飲食店の事業計画書の書き方と融資のために押さえたいポイント
飲食店の事業計画書の書き方を解説!事業プランを客観視して創業融資の審査を通過するために
飲食店を経営するなら、まずは事業計画書の書き方を理解することが大切です。
飲食店経営では、比較的大きな金額の初期費用がかかるため、融資を受けることが多くなります。
融資をスムーズに受けられるようになりたいのであれば、内容の充実した事業計画書は欠かせません。
融資を成功させるために必要な事業計画書の書き方を解説します。
飲食店ならではの書き方のポイントを押さえて、適切な事業計画書を作成しましょう。
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この記事の目次
事業計画書が飲食店開業に必要な理由
事業計画書の作成は、飲食店を開業する人にとって欠かせないものです。事業計画書は対外的に必要となることもあり、そのほかにも作成すべき理由があります。
書き方のポイントを理解するためにも、理由や目的がはっきりとわかっていることは役立ちます。
飲食店で事業計画書が必要となる理由や目的をチェックしておきましょう。
創業融資を受けるため
事業計画書は、金融機関からの融資を受ける際に必要です。
飲食店をはじめとした事業を開始するためには、まとまった準備資金や運転資金が必要です。
飲食店経営にはまとまった初期費用が必要で、自己資金だけでなく融資や出資を受けて準備することも多くなります。
新規事業を開始するにあたり、創業融資を受けるために必要な書類のひとつが事業計画書です。
金融公庫による創業融資では、正確にいえば事業計画書ではなく創業計画書が必要ですが、基本的に内容は変わりません。
つまり、融資を受ける予定の人にとって事業計画書は必須書類です。
また、作成時には、金融機関に自店の事業内容を正しくアピールするよう目指す必要があります。
アイデアやプランを客観視するため
事業計画書を作成するのは、対外的なアピールのためだけではありません。
自分のビジネスアイデアやプランを明確にし、客観視することも重要な目的のひとつです。
事業計画書という形に落とし込むと、アイデアをより具体化し、悪い部分や不足部分を冷静に見つめ直せます。
頭の中でイメージしている時にはうまくいきそうだと思えても、実際に文字にしてみると客観的に悪い部分が見えてくるものです。
事業計画書のフォーマットは、それだけでビジネスの概要を掴める構成になっており、自分の考えをまとめるためにも役立ちます。
作成した事業計画書に空欄や書けない部分があった場合には、再度ビジネスモデルを見直してみてください。
必要な資金額と資金計画を明らかにするため
事業計画書の作成は、店を開業するために必要な資金額とその調達方法や運用方法などの資金計画を明らかにするためでもあります。
飲食店経営には、設備資金や運転資金など、様々な資金が必要です。
資金計画ではそれらの資金について、何にいくらかかるか、どのように調達して返済していくか、将来的な売上の目標も織り込んでまとめます。
事業計画書からは、必要な資金と入ってくるであろうお金がわかり、お金の流れが良く見えるようになるでしょう。
また、資金計画を具体的に立てて落とし込めば、事業計画もよりシビアに考えられます。
このように、事業計画書から必要な資金と資金計画を把握すると、より堅実な経営が可能となります。
飲食店における事業計画書の書き方
事業計画書は、それぞれの業種に応じて適した書き方で作成するのがベターです。
飲食店で事業計画書を作成する際には、飲食店として自店の事業内容をより的確にアピールすることが必要です。
開業前であっても、計画的で地に足のついた経営を目指していることを示しましょう。
創業の動機
創業の動機とは、開業する経緯や目的を記す項目です。
金融機関が融資をする上で見るポイントとしては、開店の準備ができているか、思いつきや勢いで始めようとしていないか、計算や調査が行き届いているかなどがあります。
記載する内容は、自分のモチベーションとなった体験や開業を決意した根拠などです。
長年の夢であり、成功の目算もあること、きちんと準備してきたことを熱意をもって伝えます。
経営者の略歴
経営者の略歴は、時系列で自身の職務経歴や事業経験を書く部分です。
過去にどのような経験を持っているのか、働き出してから現在までの経歴を書きます。
注意したいのは、創業の動機との矛盾です。
創業の経歴で過去に飲食店の経験があると書いたにもかかわらず、略歴に書かれていないのでは整合性が取れません。
