決算期を決めるときは◯◯を考慮|失敗しない決算月の決め方
会社の決算期を決めるときに注意するポイント
(2017/11/29更新)
会社を作ろうとすると、考えなくてはいけないこと、決めなくてはいけないことがたくさんありますが、「決算期」もそのひとつ。
起業前に会社勤めをしていた人もあらためて考えると「そういえば、あの会社の決算はどうして〇月だったの?」と思う方もいるのではないでしょうか。
この記事では会社の決算期を決める時に考えておきたいポイントをまとめました。
この記事の目次
決算期にまつわる基礎知識
決算期とは?
企業や事業の会計期間の収支や損益を整理して確定させることを「決算」と言います。
決算は、法人税や個人事業税などの確定申告・納税を行うための資料となる重要な業務です。また、決算時に貸借対照表や損益計算書などのいわゆる財務諸表を作成することで、企業・事業の状態を確認したり、金融機関や投資家など社外からの評価材料にもなります。
決算期とは、その決算を行う時期のことで、会計期間の期末(期間の終わる日)を指します。
1年に1回が基本ですが、上場企業や特定の条件に該当する非上場企業などには四半期決算(3か月毎)、中間決算(6か月毎)が義務付けられる場合があります。
個人事業主の会計期間は暦年(1月~12月)と決められていますので、12月31日が決算期にあたり、確定申告は3月15日が期日になります。
法人の場合は自由に事業年度を設定でき、法人税等、消費税などの確定申告・納税期日は事業年度終了(=決算期)の翌日から2か月とされています。つまり「決算期を決める」のは「会社の事業年度の区切りを決める」ことでもあります。
なお、設立の初年度は、事業年度の決め方次第で必ずしも丸1年間とはなりません。また、1年を超す長い事業年度を設定することはできません。(事業年度を変更するために調整する場合を除く)
ちなみに、決算期は月末日以外に設定することもできます。
企業が決算セールを行う理由
町中でもっとも決算の文字を見かけるのは、小売店の「決算セール」かもしれません。
企業が行う決算セールには、大きく以下3つの目的があります。
- 販促目的
- 手元のキャッシュを増やすため
- 会計上の売上原価を増やすため
1については言わずもがな、セールは小売店などの販促の定番ですよね。
2に関しては、法人税等の支払いが大きく関わってきます。決算期の2か月後が納税期限というのは前述の通りですが、この時に納税するお金が会社にないと大問題です。そこで、在庫を少しでも現金に換えておくために決算セールを行うのです。
そして、3の「会計上の売上原価を増やす」と何が起こるかというと、法人税の税額自体が下がるのです。
まず、在庫商品は会計上の資産にあたり、売れるまで費用(売上原価)になりません。
会計上、売上原価は以下のような形で計算されます。
売上原価=期首在庫+当期仕入高―期末在庫
要するに、期末の在庫が多ければ多いほど、売上原価が少なくなる。→計算上、利益が大きくなる。→税額が増える。
という関係になります。
「在庫は罪庫」などと言われることもありますが、決算をまたいで必要以上の在庫を持つことはとりわけデメリットが大きいので、これを避けたい思惑も決算セールの背景にあるのです。
会社の決算月に3月や12月が多い理由
会社の決算というと、「3月決算や、12月決算の会社が多いような気がする」と思われる方もあるかもしれません。
実際、上場企業など有力企業で3月決算としている企業が多いために目立っている面もあります。
なぜ日本企業に3月決算が多いのかというと、日本の官公庁が4月~3月を年度としていること(税制など制度変更も4月からとなる場合が多い)、学校も3月に卒業するので4月が人事面でも区切りにしやすいことなど、伝統的、慣習的に3月末が区切りになってきたという部分が大きいようです。
12月決算については欧米諸国で12月決算が一般的なことから、グローバルな事業展開を行う企業などで採用する例が増えているとみられます。
個人事業主が法人化する際に従来の暦年決算を踏襲するケースもあります。
国税庁の報告によると3月決算の企業は全体の約20%弱で、月別に見ると最多ではありますが圧倒的多数というわけでもありません。2番目に多いのは9月、次いで12月、以下各月に散らばっている現状です。
なかには業種によって慣習的に多くの企業が同じ決算期を採用していたり、主要取引先や関係企業と決算期を合わせるケースもあります。
決算期を決めるときの判断材料はコレ!
