常連客をファン化するリピーター戦略|個人事業主が売上を安定させる方法

広報手帳

まずは常連客をファンに育てよう


売上を安定させるために集客施策は欠かせません。集客と聞くと、「認知度を高める」、「新規顧客を獲得すること」に注力するようなイメージを持つかもしれません。
しかし、実際にはどうやってリピーターを獲得するかの視点が必要不可欠です。
新規客を獲得するよりも、既存客をリピーターにするほうが発生するコストは安く、利益への効果は大きいといわれています。
個人事業主が安定して売上を伸ばすには、「常連客をファンに育てる仕組み」を考えましょう。

本記事では、個人事業主が売上を安定させるための具体的なリピーター戦略を解説します。

※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください

なぜリピーター戦略が重要なのか?


リピーターとは、商品やサービスを2回以上にわたって利用してくれる顧客です。
誰であっても初めは新規顧客ですが、商品やサービスを通じて価値を理解してもらうことでリピーターに成長します。
ここではなぜリピーター戦略が重要なのか理由を紹介します。

新規顧客獲得よりコストが低い

新規顧客を獲得するには、知ってもらうための広告やプロモーションが必要です。
しかし、リピーターはすでに商品やサービスについて知っているため、それらをを知ってもらうためのコストがかかりません。

新規顧客を生み出すためには、商品やサービスを知ってもらい実際に利用し、来店してもらうことになります。
新規顧客を獲得するためのコストは、すでに利用しているリピーターを増やすよりも圧倒的に高いといわれています。
新規顧客を増やす施策は必要ではあるものの、ある程度顧客を獲得したらリピーター育成に重点を置く方が効率的です。

安定収入のベースになる

リピーターは継続的に購入するため、リピーターが増えれば毎月の売上予測が立てやすくなります。
新規顧客からの売上は商品やサービスによって変動が大きく、予測は困難です。
売上の変動が少ないことは資金繰りの安定にも直結します。
売上変動が大きい場合、急な売上減少で資金が枯渇してキャッシュフローが悪化してしまうリスクがあります。安定収入は経営リスクを軽減するために大切な要素です。

安定した収入があれば利益のめどが立ちやすいので、新しい投資や商品開発にも余裕を持って取り組めます。
企業が将来にわたって成長し続けるためには、安定収入を獲得できる基盤を構築してください。

口コミや紹介を生みやすい

リピーターはすでに商品やサービスへの満足度が高いため、友人や家族に自然に商品の魅力を紹介してくれる可能性が高い顧客です。
人は企業によるプロモーションよりも身近な人の口コミや評価を信じる傾向があります。

口コミは新規顧客にとって信頼性が高いため、広告以上の効果をもたらす可能性があります。
さらに、紹介客は既存顧客と同様に定着率が高く、リピーターにつながりやすい点が特徴です。
顧客が広告塔になって新しい顧客を呼び、さらにその顧客の口コミでリピーターの輪が広がるサイクルができれば理想的です。

ファン化の第一歩は「顧客理解」から


リピーターからファンを獲得できるようになれば、他社との差別化がしやすくなり、安定した売上を確保しやすくなります。
しかし、どのように新規顧客からリピーター、ファンを育てていけばいいのでしょうか。

ファン化の第一歩は、「顧客理解」です。相手を理解しなければ、最適な商品やサービスを提供できません。
顧客を理解するためには、年齢や性別、購買傾向以外にも細かく属性を把握します。顧客属性を把握してから、ニーズを掘り下げて購入動機を分析してください。

想定していたターゲットと実際に利用している人の属性が違うケースも少なくありません。
金銭的余裕がある人や流行に敏感な層向けに開発された商品が、忙しくて時間を作りたい人に人気が出たというケースもあります。
自社の購買層と顧客ニーズを把握できれば、新しい商品やサービスの提案につなげられるでしょう。
顧客の属性やパターンの把握によって自社に求められている付加価値を理解でき、新しいファンを獲得するための戦略も打ち出せます。

リピーターを増やす基本戦略


リピーターを増やすためには、様々な方法があります。ここからはどのような戦略があるのか、基本的なものを紹介します。

サービス体験を磨き「期待以上」を提供する

顧客に「もう一度利用したい」と思ってもらうには、顧客が期待する水準を超え、印象に残る体験を提供してください。

必ずしも特別な体験だけがリピーターを増やすわけではありません。接客の丁寧さや商品提供のスピードは、リピートする意向を左右する重要な要素です。
細部にこだわったサービス改善が、顧客満足度を高める近道となります。

