開発合宿が無料でできる!横須賀市長が語る「太っ腹」ベンチャー支援
施設代や宿泊費、昼食代、交通費まで無料!「ITキャンプ」とは?
(2016/03/16更新)
「米軍基地」「海軍カレー」で有名な横須賀市は、ITベンチャーを集めた「ヨコスカバレー構想」を進めています。
その目玉が、開発合宿が無料でできる「ITキャンプ」。市内の施設を無料で使え、宿泊費や昼食代、市内交通費まで無料という太っ腹施策です。
都心から離れた横須賀市で、なぜITベンチャーなのか。そこには、携帯電話の知られざる誕生話があります。吉田市長ご自身から、「ヨコスカバレー構想」の全貌を伺いました。
1975年12月3日生、いて座のA型、干支は卯。1994年、神奈川県立横須賀高等学校を卒業。1999年、早稲田大学政経学部政治学科を卒業。同年、イギリス・ロンドン短期留学(約3カ月)。2002年、アクセンチュア株式会社を退社。2003年、横須賀市議会議員選挙において初当選。2006年、早稲田大学大学院政治研究科(地方自治行政)を卒業。2007年、横須賀市議会議員選挙において再選。2009年、横須賀市長に初当選。第35代横須賀市長となる。2013年、再選。現在、第36代横須賀市長。無所属。
「社会起業家」のような市長
吉田:大学卒業後は、アクセンチュアで地方自治体などのコンサルティングをやっていました。ところが、自分たちが一生懸命働いても物事がなかなか進まないんです。それは政治が動かないからという思いがあって、自分自身が政治の世界に飛び込もうと考えたんです。
吉田:市長は社会起業家と近しいものがあると思います。行政の一番の目的は市民満足度の向上で、日々の業務や新しい政策などがどう市民の役に立つか、自分の中でもとらえ返すことができます。そういう意味では市長は社会起業家で、継続的に提供しているサービスも新しく考えた政策も、それぞれ市民の満足度の向上につながるという意味ではすごくいいですね。
横須賀とITベンチャーの知られざる関係
吉田:「ヨコスカバレー構想」とは、スタートアップ支援や企業誘致を通し、横須賀市をIT企業の集積地にするものです。
横須賀市には「横須賀リサーチパーク(YRP)」があり、NTTなどの大企業や大学の研究施設、ベンチャー企業など60団体以上が入居しています。携帯電話で「FOMA」という通信規格がありますが、あれはここで生まれたんです。
吉田:市の昔からの強みであるIT関連に特化して、10年間で100社の企業集積を目指します。もちろんベンチャー企業もウェルカムです。先述のYRPは通信インフラの企業が多いですが、地区内に立地する企業とのアイデアソンなど、化学反応で上手くビジネスが生まれるような仕掛けもやっています。
また、市の中心街は東京や横浜からそんなに距離がなくて、かつ駅からも近いです。駅から離れると坂や階段の多い地区もありますが、古民家風の空き家がたくさんあって、そこを住居兼オフィスとして開拓できます。
スタートアップコストもそこまでかからないですし、自然の中で、海や山など景色も良く、空気もきれいで、食べ物も美味しい。アプリなどのライトなベンチャー企業にとっては、ワークスタイルだけでなくライフスタイルも充実させることができると思います。
開発合宿が無料でできる!「ITキャンプ」とは
吉田:そう思っていただいていいと思います。そういう意味では、インフラ系・アプリ系両方のITベンチャーにとってメリットのある環境だと思います。
ITベンチャーなどでは開発合宿をすることがあると思いますが、横須賀市で開発合宿をする場合、YRPの施設を最大3日間無料で貸し出します。他にも、合宿中の宿泊費や昼食代、市内を観光される場合はその交通費まで市が負担します。
吉田:まず来てもらって、横須賀の朝獲れの魚とか、旬の野菜とかを食べていただいて、こんなに美味しくて空気もきれいで、海も近くて緑も豊かで。そのような中でバリバリIT開発する、そんなことができる場所なんだということをまず知っていただきたいです。そういうことを知らない人が多すぎるという思いがあるんです。
IT合宿をして、横須賀が働く場所として最高だなと思っていただいて、「じゃあちょっと開発部隊だけでも横須賀に移そうぜ」とか、「その方が生産性上がるな」とか思ってもらうことが一番大事ですね。なので平日に来ていただいて、「横須賀で仕事ができる」という実感を味わってほしいです。
「良い太鼓」のような行政を目指す
吉田:横須賀市はスタートアップ・フレンドリーな街を目指しています。今ヨコスカバレー構想実現委員会という民間主体の委員会が立ち上がって、そこに入ればいろんな情報も入るし、いろんなハッカソンやアイデアソンのイベントもあります。
いきなり移転は難しいでしょうから、まずは「ITキャンプ」を使って来てもらいたいなと思っています。
市役所では、よく「良い太鼓を目指そう」という話をしています。市役所の中からはなかなかイノベーションは起きづらいと思っているので、外側から「うまく強く」たたいてくれれば、「いい響き」をひびかすような、そういう組織体であろうと。
例えば、レンタルスペースを扱う「株式会社スペースマーケット」から提案を受け、猿島という市の無人島をまるまる1島貸すことにしました。スペースマーケットは目玉の貸しスペースを得て、市には収入が入る。ウィン・ウィンの関係ですね。
(取材協力:横須賀市)
(編集:創業手帳編集部)