また、過去の事業経験や取得した資格、知的財産権などもあれば記載します。飲食店では、調理師免許やソムリエの資格などが関連資格として書けます。
知的財産権については、申請中のものも記載してください。
取扱商品・サービス
取扱商品・サービスの項目では、開業する予定の飲食店で提供するメニューやその特色、セールスポイントを記載します。
ここは開業する予定の店が成功しそうか否かを判断する部分です。取扱商品・サービスとセールスポイントを分けて記載します。
取扱商品・サービスの内容
取扱商品・サービスの内容では、飲食店の主なメニューを記載します。
提供する予定のメニューの種類や内容と平均の価格帯を並べ、売上シェアとして売上全体に占める割合を商品ごとに書きましょう。
売上シェアは、営業中であれば過去数カ月の平均売上高から算出します。開業前に事業計画書を作る場合には、見込みの売上比率を書けば問題ありません。
セールスポイント
セールスポイントは、上記で記載した取扱商品・サービスの特色や魅力、売り文句を記載する部分です。
ほかの店とは違う自店独自の商品の特徴を挙げてください。金融機関はセールスポイントを見て、飲食店の将来性を判断します。
飲食店経営では、商品とお店のコンセプトが合致しており、創業の動機や略歴と一貫性があることが大切です。矛盾のないようにストーリーを組み立てましょう。
取引先・取引関係
取引先・取引関係には、販売先や仕入先、外注先などを記載します。
また、それぞれに全体の売上げや仕入れに対するシェア割合や売上の回収方法、仕入れ代金の支払い方法なども書く必要があります。
飲食店の場合には、取引先は一般の個人客が多いかもしれません。
その際には、「一般顧客」「一般個人」が取引先名で、現金売上げの場合には回収方法は「現金回収」「即金」と書きます。
仕入先や外注先には、飲食物の原材料を仕入れる会社や加工や調理などの作業を外注する場合の主な外注業者を記載します。
売上げでは掛け取引きは少ないかもしれませんが、仕入れや外注では支払いが現金だけでなく掛けになることも多いため、現金以外の掛け取引きの割合も記載が必要です。
支払い条件も、「〇〇日締め〇〇日払い」と相手ごとの条件を記します。
従業員
従業員を雇うお店では、実際にお店に従事している従業員の人数も記載します。
また、上記の取引先・取引関係などにも人件費の支払い項目があるため、そちらには給料の支払い条件を書きます。
借入れの状況
借入れの状況には、創業者もしくは法人の代表者個人の借入れ状況を記載します。ここでいう借入れとは、飲食店経営に関係のない個人的な借入れです。
事業とは関係のない住宅ローンや自動車ローンなどの借入れが当てはまります。
もしも、申し込もうとしている創業融資以外にも飲食店開業資金としてビジネスローンなどがあった場合でも、それらは記載しません。
必要な資金と調達方法
必要な資金と調達方法では、設備資金と運転資金に分けて、金額や調達の仕方を記載していきます。
お店を経営していく上でかかる金額を項目に分けて記載することで、金融機関に対して、なぜ借入れが必要となるかを細かく理解してもらいます。
創業融資では、いい加減な計算で出した金額や単なる赤字の穴埋めのためなどでお金は借りられません。
そのため、何にどれくらいの金額が必要か、明記する必要があります。自己資金も含めて必要となる金額と調達先をまとめましょう。
事業の見通し
事業の見通しは、売上高や経費などの推移を予測する項目です。創業当初の売上げや経費と軌道に乗った後の売上げや経費の予測を記載します。
金額を項目ごとに記載するとともに、その根拠とした金額や計算方法なども書き添えます。
飲食店の場合には、平日ランチで売上げが〇〇円、平日ディナーで〇〇円など、客単価や回転数の違う時間帯ごとに算出してから合算します。
その計算式も根拠として記載しましょう。
創業融資を受ける際に注意したい創業計画書の書き方のポイント
日本政策金融公庫の創業融資を受ける際には、創業計画書を作成し、提出する必要があります。
内容はほかの事業計画書と変わりませんが、融資を受けるための審査書類であるため、より慎重に進めてください。
飲食店が創業融資を受ける際に必要となる創業計画書の書き方のポイントを解説します。
融資開始までにかかる期間を前提に準備する
金融機関の事業用資金の融資は、申し込みからすぐに実施されるものではありません。
そのため、融資を受けて飲食店開業の準備をする予定の場合には、融資が実施されるまでにかかる期間を踏まえて準備の計画を立てる必要があります。
一般的には、事業計画書を提出してから融資実行までは、平均1カ月程度かかります。