コミュニケーションでつながりを保つ

来店している時やサービス利用中だけが顧客とのコミュニケーションではありません。LINE公式アカウントやメールを活用することで、来店後も接点を持ち続けられます。

メルマガやダイレクトメールのような定期的な情報発信は顧客に存在を思い出させ、再来店のきっかけを作るために効果的です。
一方的な告知でなく双方向のやり取りを意識することで、関係性が強化されます。

特典や仕組みで再来店を促す

ポイントカードや会員制度は「また行こう」と思わせる強い動機になります。人はいずれ行こうと思っていても、なかなかタイミングがわからないものです。
期間限定クーポンやキャンペーンの施策は、来店のタイミングを誘導できます。

リピーターになる特別感を提供するなら、ノベルティやリピーター専用特典を設ける方法も有効です。
ファン化を加速させるためにリピーターに限定したお得なセールやキャンペーンも検討してみてください。

常連客を「ファン化」させるステップ


常連客をファン化させるためには、一定の時間がかかります。どのように進めていけば良いのかステップごとに紹介していきます。

ステップ1:お得感で再訪を増やす

リピーターになってもらうためには、まず新規顧客を獲得しなければいけません。
広告やSNSから初回来店につなげるほか、割引や特典を用意して来店のきっかけをつくる方法があります。

初回の来店で「次回使えるクーポン」を渡すことで自然な来店動機を生み出せます。
この段階では、一度で高単価の利用をしてもらうというよりもお試しから定期的な購入につなげることを意識します。
短期的な利益よりも顧客の定着を優先し、関係構築に注力するようにしてください。

ステップ2:関係性を築き、顧客の声を取り入れる

顧客が何度も来店するようになれば関係性を構築する段階です。アンケートやSNSを通じて顧客の声を集め、改善点をサービスに反映させましょう。

顧客が意見を言いやすい環境を整えることで、関与度を高められます。「お客様の声から生まれた商品・サービス」といったポップをつけることも効果的です。
「お客様の声を反映した商品」であると伝えることで顧客は自分事化し、愛着、ロイヤルティを強化できます。

ステップ3:コミュニティ化で「仲間意識」を育てる

顧客をコミュニティ化してファン同士が交流できる場があると、顧客が継続的に関与する動機が生まれます。
顧客の意見を反映して改善を続けることによって、顧客はブランドに愛着を持ちやすくなります。
限定イベントやオンライングループは仲間意識を高める有効な仕組みです。コミュニティは口コミ拡大にもつながり、新規顧客の獲得も加速します。

ファンを広げる仕組みづくり


ファンを広げるためには、そのための仕組みを企業側が用意することも大切です。どのような仕組みがあるのかを以下で紹介していきます。

口コミ・紹介制度の導入

口コミや紹介制度は、ファンづくりに効果的な方法です。紹介者に特典を設けることで、自然な形で新規顧客を獲得できます。

口コミは広告よりも顧客からの信頼性が高く、成約率も高い傾向にあります。
口コミ自体は、SNSなどで自然発生することもありますが、口コミ・紹介制度として仕組み化することで持続的に口コミを生み出せるでしょう。

顧客事例やレビューの発信

初めて商品やサービスを利用する時には、満足できる品質のものであるか不安な人もいるしょう。
実際の利用者の声やレビューを発信すると、新しい顧客に安心感を与えられます。

レビューは信頼性の高い情報源として購入意欲を後押ししてくれます。
事例紹介は自社サービスの具体的価値を示す強力なツールです。顧客事例やレビューは積極的に発信するようにしてください。

SNSでファンの声を取り上げる

ファンからの意見はSNSにも投稿されています。SNS投稿を企業として紹介することで顧客は「選ばれた特別感」を獲得でき、商品や企業への愛着が生まれます。
また、ファンの発信がSNSで拡散されれば、自社の宣伝効果を自然に高めることが可能です。

