税理士事務所と税理士法人の違いとは?特徴やメリットなどを解説
税理士事務所と税理士法人で依頼できる内容に違いはあるのか確認してみよう

法人や個人事業主・フリーランスを問わず、税務処理や節税対策に悩む人は少なくありません。
複雑な税務処理をこなすために、本業のリソースが減ってしまう場合もあるでしょう。
そのような時、力になってくれるのが税理士です。税務の専門知識を持つ税理士に相談すれば、適切なアドバイスをもらうこともできます。
税理士に依頼・相談する場合、「税理士事務所」と「税理士法人」のどちらに依頼すべきか迷ってしまう人もいるかもしれません。
この記事では、税理士事務所と税理士法人の違いを比較しながら、それぞれの特徴・メリットを解説します。
また、選ぶ際のポイントや探し方なども紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
税理士事務所と税理士法人の違いを比較

税理士事務所と税理士法人は、どちらも税理士が在籍していることに違いはないものの、組織形態や料金設定など、細かい部分で違いが見られます。
自社に合った税理士に相談するためにも、事務所と法人でどのような違いがあるのか比較してみてください。
| 税理士事務所 | 税理士法人 | |
| 組織形態 | 代表者は個人事業主であり、税理士でなくてはならない | 2名以上の税理士が所属する法人で、代表者が業務を行えなくなったとしても組織運営は可能 |
| 顧客規模 | 個人、ベンチャー・一般企業 | 個人から大手企業まで |
| 料金設定 | 比較的低め | 比較的高め |
| 所属する税理士の数 | 1名以上 | 2名以上 |
| 支店の有無 | 2つ以上の事務所は持てない | 支店を展開することも可能 |
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税理士事務所とは?

ここからは、より詳しく税理士事務所・税理士法人の特徴について紹介していきます。まずは税理士事務所の特徴と主な業務内容から解説します。
税理士事務所の特徴
税理士事務所は、主に税理士が個人事業主として運営する事務所を指します。個人で運営していることもあり、税理士法人に比べると規模が小さいという特徴があります。
事務所によっては代表の税理士がひとりで業務をすべて担っているケースも少なくありません。
規模は小さいものの、地域に根差したサービスを展開しています。また、意思決定までのスピードが速く、クライアントからの依頼に対して素早く対応することも可能です。
主な業務内容
税理士事務所は個人が運営していることもあり、ひとりで様々な業務を担っています。特に以下の業務が中心となります。
-
- 税務代行
- 税務書類の作成
- 税務相談
税務代行は中小企業や納税者の代わりになり、税金の申告をする仕事です。確定申告の代行から国税局から税務調査が入った際の対応なども任せられます。
税務書類は申告時に必要な書類の作成を代行する仕事です。確定申告に加え、年次決算書や青色申告承認申告書など、様々な書類を作成可能です。
さらに、税務関連の相談にも対応しています。節税対策や経費に関する相談にも乗ることが可能です。
上記はいずれも税理士の独占業務となりますが、それ以外に独占業務とは関係なく記帳代行や税務関連のコンサルティング、会計参与なども提供している場合があります。
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税理士法人とは?

次に、税理士法人の特徴と主な業務内容について紹介します。
税理士法人の特徴
税理士法人は、複数の税理士が共同で設立した法人です。
税理士法人に在籍している税理士は、個人的に税理士業務をしたり、ほかの税理士法人と掛け持ちで所属したりすることができません。
また、事務所には社員税理士(法人経営に関与する税理士)を常に配置しなくてはいけなかったり、社員がひとりしかいない状況が6カ月以上続いた場合は法人を解散する必要があったりするといった厳しいルールが設けられています。
税理士法人だと代表者が業務に携われなくなった場合でも、新たに社員税理士を迎え入れることで業務を継続することが可能です。
そのため、組織としての安定性が高く、金融機関からの信用も得やすくなっています。
主な業務内容
税理士法人の主な業務内容は、税理士事務所と同じく税務代行、税務書類の作成、税務相談などです。
税理士事務所と異なる業務内容として、大手の税理士法人になるとM&Aや組織改編のサポートを手がける場合もあります。
M&Aで税理士の専門的な知識が必要となってくるのは、税務面のデューデリジェンスと企業経営への知見を活かした企業価値評価(バリュエーション)があります。
デューデリジェンスは買い手企業が売り手企業の経営状態・財務状況などを調査することで、買い手企業に依頼された場合、売り手企業側に税務リスクがあるか確認することになります。
税理士事務所と税理士法人のメリット・デメリット比較

