業務を改善したら助成金がもらえる!?生産性向上を支援する「業務改善助成金」
社会保険労務士が詳細を解説します
(2018/12/10更新)
2018年10月1日より、都道府県別の最低賃金が引き上げられました。働き方改革の実現に向けて、労働者の雇用待遇の改善が急速に進んでいます。そんな中、中小企業や小規模事業者の独自の最低賃金引き上げの支援のために、生産性向上に役立つ設備投資やサービス利用にかかった経費の一部を助成する「業務改善助成金」が実施されています。
事業場内で最も低い賃金が1,000円未満の中小企業・小規模事業者が対象となるこの助成金。申請ができるのは、今年度は2019年1月31日までです。締切りを目前に、この「業務改善助成金」の概要や詳しい要件・申請する際の注意点について、社会保険労務士の黒田英雄さんにお話を伺いました。
「業務改善助成金」とは
生産性向上という言葉はよく耳にしますが、なかなかその意味まではイメージしづらい方が多いかもしれません。簡単に言うと、限られた時間の中で得られる成果を上げていくということです。「成果を上げる」というのは、企業であれば「利益を上げる」と近い意味になるでしょう。
成果を上げるためには、これまで人の手でおこなっていたものを機械化するのも手段のひとつです。また、IT技術の進歩で便利なソフトやアプリがたくさん出てきていますので、それらを利用することも効果的です。成果に対する従業員の意識や働く意欲を向上させる、研修やコンサルティングなども有効な方法ですね。
このようにさまざまなやり方で生産性を向上させ、その分を従業員の最低賃金の引き上げに反映させることで、待遇の改善につながります。そのような生産性向上のためにおこなった設備投資などの費用を助成するのが、「業務改善助成金」なのです。
設備投資にはどういったものがあるの?
先ほど「設備投資」という言葉が出てきましたが、具体的にどのようなものなのでしょうか?
厚生労働省の特設サイトには、設備投資の導入例として下記のようなものが挙げられています。
- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
- 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上
- 人材育成・教育訓練による業務の効率化
ここで注意が必要なのは、単なる経費削減を目的におこなったものは対象にならない、ということです。
例えば、事業場内の照明をLED電球に交換した費用などは、生産性の向上にはつながっていないので助成されません。また、事前に申請して交付決定通知を受けることとなっており、それ以前におこなった設備投資については助成の対象になりません。
ちなみにここでいう専門家とは、社会保険労務士、中小企業診断士、ファイナンシャル・プランニング技能士(1級又は2級)などの国家資格を有する者とされています。
助成される額はどれくらい?
業務改善助成金には、事業場内最低賃金引き上げ額に応じて「30円引き上げコース」と「40円引き上げコース」の2種類があります。
30円以上引き上げコースは、事業場内最低賃金が1,000円未満の事業場はすべて対象になりますが、40円引き上げコースでは800円以上という下限が設けられています。都道府県別最低賃金が700円台の都道府県の事業場では注意が必要です。
設備投資にかかった経費の額の7/10(常時使用の従業員が全体で30人以下なら3/4)が助成されます。経費はいったん支払う必要があること、従業員の最低賃金を引き上げるために人件費が上がることなどを考慮しましょう。
また、経費区分ごとに上限が定められているものもありますので、事業場のある都道府県の労働局か、社会保険労務士まで事前にお問い合わせすることをおすすめいたします。
申請をするにはどうすればいいの?
業務改善助成金を申請するには、事業改善計画と賃金引き上げ計画を記載した交付申請書を都道府県労働局に提出する必要があります。申請の様式や記載例は厚生労働省のホームページにファイルがありますので、ダウンロードしてお使いください。
都道府県労働局で申請内容について審査をおこない、適正なものと認められれば交付決定通知が届きます。その後に、設備投資と最低賃金の引き上げを実施してください。計画の実施結果を報告書として提出すると、またさらに審査がおこなわれます。内容が適正と認められれば、そこで助成金の額が決定します。
最後に支払請求書を提出すると、晴れて助成金が支給されることになります。一連の書類の作成や申請代行は社会保険労務士がおこなうことが認められていますので、これから設備投資をお考えの方は相談してみるといいでしょう。
まとめ
生産性向上を支援する「業務改善助成金」について解説いたしました。
助成金の財源は、企業が毎年納めている労働保険の中の雇用保険の保険料です。活用できるものはしっかり活用して、より良い職場環境を作っていくためにお役立ていただければと思います。
助成金は他にもたくさん種類がありますので、厚生労働省のホームページでチェックするか、お近くの社会保険労務士までお問い合わせください。
(監修:社労士オフィスこころこ 社会保険労務士 NPO法人 労働者を守る会 黒田英雄 )
(編集:創業手帳編集部)