赤字体質を改善したい!経営者が知っておきたい原因・対策方法を解説

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創業後赤字体質に陥る経営者も多い


一般的に、起業した会社は継続的に一定の利益が出る事業構築を目指しますが、創業後に赤字体質に陥ってしまうケースも多いです。
利益がマイナスになっている状態が続いていることを赤字体質といい、赤字を繰り返すことには何らかの理由があると考えられます。
早い段階で脱却しなければ、経営が継続できなく恐れもあることに注意が必要です。

今回は、赤字体質から抜け出せない原因や赤字体質を改善するための方法について解説します。
赤字体質に陥りやすい経営者の特徴も併せて紹介するため、自分が当てはまっていないか確認してみてください。

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赤字体質から脱却できない主な原因


まずは、企業が赤字体質から抜け出せない要因をみていきます。以下に当てはまっていないかどうかを確認してみてください。

経営の知識が足りていない

赤字体質から脱却できない要因として、経営に関する知識が足りていない点が挙げられます。
経営に関わる知識は、お金だけではなく人やものなど、多岐にわたります。

「面倒」「勉強する時間がない」「勉強の仕方がわからない」といった理由で知識を増やすことを先延ばしにしていれば、問題に直面した際に何もできず、倒産に及ぶケースがあることに注意してください。
経営者であれば、経営に関するノウハウをしっかりと身に付けることが肝心です。

融資ばかりに頼ってしまう

融資に頼ることで、赤字体質に陥る可能性もあります。
事業が赤字になり資金が不足した際、収益性の改善に取り組まずに融資を受けることで改善を目指そうと考える人もいるでしょう。

収益の改善には時間がかかるだけではなく、労力も必要です。そのため、お金を借りるほうが楽だと考えがちです。
しかし、融資を繰り返したり赤字が続いたりすれば、銀行から信用を得られなくなる可能性があります。
融資を受けられなくなってはじめて事の重大さに気が付くことは、赤字体質の企業に多い傾向です。

試算表を作成していない

赤字体質の会社には試算表がないケースも多いです。
試算表とは、決算書類を作成する前に総勘定元帳に記録された勘定項目の借方や貸方の金額を一覧表にしてまとめたものです。
仕訳や転記に間違いがなかったかを確認するほか、経営状況を把握するために役立ちます。

定期的に作成し、チェックを行えば資金の流れや売上といったポイントを把握することが可能です。
また、業績が伸びていない要因や資金の使い方の分析、改善策の実施など、経営を改善するためのアクションをスムーズに行うためにも役立ちます。
試算表を作成して経営状況を随時チェックすることが肝心です。

事業構造自体が赤字になりやすい

支出よりも売上が多いことで事業経営が成り立ちます。「売上>支出」のバランスさえ崩れなければ赤字にはなりません。
しかし、小売業や製造業は薄利多売の傾向が強く、利益を薄くして品物を多く売り、全体としての利益を上げることを目指しがちです。
市場が成熟期や衰退期になれば、価格が低下してしまい安売り合戦に巻き込まれるケースもあります。

人件費や工場の維持費は一度上げてしまうと減らしにくくなってしまうので、「売上>支出」のバランスが崩れやすくなります。
なお、原材料費の高騰によって採算が合わなくなってしまうケースもあるため、小売業や製造業は、構造的に赤字になりやすいといわれています。

リアルタイムに会計データを把握していない

経営者の中には感覚だけで経営を続けている人もいます。日々の数字を追わなけらば、リアルタイムで経営実態を把握できません。
経営判断を誤り資金繰りに行き詰まったり、改善策を導き出せなかったりするなど、トラブルに発展しやすくなります。
日々会計データを追うようにして、数字を見る習慣をつけることが大切です。

社員教育が不足している

いくら経営者が頑張っても、利益を上げるには限界があります。また、「経費を節約しよう」と訴えても本腰で取り組む社員は少ないかもしれません。
さらに、「給与の2倍粗利を稼ぐ」と目標を掲げても、理解できない社員もいます。

経営に対する理解が足りていない社員や、会社のお財布事情、経営に必要な経費を知らない社員が多いことが要因です。
情報格差は赤字体質の要因のひとつであるため、社員一人ひとりに対して教育を実施することも経営者の大事な役割です。