顧客の声を取り上げることは、双方向の関係構築を強化する効果もあります。ファンの声やフィードバックが活発化するようになって新規顧客獲得にも役立ちます。

業種別・リピーター戦略の成功例


リピーター戦略は、業種によっても異なります。業種別のリピータ獲得成功事例を紹介します。

飲食店:常連客限定メニューや予約枠

飲食店の常連限定の裏メニューは、顧客の特別感を高める有効な施策となります。
また、
来店が多い人に向けた優先予約枠を設ければ、リピーターが安定的に通う仕組みとして機能します。

新メニューや期間限定メニューといった来店動機になる情報を積極的に発信してみてください。
グルメサイトやSNSでの写真や口コミをきっかけに来店、リピーターにできるようにしましょう。

美容院:施術履歴をもとに次回の提案

美容院は、顧客の髪質や過去の施術履歴を管理することによって、次に最適な提案ができます。履歴を活用した提案は「自分だけに合わせてくれる」という安心感を与えてくれるはずです。

美容院は担当者と顧客の関係性構築が肝です。一人ひとりに合わせた継続提案が、強い信頼関係を築くために欠かせません。

ネットショップ:購入履歴に基づくおすすめ商品メール

ネットショップは競合も多く、リピーター獲得の難易度が高い業種です。購入履歴を分析して最適な商品を提案することで、再購入率を高めるといった方法を検討してみてください。

個別最適化されたメールは顧客に「自分向け」という特別感を与えます。無差別な一斉配信ではなく、顧客属性などのデータに基づいた内容、時間帯の提案が効果的です。

リピーター戦略の落とし穴と注意点


安定した収入を得るためにリピーター戦略は重要です。しかし、それだけに注力していると、想定外のトラブルが発生するかもしれません。どのような点に注意すればいいのか紹介します。

割引依存で利益を削らない

リピーターを獲得するために有効な手段が割引です。リピーター割引をすることで次回の来店や利用につなげられ、将来的な顧客定着が期待できます。しかし、過剰に割引をすれば利益を圧迫し、事業の持続性を損なう危険があります。

割引に慣れた顧客は通常価格では購入しなくなるリスクもあり、割引から通常価格に戻ったとたんに買い控えられて売上が減少してしまうかもしれません。

無理な割引をするよりも、リピーターに対して付加価値を提供する戦略が長期的には有効です。ノベルティやポイントカード導入といった方法も検討してください。

過剰な接触で逆効果にしない

リピーターになってもらうためには、顧客と定期的にコミュニケーションすることも大切です。しかし、頻繁すぎるメッセージは顧客に煩わしさを与え、逆に離脱を招くことがあります。

顧客にとって適度な情報量を心掛けることが信頼維持の基本です。宣伝したい、商品を購入してほしいと過剰な接触をしては、顧客本位とはいえません。発信内容は「役立つ情報」に絞り、押し付け感を感じさせないようにしてください。

顧客層に合わない制度設計を避ける

リピーターになってもらうためといっても顧客属性と合わない制度は利用率が低く、コストの無駄になってしまいます。

ほかでうまくいっている仕組みをそのまま導入するのではなく、実際の来店頻度や購買額を分析して制度を設計する必要があります。形だけの制度設計ではなく、顧客に実益のある内容を重視してください。

まとめ:常連客をファンに育てて経営を安定させよう

顧客理解から始まり、体験向上・接点づくり・制度設計を通じてファン化は実現できます。 ファンは安定収益をもたらすだけでなく、紹介や口コミで新たな顧客を連れてくる存在です。

リピーター戦略は小規模事業者にとって最大の武器であり、経営の持続性を高めるために欠かせません。新規顧客から常連客、常連客からファンに育てて企業の安定した収益基盤を維持しましょう。

上手くファンを増やせたら、次に考えるのは売上を安定さることです。そのためには「利益の構造」を見直すことも大切です。
創業手帳会員が無料で使える『事業計画シート』を活用すれば、売上・経費・利益を整理しながら、どの施策が本当に効果的かを数値で把握できます。
感覚ではなく数字で判断できる経営に一歩近づきましょう。


関連記事
リピート率って何?計算方法やアップする施策まとめ
ファンマーケティングは何がすごい?手法やメリット、成功事例など解説

(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
この記事に関連するタグ
創業時に役立つサービス特集
このカテゴリーでみんなが読んでいる記事
カテゴリーから記事を探す