ベンチャーキャピタルの仕組みを分かりやすく解説
急成長をサポートするパートナー
(2018/05/11更新)
起業について考える人なら、「ベンチャーキャピタル」という言葉を一度は耳にしたことがあるでしょう。ベンチャーキャピタルは起業をサポートしてくれる仕組みのひとつではありますが、接点を持つことがなかなか難しかったり、言葉だけではピンとこなかったりする存在かもしれません。
今回は、そもそもベンチャーキャピタルとは何か、起業する人とベンチャーキャピタルとの双方にどのようなメリットがあるものなのか、といったベンチャーキャピタルの基本をおさらいします。
この記事の目次
ベンチャーキャピタルの仕組み
ベンチャーキャピタルとは、まだ株式上場などには至っていないが、大きな成長が見込める企業を対象に投資する会社のことです。「VC」と略されることもあります。
創業から日の浅い企業は、上場企業などに比べると失敗や破綻のリスクは格段に高いでしょう。しばしば「創業から10年後の生存率は1割未満」などと言われるように、成功する企業はごく一握りなのが現状です。しかし一方で、まったく無名のスタートでも、ひとたび軌道に乗れば急速に大きく成長する可能性を秘めているのも新しい企業の特長です。
ベンチャーキャピタルは、そうした新しい企業のリスクをふまえつつ、大きな成長とそれによる大きな利益を狙って投資するのです。
ベンチャーキャピタルは、資金と引き換えに株式(その時点では未上場株)などを受け取りますが、投資先の企業が株式上場にこぎつければ市場での売買が可能になり、保有株を売却して投資を回収することができます。また、投資先の企業が他の企業に買収される(M&A)場合なども、ベンチャーキャピタルにとっては投資回収の機会になります。
ベンチャーキャピタルと銀行の違い
とはいえ、起業する方が資金調達を考える場合に、まず思い浮かぶのは「銀行などから融資を受ける」ことかもしれません。もちろんベンチャーキャピタルも、銀行同様に有力な資金調達先ですが、両者には大きな違いがあります。
返済が必要な「負債」と不要な「資本」
まず、銀行などからの融資は言うまでもなく「借金」です。したがって、借りた資金は約束したスケジュールに従って返済しなくてはなりません。融資された資金は会計上、「負債」に計上されます。また、創業間もない企業では信用がなくて、そもそも融資を受けられない場合も少なくありません。
一方、ベンチャーキャピタルから株式と引き換えに調達する資金は「出資」です。「出資」ですから借金と異なり、返済する必要がありません。会計上は「資本」になります。また、言うまでもなくベンチャーキャピタルも出資にあたっては非常に厳しく審査をしていますが、銀行融資とは違う独自の視点や尺度で企業や起業家を評価、判断している場合もあります。
地道な事業展開を考えるか、大きな成長を狙うか
「株式上場なんて夢にも思ってない」「自分たちが食べていければ良い…」というような消極的な事業展開を考えているようでは、大きな利益を見込んで投資をするベンチャーキャピタルの出資対象にはなれません。また、銀行融資のほうが、設備資金や運転資金などの資金需要に合わせて少額から柔軟に対応してもらえるという面もあります。
ベンチャーキャピタルから投資を受けるメリット
返済が不要
ベンチャーキャピタルから投資を受ける一番のメリットは前述の通り、それが借金ではなく、返済を必要としない資金であることです。
あなたの企業が成功すれば、あなた自身とベンチャーキャピタル双方が大きな利益を得られますが、万一あなたの企業が倒産などで破綻しても、ベンチャーキャピタルの手元にある株が紙切れになるだけです。
経営的なサポートが受けられる
とはいえ、ベンチャーキャピタルにとって投資先の企業に成長・成功してもらいたいのは言うまでもないことですので、投資先企業に対して資金だけではないさまざまなサポートを用意している場合があります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 起業家向けのシェアオフィスの設置
- 起業家や投資家が集まるイベントの開催
- 顧客や事業提携先の紹介
- 投資家(企業)などとの連携
また、投資先企業に役員などとして人材を送り込んで経営の支援に取り組むベンチャーキャピタルも少なくありません。アイデアや技術はあるけれど、経営の経験が少ないメンバーで起業した場合などには特に有効なサポートになる場合があります。その一方で、この点は創業メンバーにとっては「自由でなくなる」と感じられる場合もあるので一長一短です。
対外的な信用につながる
そのほか、ベンチャーキャピタルの出資を受けたことが会社の信用補完になって、他のベンチャーキャピタルや投資家、金融機関からの資金調達にはずみがつく可能性もあります。
ベンチャーキャピタルが出資をすることのメリット