もちろん、事業計画書を作成するためにも時間がかかり、融資実行後にも内装工事などで時間が必要です。
そのため、飲食店開業に融資を利用する場合には、開店の3カ月前ほどから行動を開始しておく必要があります。
創業融資用のテンプレートを使う
日本政策金融公庫で創業融資を受ける際には、創業融資用の創業計画書のテンプレートを利用できます。
日本政策金融公庫のホームページから簡単にダウンロードできるため、活用してみてください。
日本政策金融公庫の事業のうち、国民生活事業が管轄となるため、そのページ内に必要書類がそろっています。
記入例なども参考にして、効率良く進めていきます。
お店の強みを明確にする
飲食店の創業計画書で重視したいのは、お店の強みやコンセプトです。
飲食店の創業融資では強みやコンセプトが伝わらないと融資が受けられない傾向があります。
自分のやりたいお店のイメージや提供する料理のイメージなどを掘り下げてオリジナリティを出し、その上で採算が取れるとアピールします。
わかりやすく簡潔にまとめる
創業計画書はできるだけわかりやすくシンプルにまとめます。相手に熱意を伝えつつも、無駄な表現は省き、意図が伝わりやすくすることが大切です。
必要な資金の説明でも、価値が明確にわかるものから記載していくと、相手に伝わりやすくなります。
実現性のある数字を使う
創業計画書に金額や期間などを記載する際には、実現性のある数字を使ってください。実現性のない数字をもとにした計画は信憑性がありません。
ただでさえ、開業前に作成する創業計画書はその通りに進まないことも多いものです。
そのため、事前にデータを収集し、根拠に基づく数字を用い、少しでも信頼できる計画書にする必要があります。
飲食店の利益率の出し方
飲食店の利益率は、以下の計算方法で算出できます。
営業利益=売上高ー材料費ー経費
利益率(%)=営業利益÷売上高×100
飲食店の利益率の目安は、営業利益で10~15%を目標にするといわれています。自店の利益率の予測を立てることで、順調に経営していけるのか目安がわかるでしょう。
また、創業計画書に記載した売上予測や事業の見通しの数字が適切かどうかも確認できます。
代行会社に依頼も可能
事業計画書の作成は、代行会社に依頼することも可能です。
自分だけでは難しくて作成できない場合には、無理せず専門家のサポートを得ることも必要です。
代行会社に依頼する場合には原則有料ですが、創業手帳では無料相談を受けられます。
飲食店の開業に必要な手続きとスケジュール
最後に、飲食店を開業するために必要な手続きとスケジュールを確認しておきましょう。
飲食店の開業では、事業計画書の作成や融資手続き以外にもやっておかなければいけない手続きがあります。
期限が決まっているものもあるため、融資の申し込みと並行して計画的に進めてください。
飲食店の開業に必要な資格を取る
飲食店の開業に必要となる資格は、防火管理者と食品衛生責任者の資格です。防火管理者は収容人数30人以上の店舗で必要です。
防火管理者の取得には講習会に参加する必要があります。食品衛生責任者の資格は、都道府県開催の講習もしくは指定の養成所で単位を取得するともらえます。
これらはどちらも1~2日の講習のため、それほど時間の負担もなく取得できるでしょう。
飲食店の開業で必要な届け出や許可を取る
飲食店開業では、いくつかの届け出や許可の取得手続きも必要です。種類によっては届け出の時期が決まっているものもあります。
必要となるのは以下の届け出です。
-
- 食品営業許可申請(店舗完成の10日ほど前まで)
- 防火管理者選任届(営業開始まで)
- 防火対象設備使用開始届(使用開始の7日前まで)
- 火を使用する設備等の設置届(設備設置前まで)
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書(営業開始の10日前まで)
このうち、全店舗が対象となるのは、食品営業許可申請のみです。ほかのものは該当する店のみ申請を行います。
また、このほかにも飲食店に限らず、開業や雇用などについての届け出があります。
まとめ
飲食店を開業する際には、事業計画書の作成が必要です。
外部へ提出して利用するのは融資の際のみですが、作成すると事業内容を客観的に見ることができ、より安全な経営ができるようになります。
融資を受けやすくするためには、事業計画書で飲食店への熱意と計画性、実現可能性を伝えることが大切です。
作成にあたっては書き方のポイントを押さえて、シンプルにわかりやすくまとめましょう。
(編集:創業手帳編集部)