税理士事務所と税理士法人は業務内容などが似ていますが、それぞれ依頼するメリット・デメリットが異なります。
| メリット | デメリット | |
| 税理士事務所 | ・依頼内容に合わせてきめ細かい対応が可能 ・料金が比較的リーズナブル |
・サポート可能な分野が限られる ・繁忙期に対応が遅れる場合がある |
| 税理士法人 | ・各専門分野のチームが対応してくれる場合もある ・大企業や複雑な税務処理にも対応可能 |
・料金が比較的高め ・個別対応の柔軟さに欠ける場合もある |
税理士事務所のメリット・デメリット
税理士事務所に依頼するメリットとして、個人経営ならではの柔軟さが挙げられます。
少人数での対応となるため、依頼内容や顧客のニーズに合わせてきめ細かい対応も可能です。
また、税理士法人と比べて料金設定がリーズナブルになっているケースが多いのもメリットになります。
税理士事務所のデメリットは、個人や小規模で運営していることもあり、サポートできる分野・範囲が限られてしまう点です。
また、2~3月の確定申告の時期や12~1月の年末調整の時期、3月に決算を迎えた法人の税務申告が集中する4~5月は税理士の繁忙期に該当します。
そのため、ほとんどひとりで業務をこなしている税理士事務所に依頼すると、対応が遅れてしまう場合もあります。
税理士法人のメリット・デメリット
税理士法人に依頼するメリットは、組織で運営していることもあり、各専門分野のチームで対応してくれる場合もある点です。
チームでの対応によって大企業や複雑な税務処理にも対応できるようになります。
一方、デメリットになってしまうのは費用面です。税理士事務所に比べると、法人の料金設定のほうが高くなっているケースもあります。
また、提供するサービスが一律化されている場合も多く、個別対応への柔軟性に欠けてしまう部分もあるかもしれません。
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税理士事務所・税理士法人を選ぶ際の5つのポイント

前述したメリット・デメリットも踏まえつつ、ここで紹介する5つのポイントも押さえながら、自社に適した税理士事務所・税理士法人を選んでみてください。
1.希望の業務を強みにしているか
税理士はそれぞれ専門分野や得意・不得意が異なっています。例えば、相続や資産管理に詳しい税理士もいれば、会社の税務を専門的に扱う税理士もいます。
そのため、税理士事務所・税理士法人を選ぶ際には、自分が希望する業務を強みにしているかチェックしておくことが大切です。
また、事務所または法人のホームページにはこれまでの相談事例・実績などを公開しているところもあります。
希望の業務に対する依頼をどれくらい受けているのかも確認しておいてください。
2.予算に見合った料金設定か
税理士に依頼するとなると、事務所・法人を問わず費用がかかってきます。そのため、予算に見合った料金設定かどうか確認しておくことも大切です。
また、同じ事務所であっても依頼内容や依頼する範囲によって、料金が追加で発生してしまうこともあるかもしれません。
依頼する内容の割に料金が高すぎるとコストの負担は大きくなるし、逆に料金がかなり安いと満足のいくサービスを提供してもらえない可能性もあります。
料金のバランスを見極めるためにも、複数の事務所・法人から見積もりを取り、比較してみるのがおすすめです。
3.税理士との相性は良いか
税理士とは依頼する内容によって、長期的に関係を構築していくことになります。
ただ「料金が安いから」というだけで選んでしまうと、コミュニケーションがうまく取れず信頼関係の構築が難しいと感じてしまう可能性もあります。
そのため、税理士事務所や税理士法人に依頼する際には、対応してくれる税理士との相性も考慮することが大切です。
信頼関係を構築していくには、相談しやすいと感じられ、さらに現状や課題を共有しやすいことが重要となってきます。
例えば文面でのやり取りだけでなく、定期的にミーティングを実施してくれる税理士や、素早く対応してくれる税理士だと、信頼関係も構築しやすいです。
4.レスポンスは早いか
税理士によってレスポンスの早さは異なります。
例えばリアルタイムで気軽に情報共有ができるチャットは使わず、メールやFAXが連絡の主体となるケースだと、レスポンスはどうしても遅くなってしまいます。
また、その税理士が多くの案件を抱えていると、連絡がつかなかったり回答をもらえるまで数日間も時間がかかったりするケースもあるでしょう。
こういったレスポンスの早さは、同じ税理士法人に在籍している人でも違ってくるので注意してください。
5.定期的に面談してもらえるか
税理士に税務代行を依頼する場合、毎月面談に応じてもらうことができ、節税対策や資金繰りなどをアドバイスしてくれる事務所・法人を選ぶのがおすすめです。
ただし、定期的に面談を実施してくれるものの、過去の数字の報告しかしてもらえず、必要な対策についてはアドバイスしてもらえないというケースもあります。
こうした事態も想定し、面談時には自社に必要な情報・アドバイスを積極的にしてくれる事務所・法人かどうか確認してみてください。
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自社に合った税理士事務所・税理士法人の探し方

