テラモーターズ 徳重 徹|「スケールする起業家になるために必要なこと」

※このインタビュー内容は2018年02月に行われた取材時点のものです。

世界に挑戦する起業家、起業志望者になるために

(2018/02/14更新)

日本発、世界展開中のベンチャー企業の中で、現在注目を集めているのが、テラモーターズ・テラドローンの徳重 徹氏。日本だけでなく、インドやバングラデシュといった世界各国で電動二輪やドローン事業に挑戦しています。

前回取材記事はこちら→テラモーターズ社長・徳重氏が指南する「アジア進出への道」

今回は、その徳重氏に起業家・経営者に求められる要素・経験についてお話を伺いました。また、経営幹部候補も募集中ということで、これから経営を学びたい方にとっても注目の内容です。

徳重 徹(とくしげ・とおる)
九州大学工学部卒業後、住友海上火災保険株式会社(当時)にて商品企画・経営企画等に従事。退社後、米サンダーバード国際経営大学院にてMBAを取得、シリコンバレーに渡り、コア技術ベンチャーの投資・ハンズオン支援を行う。事業の立ち上げや企業再生の分野で実績を残し、2010年に帰国。二輪・三輪車・シニアカーなどの製造・販売を行うテラモーターズ株式会社を設立。2016年には、テラドローン株式会社を設立。代表取締役社長に就任。

どれだけ失敗したかが成長のカギ

ーストレートな質問ですが、起業家にとって最も必要な能力は何だと思いますか?

徳重まずは「こういう事業をやりたい」という強い信念ですね。会社を経営することは本当に大変です。だから、リスクを背負って起業する人は素晴らしいと思います。

起業や会社の経営では色々な事が起こりますし、易きに流されてしまう傾向もあります。そんな中でもいかに無茶ができるか、いかに社会にインパクトを残せるかということが大事だと思います。「メンタルがやられる」というのが、失敗する理由となっている場合もあります。

また、継続していく力を持つことも重要です。継続していくことでノウハウが蓄積され、噛み合っていない部分が改善されていきます。自ずと結果につながっていくというケースもあると思います。

そして、「選んだ道が好きかどうか?」ということも、大きなポイントになるでしょう。

ー確かに、信念は会社のビジョンともなるので、重要ですよね。

徳重:そうですね。

起業家には2つのタイプがいます。自分でやることにこだわりを持つ人と、チームを組むことで自分の目標を達成しようとする人です。「やりたいことを実現するためにどのような手段を取るか」の違いだけなので、どちらが良い悪いではありません。人としてのタイプの問題です。

例えば、最近勉強になったのは、ユーグレナのCFO 永田暁彦さんです。

永田さんは一人でも仕事をこなせる方ですが、ユーグレナの代表取締役社長である出雲さんのもとで活躍されています。出雲さんを応援したほうがより事業を拡大できる、ということですね。お互い、自分にはないビジョンがあり、そしてキャラクターが違います。出雲さん、永田さんはコンビを組む良い例です。

起業家もそういう志を共にでき、信頼できる相棒、パートナーを探してほしいと思います。今、テラでは無茶な挑戦、マルチプルな挑戦を続けてるので、※CxOタイプの人材があと5人は必要です。特に、ベンチャー企業の経営経験者で、「自分でもやってみたけど、もっとでかいことを世界市場でやりたい!」という人は熱烈募集です。

※CxO:「Chief=組織の責任者」+「x=業務・機能」+「Officer=執行役」からなる経営用語で、企業活動における業務や機能の責任者の総称。CEO(最高経営責任者/Chief Exective Officer)、CFO(Chief Financial Officer/最高執行責任者)など。

ーでは、起業に大切なスキルはどのように身につけていったら良いでしょうか?

徳重最良の勉強法は現場での実戦です。私も学生時代にMBAを取りましたが、「事業立ち上げ」という現場は違いました。

例えば、「3C分析」という考え方があります。「顧客(Customer)」、「競合(Competitor)」、「自社(Company)」の頭文字をとったもので、ビジネスを行う際の市場の関係性を理解するためによく使われるフレームワークです。

考え方としてはすごく良いものですが、実際はそこまで単純なものではありません。「自分たちが狙っているところには、本当に市場があるのか?」、「顧客価値があるのか?」、「どうやったら競合に勝てるか?」。きれいに割り切れない世界の中で、今起こっている事実を元に徹底的に考えなければいけません。その緊張感はやはり別物ですね。

起業家や、これから起業を志している方は、机上の勉強をするより、スケールの大きな事業をしている方の下で働いてみると良いと思います。経営者に身近に接することができる環境が理想でしょう。

ー状況は日々変化していくから、机上の理論を持っているだけでは追いつかなくなりそうですね。

徳重:その通りです。今お話ししたことと併せて、もう一つ大事なのは、失敗することです。私も起業してから様々な失敗をしてきましたが、そのおかげで今があると思います。

起業したい、という方と話すと、やりたい事がふわふわしている人が多いです。そういう人は、本当に売れるかどうかというのを身を削って挑戦して欲しいなと思います。

自分の体験を元に話しますと、ある時期に2億円の費用をかけて、2年で500台ぐらいしか売れなかったことがありました。大失敗です。ものすごい精神的ダメージを受けた記憶があります。