投資先の成長で、投資額を上回る利益を得られる
一方のベンチャーキャピタルにとっては、投資先の企業が大きく成長して株式上場などにこぎつければ、株式を売却するなどして数倍、数十倍、場合によっては数百倍にも及ぶ大きな利益を手にすることができます。
例えば、Facebookは2004年に設立し2012年に株式を公開しましたが、設立間もない時期に1200万ドル程度を投資したベンチャーキャピタルが保有するFacebook株の価値は株式公開時には約90億ドルに達したと言われています(ウォールストリートジャーナルによる)。つまり、わずか8年で700倍以上もの利益を生んだことになります。
もちろん、投資先企業が破綻するなど、うまくいかなければ損失も発生しますが、投資先企業が株式上場や他の企業への売却などに成功すれば大きな利益が生じる、まさにハイリスク・ハイリターンな投資です。
また、ベンチャーキャピタルが企業や個人投資家から募った資金で運用している場合、その資金を預ける企業や個人投資家は、ベンチャーキャピタルの活動を通して新しい可能性を秘めた企業や事業を発掘することを期待している場合もあります。
特に、企業が母体となって設立されたベンチャーキャピタルの場合は、母体企業の事業と相乗効果を生みそうな分野に狙いを絞って投資対象とすることもあります。(なお、投資家から預かった資金の管理報酬もベンチャーキャピタルの収入源のひとつです。)
いずれにしても、起業家とベンチャーキャピタルは、事業の大きな成長を追求するという目標が共通しています。起業家とベンチャーキャピタルがよいパートナーシップを持てれば、事業や企業を大きく成長させることができるでしょう。
ベンチャーキャピタルと知り合う方法
では、ベンチャーキャピタルの出資を受けたい場合にどうすればよいでしょうか?
近所の商店街のような身近なところにベンチャーキャピタルがあるケースは少ないと思いますので、まずはベンチャーキャピタルと知り合うところから始める必要がありそうです。
現在、日本には100を軽く超える多数のベンチャーキャピタルがあります。所在地としては首都圏や関西圏などの大都市圏が目立つのも事実ですが、例えば「信金キャピタル」は全国の信用金庫が窓口となっていますし、地方銀行とつながるベンチャーキャピタルなど、全国各地を拠点とするベンチャーキャピタルも少なくありません。(主要なベンチャーキャピタルのリストはこちらにも掲載しています。)
では、具体的にどのようにアプローチすれば良いのでしょうか?
直接連絡する
ウェブサイトなどで連絡先を確認して、直接連絡してみるというのが最も直接的な方法です。ただし、ベンチャーキャピタルには起業家から膨大な数のさまざまなアプローチがありますので、その中からピックアップされて反応が返ってくる確率は高くないのが実情です。
中には「面談会」的な場を定期的に設けているベンチャーキャピタルもあります。時間は限られますが比較的参加しやすく、まずは話を聞いてもらう良い機会になります。
人に紹介してもらう
友人、知人、親戚などのほか、仕事関係や出身学校の仲間などの中にベンチャーキャピタルと縁のある人がいるかもしれませんし、会計士、税理士などもつながりがある可能性があります。そのほか、地域の法人会、商工会議所、場合によってはすでにベンチャーキャピタルから出資を受けている経営者など、さまざまなチャンネルの人のつながりをたぐり寄せるのも、ベンチャーキャピタルと知り合う方法のひとつです。
イベントやコンテストに参加する。
最近では、起業支援のためのイベントやコンテストが多数開催され、起業家とベンチャーキャピタルや投資家の出会いの機会になっています。起業する方にとっては投資家と出会う機会になるとともに、他の起業家と出会う機会にもなります。
中でも「ピッチコンテスト」と言われるものは、起業家がそれぞれの製品やサービス、事業計画など(ピッチ)をプレゼンテーションして競うものですが、たとえコンテストで受賞できなくても、投資家の目にとまって結果的に資金を調達につながる場合もあります。
こうしたイベント、コンテストなどは、ベンチャーキャピタルはもとより、企業、大学、金融機関、地方自治体など、さまざまな組織が主催していますので、広い視野で情報収集することが大切です。
「創業ステーション」「起業スクエア」「新事業支援室」など名称はさまざまですが、地元の地方自治体などが設置している起業支援のための窓口も活用しましょう。
創業手帳webでも随時最新情報を掲載しています。詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
資金調達というと、どうしてもお金の話ばかりになりがちですが、ベンチャーキャピタルといえども運営しているのは「人」です。人と人のつながりも大切にして、ベンチャーキャピタルとよいパートナーシップを築きましょう。
(編集:創業手帳編集部)