自社に合った税理士事務所・税理士法人を探すには、どのような方法があるのか把握することも大切です。
最後に、自社に合った税理士事務所・税理士法人の探し方を紹介します。
税理士紹介サービス
税理士紹介サービスとは、登録している税理士の中からニーズにピッタリな税理士を探すことができるサービスです。
自社の住所や業種、収入など必要な情報を入力してサイトに登録すれば、紹介サービスから課題の解決につながる適切な税理士を紹介してもらえます。
基本的に無料で利用でき、また自分で税理士を探す手間も省けます。
ただし、税理士紹介サービスによって質が異なっているので注意が必要です。また、サービスに登録していない税理士は紹介してもらえません。
知り合いからの紹介
知り合いに経営者がいる場合などは、その知り合いから税理士事務所・税理士法人を紹介してもらうという方法もあります。
知人から紹介してもらうことで探す手間がかからず、また一定のスキルを持つ税理士を紹介してもらえる場合が多いため、税理士選びに失敗しにくいです。
デメリットとしては、知り合いからの紹介となるため、例えば紹介してもらった税理士との相性が悪かった場合に断りづらい点が挙げられます。
税理士会・商工会議所からの紹介
税理士会や商工会議所から税理士を紹介してもらうことも可能です。
税理士会は全国各地に拠点を持つ団体で、商工会議所はこれから事業をはじめる人が集う場所です。
紹介を受けるためには、まず税理士会や商工会議所が実施する税務相談を活用します。税理士会や商工会議所から紹介された税理士は信頼度も高く、安心感があります。
なお、無料相談で行われていることがほとんどですが、場合によっては費用もかかってくるので注意してください。
また、一度にたくさんの税理士を紹介してもらえるわけではないことから、同時に複数の見積もりを取り比較するのは難しいです。
金融機関からの紹介
取引きのある金融機関から税理士を紹介してもらえることもあります。
税理士と金融機関はつながりを持っているケースも多く、その地域で活躍している税理士や、信用力が高く実績も豊富な税理士などを紹介してもらえます。
また、金融機関とつながりのある税理士は、資金調達や事業承継、経営コンサルティングなどにも対応している可能性が高いです。
ただし、金融機関からヒアリングを受けて自社に合った税理士を紹介してもらえるわけではないため、必ずしも自社のニーズに合う税理士を紹介してもらえるとはいえません。
また、税理士を紹介してもらう場合、税理士事務所から金融機関に紹介料が支払われるため、税理士からは紹介料も含めた費用で契約となる場合も多いです。
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まとめ・税理士事務所と税理士法人の違いを理解して、自社に適した税理士に相談しよう
今回は税理士事務所と税理士法人の違いについて紹介してきました。税理士事務所と税理士法人には、組織形態や顧客規模、料金設定などの様々な違いが見られます。
それぞれ依頼するメリット・デメリットも異なることから、違いについてきちんと理解することが大切です。
税理士事務所と税理士法人の違いを把握した上で、自社に適した税理士を探し、税務に関する相談をしてみてください。
創業手帳(冊子版)は、創業者・経営者のための税務に関する情報も掲載しています。税理士に依頼すべきかどうか、税理士に依頼する費用相場なども紹介しているので、ぜひお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)