サラリーマンの方でも、使命感や責任感を持って仕事をしている人も多くいらっしゃいます。ですが、人生やら全財産やら何もかもを賭けて、リスクを負っている起業家とは、ダメージの質が違います。「本当に売れるかどうか」といった身を切るようなシビアさは、起業家として成長するために必要な経験じゃないかな、とは思いますね。

ですが、日本の大企業でそういう機会はなかなかありません。そういう時はベンチャー企業に飛び込んでみると、チャンスが転がっています。特に、スケールが大きい課題に挑戦しているような会社が、起業の練習としては良いと思います。

何よりも大きな「人脈」が広がる環境

テラドローンHPより引用

ーテラモーターズ・テラドローンで働くことによって、どのような経験を得ることができますか?

徳重:弊社は世界を相手にビジネスを行なっており、且つ、一気にマルチプルにアクセルをかけるので、仕事の振り方も無茶振りです。自分のレベルより2段階くらい上の仕事がくるイメージですね。
なので、仕事を任せたら、だいたい失敗します。ですが、これが重要です。そういった間違いを許容して、次もトライできる環境を作っています。

シビアな覚悟や判断、戦略、実行力が問われますが、経営者特有の意思決定の基準は、実際の経営をしないと身に付けることが難しいです。
自分もまだまだですが、起業家は事業の本質を突いた質問ができる質問力や、幅広く考えられる発想力などを持っています。こういった意思決定、判断の方法は、経営者の横にいると学ぶことができます。

現在も私の壁打ちになれるような経営企画人材を探していますが、コンサルでやりきった若手で事業のリアルを経験してみたいという人にはいい機会だと思います。

意思決定をしていくスピード感や、考え方を学べるのは、起業を目指す若い人にとって、経営者に近いところで働くメリットの一つです。

そして、弊社は上場が見えている企業なので、※ストックオプションがリアルに価値を持ってきます。しかも、私が日米・アジアのベンチャー業界で20年経験しているので、トップレベルの人脈を紹介することができます。

1、2年くらいの勤務だとさすがに困っちゃいますが(笑)、例えば5年くらい弊社で頑張って実力をつけることができたら、「人脈」という財産も得ることができます。

修羅場を乗り越えてきた実力、ストックオプションで得るお金、そして人脈。これらの財産を持つことができたら、社会人として、起業家として大きな武器になるでしょう。

※ストックオプション:会社が従業員や取締役に対して、会社の株式を予め定めた価額(権利行使価額)で将来取得する権利を付与するインセンティブ制度。

ーちなみに、テラモーターズ・テラドローンは海外に事業展開されていますが、海外で事業をする上で実践していることはありますか?

徳重海外の事業運営で実践しているのは、「海外でのプロジェクトを、その国にある拠点に運営を任せている」ということです。

※B/S考慮の経営はレベルが高いですが、最低でも※P/Lに責任を持つ必要があります。P/Lで結果にこだわってやっていれば、自ずと経営感覚が身につきます。これから起業する方には、とてもいい経験になると思いますよ。

※B/S:貸借対照表。一定時点での財政状態を表す財務諸表。
※P/L:損益計算書。一定期間の会社の成績を表している。

ーちなみに、今後はどのように事業を展開されていく予定ですか?

徳重:ドローン事業に関して言うと、現在は日本とオーストラリアに展開しており、今後はアジア2カ国で追加展開していくことを決めています。加えて、しっかり事業が成り立つかどうか検証ができたら、アジアと欧米を含んだ5カ国ほどに一気に展開しようと考えています。

ーこれから大きく事業が動き出すんですね。

徳重:そうですね。なので、非常にエキサイティングな事業ができるかな、と思います。

自分は起業前後にシリコンバレーにいたんですが、そこでは「Change The World」という言葉が当たり前のものとしてありました。シリコンバレーの人たちは、本気で世界を変えることに挑戦しています。

私たちも「Change The World」を実行することを本気で考えて、日々活動している若手事業家集団です。

日本のベンチャー企業の中で、できているところは本当に少ないですが、世界を変える現場に立ち会うことができるかもしれない、というのは面白いですよ。

徹底的に調べて、60%くらいの自信を持って行動する

ーでは最後に、起業家を目指している人に向けて、メッセージをお願いします。

徳重:起業をこれからやりたいという人には、どんどんトライして欲しいです。今の若い人は勉強していますし、「イケている人は起業する」という風潮もあると思います。

トライする際は、意思決定の中で60%くらいOKだったら実行して良いと思います。
「100%いける!」というところまで待っていたら、もう世の中に出回っています。始める前から既に失敗しているとも言えます。完成されている市場に挑むことは、なかなか難しいです。だから、まだ可能性が固まらないうちに果敢にトライして欲しいと思います。

テラモーターズ・テラドローンでは、「世界に挑戦するサービスで会社運営をすることで、経営者武者修行をしたい!」という人も大歓迎なので、ぜひご連絡ください。
いま、まさに指数関数的に伸びる事業を一気に拡大するタイミングなので、非常にエキサイティングだと思いますよ。

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(取材協力:テラモーターズ株式会社 テラドローン株式会社代表取締役社長 徳重徹)
(編集:創業手帳編集部)



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