赤字体質を改善するための方法


ここからは、赤字体質を改善するための方法を解説していきます。

中長期の経営計画を策定する

黒字体質を目指すためには、経営計画の策定が欠かせません。
経営計画とは、会社のビジョンや目標を明確にした上で、実現するために具体的に取り組むことをまとめた計画を指しています。

黒字化を目指すためには、3~5年ほどの期間で長期経営計画の達成に向けた取組みを定める中長期計画が必要です。
中長期計画を策定する際には、効果を測定しやすいように目標を数値で表す必要があります。
対策の効果が現れれば赤字解消につながるだけではなく、業務改善に取り組んだ社員のモチベーションアップにも期待できます。

高粗利の商品・サービスを強化する

赤字体質を改善するためにも、高粗利の商品やサービスを強化することを検討してみてください。

  • 高粗利商品を重点的に販売促進活動を実施し、売上アップを目指す
  • 利益率の高い顧客層をターゲットに施策を実施する
  • 商品構造を見直して粗利の高い商品を中心に販売を行う

上記のような高粗利商品やサービスに集中することで、利益率向上を狙えるようになります。

既存顧客へのアップセル・リピート促進を図る

既存顧客に対して、アップセルやリピートの促進は赤字体質改善に有効な手段です。アップセルとは、上位プランへの移行やオプションを追加して購入することを指します。
顧客数を増やすだけではなく、顧客一人あたりの売上単価を延ばすために有効で、売上全体の増加に期待できます。

また、リピート促進を図れば安定した収益の確保につながりますので、以下の活用を検討してみてください。

  • ロイヤリティプログラムの導入
  • 定期的なフォローアップや充実したアフターサービスの提供
  • 定期購入やサブスクサービスの導入
  • 顧客フィードバックの収集、改善

売掛金の回収を早めるなど資金繰りを改善する

資金繰りの改善を目指すためには、キャッシュフローの最適化に取り組むことも有効な手段です。
例えば、売上債権の回収促進です。売上があっても売掛金を回収できなければ意味がありません。

取引先が支払いが遅れている時には、督促状や催促状の送付を検討してください。
支払いを拒否された場合には、債務確認書の作成を依頼するほか、法的手段も検討し、回収に向けて対策をしていきます。

なお、予防策として、支払い期日を守る取引先を増やしたり請求書を迅速に送付したりする方法をはじめ、回収状況を把握する方法が考えられます。

不要な固定費を削減し、変動比率を高める

変動費比率を高めると、売上が減少したとしても赤字になりにくくなり、安定した経営を築けるようになります。
変動費比率とは、売上高に対して変動費が占める割合を増やすことです。固定費を減らすほか、変動費を効率的に管理することで実現を目指せます。

労働力構成を見直す

赤字体質を改善するためには、労働力構成の見直しが必要です。業務内容に合わせて最適な人材を配置するほか、人員の最適化を行う必要があります。
必要なスキルや経験を持った人材を適材適所に配置すれば、業務効率がアップし、生産性アップが期待できます。
各部門の業務内容を分析して、必要なスキルと経験を持った人材の配置を行ってください。

人員が過剰になればコストが増加します。赤字を悪化させる要因になるため、業務プロセスの見直しを行い、必要な人員数を特定してください。

なお、業種によって異なりますが、労働分配率は50%以下が理想といわれています。
企業が生み出した付加価値のうち、人件費として従業員に支払われている割合を示すものが労働分配率です。
「(人件費 ÷ 付加価値)× 100」で表すことが可能で、高すぎると収益性に悪影響を及ぼす可能性があり、赤字体質になりやすい傾向にあります。
反対に、低すぎると社員のモチベーション低下を招き、結果として事業に支障を与える要因になります。適正な範囲に保つことが重要です。

従業員が働きやすい環境づくりに取り組む

従業員が働きやすい環境を提供することで、赤字体質改善効果に期待できます。
例えば残業です。赤字企業の中にはサービス残業を強いる企業も存在します。社員のモチベーションが上がらず、生産性に影響を与えてしまうかもしれません。

また、限られた時間の中で効率的に仕事をする体質が失われてしまうため、無駄な仕事が増える原因にもなります。
さらに、入退社が繰り返される要因になれば、人件費増加にもつながります。