では、自分の会社の決算期を決める時、何を考えて判断すればよいでしょうか。
結論から言うと、いつでも大丈夫なのですが、業種などによって若干のメリット・デメリットもあります。もし悩んでいる方がいれば、以下の3点を参考にしてください。
1. 決算期は「消費税の免税期間」を考慮
企業が支払う「消費税」は、前々事業年度の課税売上高を基準として納税義務の有無を判断する仕組みになっています。
しかし、新規に設立した企業には「前々事業年度がない」(まだ設立されていない)ため、設立後2年度目までは消費税の納税義務が免除(免税事業者)されることになります。(課税事業者となる届出をした場合など例外あり)
この免税期間を最大限に確保するには、1期目の決算期を設立日からめいっぱい1年後に(またはなるべく長く)することです。
(なお、課税売上高が1,000万円を超えないままで条件を満たせば、3期目以降も免税事業者になります。)
2. 決算期は税金の支払い見据え、キャッシュが潤沢にあるとき
決算日から2か月後の月末が法人税等の納税期日になるため、手元にキャッシュが潤沢にある時期を決算期としておくと資金繰りの不安を抑えることができます。
例えば、エステなど美容系の会社は、夏に向けて入会が進み、キャッシュが潤沢になります。それから、旅行系なども季節変動がすごく大きいですよね。
繁忙期の少し後、キャッシュが多くなる時期に合わせて決算期を決めるというのもひとつの手です。
法人税等以外にも、資金繰りを考えるタイミングがあります。
源泉所得税の納期の特例制度の適用を受ける場合、企業の事業年度にかかわらず7月10日と翌年1月20日が源泉徴収した所得税等の納期限と決められています。また、賞与の支給、店舗等の不動産やフランチャイズ等の契約更新費など時期を動かしにくいまとまった支出などもあります。
決算期を決めるときは、このように、キャッシュフローに合わせて検討しなければなりません。
なお、多くの金融機関が納税のための資金を積み立てる「納税準備預金」(利息が非課税になるなど優遇あり)を扱っていますので、決算を締めてから納税資金不足で慌てないためにも活用を検討しましょう。
3. 業務や専門家が忙しい時期は避けた方がベター
個人や個人事業者の確定申告は暦年で締めて3月15日までと決められていますので、毎年2月から3月頃税務署が混みあうことはご存じの通り。
それと連動して、税理士や会計事務所なども12月から3月にかけて多くの業務が集中して多忙を極めることになります。
これから起業して専門家に依頼するなら、この時期に決算処理が当たらないようにしておくほうが、余裕を持って対応してもらえる可能性が高まります。
会社の経理担当者にとっても決算は神経を使う業務なうえに、日次、月次などの定例業務に上乗せになりますので、通常業務が忙しい時期に決算期を設定すると負担が重くなってしまいます。
例えば、商品の製造や売買を行う事業の場合、決算時に棚卸(在庫品の現物確認、帳簿との照合)を行いますが、物の動きが多い時期に棚卸を行うのは大変で、間違いも起こりやすくなります。
また、忙しい時期は業績が変動しやすい時期でもありますので収支の見通しがぶれやすくなり、予想以上の利益(=予想以上の課税)や想定外の赤字決算転落などのリスクが高まります。
まとめ〜決算期は企業の事情に合わせて決めよう〜
振り出しに戻るようですが、法人の決算期(事業年度)の設定はあくまでも企業が自由に決めることができ、手続きが必要にはなりますが、実際に運営してみて不都合があれば変更も可能です。
いくつかの判断材料をご紹介しましたが、決算期(事業年度)は企業にとって会計だけでなく事業の節目としても意識されるものですので、それぞれの企業の事情を考えて決めましょう。
(編集:創業手帳編集部)