛かります。会社で購入するよりもコストは抑えられますが、思ったほどのコスト削減にはならない可能性があります。

・管理の手間暇はむしろ、BYODのほうが大変になる?
仕事でスマートフォンを使う上で、情報漏えい対策、万一の紛失や盗難時の対応を考えると、MDMの導入は必須になります。MDMツールの各スマートフォンへのインストール、設定などは欠かせません。また、従業員各自にセキュリティ設定などを任せると、どうしても疎かになる部分が出てきてしまい、情報漏えい事故のリスクは発生します。

・従業員にとって、プライベートと仕事の境目がなくなる
休日でも、自分のスマートフォンに仕事の連絡が入ってくる可能性があり、それが取引先からの連絡ならば、対応せざるを得ないことも多いでしょう。会社支給のスマートフォンなら、休日には持ち歩かないという運用をルールにすることで、そういった問題はなくなります。働き方改革が叫ばれる今、プライベートな時間に仕事を持ち込ませない工夫が必要です。二台持ちの負担以上に、こちらの問題のほうが大きいと言えるでしょう。

会社支給のスマートフォン一択にすべきわけとは

スマートフォンの紛失・盗難時の対応が適切にできるか?

万一、スマートフォンを紛失、あるいは盗難にあった場合、ビジネス利用されるスマートフォンは「リモートワイプ(遠隔でのデータ消去)」「リモートロック(遠隔でのスマ-トフォンのロック)」することで、情報漏えいを防ぎます。

しかし、BYODの場合、そのスマートフォンの所有者は、従業員個人です。スマートフォンの中には、個人の大切なデータ、プライバシーに関わる情報も含まれています。そのデータを「会社の都合で消去する」となると、嫌がる従業員もいるでしょう。会社の情報漏えい事故を防ぐために、従業員が不利益を被る可能性が出てきてしまいます。

適切なウイルス対策がされているか、確認できない

会社から、指定のセキュリティ対策をするように、各従業員に指示することになります。

しかし、本当に対策をするか、対策をしていてもウイルス情報などのアップデートを適切に実行するかは、従業員任せになります。それをリアルタイムで把握することは困難です。

また、個人のスマートフォンにゲームアプリなどをインストールすることは制限できません。従業員が個人で楽しむためにアプリを入れ、結果としてウイルス感染する危険性は避けることができません。

また、外出先でフリーwi-fiなどにつなげることもできるため、十分なセキュリティ対策がされていないネットワークへの接続からの情報漏えいもありえます。会社支給のスマートフォンならば、接続できるネットワークを予め制限していくことも可能です。

さらには、家庭内にもリスクがあります。小さな子供がいる家庭では、ときに子供にスマートフォンでゲームをさせることもあるでしょう。そんなとき、ほんの少し目を離したすきに、大事なデータを消してしまう、メールの誤送信をしてしまうという事故も起こりえるのです。

従業員の入れ替わりでのリスクが大きい

企業の創業時には、どうしても人の入れ替わりが多くなりがちです。

BYODでスマートフォンを活用していると、それもリスクになります。取引先との電話でのやり取りの履歴は従業員のスマートフォンに残りますから、連絡先などを削除しないでそのまま退職後も持ち出すことができてしまいます。悪意がなくとも、そこから、様々な情報が漏れる可能性があります。また、スマートフォンから社内の情報、クラウドサービスなどにアクセスしていると、その履歴も削除されない可能性があります。

会社支給のスマートフォンならば、そういったリスクを避けることができます。

確かに、BYODにはメリットもありますが、それが本当に自社にとってのメリットになっているか、それ以上にセキュリティリスクが大きくないか考慮して、「どんな手段でスマートフォンを活用するか」を考えなければなりません。

創業間もない企業のスマートフォン戦略、その道筋とは?

電話、メール、SNS… スマートフォンでのコミュニケーション手段は多様化している

スマートフォンがビジネスで活用される背景には、その便利さがあります。ガラケー時代の「電話での連絡と、簡単なメールのやり取り」から、パソコンでの場合と変わらないメールのやりとりができ、メールや電話だけではなく、LINEなどのSNSでのコミュニケーションも可能です。

なかでもビジネスにおいては、「グループウエア」の活用は必須かもしれません。仕事で使う様々な書類の共有、スケジュールの管理、チャットのような簡単なコミュニケーションなど、様々な機能を持つグループウエアは、スマートフォンで活用することでその真価を発揮し、働く場所を選ばない、効率がいい働き方を実現すると言えます。

スマートフォンでどんなサービスを活用するかが重要なのです。例えば、GoogleのG suite™やマイクロソフトのMicrosoft365などが有名ですが、他にもさまざまなグループウエアがあります。これらを活かすことは、これからのビジネスにおいて必須だと言えます。

当初はBYODを選択したとしても、最終的には、BYODは卒業すべき

いまでは取引先との会議もオンラインで行われ、さまざまなデータのやり取りもグループウエアを介して行われています。プロジェクトを進めるにあたり、取引先のグループウエアのアカウントが発行され、パソコンからだけではなく、スマートフォンからもアクセスすることが増えています。

BYODにせよ、会社支給にせよ、スマートフォンは活用しなければなりません。まずは、「会社が従業員のスマートフォン利用を把握できる状態」にすることが重要です。コスト面で課題があり、従業員にスマートフォンを支給できない場合でも、最低限、MDMの導入・セキュリティ対策の導入を徹底しなければなりません。

そして、あくまでも「BYOD」は過渡期の措置だという認識を持つべきです。できれば創業時から、そうでなくてもできるだけ早く、会社から従業員にスマートフォンを支給するカタチにしなければなりません。昨今では、一定以上のセキュリティ対策をしていないと取引さえさせてもらえないという話も増えています。あくまでも、「ビジネスで使うものは、会社で用意し、管理する」、これが基本なのです。

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(編集:創業手帳編集部)

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