生産性をアップしたい場合、エンゲージメント向上が欠かせず、労働環境の整備が重要です。
残業や休日出勤の削減、人事評価制度の見直しなど、あらゆる策を講じて従業員が働きやすい環境づくりをしてください。

赤字体質に陥りやすい経営者の特徴


赤字体質に陥りやすい経営者の特徴を解説していきます。

感情論で経営判断をしてしまう

感情に任せて行動をしたり、感情に訴えたりするなど、データやロジックに基づいていない意見や行動を感情論といいます。
経営では根拠に基づいた倫理的な判断が求められるため、感情論だけでは物事を解決することは難しいです。
データのチェックを欠かさず、赤字の実態を把握して解決策を導き出すことが大切です。

周りに相談できる人がいない

問題を抱え込んでしまう人は、赤字体質に陥りやすい経営者の特徴です。あれこれ考えていると時間だけが過ぎてしまいます。
解決策を導き出すスピードが早ければ、融資や出資といった支援を受けられていた可能性があります。

問題に対する解決策を見いだせないのであれば、スムーズな解決や改善策を手に入れるために、周りに相談することを検討してください。
商工会議所や商工会、税務署や社会保険労務士など、あらゆる相談先があります。

一発逆転を狙いがち

一発逆転を狙う人は、毎日の地道な仕事が疎かになっている可能性があります。地道な積み上げでビジネスは成り立ちます。
勢いだけで会社を大きくしようと考えれば、手元のお金も一気になくなり経営が危ぶまれるかもしれません。

毎日・毎週・毎月と地道に価値を提供することで収益は徐々に上がっていくため、現実と向き合い、日々の努力を忘れないことが大切です。

プライドが高く変化を受け入れにくい

見栄やプライドの優先も赤字体質に陥りやすい経営者の特徴です。
業績よりも周囲からの評価や体裁を重視しているため、会社が困難な状況に陥ったとしても水準を下げることができないのです。
会社を再建することよりも自分のプライドを優先しているため、経営者としての優先順位を誤っているといえます。

従業員や会社を守るためには、不要なプライドを捨てて、周囲の意見を聞いたり相談したりすることが大切です。

赤字体質に効く支援制度・補助金の活用方法


最後に、赤字体質に効果的な支援制度や補助金について紹介していきます。

経営改善計画策定支援事業(認定支援機関の活用)

経営改善計画策定支援事業は、国が認定している専門家の支援を受けて金融支援を含めた経営改善計画を策定する企業に対して、改善にかかる費用の2/3を国が補助する制度です。

財務コンサルタントや中小企業診断士といった専門家によるサポートを受けられ、気づけなかった課題や機会を発見するために役立ちます。
申請する際には、最寄りの商工会議所もしくは認定支援機関に相談し、支援事業の対象であるか確認してください。

IT導入補助金など、業務効率化系の支援制度

業務の効率化を図るための支援制度の活用も有効です。代表的な支援策として、「IT導入補助金」が挙げられます。
労働生産性の向上を目的に、業務効率化やDX化に向けたITツールの導入を支援するための補助金で、通常枠やインボイス枠、セキュリティ対策推進枠などがあります。

採択には審査を受ける必要があるため、IT導入支援事業者と協力をして申請を進めてください。

金融機関との交渉時に使える公的支援制度

金融機関との交渉や融資に役立つアドバイスをしてくれるサポート機関として、「よろず支援拠点」が挙げられます。
中小企業庁によって設置されている無料の経営相談窓口です。各都道府県に設置されており、商工会議所や中小企業支援組織などと連携をしています。

また、経営に関する様々な相談をしたり、融資を受けるための手続きや書類の準備、資金計画の作成といったアドバイスやサポートを受けたりできます。
補助金や助成金などの情報提供も実施しているので、困った時には相談を検討してみてください。

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まとめ・継続して利益を生み出せる黒字体質を目指そう!

経営の知識が足りていなかったり融資に頼りがちな経営をしたりしていれば、赤字体質を招いてしまいます。
赤字体質が続けば事業の経営が危ぶまれ、倒産を招く恐れがあります。
改善するためには、高粗利の商品・サービスの強化や既存顧客へのアップセルの促進、売掛金の回収を早めるといった対策を施すことが必要です。
支援制度や補助金などの活用も検討し、継続して利益を生み出せる黒字体質を目指してみてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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